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第三章 ブランの街

ある日〜森の中〜3

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ユート視点



「なるほどな~」

ユートは街の門から少し離れた草原にいた

近くの岩に座りながらパンフレットを読んでいる

(抜くんじゃなくて刈り取るのか
ナイフでも買ってくれば良かったな)

ちょっと後悔しながらパンフレットを閉じ、
草原の奥にある小さな森の中に入る


(なんか俺、この世界に来てから森にしか来てない感じがするな…)




ユートは呆れながらトボトボ歩く








「これがビナンカ草か~」

少し入った所にビナンカ草は生えていた

「刀で切るか…う~ん……」

腕を組んで考えていると、ハッ!とある方法を思い出す


指先に魔力を集中して……
カッターのような……
ナイフのようなイメージで……


すると指先から数センチ程の細長い風の刃が出来た

「よし!これならイケる!」

ユートは左手でビナンカ草を押さえ、右手の人差し指で根元を切った

スパッ


(おお!成功成功!)


上手く切れたのでその調子で周りに生えているビナンカ草も次々に刈り取る












一時間後


「ふぅ~。刈り切った~」

ユートは刈り取るのに夢中で、予定の数よりおよそ三倍とかなり多めに集めていた

「昔から集中すると周りが見えなくなるな…
眼が見えるから前よりもさらに集中できるしな!」


ビナンカ草の採取という簡単な依頼だが、全集中していたためスキル【心眼】が常時発動していた



(補足・・・心眼を使うと普通に集めるより体力を消費します。無意識を発動してたのね…)




ユートは近くの木に寄り掛かりスペースから水を取り出し寛いでいた

「もう日が落ち始めたな。充分取ったし帰るか」

森から立ち去ろうとすると
少し先から剣撃の音と若い人の声が聞こえてきた















男視点


ブモオオオオオオオオオオ!!!!


「ちょ!!!!!!マジやばいってえええええ!!」


若い男がワイルドボア?から逃げ回っていた
 

「リック!早くこの木に登って!」


若い女がリックに手を差し伸べる


「おおおおおおおおお!とうっ!!」


リックは走り飛び、女の手を掴み木に駆け上がる


「マジ死ぬかと思ったわ!!
お前が「不意打ちで頭狙えば大丈夫!」
って言ってから勝手に矢を撃ち込んだせいだからな!」


「なによ!リックなんていつも
「俺ならワイルドボアなんて余裕よ余裕~!」って言ってる癖に!
実際には逃げ回ってちょこちょこ斬るくらいしか出来ないじゃない!」


「「ふんっ!!」」


何故こんな事になったかと言うと



二人はミニラビの肉の調達依頼
(小さいラビット。成長するとホーンラビット)
を受けてこの森でミニラビを狩っていた

予定より早く刈りが終わり、ちょっと探索していると目の前に餌を食べているワイルドボア?らしき姿を発見した

ワイルドボアの依頼は受けていないが、素材はいい値段で買取してくれる為、二人は不意をついて攻撃をした

結果、女が放った矢は頭では無く目に当たり、ワイルドボア?は怒り二人に突進して来たのだ



ブモオオオオオオオ!!




ドォーーーーーーーーーーン!!!!


ミシッ

ミシミシッ




「「ひっ!?」」




二人の登っている木にワイルドボア?が突進し、木はグラグラと大きく揺れている


「ねっ…ねぇリック……この木……まずくない?」

「あっ…あぁ……俺もまずいと思う……」



チーーーン



二人は顔を青ざめた















ユート視点





ドォーーーーン!




ユートは魔力感知を使い、音がした場所に向かっていた

(こっちの魔力は……人が二人
こっちの魔力は……魔物が一匹
誰かが襲われてるみたいだな!)


ユートは目的地まで駆け走る




(いた!んっ?普通より一回りデカいワイルドボアだな……さっさと片付けるか)


ユートは刀を抜き勢い良く飛び出した




飛び出してきたユートに気付いたワイルドボア?はユートの方を振り返りユートの姿を捉える


だが、いつの間にか目の前に現れたユートが自分に攻撃をし終わっている事に気づかなかった



目にしたのは一瞬、刀が光を発した事だけ




「神崎流刀術:遅雷」







ヒュ!





ドスッ!!



音がした後、遅れてワイルドボア?の頭に深い穴が空いていた


ブモォ?


ブモオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!



ワイルドボア?は目を大きく開き、攻撃されたの気づいた時脳に強烈な痛みが走り、その痛みに耐えられなくなり意識を失い、その大きな巨体がバタンと倒れた



(久々に使ったけど中々の威力だ
人ではうまく力の加減が出来ないから使う機会無かったしな)

そう思いながらユートは納刀すると木に登っていた二人が降りてきて声を掛けてきた


「あっありがとうございます!助かりました!」

「すまん!助かったぜ!」

「無事で何よりだ」

リックは興奮した様子でユートに声を掛ける

「お前強えな!何をしたのか全く分からなかったぞ!」

「ちょ!ちょっとバカリック!命の恩人にお前は無いでしょ!!
このバカがすみません。私の名前はルネって言います。このバカの名前はリックです」

「誰がバカだ!!」


ユートは、あはは…と苦笑しながら自己紹介する


「別に気にしないから大丈夫だよ。俺の名前はユート
ここで話してるのは危ないからとりあえず街に帰ろうか」

ユートはワイルドボアを収納しながら声を掛ける

その様子を見て二人はポカーンとした表情でユートを見つめ



「「・・・無詠唱!収納!!」」



仲が悪い二人だが息はピッタリだ

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