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15.飲酒した翌日は二日酔いと後悔に苛まれる
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✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
時は少し遡り、その日の朝、ガーネット公爵家にて。
……や、やってしまいましたわぁ……
フェンリルに絡み酒をかました翌朝、ローゼリアはベッドの上で、頭を抱えていた。
頬に手を当てて、困ったわポーズをするレベルを超えた自分の昨夜の失態に、頭をかかえているのもあるが、純粋に二日酔いによる頭の痛みもあっての行動である。
記憶はある、消したい記憶だけれど。
意味不明なことを不明瞭な言葉で伝えられたフェンリルの混乱具合といったら、可哀想になるくらいだった。
最後の方は記憶にないと言うことは……寝落ちしたのね。そして、体のどこも痛くないということは、またしても、抱きとめてもらってますわね……距離的に、フェンリル様に。
ボボボッと羞恥に顔が染まる。そして、封印したはずの恋心が蘇ってくる。
なんでっ、なんで他に愛している方がいるくせに、私にも優しくするんですの?!あんなに素敵な殿方に、目をかけていただけて、落ちない女はいなくてよ!!
フェンリル様の浮気者!女ったらし!!
頭の中で悪口を叫びつつも、心は彼に惹かれることを止められない。
はぁ、と溜め息をついたところで、ローゼリア付きの侍女が入室の許可を求めてきたので、許可を出す。
「奥様、昨夜は申し訳ございません。奥様がお酒に弱いとは露知らず、度数の高い果実酒をお勧めしてしまって……頭痛がするのではと思いまして、お薬をお持ちいたしました。」
「良いのよ、私も自分がこんなにお酒に弱いとは知らなかったもの。美味しいからって調子に乗って飲み過ぎた自分のせいなのだから……まぁ、気が効くわね!頭が痛いと思っていたの。ありがとう、頂くわ。」
侍女から渡された薬を飲んでしばらくすると、嘘のように頭痛が消えた。
「すごいわね!こんなに早く痛みが消えるなんて!」
「お褒め頂き光栄です。実は、この薬は私の故郷に伝わる秘伝の薬なんです。もう数はあまりないので、他の方には内緒にしていただけると助かります。」
「まぁ、そんなに貴重なものを私の為に…本当にありがとう。勿論、他の方には言わないわ!」
侍女はニコリと微笑むと、本日はいかがなされますか?と今日の過ごし方を聞いてきた。
いつものローゼリアなら、自室で読書か、庭でお茶くらいしか選択肢がないが、今日は一味違う。
「フェンリル様は王宮へ戻られたのよね?…私、昨夜の事を直接会ってお詫びしたいの。どうにかならない?」
そう侍女に相談すると「では、王宮へ参りましょう」と返された。
簡単に自分の希望が通り驚く。ローゼリアが驚いている間に、侍女はサクサク準備を進めて、あっという間に王宮へ向かう馬車に、その侍女と二人で乗っていた。
「…フェンリル様はお仕事中よね?本当に、王宮へ突然お邪魔して、大丈夫なの?」
「(旦那様は昨夜の奥様のご様子に取り乱しており、今朝も仕事に出る前かなり気にされていたので)問題ないかと。」
さらっと回答する侍女。
最早その言葉を信じて進むしかないローゼリアは、フェンリルに会った時、昨夜伝え切れなかった思いを、うまく伝える方法を考えることにした。
王宮に到着し、衛兵にフェンリルの場所を尋ねると、王の執務室ではないかと回答があった。
流石にそこまで押し入るわけにはいかないと思い戸惑っていると、侍女が衛兵と話をつけてローゼリアの手を取り、王宮内部へ向けてズンズンと歩き出した。
