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するとアレクシはアドリエンヌの手を取り、瞳の奥を覗き込むように見つめた。
「アドリエンヌ、今まですまなかった。君がそう考えてしまうのも当然だろう。だが、君に力があろうがなかろうが関係ない。私はどうしようもなく君の内面に惹かれている」
そう聞いてアドリエンヌは首を振る。
「殿下、それはきっと私が離れていったからそう感じただけですわ」
「違う、違うよアドリエンヌ。私はこれから精一杯それを証明しようと思う」
そう言うと、アレクシはアドリエンヌの手の甲にキスし熱っぽく見つめた。
いつもの様子と違うと感じたアドリエンヌは少し戸惑いながらアレクシを見つめ返す。
「あ、あの、殿下?」
しばらくそうして見つめ合うとアドリエンヌは急に恥ずかしくなりうつむいてしまった。それを見てアレクシはアドリエンヌの手を握ると指を絡めた。
「さぁ、今日はもう遅い。これからについて話したいこともあるが明日にしよう。屋敷まで送る」
そう言って馬車までエスコートすると屋敷まで送ってくれた。
アドリエンヌは森の中でモンスターを浄化し過ぎたせいか疲れて馬車の中でうとうとしてしまい、気がつけば深い眠りに落ちていた。そうして、屋敷に着いたことすら気づかなかった。
目が覚めると自分の部屋のベッドの上におり、日付も変わっていた。長時間寝ていたからか若干体が痛いくらいだった。
アドリエンヌが起きたことに気づいたエミリアが、朝の支度を始める。
「おはようございます、お嬢様。よほどお疲れだったのですね。昨日戻られてからずっと休まれていたので、少し心配いたしました。朝食は軽めのものにいたしますね」
エミリアがカーテンを開けると、アドリエンヌは日の光の眩しさに目を細めた。そして、昨日は寝てしまいアレクシに挨拶もせず失礼なことをしてしまったと思いながら、エミリアに言った。
「ここまで運んでくれたドミニクにお礼を言わないといけないわね」
すると、エミリアは一瞬驚いた顔をしたあとクスクスと笑いながら言った。
「お嬢様、昨日ここまでお嬢様を運んでくださったのはドミニクではなく、王太子殿下ですよ」
それを聞いてアドリエンヌは血の気が引く思いがした。
「ということは、王太子殿下にここまで運ばせたということ?」
エミリアは満面の笑みで答える。
「はい。王太子殿下の希望でしたので!」
「そ、そうなの……」
エミリアが部屋を出ていくと、寝ていたリオンがうっすらと目を開けた。
「あの王子とても楽しそうにしていたぞ」
そう言って呑気に大きくあくびをした。
「今日は恥ずかしくて、どう顔を合わせたらいいか分かりませんわ」
そう言ってアドリエンヌは頭を抱えた。
「おはようございます。アドリエンヌ? なにか今日は疲れたような顔をしてますね」
学園でアドリエンヌを出迎えたアトラスは、開口一番心配そうにそう言った。
「大丈夫ですわ。ちょっと寝すぎたみたいですの」
「ならいいのですが」
そう答えながら、アトラスはアドリエンヌの鞄を手から奪う。
自分で荷物ぐらい持てるとずっと訴え続けているが、ここ最近アトラスはそれを無視してアドリエンヌの荷物をいつも持ってくれていた。
「アトラス、いつもありがとう」
アドリエンヌはそう言って微笑んだ。もう断るのは無理だろうと諦めたからだ。
講堂へ行くといつものように王宮の護衛に案内され、アレクシの隣に座った。
今日は昨日部屋へ運ばせたことについてなにか言われるだろうと構えていたが、予想に反してアレクシはいつもと変わらず挨拶をするだけだった。
出欠を取ると、すぐに課題の演習について話し合いをしこの日は終わった。
またアレクシに屋敷へ送ると言われないようにアドリエンヌはルシールたちをお茶に誘い、ララの店に行くことになった。
「そういったわけですので今日はこれで。ごきげんよう」
アドリエンヌがそう挨拶をすると、アレクシは微笑んだ。
「そうか、楽しんでくるといいよ」
ついて来ると言われたらどうしようかと思っていたが、流石に王太子殿下が街中のお店に行くわけにもいかないのだろう。
あっさり引き下がってくれて、アドリエンヌは内心ほっとした。
去って行くアレクシを見送っていると、その後ろからシャウラが追いかけていくのが見えた。
シャウラは振り返ると、いやらしい笑みを向けてから何事かアレクシに話しかけていた。
シャウラ、その調子で頑張ってちょうだい!!
