上 下
3 / 3

おまけ その後の二人

しおりを挟む
 ルビーは自分が王妃としてしっかりしなけれればと気負っていた。まだ婚約者と言う立場だったが、できるだけ王太子殿下をサポートするために、側近には王太子殿下よりも早く情報を聞き、必要な書類を集めたり王太子殿下のスケジュールを把握して、王太子殿下の過ごしやすいようにすることに努めた。そんなルビーに側近のフランツが

「ディスケンス公爵令嬢、令嬢そのものの存在が王太子殿下にどれだけ影響を与えているか、あなたはご存じですか?」

 と言ったが、ルビーに心当たりはなかった。確かに以前の王太子殿下に比べれば表情が豊かになったような気がしたが、それは結婚を控えてそれなりに王太子殿下にも心境の変化があるのだと解釈していた。ルビーは

「フランツ様は大袈裟なのですね、王太子殿下は誰にも影響されることはありません」

 と、答えた。すると後ろから手が伸び腰に手を回され、思い切り抱きすくめられる。

「君はそんな風に思っていたのか」

 その声は紛れもなく王太子殿下のものだった。ルビーは慌ててフランツをフォローするつもりで

「王太子殿下、フランツは何か勘違いしたのです。わたくしは王太子殿下がわたくしごときに影響されるなど思ってはおりませんから、大丈夫です」

 と言った。王太子殿下はため息をつくと

「僕を人たらしめたのは君の存在だ。はじめて自分以外の人間を愛すること、それがこんなにも、辛くも素晴らしいことなのだと教えてくれたのは君だというのに、君はまるで自覚がないのだね」

 と苦笑した。ルビーはその言葉に酷く動揺し顔を真っ赤にして口をパクパクさせる。

「それに僕のことはジェシーと呼ぶように言ってあるはずだ、君はいつになったらそう呼んでくれるんだい? 僕は悲しいよ」

 と言った。ルビーは慌てて、ジェシーと呼ぼうとするがあまりにも恥ずかしくて言葉がでない。

「あの、えっと......ジェシー様......」

 と聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声で言う。王太子殿下は愉快そうに

「聞こえないよ、もう一度言って?」

 と言った。ルビーは意を決して言う。

「ジェシー様!」

 王太子殿下は満足そうに頷き、ルビーにキスをすると

「結婚するまでは君を無理やりに奪うようなことはしまいと思っていたのだが、限界だ。なぜそんなに君は愛らしいのだ、結婚したら部屋から一歩も出さないと思っていたが、婚約したのだから今からそれを実行しても問題あるまい」

 そう言ってルビーを抱きかかえた。ルビーは混乱し王太子殿下に

「王太子殿下、今日の執務が終わっておりません。今日の予定を読み上げますから!」

 と慌てる。王太子殿下は

「また王太子殿下と言ったね、これからはそう呼ぶたびにペナルティーを課すよ。ベッドの中でね」

 と言って微笑む。それを聞いたルビーは更に顔を真っ赤にして、あわあわと何事かを呟いている。そつのない完璧な公爵令嬢が、こんなにも恥ずかしがりやで可愛らしい存在なのだと、誰が気づくことができただろうか。
 だが、いずれジェサイアとルビーが一緒に過ごす間に、周囲にはこのルビーの愛らしさが周知されてしまうだろう。その前に自分のものにしてしまうのが得策だ、とジェサイアは意思を固める。
 側近のフランツに

「すまない、ルビーに用事があるから、今日の予定は全てキャンセルできないだろうか?」

 と訊く。フランツは満面の笑みで

「お任せください王太子殿下、調整は問題ありません。それより今日の予定など気にせず、ディスケンス公爵令嬢と親睦を深めることが最優先事項だと思います」

 と言った。ルビーはその言葉に

「フランツ様、何をおっしゃっているのです。わたくしのことを公務より優先するなどありえないことですわ」

 と言ったが、王太子殿下は

「何故? どう考えても君が優先事項だろう」

 と言った。フランツが後ろで大きく頷く。そこまで言い切られてルビーは何も返せず、王太子殿下のジャケットをぎゅっと握ると

「でも、その、だめですわ」

 と言う。その言葉に、その場にいたフランツさえルビーの可愛らしさに魅了されていた。ジェサイアは

「もう耐えられない、これから君を僕のものにするよ。婚前だが君の両親も反対はしないだろう。なんせ、婚約者なのだから。結婚式まで君を王宮に閉じ込めて、皆の前にその姿を出さないようにしよう。それもこれも君が可愛らしすぎるのが悪いんだよ」

