13 / 27
13
しおりを挟む
瑛子はその日、家に帰って突然思い出した。あれって“晴れ彼”のイベントであったきがする! と。
ゲーム内のイベントだと、ヒロインが教科書を隠されてしまい、困っていると催馬楽学が声をかけてくる。そして、ヒロインが事情を説明していると、それを聞いていたクラスメイトが、この前クラスメイトのA子とBが、誰もいない教室で何かしていたのを見た。と、言い始め、調べたらその二人の机からヒロインの教科書が見つかるってイベントだった。
瑛子は、あの犯人役のモブキャラって私か! そして今日証言してくれた和木野美依さんってもう一人のモブのBでは? と、気づきなんとも言えない気持ちになった。
現実の美依さんはとても良い子だった。やはり、ゲームと現実は違うのだな……と、思った。
それにしても、ヒロインの『聞いていた話しと違う』と言う台詞が気になった。あれはどういうことなのだろう。そう思いながらその日は眠りについた。
ヒロインが『お金を盗んだ』と、瑛子を名指ししたため翌日から、更にみんなの過保護は進み、瑛子は一瞬でも一人にされることがなくなった。その後、ヒロインは瑛子に近づくことができなくなったせいか、瑛子に絡んでくることはなかった。
そしてあっという間に、体育祭前日となった。瑛子はこれで実行委員の仕事とおさらばできると思うと、ホッとした。
今日は栗花落先輩が家まで送ってくれると言うので、一緒に校内を歩いている時に瑛子は
「なんか、手がベタベタするので、手を洗っても良いですか?」
と、言って近くにあったお手洗いを指差した。栗花落先輩は
「どうぞ、行ってらっしゃい。なにがついたんだろうね? 甘いものでも触った?」
と、笑いながらトイレ前の壁に寄りかかった。瑛子はトイレに入ると、手を念入りに洗った。すると、外から栗花落先輩の
「君もしつこいね、嫌だって言っているのに」
と言う声がした。瑛子がトイレから出ると、ヒロインが立っており
「喪山? なんでいるの?」
と言った。瑛子は訳がわからず、栗花落先輩とヒロインの顔を見比べていると、栗花落先輩が何か思い付いたようにハッとして
「瑛子、ハチマキ、ハチマキ頂戴」
と言ったので、訳のわからないまま鞄からハチマキを取り出し手渡した。栗花落先輩はそれをしまうと今度は自分のハチマキを鞄から出して、瑛子の手を取ると手のひらに乗せて握らせた。瑛子が混乱していると栗花落先輩は
「こう言うことだから、君とハチマキの交換はできない」
と言った。ヒロインは瑛子を睨み付けると
「なんで、シナリオ道理行かないのよ!」
と言いながら去っていった。瑛子は呆気に取られた。
星春高校の体育祭はクラスでチーム分けがされる。一年から三年の、A組はブルー、B組は赤、C組は白で、D組は緑だ。栗花落先輩は瑛子と同じA組で同じカラーなのでハチマキを交換しても問題はない。同じカラーなら、好きな人とハチマキを交換するのが流行っていたので、ヒロインはそれをしたかったのだろう。
と言うか、たしか“晴れ彼”の栗花落先輩のイベントで、ハチマキを奪われて交換すると言うものがあった。ヒロインはそれを狙ったのだろう。でも、完全に失敗したわね。と、瑛子はそんなことを考えていた。すると、栗花落先輩が
「いや、なんか、最近やたらハチマキ交換して欲しい、って女の子から言われて困ってんだよね。ちょうどいいから、このまま交換しておいてくれると嬉しいんだけど」
と言って微笑んだ。瑛子はそう言うことならと承諾した。そして
「モテるって、いいことばかりかと思ってましたけど、大変なんですね。断って逆恨みとか恐いですしね」
と言った。栗花落先輩はハッとして
「あっ、ごめん。瑛子が、あの女の子から逆恨みとかされるかもしれない」
と言ったので、苦笑しながら
「大丈夫ですよ、丹家さんには前から嫌われてしまってますから」
と言うと、栗花落先輩が驚いて