アドリエンヌは心からエールを送ると、ルシールたちに向きなおって言った。
「さぁ、行きましょう」
そうしてララのお店で美味しい焼き菓子と親友たちとの楽しいひと時を過ごし、アドリエンヌはご機嫌で屋敷へ戻った。
すると、エントランスで帰りを待ち受けていたらしいエミリアが、アドリエンヌの姿を見ると慌てたように言った。
「お嬢様! やっとお戻りになられたのですね! 大変です、王太子殿下がお見えになられてます!!」
それを聞いて急いで客間へ向かうと、アレクシがソファに腰掛けお茶を飲んでくつろいでいた。
「殿下?!」
驚いてそう声をかけるアドリエンヌに、アレクシは楽しそうに微笑む。
「戻ったね。ずいぶん遅かったが、十分楽しんでこれたのか? それにしてもこのお茶はとても美味しい」
「そ、それはよろしゅうございました。それより何故こちらに?」
「昨日の結晶の件で話したいと思ってね。他の者がいては話しにくい内容だから、ここで待つことにしたんだ」
「あれはとりあえず解決したことではないのですか?」
「まだ解決していないだろう? とにかく君も座って」
そう言われ、アドリエンヌはアレクシの向かいに座ると、エミリアがアドリエンヌのお茶を運んでくるまで待ってから話し始めた。
「確かに解決していないかもしれませんが、私には話せないことなのではありませんか?」
するとアレクシは申し訳なさそうに言った。
「確かに、そう言ったのは私だったね。だが、昨日君が浄化する姿を見て私も考えをあらためた。君さえよければ手伝ってほしい」
「なにも教えていただけてない状況で、ただ手伝えと言われましても困ります」
そう言ってむくれるアドリエンヌを見て、アレクシは苦笑するとテーブルに頬杖をつきティーカップの中身を覗き込みなが話し始めた。
「この前話を聞いた時は、君を巻き込みたくないと思っていたから話さなかった。君は一人ででも物事を解決しようとするだろう? それに君にばかり負担をかけるわけにもいかない。できれば、君には普通の令嬢として過ごしていてほしかった」
そう言うと、顔を上げ背もたれに背を預けた。そして、アドリエンヌを見つめ悲しそうに微笑む。
「それが君の望みなのだろう?」
なぜそれを知っているのだろうと思い、戸惑いながら答える。
「そうですけれど……」
「君が望むことは叶えたかった。だが、そうも言っていられない。なんといっても君はこの国を救う力を持っているのだからね」
そんなことを言われアドリエンヌは戸惑った。
「それは一体どういうことですの?」
「それを話す前に、言っておかなければならないことがある。これを聞けば君はこれから完全に国の監視下におかれることになるのだが、君は本当にそれでもいいのか?」
しばらく考え、アドリエンヌは覚悟を決めた。
「構いませんわ。だってもうすでに私は王太子殿下の監視下にあるではありませんか」
そう答えて微笑む。
「そうか」
それだけ言うとアレクシは大きく息を吐き、覚悟を決めたように話し始めた。
「では、ことの始まりから話そう。これは今から三百年前のことだ。その最悪は突然訪れた。今のように巨大な瘴気結晶が森の至るところに発生し、大量のモンスターが城下や町へ押し寄せるようになった」
「それ以前はモンスターはおりませんでしたの? 瘴気結晶は?」
「瘴気結晶は昔からあった。君はもう知っているかもしれないから詳しくは説明しないが、あれは自然発生するものだ」
「そうですわね、邪気がたまって結晶化するものですものね」
「そうだ。だが、当時の国王はモンスターの存在は知っていても発生源はわかっていなかった。モンスターは自然発生するものと言われていたからね」
「ということは、その巨大な結晶が発生するようになってそれがわかったということなんですの?」
「そういうことだ。しかし、その時現れた結晶は君も先日西の渓谷で見た物と同じく段違いの大きさで、発生するモンスターの強さも何もかもが桁違いだった」
「なぜ突然そんな巨大結晶が……」
「当時の国王も血眼になってその発生源を探した。そしてやっとその最悪の存在を見つけることができたんだ。その発生源は途方もなく強い瘴気を放つ化け物だった」
「化け物? でもその化け物と瘴気結晶となんの関係が?」
「その化け物が、その結晶を至るところに産み出していたんだ」