この侍女は、よく王宮へフェンリル宛の荷物を届けに来るため、道を熟知しているそうで、王宮の長い廊下を右へ左へ進んでいく。
「…ねぇ、本当に突然お邪魔して大丈夫なのかしら。なんだか薬の効き目が切れてきたのか、疲れたわ。…やっぱり帰りましょう?」
ローゼリアの言葉を聞き、急停止した侍女は、「(ここで帰ったら元の木阿弥、かくなる上は…)奥様、旦那様を呼んで参りますので、お疲れのところ大変申し訳ありませんが、こちらで少々お待ちいただけますか?」と言い、まるで帰してなるものかと言わんばかりに足早に先へ行ってしまった。
あら、まぁ……はぁ、置いて行かれたわね。
ローゼリアが頬に手を当て困ったわポーズで素直に待っていると、何かに呼ばれた気がした。
侍女には、ここで待つようにと言われたが、どうしても気になったローゼリア。
なんとなく気になる方へ進んでいき、廊下を曲がったところで、具合の悪そうなフェンリルを見つけたのだ。
「…フェル様?」
思わず、愛称呼びしてしまったと気付き反省するも、彼が心配で気遣う言葉がでた。
「フェンリル様?こんなところで、お一人でどうかなさいましたか?具合が悪いのですか?」
「…一人?」
フェンリル様、なんだか様子が変ね…
それに…なんだか汗ばんでて、目も潤んでいるような…………ゴクュリ。
「リア?…心配してくれるのは嬉しいが、その、そんなに見つめられると、照れてしまう…それに、なんでリアがここに?」
「…や、やだわ!私ったら。あの、私、昨夜の事をお詫びしたくて…あと、どうしてもお話したいことがあって、侍女に相談したら王宮へ行こうという話になって……こちらには侍女と二人で参りましたの。……でも、やっぱり非常識でしたわね。突然訪ねるなんて、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。」
「迷惑なんて!自分は、リアになら、いつだって、……それより、リア?共に来たという侍女の姿が見えないが…」
「はい、先ほどまで一緒にいたのですが、フェンリル様を呼びに行くから少し待っているようにと言われて…」
「そうか…リア、少し話をしないか?確認したい事がある。」
「は、はい。私も、フェンリル様とお話「フェル。」したいです……ぇ?」
「フェル、だよ?」
「で、ですが…」
「リア…」
い~や~‼︎これは無理、卑怯!
フェンリル様が捨てられた子犬のような目で見てくるわ~
「フ、フェル様。」
ぱぁああ!と、晴れ渡る空のような良い笑顔を取り戻すフェンリル。
きゃ~~‼︎今度は尻尾をブンブン降ってる大型犬が見えますわ~
これも無理、卑怯!
撫で回して、甘やかしたくなるじゃな~い!!
そうして、二人で戯れていると、戻ってきた侍女に見つかり、フェンリルと話をするため、王宮の一室に連れて行かれた。
時は少し遡り、その日の朝、ガーネット公爵家にて。
……や、やってしまいましたわぁ……
フェンリルに絡み酒をかました翌朝、ローゼリアはベッドの上で、頭を抱えていた。
頬に手を当てて、困ったわポーズをするレベルを超えた自分の昨夜の失態に、頭をかかえているのもあるが、純粋に二日酔いによる頭の痛みもあっての行動である。
記憶はある、消したい記憶だけれど。
意味不明なことを不明瞭な言葉で伝えられたフェンリルの混乱具合といったら、可哀想になるくらいだった。
最後の方は記憶にないと言うことは……寝落ちしたのね。そして、体のどこも痛くないということは、またしても、抱きとめてもらってますわね……距離的に、フェンリル様に。
ボボボッと羞恥に顔が染まる。そして、封印したはずの恋心が蘇ってくる。
なんでっ、なんで他に愛している方がいるくせに、私にも優しくするんですの?!あんなに素敵な殿方に、目をかけていただけて、落ちない女はいなくてよ!!
フェンリル様の浮気者!女ったらし!!