「あの子が丹家さん!? 催馬楽から話は聞いてたけど、もっとこう、強そうな女性をイメージしてた。見た目じゃわからないもんだね」
と、苦笑した。瑛子は催馬楽君なに言ったんだろう? と、思いながら
「そうなんですよね、彼女あんなに可愛らしいのに。もったいない」
と答えた。おそらく最初から普通にしていれば、私みたいに、ハチマキを自然と交換してもらえたかもしれない。それにしても、と瑛子はヒロインが『シナリオ道理』と言ったことが気になった。
体育祭当日、朝早くから騒がしく会話している両親の声で目が覚めた。カーテンを開けると晴天だった。この天気なら決行間違いなしかな。と、思いながら服を着替え下に降りると、勝と冴子が慌ただしく弁当の準備をしている。瑛子が眠い目を擦りながら
「おはよう」
と言うと、冴子が
「あら、おはよう! 今日は頑張んないといけないんだから、朝ごはんたくさん食べなさい!」
と言った。瑛子は驚いて
「今日は、お母さんがご飯作ったの!?」
と、聞くと冴子はとびきりの笑顔で
「そうよ! お母さん頑張ったんだから!」
と言い、勝が
「ママは、お弁当作るのも手伝ってくれたんだぞ」
と、裁縫箱よりも大きな重箱を指差した。瑛子は
「だって、お母さん昨日も仕事遅かったのに、大丈夫?」
と訊くと、冴子は瑛子を抱き締めて
「なに言ってんの、この子は。そんな心配しないの。それに、お母さんだって瑛子の成長見たくて、今日の体育祭、楽しみにしてたのよ?」
と言った。瑛子は
「うん、お母さんありがとう」
と言うと、冴子は
「なんか、朝から涙腺がヤバイわ。パパ、瑛子にご飯だしてあげてくれる?」
と、冴子はトイレに行ってしまった。勝は小声で
「ママ、本当に今日を楽しみにしてたんだ。順位なんか関係ない。とにかく瑛子が頑張る姿をみせてやってな?」
と言った。朝ごはんを食べると、神成緑と催馬楽学、栗花落先輩が一緒に迎えに来た。勝が玄関まで瑛子を見送ると迎えに来たみんなに
「いつも本当にありがとう、今日はみんなの分もお昼ご飯を用意しているから、お昼休みにこれたら私たちのところに来てね」
と、頭を下げた。そして
「瑛子、お父さんたちは開会式が始まる頃に行くからな」
と言った。瑛子は
「じゃあ、あとでね」
と言って家を出た。
家を出たところで、催馬楽学が
「瑛子、ハチマキ出して」
と言った。不思議に思いながらもハチマキを出すと
「一連の騒ぎがあって、ハチマキにいたずらをされると困るから、あらかじめ僕のハチマキと交換してたんだ。瑛子のハチマキは僕が持ってるから、返す」
と言った。瑛子が思わず栗花落先輩を見ると、先輩は
「催馬楽、勝手に交換するのはどうかと思うよ」
と言い、催馬楽学は
「瑛子は本当のことを言ったら、僕のハチマキがいたずらされるのは嫌だから、交換しないと言うだろう?」
と言った。確かにそうかも知れなかった。だが、昨日栗花落先輩とハチマキを交換してしまっている。瑛子は催馬楽学に
「実は昨日、他の女の子たちにハチマキの交換をせがまれて、困っている栗花落先輩に頼まれて、先輩と私、ハチマキを交換したんです。でもそれだと、栗花落先輩が持ってるハチマキは、催馬楽君のハチマキってことですか?」
と言うと、催馬楽学は
「そう言うことになるな。じゃあ、僕と瑛子がハチマキを交換すれば、瑛子は誰ともハチマキを交換していないことになる」
と言って、催馬楽学は瑛子の手からハチマキを奪うと、瑛子のハチマキを返した。栗花落先輩が静かに、ひくい声で
「催馬楽、俺のハチマキを返せ」
と言ったが、催馬楽学が
「絶対に嫌です。瑛子と交換するつもりでしょう? なら、断固拒否します。ちょうどいいじゃないですか、女子に迫られて困っているんでしょう?」
と言って笑った。神成緑が催馬楽学に向かって
「催馬楽、よくやった。俺はお前を見直した」
と、親指を立てて、サムズアップをした。
後日、学校内で催馬楽学と栗花落要ができている。と言う噂がまことしやかに囁かれたらしい。