アドリエンヌはとても衝撃を受けた。何年も暮らしてきたが、そんな化け物が外の森を徘徊しているなんて知りもしなかったからだ。
「アドリエンヌ、今まですまなかった。君がそう考えてしまうのも当然だろう。だが、君に力があろうがなかろうが関係ない。私はどうしようもなく君の内面に惹かれている」
そう聞いてアドリエンヌは首を振る。
「殿下、それはきっと私が離れていったからそう感じただけですわ」
「違う、違うよアドリエンヌ。私はこれから精一杯それを証明しようと思う」
そう言うと、アレクシはアドリエンヌの手の甲にキスし熱っぽく見つめた。
いつもの様子と違うと感じたアドリエンヌは少し戸惑いながらアレクシを見つめ返す。
「あ、あの、殿下?」
しばらくそうして見つめ合うとアドリエンヌは急に恥ずかしくなりうつむいてしまった。それを見てアレクシはアドリエンヌの手を握ると指を絡めた。
「さぁ、今日はもう遅い。これからについて話したいこともあるが明日にしよう。屋敷まで送る」
そう言って馬車までエスコートすると屋敷まで送ってくれた。
アドリエンヌは森の中でモンスターを浄化し過ぎたせいか疲れて馬車の中でうとうとしてしまい、気がつけば深い眠りに落ちていた。そうして、屋敷に着いたことすら気づかなかった。
目が覚めると自分の部屋のベッドの上におり、日付も変わっていた。長時間寝ていたからか若干体が痛いくらいだった。
アドリエンヌが起きたことに気づいたエミリアが、朝の支度を始める。
「おはようございます、お嬢様。よほどお疲れだったのですね。昨日戻られてからずっと休まれていたので、少し心配いたしました。朝食は軽めのものにいたしますね」
エミリアがカーテンを開けると、アドリエンヌは日の光の眩しさに目を細めた。そして、昨日は寝てしまいアレクシに挨拶もせず失礼なことをしてしまったと思いながら、エミリアに言った。
「ここまで運んでくれたドミニクにお礼を言わないといけないわね」
すると、エミリアは一瞬驚いた顔をしたあとクスクスと笑いながら言った。
「お嬢様、昨日ここまでお嬢様を運んでくださったのはドミニクではなく、王太子殿下ですよ」
それを聞いてアドリエンヌは血の気が引く思いがした。
「ということは、王太子殿下にここまで運ばせたということ?」
エミリアは満面の笑みで答える。
「はい。王太子殿下の希望でしたので!」
「そ、そうなの……」
エミリアが部屋を出ていくと、寝ていたリオンがうっすらと目を開けた。
「あの王子とても楽しそうにしていたぞ」
そう言って呑気に大きくあくびをした。
「今日は恥ずかしくて、どう顔を合わせたらいいか分かりませんわ」
そう言ってアドリエンヌは頭を抱えた。
「おはようございます。アドリエンヌ? なにか今日は疲れたような顔をしてますね」
学園でアドリエンヌを出迎えたアトラスは、開口一番心配そうにそう言った。
「大丈夫ですわ。ちょっと寝すぎたみたいですの」
「ならいいのですが」
そう答えながら、アトラスはアドリエンヌの鞄を手から奪う。
自分で荷物ぐらい持てるとずっと訴え続けているが、ここ最近アトラスはそれを無視してアドリエンヌの荷物をいつも持ってくれていた。
「アトラス、いつもありがとう」
アドリエンヌはそう言って微笑んだ。もう断るのは無理だろうと諦めたからだ。
講堂へ行くといつものように王宮の護衛に案内され、アレクシの隣に座った。
今日は昨日部屋へ運ばせたことについてなにか言われるだろうと構えていたが、予想に反してアレクシはいつもと変わらず挨拶をするだけだった。
出欠を取ると、すぐに課題の演習について話し合いをしこの日は終わった。
またアレクシに屋敷へ送ると言われないようにアドリエンヌはルシールたちをお茶に誘い、ララの店に行くことになった。
「そういったわけですので今日はこれで。ごきげんよう」
アドリエンヌがそう挨拶をすると、アレクシは微笑んだ。
「そうか、楽しんでくるといいよ」
ついて来ると言われたらどうしようかと思っていたが、流石に王太子殿下が街中のお店に行くわけにもいかないのだろう。
あっさり引き下がってくれて、アドリエンヌは内心ほっとした。
去って行くアレクシを見送っていると、その後ろからシャウラが追いかけていくのが見えた。
シャウラは振り返ると、いやらしい笑みを向けてから何事かアレクシに話しかけていた。
シャウラ、その調子で頑張ってちょうだい!!
