24 / 42
24.悪役令嬢は百合より薔薇がお好き
しおりを挟む現在、ローゼリアはソフィア嬢に手を握られている。しかも肩がつきそうな程近くに座り、両手で撫で撫でニギニギされている。
ピンク色のつり目をウルウルさせて、ローゼリアをウットリと至近距離で見つめるソフィア嬢。
どうしてこうなった……
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
少し時間を遡る。
「フェンリル様にはもう聞いたかしら?わたくしとフェンリル様には、縁談の話があったこと。」
病人の神経を逆撫でするような発言をしたソフィア嬢はというと、現在、我が物顔でソファに座り、ローゼリアの侍女にお茶を求めた。
入室の許可を出してもいないのに勝手に入ってきて無礼な態度を取った上、このまま居座るつもりのようだ。
いくら自分の屋敷とはいえ、親しくもない、しかも具合の悪い者の部屋に、無許可で長居しようとするソフィア嬢の神経を疑う。
一応、私の方が爵位は上なのだけど…
あんまりな態度に、怒りよりも呆気に取られてしまう。侍女も同じ気持ちらしく、口をパクパクさせて言葉を飲み込んでいる。
……この国の貴族令嬢は皆こうなの?それともソフィア様が特別なの?
ローゼリアが精神的な頭痛を感じ始めていると、お茶を飲んでいたソフィア嬢が話しかけていた。
「ローゼリア様は、今回の王命について、どう考えてますの?」
……どーいう意味?
「…どう、とは?フェンリル様はあんなに素敵な殿方ですもの。勿論、喜んで王命を受け入れておりましてよ?」
「ふふっ、そうよね。王命ですもの。本心では嫌だと思っていても、隠しますわよね。…でも、わたくし誰にも言いつけたりしませんわ。だから、本音を話して下さる?」
「…本心でしてよ。」
「そう、まぁいいわ。話を戻すけれど、わたくしとフェンリル様に以前縁談の話があったというのは、聞いたかしら?」
「えぇ……でも、そのお話は立ち消えたって。」
「そうね。でも、今にして思えば、フェンリル様との縁談をお受けしておけば良かったわ……」
「…ッ!!」
これって、つまり……『一度捨てたけど、やっぱり他人にあげるのは惜しくなったから返して』的な宣戦布告ッ!?
そんなの都合良すぎよ!!
これは悪役令嬢に戻っても構わない、負けられぬ戦いだわ!!
「……私、絶対に負けませんから!!」
「?……何の話?」
今話してたことに決まってるじゃない!!馬鹿にしてるの!?まさか、私じゃ相手にもならないって?!
確かに体の肉付き具合は圧倒的に負けてるわ、特に胸部装甲!殿方には効果絶大ね!キーッ!!卑怯よ、私だって、まだ成長の余地はあるわ!…多分…
「まだ負けてません!(胸の大きさ)勝負はこれからですわ!!」
「だから、何の話?」
くっ、これは完全に相手にされてないわね…かくなる上は、
「勝敗は本人(フェル様)に決めてもらいましょう!!」
「………。ちょっと、そこの、ローゼリア様の侍女。ローゼリア様どうしちゃったの?これ、大丈夫?」
困惑したソフィア嬢に呼ばれたローゼリアの侍女は、スススっとローゼリアに近付き、耳元で「奥様、落ち着いて下さい。さもないと…ゴニョゴニョ」と何か囁いた。すると、興奮していたローゼリアがピタっと動きを止め、真顔になり、落ち着きを取り戻した。役目を終えた侍女は、ローゼリアの背後にスススっと戻って行った。
これを見ていたソフィア嬢も、自分が命じたこととはいえ、あまりにも効果覿面な様子に「ローゼリア様いったい侍女に何を言われたの?」と口元が引きつってしまった。
「コホン。取り乱してしまい申し訳ありません。…先程のソフィア様のお言葉ですが、どのような意味かしら?過去の縁談を惜しんでも、王命により婚約者は私と、既に決まっていましてよ。今更何をおっしゃるの?」
「……縁談を惜しむ?違うわ。そうではなくて、わたくしが縁談をお受けしておけば良かったと言ったのは、ローゼリア様の為ですわ。」
「……は?」
意味が分からなくて、淑女にあるまじき相槌をしてしまったわ、反省反省。いや、え?どういうこと?
混乱するローゼリアを見て、ソフィア嬢の様子が変わる。ローゼリアから視線を外し、口に片手を当ててフルフルと震えている。ローゼリアが心配して声をかけようとした、次の瞬間。
「…あぁ!我慢していたけど、もう無理っ!!
そのキョトンとした顔も、人形のように愛らしいわ!本当にローゼリア様はわたくしの理想そのものよ!!それなのに、おのれ、フェンリル様っ。ちょっと地位と名誉と整った顔を持っているからって、王命で他国からこんな美姫を取り寄せて独り占めするなんて、ズルイですわ!大体、殿方は子を産ませることが出来るというだけで、ローゼリア様のような女性を娶れるのが、ズルイのよ!わたくしだって、こんな胸の脂肪より、股座に、美少女を愛せる、逞しく立派なモノが欲しかったですわーっ!!」
そうすれば、美少女ハーレムを築けましたのにー!!っと憤慨するソフィア嬢。
つり目がちの目が興奮の為か潤んで、褐色の肌が薄ら薔薇色に染まりだす。ただでさえ肉感的な美女が、色気増し増しで迫ってくる。
え、ソフィア様ってまさか百合女子なの?!
驚愕したあと、ん?百合女子って何かしら?良く分からないけど、私は百合より薔薇の方が好きよ?なにせ名前に薔薇の名が入っていますもの、と混乱するローゼリア。
そうして、ローゼリアが混乱しているうちに、いつの間にか冒頭の状態になっていたというわけだ。
はい、皆さんご一緒に。
……どーしてこうなった!?
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
93
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる