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第四章
第三十六話
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「父上たち……まさか、つまみ食いしてませんでしたよね?」
げんなりとした表情で帰ってきたのはルファだった。口元を油だらけにしたメルディ。感動しまくったせいでしゃがみ込んで涙目になっているエル。何もない様子を装い、エルの背中を撫でているマルクス。そして、慌てて証拠を隠滅しようとしているレイジ。
「べ、別に私は食べたりなんかしてないもん!」
「はぁ、別に怒ってないぞ。エルはどうして涙目になっているんだよ? 父上も何で背中なんかさすっているんだよ」
「いやはや。不自由させたなあと思ってね?」
「何が?」
ルファが眉をひそめ、こほんと場の空気を変えるように咳ばらいを一つ。
「父上、エル。改めて誕生日おめでとう」
「え?」
エルが見上げた。
「本当はもっと早くにと思っていたんだがな。驚くことじゃないだろ。俺たちはきょ……兄弟なんだし」
固まったエルに対し、ルファはみるみる顔を赤くしていった。
「な、なんか言えよ!」
「ありがと……」
「ふん! 父上とエルの誕生日プレゼントはメイドが準備してます。メルディと俺から」
レイナが傍に寄って来たと思えば、手渡されたのは一つの赤い包み。エルは目を見開いて、ルファとメルディを見つめる。そして、もう一人のメイドがマルクスに包みを渡す。
「開けても?」
「当たり前だろ」
ルファのため息交じりの言葉にエルが頷く。そして、袋を破いた。そこにあったのは白と金装飾が施されたスーツだった。
「舞踏会が近いから……な? その、サイズも聞いたし、大丈夫だとは思うけどよ」
「ありがとうございます」
自分には身に余るなとエルは思う。けれども、彼なりの優しさにエルは頭を下げた。
「メルディは金の装飾をお願いしたのよ。エルには自然ラインが似合うと思ったから!」
「そうか。ありがとう」
えっへんと胸を張るメルディにエルは思わず笑ってしまう。きっと、本物のエルが戻ってくれば、自分はここにはいないとは思う。けれども、これは大切に取っておこうとエルは思った。
「おや、私にはペンダントか」
「はい。願い事の石をメルディと選びました。その、ハウリアと俺は相性良くないですが、家族がいつまでも仲良くできるようにと」
「ありがとう、ルファ。君は小言さえなければ、いいんだけどなあ。後、平民平民とハウリアに対し馬鹿にした態度をとらないこと。いいね?」
「お、俺は長男で、しっかりしなきゃいけないし! でも。そ、その……気を付けます」
ルファの言葉にマルクスは笑顔で返す。そして、彼の肩にぽんっと手を置き、「君は良き王になるだろう」と伝えた。ルファの表情がぱぁっと輝いた。
「メルディもありがとう。君は信じる道を進んでいくといい。私がいくらでもサポートする」
「お父様、私がんばります」
メルディはメイドに口元をハンカチで拭われながら答える。
「エルはそうだな。君には時が来たら……ん?」
見慣れないメイドが駆け寄ってきた。レイジがすかさず反応し、メイドを取り抑える。
「何者だ!?」
「へ、陛下! 大変です! 海岸北東から魔獣が出現しました! こちらに向かっています!」
「ふむ。すぐに避難しよう。皆は屋敷へ。私とアルトで状況を確認してくる。あ……」
マルクスの視線がエルに向く。エルはその心配する視線に気が付いた。しかし、話を変える様に前に出たのはレイナだった。
「陛下。私が行きましょう」
「レイナか。大丈夫か?」
「はい。こう見えても、騎士としての実力もあります。私なら、アルト様にお力添えできるかと。この場で陛下が行かれるのは危険です」
「わかった。では、アルトの部屋に。皆、屋敷へ避難を。エルは私の部屋に来なさい。メルディ、君はルファと護衛の者と」
「どうして、エル兄さまばかりなの」
ぽつりと呟かれた言葉にエルは困惑する。泣きそうな顔をエルに向け、メルディは屋敷へ走っていってしまった。ルファは小さく息をつく。
「まだまだガキだな。お父様、落ち着いたら俺にも説明してください。俺は我慢できるけど、ハウリアやメルディは違う」
「そうだな。全て終わったら話すとしよう。レイナ、ミネルバと一緒にアルトへ説明を。そして、対策本部を私の部屋に立てる。ルファはメルディの護衛騎士と共に城の方へ連絡を」
「わかりました。任せてください」
ルファがメルディの後を追って駆けて行った。そして、マルクスの視線はエルに注がれる。
「さあ、行こうか。レイジも一緒に来てくれ」
「はい」
げんなりとした表情で帰ってきたのはルファだった。口元を油だらけにしたメルディ。感動しまくったせいでしゃがみ込んで涙目になっているエル。何もない様子を装い、エルの背中を撫でているマルクス。そして、慌てて証拠を隠滅しようとしているレイジ。
「べ、別に私は食べたりなんかしてないもん!」
「はぁ、別に怒ってないぞ。エルはどうして涙目になっているんだよ? 父上も何で背中なんかさすっているんだよ」
「いやはや。不自由させたなあと思ってね?」
「何が?」
ルファが眉をひそめ、こほんと場の空気を変えるように咳ばらいを一つ。
「父上、エル。改めて誕生日おめでとう」
「え?」
エルが見上げた。
「本当はもっと早くにと思っていたんだがな。驚くことじゃないだろ。俺たちはきょ……兄弟なんだし」
固まったエルに対し、ルファはみるみる顔を赤くしていった。
「な、なんか言えよ!」
「ありがと……」
「ふん! 父上とエルの誕生日プレゼントはメイドが準備してます。メルディと俺から」
レイナが傍に寄って来たと思えば、手渡されたのは一つの赤い包み。エルは目を見開いて、ルファとメルディを見つめる。そして、もう一人のメイドがマルクスに包みを渡す。
「開けても?」
「当たり前だろ」
ルファのため息交じりの言葉にエルが頷く。そして、袋を破いた。そこにあったのは白と金装飾が施されたスーツだった。
「舞踏会が近いから……な? その、サイズも聞いたし、大丈夫だとは思うけどよ」
「ありがとうございます」
自分には身に余るなとエルは思う。けれども、彼なりの優しさにエルは頭を下げた。
「メルディは金の装飾をお願いしたのよ。エルには自然ラインが似合うと思ったから!」
「そうか。ありがとう」
えっへんと胸を張るメルディにエルは思わず笑ってしまう。きっと、本物のエルが戻ってくれば、自分はここにはいないとは思う。けれども、これは大切に取っておこうとエルは思った。
「おや、私にはペンダントか」
「はい。願い事の石をメルディと選びました。その、ハウリアと俺は相性良くないですが、家族がいつまでも仲良くできるようにと」
「ありがとう、ルファ。君は小言さえなければ、いいんだけどなあ。後、平民平民とハウリアに対し馬鹿にした態度をとらないこと。いいね?」
「お、俺は長男で、しっかりしなきゃいけないし! でも。そ、その……気を付けます」
ルファの言葉にマルクスは笑顔で返す。そして、彼の肩にぽんっと手を置き、「君は良き王になるだろう」と伝えた。ルファの表情がぱぁっと輝いた。
「メルディもありがとう。君は信じる道を進んでいくといい。私がいくらでもサポートする」
「お父様、私がんばります」
メルディはメイドに口元をハンカチで拭われながら答える。
「エルはそうだな。君には時が来たら……ん?」
見慣れないメイドが駆け寄ってきた。レイジがすかさず反応し、メイドを取り抑える。
「何者だ!?」
「へ、陛下! 大変です! 海岸北東から魔獣が出現しました! こちらに向かっています!」
「ふむ。すぐに避難しよう。皆は屋敷へ。私とアルトで状況を確認してくる。あ……」
マルクスの視線がエルに向く。エルはその心配する視線に気が付いた。しかし、話を変える様に前に出たのはレイナだった。
「陛下。私が行きましょう」
「レイナか。大丈夫か?」
「はい。こう見えても、騎士としての実力もあります。私なら、アルト様にお力添えできるかと。この場で陛下が行かれるのは危険です」
「わかった。では、アルトの部屋に。皆、屋敷へ避難を。エルは私の部屋に来なさい。メルディ、君はルファと護衛の者と」
「どうして、エル兄さまばかりなの」
ぽつりと呟かれた言葉にエルは困惑する。泣きそうな顔をエルに向け、メルディは屋敷へ走っていってしまった。ルファは小さく息をつく。
「まだまだガキだな。お父様、落ち着いたら俺にも説明してください。俺は我慢できるけど、ハウリアやメルディは違う」
「そうだな。全て終わったら話すとしよう。レイナ、ミネルバと一緒にアルトへ説明を。そして、対策本部を私の部屋に立てる。ルファはメルディの護衛騎士と共に城の方へ連絡を」
「わかりました。任せてください」
ルファがメルディの後を追って駆けて行った。そして、マルクスの視線はエルに注がれる。
「さあ、行こうか。レイジも一緒に来てくれ」
「はい」
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