アドリエンヌは心からエールを送ると、ルシールたちに向きなおって言った。
「さぁ、行きましょう」
そうしてララのお店で美味しい焼き菓子と親友たちとの楽しいひと時を過ごし、アドリエンヌはご機嫌で屋敷へ戻った。
すると、エントランスで帰りを待ち受けていたらしいエミリアが、アドリエンヌの姿を見ると慌てたように言った。
「お嬢様! やっとお戻りになられたのですね! 大変です、王太子殿下がお見えになられてます!!」
それを聞いて急いで客間へ向かうと、アレクシがソファに腰掛けお茶を飲んでくつろいでいた。
「殿下?!」
驚いてそう声をかけるアドリエンヌに、アレクシは楽しそうに微笑む。
「戻ったね。ずいぶん遅かったが、十分楽しんでこれたのか? それにしてもこのお茶はとても美味しい」
「そ、それはよろしゅうございました。それより何故こちらに?」
「昨日の結晶の件で話したいと思ってね。他の者がいては話しにくい内容だから、ここで待つことにしたんだ」
「あれはとりあえず解決したことではないのですか?」
「まだ解決していないだろう? とにかく君も座って」
そう言われ、アドリエンヌはアレクシの向かいに座ると、エミリアがアドリエンヌのお茶を運んでくるまで待ってから話し始めた。
「確かに解決していないかもしれませんが、私には話せないことなのではありませんか?」
するとアレクシは申し訳なさそうに言った。
「確かに、そう言ったのは私だったね。だが、昨日君が浄化する姿を見て私も考えをあらためた。君さえよければ手伝ってほしい」
「なにも教えていただけてない状況で、ただ手伝えと言われましても困ります」
そう言ってむくれるアドリエンヌを見て、アレクシは苦笑するとテーブルに頬杖をつきティーカップの中身を覗き込みなが話し始めた。
「この前話を聞いた時は、君を巻き込みたくないと思っていたから話さなかった。君は一人ででも物事を解決しようとするだろう? それに君にばかり負担をかけるわけにもいかない。できれば、君には普通の令嬢として過ごしていてほしかった」
そう言うと、顔を上げ背もたれに背を預けた。そして、アドリエンヌを見つめ悲しそうに微笑む。
「それが君の望みなのだろう?」
なぜそれを知っているのだろうと思い、戸惑いながら答える。
「そうですけれど……」
「君が望むことは叶えたかった。だが、そうも言っていられない。なんといっても君はこの国を救う力を持っているのだからね」
そんなことを言われアドリエンヌは戸惑った。
「それは一体どういうことですの?」
「それを話す前に、言っておかなければならないことがある。これを聞けば君はこれから完全に国の監視下におかれることになるのだが、君は本当にそれでもいいのか?」
しばらく考え、アドリエンヌは覚悟を決めた。
「構いませんわ。だってもうすでに私は王太子殿下の監視下にあるではありませんか」
そう答えて微笑む。
「そうか」
それだけ言うとアレクシは大きく息を吐き、覚悟を決めたように話し始めた。
「では、ことの始まりから話そう。これは今から三百年前のことだ。その最悪は突然訪れた。今のように巨大な瘴気結晶が森の至るところに発生し、大量のモンスターが城下や町へ押し寄せるようになった」
「それ以前はモンスターはおりませんでしたの? 瘴気結晶は?」
「瘴気結晶は昔からあった。君はもう知っているかもしれないから詳しくは説明しないが、あれは自然発生するものだ」
「そうですわね、邪気がたまって結晶化するものですものね」
「そうだ。だが、当時の国王はモンスターの存在は知っていても発生源はわかっていなかった。モンスターは自然発生するものと言われていたからね」
「ということは、その巨大な結晶が発生するようになってそれがわかったということなんですの?」
「そういうことだ。しかし、その時現れた結晶は君も先日西の渓谷で見た物と同じく段違いの大きさで、発生するモンスターの強さも何もかもが桁違いだった」
「なぜ突然そんな巨大結晶が……」
「当時の国王も血眼になってその発生源を探した。そしてやっとその最悪の存在を見つけることができたんだ。その発生源は途方もなく強い瘴気を放つ化け物だった」
「化け物? でもその化け物と瘴気結晶となんの関係が?」
「その化け物が、その結晶を至るところに産み出していたんだ」
アドリエンヌはとても衝撃を受けた。何年も暮らしてきたが、そんな化け物が外の森を徘徊しているなんて知りもしなかったからだ。
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