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エメの報告『前途は多難です』

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 学園に入学して三ヶ月以上たった。僕はその間アレクシ殿下につきまとう者を徹底的に調べていた。

 だが、その中でもアドリエンヌについては例外だった。

 なぜなら彼女については身元もしっかりしているし、婚約者だからこそアレクシ殿下に気に入られようと付きまとっているのは、誰が見ても明らかだったからだ。

 ところがある日突然、彼女はアレクシ殿下につきまとうことを止めた。

 あんなにもアレクシ殿下にご執心だったのに、アドリエンヌに一体なにがあったのだろう? しかも、どういうつもりなのか無位の者と行動を共にするようになった。

 それは何かしらの思惑があるのかもしれない。そう思った僕はあらためてアドリエンヌも観察することにした。

 そうして調べ始めると、アドリエンヌは今までと違い自由に行動しているように見えた。それにあれほど執着していたアレクシ殿下に対して、まったくと言っていいほど興味がないようだ。

 いや、あえてそう見せているのかもしれない。そう思いながら観察を続けた。

 そんな中、逆にアレクシ殿下の方がアドリエンヌを気にしている様子を見せるようになった。しかも、横にいないのに時々間違えてアドリエンヌの名を呼ぶことすらあった。

 これに僕は驚くばかりだった。

 そして、今まで誰がなにをしようと我関せずだったアレクシ殿下が、気づくといつもアドリエンヌを目で追うようになったのだ。

 これはなんとかした方がよいかもしれない。

 僕はそう考えると最初の課題が終了したところで、アドリエンヌの真意を調べるために彼女に近づくことにした。

 僕の方から接触を図ると、アドリエンヌたちはなんの疑いも持たずに僕たちを受け入れてくれた。

 そうして行動を共にする中で、僕自身がアドリエンヌという人物についてだいぶ誤解していたことがわかった。

 一般人と一緒に行動する目的は、使用人のように使う目的があるのではないかと思っていたのだ。ところがそれは特訓を始めてすぐに偏見だったと気づく。

 なぜなら、アトラスがルシールを注意する度に、アドリエンヌはまるで自分が注意されたように注目を自分へ逸らしてルシールを庇ったからだ。その上でアトラスに対してのフォローもしっかり入れる。

 そんなアドリエンヌの行動から、僕は学ぶことが多かった。そして、流石王太子殿下の婚約者だと内心感心しきりであった。

 それに、アドリエンヌはとても実力があるにも関わらずそれをひけらかすこともない。それは一緒に行動しているアトラスも気づいているようだった。

 というか、アトラスはどうもアドリエンヌを意識しているように見えた。

 これは早急に対処しなければならないかもしれない。

 そう思った僕はアドリエンヌにアレクシ殿下についてどう思っているのか、やんわり質問してみる。

 すると、今のアドリエンヌは本当にアレクシ殿下に対する興味がないようだった。

 僕は余計なお世話かもしれないと思いつつ、これらのことを報告書にまとめてアレクシ殿下に渡すことにした。

 僕は報告書を書きながら呟く。

「アレクシ殿下がアドリエンヌに心を寄せているのなら前途は多難です」

 と。

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