逆行転生、断罪され婚約を破棄された落ちこぼれ令嬢は、神の子となり逆行転生したので今度は王太子殿下とは婚約解消して自由に生きたいと思います

みゅー

文字の大きさ
上 下
16 / 46

15

しおりを挟む
 そうして鍵を渡され嬉しく思いながら書斎へ向かう途中、運悪くシャウラに出くわす。

「あら、アドリエンヌ様ごきげんよう」

 シャウラはそう言うと、リオンを見て微笑む。

「その小さな子猫ちゃんと契約できて良かったですわね。そんなに小さくても、一応精霊ですものねぇ」

 なんて感じの悪い言い方!

 そう思いながらアドリエンヌはなんとか作り笑顔を返す。

「あら、ありがとうございます。シャウラ様も早く精霊と契約できるとよろしいですわね」

 それを聞いたシャウラはアドリエンヌに嫌みを言われたと勘違いしたのか、一瞬鋭い目付きでアドリエンヌを睨んだが、突然にやりと笑うと今度は憐憫の眼差しを向けてきて言った。

「そうですわねぇ、わたくしならその子より成体の精霊と契約したいですわ。それにしても、その小さな子猫ちゃん。ふふ、アドリエンヌ様にはとてもお似合いですわぁ。これからはドミニクにお願いしなくても、その子猫ちゃんに魔法を使うようにお願いすればいよろしいですわね」

 リオンを小馬鹿にしたようなその言い方に怒りをおぼえたが、なんとかそれを抑え気持ちを落ち着けると答える。

「シャウラ様、先日からなにか誤解なさっているみたいですけれど、わたくしはドミニクが居なくとも、もちろんリオンに頼らなくとも魔法は使えますわ。それに……」

「やだぁ、うふふ!」

 シャウラはアドリエンヌが話すのを遮るように声を出して笑い出すと言った。

わたくしの前では強がらなくてよろしいんですのよ? お友達だもの、二人の秘密ですわ。あら、そういえばわたくしアレクシ殿下とお約束していたんですの。これで失礼しますわね、んふふふ」

 そうして自分の言いたいことだけ言うと、その場を去っていった。

「人の話しは最後までちゃんと聞きなさいよ!」

 アドリエンヌがそう呟くと、リオンが言った。

「なんだ、あの小娘は、気に入らんな」

「リオン、起きてましたの?」

「最初から起きていた。あいつからは嫌な匂いがプンプンして、とても寝ていられるものではなかったしな。あいつには気を付けた方がいい、あまり近づくな。だが、いつかギャフンといわせてやれ!」