ゲーム内のイベントだと、ヒロインが教科書を隠されてしまい、困っていると催馬楽学が声をかけてくる。そして、ヒロインが事情を説明していると、それを聞いていたクラスメイトが、この前クラスメイトのA子とBが、誰もいない教室で何かしていたのを見た。と、言い始め、調べたらその二人の机からヒロインの教科書が見つかるってイベントだった。
瑛子は、あの犯人役のモブキャラって私か! そして今日証言してくれた和木野美依さんってもう一人のモブのBでは? と、気づきなんとも言えない気持ちになった。
現実の美依さんはとても良い子だった。やはり、ゲームと現実は違うのだな……と、思った。
それにしても、ヒロインの『聞いていた話しと違う』と言う台詞が気になった。あれはどういうことなのだろう。そう思いながらその日は眠りについた。
ヒロインが『お金を盗んだ』と、瑛子を名指ししたため翌日から、更にみんなの過保護は進み、瑛子は一瞬でも一人にされることがなくなった。その後、ヒロインは瑛子に近づくことができなくなったせいか、瑛子に絡んでくることはなかった。
そしてあっという間に、体育祭前日となった。瑛子はこれで実行委員の仕事とおさらばできると思うと、ホッとした。
今日は栗花落先輩が家まで送ってくれると言うので、一緒に校内を歩いている時に瑛子は
「なんか、手がベタベタするので、手を洗っても良いですか?」
と、言って近くにあったお手洗いを指差した。栗花落先輩は
「どうぞ、行ってらっしゃい。なにがついたんだろうね? 甘いものでも触った?」
と、笑いながらトイレ前の壁に寄りかかった。瑛子はトイレに入ると、手を念入りに洗った。すると、外から栗花落先輩の
「君もしつこいね、嫌だって言っているのに」
と言う声がした。瑛子がトイレから出ると、ヒロインが立っており
「喪山? なんでいるの?」
と言った。瑛子は訳がわからず、栗花落先輩とヒロインの顔を見比べていると、栗花落先輩が何か思い付いたようにハッとして
「瑛子、ハチマキ、ハチマキ頂戴」
と言ったので、訳のわからないまま鞄からハチマキを取り出し手渡した。栗花落先輩はそれをしまうと今度は自分のハチマキを鞄から出して、瑛子の手を取ると手のひらに乗せて握らせた。瑛子が混乱していると栗花落先輩は
「こう言うことだから、君とハチマキの交換はできない」
と言った。ヒロインは瑛子を睨み付けると
「なんで、シナリオ道理行かないのよ!」
と言いながら去っていった。瑛子は呆気に取られた。
星春高校の体育祭はクラスでチーム分けがされる。一年から三年の、A組はブルー、B組は赤、C組は白で、D組は緑だ。栗花落先輩は瑛子と同じA組で同じカラーなのでハチマキを交換しても問題はない。同じカラーなら、好きな人とハチマキを交換するのが流行っていたので、ヒロインはそれをしたかったのだろう。
と言うか、たしか“晴れ彼”の栗花落先輩のイベントで、ハチマキを奪われて交換すると言うものがあった。ヒロインはそれを狙ったのだろう。でも、完全に失敗したわね。と、瑛子はそんなことを考えていた。すると、栗花落先輩が
「いや、なんか、最近やたらハチマキ交換して欲しい、って女の子から言われて困ってんだよね。ちょうどいいから、このまま交換しておいてくれると嬉しいんだけど」
と言って微笑んだ。瑛子はそう言うことならと承諾した。そして
「モテるって、いいことばかりかと思ってましたけど、大変なんですね。断って逆恨みとか恐いですしね」
と言った。栗花落先輩はハッとして
「あっ、ごめん。瑛子が、あの女の子から逆恨みとかされるかもしれない」
と言ったので、苦笑しながら
「大丈夫ですよ、丹家さんには前から嫌われてしまってますから」
と言うと、栗花落先輩が驚いて
「あの子が丹家さん!? 催馬楽から話は聞いてたけど、もっとこう、強そうな女性をイメージしてた。見た目じゃわからないもんだね」
と、苦笑した。瑛子は催馬楽君なに言ったんだろう? と、思いながら