 そう言うと、そのまま寝室へルビーを運んだ。ルビーは何とか抵抗するが抵抗むなしく、寝室で王太子殿下から信じられないほどの快楽を与えられ、グダグダになった。
 王太子殿下は結婚まで王宮から出さないと言ったが、それは言葉通り実行されることになった。
 意識のあるうちは、ひたすら王太子殿下から攻め続けられてとてもではないが部屋から出られない状態となったからだ。

「乱れる君もたまらない。愛してる」

 と、毎日ひたすら耳元で囁かれ、甘やかされルビーは幸福感につつまれた。

 結局結婚式まで、ルビーが王宮を出ることは一度もなかった。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢、推しを生かすために転生したようです

みゅー
恋愛
ヴィヴィアンは自分が転生していることに気づくと同時に、前世でもっとも最推しであった婚約者のカーランが死んでしまうことを思い出す。  自分を愛してはくれない、そんな王子でもヴィヴィアンにとって命をかけてでも助けたい相手だった。  それからヴィヴィアンの体を張り命懸でカーランを守る日々が始まった。

婚約破棄された悪役令嬢は辺境で幸せに暮らす~辺境領主となった元悪役令嬢の楽しい日々~

六角
恋愛
公爵令嬢のエリザベスは、婚約者である王太子レオンから突然の婚約破棄を言い渡される。理由は王太子が聖女と恋に落ちたからだという。エリザベスは自分が前世で読んだ乙女ゲームの悪役令嬢だと気づくが、もう遅かった。王太子から追放されたエリザベスは、自分の領地である辺境の地へと向かう。そこで彼女は自分の才能や趣味を生かして領民や家臣たちと共に楽しく暮らし始める。しかし、王太子や聖女が放った陰謀がエリザベスに迫ってきて……。

悪役令嬢は王子の溺愛を終わらせない~ヒロイン遭遇で婚約破棄されたくないので、彼と国外に脱出します~

可児 うさこ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。第二王子の婚約者として溺愛されて暮らしていたが、ヒロインが登場。第二王子はヒロインと幼なじみで、シナリオでは真っ先に攻略されてしまう。婚約破棄されて幸せを手放したくない私は、彼に言った。「ハネムーン(国外脱出)したいです」。私の願いなら何でも叶えてくれる彼は、すぐに手際を整えてくれた。幸せなハネムーンを楽しんでいると、ヒロインの影が追ってきて……※ハッピーエンドです※

王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない

エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい 最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。 でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。

乙女ゲームの断罪シーンの夢を見たのでとりあえず王子を平手打ちしたら夢じゃなかった

恋愛
気が付くとそこは知らないパーティー会場だった。 そこへ入場してきたのは"ビッターバター"王国の王子と、エスコートされた男爵令嬢。 ビッターバターという変な国名を聞いてここがゲームと同じ世界の夢だと気付く。 夢ならいいんじゃない?と王子の顔を平手打ちしようと思った令嬢のお話。  四話構成です。 ※ラテ令嬢の独り言がかなり多いです! お気に入り登録していただけると嬉しいです。 暇つぶしにでもなれば……! 思いつきと勢いで書いたものなので名前が適当&名無しなのでご了承下さい。 一度でもふっと笑ってもらえたら嬉しいです。

竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました

みゅー
恋愛
シーディーは竜帝の寵姫となったが、病気でその人生を終えた。 気づくと、同じ世界に生まれ変わっており、今度は幸せに暮らそうと竜帝に関わらないようにしたが、何故か生まれ変わったことが竜帝にばれ…… すごく短くて、切ない話が書きたくて書きました。

【完結】悪役令嬢に転生!国外追放後から始まる第二章のストーリー全く知りませんけど?

大福金
恋愛
悪役令嬢アリスティアに異世界転生してしまった!! 前世の記憶を思い出したのは、断罪も終わり国外追放され途中の森で捨てられた時!何で今?!知ってるゲームのストーリー全て終わってますけど? 第二章が始まってる?ストーリー知りませんが? 森に捨てられ前世の記憶を取り戻すがここが物語の第二章のストーリーの始まりらしい。。 2章の内容が全くわからない悪役令嬢が何故か攻略対象に溺愛され悩むお話。

乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました! でもそこはすでに断罪後の世界でした

ひなクラゲ
恋愛
 突然ですが私は転生者…  ここは乙女ゲームの世界  そして私は悪役令嬢でした…  出来ればこんな時に思い出したくなかった  だってここは全てが終わった世界…  悪役令嬢が断罪された後の世界なんですもの……

処理中です...