頭の中で悪口を叫びつつも、心は彼に惹かれることを止められない。
はぁ、と溜め息をついたところで、ローゼリア付きの侍女が入室の許可を求めてきたので、許可を出す。
「奥様、昨夜は申し訳ございません。奥様がお酒に弱いとは露知らず、度数の高い果実酒をお勧めしてしまって……頭痛がするのではと思いまして、お薬をお持ちいたしました。」
「良いのよ、私も自分がこんなにお酒に弱いとは知らなかったもの。美味しいからって調子に乗って飲み過ぎた自分のせいなのだから……まぁ、気が効くわね!頭が痛いと思っていたの。ありがとう、頂くわ。」
侍女から渡された薬を飲んでしばらくすると、嘘のように頭痛が消えた。
「すごいわね!こんなに早く痛みが消えるなんて!」
「お褒め頂き光栄です。実は、この薬は私の故郷に伝わる秘伝の薬なんです。もう数はあまりないので、他の方には内緒にしていただけると助かります。」
「まぁ、そんなに貴重なものを私の為に…本当にありがとう。勿論、他の方には言わないわ!」
侍女はニコリと微笑むと、本日はいかがなされますか?と今日の過ごし方を聞いてきた。
いつものローゼリアなら、自室で読書か、庭でお茶くらいしか選択肢がないが、今日は一味違う。
「フェンリル様は王宮へ戻られたのよね?…私、昨夜の事を直接会ってお詫びしたいの。どうにかならない?」
そう侍女に相談すると「では、王宮へ参りましょう」と返された。
簡単に自分の希望が通り驚く。ローゼリアが驚いている間に、侍女はサクサク準備を進めて、あっという間に王宮へ向かう馬車に、その侍女と二人で乗っていた。
「…フェンリル様はお仕事中よね?本当に、王宮へ突然お邪魔して、大丈夫なの?」
「(旦那様は昨夜の奥様のご様子に取り乱しており、今朝も仕事に出る前かなり気にされていたので)問題ないかと。」
さらっと回答する侍女。
最早その言葉を信じて進むしかないローゼリアは、フェンリルに会った時、昨夜伝え切れなかった思いを、うまく伝える方法を考えることにした。
王宮に到着し、衛兵にフェンリルの場所を尋ねると、王の執務室ではないかと回答があった。
流石にそこまで押し入るわけにはいかないと思い戸惑っていると、侍女が衛兵と話をつけてローゼリアの手を取り、王宮内部へ向けてズンズンと歩き出した。
この侍女は、よく王宮へフェンリル宛の荷物を届けに来るため、道を熟知しているそうで、王宮の長い廊下を右へ左へ進んでいく。
「…ねぇ、本当に突然お邪魔して大丈夫なのかしら。なんだか薬の効き目が切れてきたのか、疲れたわ。…やっぱり帰りましょう?」
ローゼリアの言葉を聞き、急停止した侍女は、「(ここで帰ったら元の木阿弥、かくなる上は…)奥様、旦那様を呼んで参りますので、お疲れのところ大変申し訳ありませんが、こちらで少々お待ちいただけますか?」と言い、まるで帰してなるものかと言わんばかりに足早に先へ行ってしまった。
あら、まぁ……はぁ、置いて行かれたわね。
ローゼリアが頬に手を当て困ったわポーズで素直に待っていると、何かに呼ばれた気がした。
侍女には、ここで待つようにと言われたが、どうしても気になったローゼリア。
なんとなく気になる方へ進んでいき、廊下を曲がったところで、具合の悪そうなフェンリルを見つけたのだ。
「…フェル様?」
思わず、愛称呼びしてしまったと気付き反省するも、彼が心配で気遣う言葉がでた。
「フェンリル様?こんなところで、お一人でどうかなさいましたか?具合が悪いのですか?」
「…一人?」
フェンリル様、なんだか様子が変ね…
それに…なんだか汗ばんでて、目も潤んでいるような…………ゴクュリ。
「リア?…心配してくれるのは嬉しいが、その、そんなに見つめられると、照れてしまう…それに、なんでリアがここに?」
「…や、やだわ!私ったら。あの、私、昨夜の事をお詫びしたくて…あと、どうしてもお話したいことがあって、侍女に相談したら王宮へ行こうという話になって……こちらには侍女と二人で参りましたの。……でも、やっぱり非常識でしたわね。突然訪ねるなんて、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。」
「迷惑なんて!自分は、リアになら、いつだって、……それより、リア?共に来たという侍女の姿が見えないが…」
「はい、先ほどまで一緒にいたのですが、フェンリル様を呼びに行くから少し待っているようにと言われて…」
「そうか…リア、少し話をしないか?確認したい事がある。」
「は、はい。私も、フェンリル様とお話「フェル。」したいです……ぇ?」
「フェル、だよ?」
「で、ですが…」
「リア…」
い~や~‼︎これは無理、卑怯!
フェンリル様が捨てられた子犬のような目で見てくるわ~
「フ、フェル様。」
ぱぁああ!と、晴れ渡る空のような良い笑顔を取り戻すフェンリル。
きゃ~~‼︎今度は尻尾をブンブン降ってる大型犬が見えますわ~
これも無理、卑怯!
撫で回して、甘やかしたくなるじゃな~い!!
そうして、二人で戯れていると、戻ってきた侍女に見つかり、フェンリルと話をするため、王宮の一室に連れて行かれた。
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