「もちろんですわ」

 そう答えて気を取り直すと書斎へ向かった。

 書斎へ入ると背の高い本棚の前の床に何冊もの本が雑に平積みされている。本棚に残されている数冊の本も適当に並べられているように見えた。

 そして書斎全体しばらく掃除もされていないようで床には誇りがたまっており、アドリエンヌはまずはドアと窓を開け放つと本棚の前に立った。

「お前ならこんなもの一瞬で綺麗に並べられるだろうな」

 そう言うと、リオンはアドリエンヌの肩から横にあったテーブルへと飛び移った。

「そうですわね、でもいつもそうやって魔法を使っていると、思わず考えただけでそれを実行してしまうことがありますの。だから、他の人がやるようにゆっくりやりますわ」

 それを聞いてリオンは大きく頷く。

「確かにな、そのせいで私はこの姿にされたのだから」

 そう言われアドリエンヌは苦笑いをして誤魔化した。

 そして、本棚の整理にもどる。まずは本棚のすべての本の内容を魔法で見ると、すべて読みやすいよう並び替えることにした。

 アドリエンヌが本棚に向かって指を振ると、本が一斉に空に浮かび縦横無尽にアドリエンヌの周囲を飛び交い、そしてあるべき位置に綺麗に収まっていく。

「それにしても、ずいぶんまだるっこいやり方だな」

 様子を見ていたリオンは、面倒臭いと言いたげな顔でそう言った。

「でも、このやり方の方がわたくしには合っていますの」

 そう返すと、今度は床に平積みされた本の整理に取りかかる。

 先ほどと同じように、すべて本の内容を魔法で見ると綺麗に並び替え、次から次へ整理して行く。

 その時だった、開け放たれた書斎のドアがノックされた。誰も来ないだろうと油断していたアドリエンヌは、驚いてすべての本を空中停止させた。

 こんなところに生徒がいるはずはないので、きっとニヒェルか他の教師だろう。そう思いながら振り返ると、そこにはアレクシが立っていた。

「王太子殿下?!」

 アドリエンヌは魔法を自在に操れることを隠すため、慌ててすべての本を床にもどすとすと、アレクシの方へ向き直り膝を折った。

「やあ、アドリエンヌ。今誰と話していたんだ?」

 会話を聞かれていたことに動揺しながら笑顔で答える。

「独り言ですわ」

 するとアレクシは書斎に入り、床に置いてある本を拾いながら言った。

「いや、確かに君の声ではない声がした。もしかして、その精霊と?」

 そう言ってレオンを見た。

「い、いえ違います!」

「そうだろうね、それだけ幼齢の精霊が会話をできるはずはないのだから」

 そう言ってアドリエンヌの手を取ると、拾った本をアドリエンヌの手のひらに乗せた。

 アドリエンヌは渡された本を胸に抱くと、目を泳がせ無言で必死に言い訳を考えた。だが、アレクシは返事を待たずに話を続けた。

「それにさっきの魔法、君があれだけ魔法を操れるなんて本当に驚いたよ。君は学園に通う必要がなさそうだが?」

「そ、そんなことありません! 魔法が使えず失敗して本を床に落としてしまいましたし」

「ふーん。そう」

 そう答えたが、アレクシは信じていないような顔で言った。

「君がそういうことにしたいなら、そういうことにしよう。ところで、一人でこの書斎を片付けるのは大変だろう。手伝おうか?」

 は? なに言ってますのこの王子?!

 アドリエンヌは心の中でそう叫ぶと、微笑んだ。

「まさか、王太子殿下にそんなことをしていただくわけにはいきませんわ。それに、これからシャウラ様とお約束があると聞いております。どうぞ、わたくしのことはお気になさらず行ってあげてくださいませ」

 するとアレクシは無表情でこたえる。

「約束? そんなものをした記憶はない」

「そうなんですの? ではわたくしの聞き違いですわ。申し訳ございません」

「いや、マチアスの娘がそう言ったのか? あの娘にも困ったものだ」

 マチアスとはマチアス・ド・ブロン子爵のことでシャウラの父親のことだ。アドリエンヌはアレクシがシャウラのことを名で呼ばないことに驚いていた。

 ペアでチームも組んでいるのに、なんて他人行儀なのかしら。二人をくっ付けるのは前途多難ですわ……。

 そんなことを考えていると、アレクシが不思議そうに訊く。

「アドリエンヌどうした?」

「いえ、なんでもありませんわ」

「そうか、ならいい。ところで私たちのことで少し話がある。私たちは、その、婚約者なのに最近一緒にいる時間が少ないと思わないか?」

 は?! 本当に、この王子ときたらさっきからなに言ってますの?!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

逆行令嬢は聖女を辞退します

仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。 死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって? 聖女なんてお断りです!

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました

さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。 私との約束なんかなかったかのように… それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。 そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね… 分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。

桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。 戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。 『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。 ※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。 時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。 一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。 番外編の方が本編よりも長いです。 気がついたら10万文字を超えていました。 随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!

見知らぬ子息に婚約破棄してくれと言われ、腹の立つ言葉を投げつけられましたが、どうやら必要ない我慢をしてしまうようです

珠宮さくら
恋愛
両親のいいとこ取りをした出来の良い兄を持ったジェンシーナ・ペデルセン。そんな兄に似ずとも、母親の家系に似ていれば、それだけでもだいぶ恵まれたことになったのだが、残念ながらジェンシーナは似ることができなかった。 だからといって家族は、それでジェンシーナを蔑ろにすることはなかったが、比べたがる人はどこにでもいるようだ。 それだけでなく、ジェンシーナは何気に厄介な人間に巻き込まれてしまうが、我慢する必要もないことに気づくのが、いつも遅いようで……。

今更「結婚しよう」と言われましても…10年以上会っていない人の顔は覚えていません。

ゆずこしょう
恋愛
「5年で帰ってくるから待っていて欲しい。」 書き置きだけを残していなくなった婚約者のニコラウス・イグナ。 今までも何度かいなくなることがあり、今回もその延長だと思っていたが、 5年経っても帰ってくることはなかった。 そして、10年後… 「結婚しよう!」と帰ってきたニコラウスに…

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

処理中です...