「そうなんですよね、彼女あんなに可愛らしいのに。もったいない」
と答えた。おそらく最初から普通にしていれば、私みたいに、ハチマキを自然と交換してもらえたかもしれない。それにしても、と瑛子はヒロインが『シナリオ道理』と言ったことが気になった。
体育祭当日、朝早くから騒がしく会話している両親の声で目が覚めた。カーテンを開けると晴天だった。この天気なら決行間違いなしかな。と、思いながら服を着替え下に降りると、勝と冴子が慌ただしく弁当の準備をしている。瑛子が眠い目を擦りながら
「おはよう」
と言うと、冴子が
「あら、おはよう! 今日は頑張んないといけないんだから、朝ごはんたくさん食べなさい!」
と言った。瑛子は驚いて
「今日は、お母さんがご飯作ったの!?」
と、聞くと冴子はとびきりの笑顔で
「そうよ! お母さん頑張ったんだから!」
と言い、勝が
「ママは、お弁当作るのも手伝ってくれたんだぞ」
と、裁縫箱よりも大きな重箱を指差した。瑛子は
「だって、お母さん昨日も仕事遅かったのに、大丈夫?」
と訊くと、冴子は瑛子を抱き締めて
「なに言ってんの、この子は。そんな心配しないの。それに、お母さんだって瑛子の成長見たくて、今日の体育祭、楽しみにしてたのよ?」
と言った。瑛子は
「うん、お母さんありがとう」
と言うと、冴子は
「なんか、朝から涙腺がヤバイわ。パパ、瑛子にご飯だしてあげてくれる?」
と、冴子はトイレに行ってしまった。勝は小声で
「ママ、本当に今日を楽しみにしてたんだ。順位なんか関係ない。とにかく瑛子が頑張る姿をみせてやってな?」
と言った。朝ごはんを食べると、神成緑と催馬楽学、栗花落先輩が一緒に迎えに来た。勝が玄関まで瑛子を見送ると迎えに来たみんなに
「いつも本当にありがとう、今日はみんなの分もお昼ご飯を用意しているから、お昼休みにこれたら私たちのところに来てね」
と、頭を下げた。そして
「瑛子、お父さんたちは開会式が始まる頃に行くからな」
と言った。瑛子は
「じゃあ、あとでね」
と言って家を出た。
家を出たところで、催馬楽学が
「瑛子、ハチマキ出して」
と言った。不思議に思いながらもハチマキを出すと
「一連の騒ぎがあって、ハチマキにいたずらをされると困るから、あらかじめ僕のハチマキと交換してたんだ。瑛子のハチマキは僕が持ってるから、返す」
と言った。瑛子が思わず栗花落先輩を見ると、先輩は
「催馬楽、勝手に交換するのはどうかと思うよ」
と言い、催馬楽学は
「瑛子は本当のことを言ったら、僕のハチマキがいたずらされるのは嫌だから、交換しないと言うだろう?」
と言った。確かにそうかも知れなかった。だが、昨日栗花落先輩とハチマキを交換してしまっている。瑛子は催馬楽学に
「実は昨日、他の女の子たちにハチマキの交換をせがまれて、困っている栗花落先輩に頼まれて、先輩と私、ハチマキを交換したんです。でもそれだと、栗花落先輩が持ってるハチマキは、催馬楽君のハチマキってことですか?」
と言うと、催馬楽学は
「そう言うことになるな。じゃあ、僕と瑛子がハチマキを交換すれば、瑛子は誰ともハチマキを交換していないことになる」
と言って、催馬楽学は瑛子の手からハチマキを奪うと、瑛子のハチマキを返した。栗花落先輩が静かに、ひくい声で
「催馬楽、俺のハチマキを返せ」
と言ったが、催馬楽学が
「絶対に嫌です。瑛子と交換するつもりでしょう? なら、断固拒否します。ちょうどいいじゃないですか、女子に迫られて困っているんでしょう?」
と言って笑った。神成緑が催馬楽学に向かって
「催馬楽、よくやった。俺はお前を見直した」
と、親指を立てて、サムズアップをした。
後日、学校内で催馬楽学と栗花落要ができている。と言う噂がまことしやかに囁かれたらしい。
応援ありがとうございます!
33
お気に入りに追加
563
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる