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結婚式 それぞれの朝
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ジェサイアやカール、オスカーやオニキスの影での働きがあり、サイデューム王国と帝国は同盟結ぶことができた。今後は国交が盛んになり、貿易や協力体制などで度々お互いの国を行ったり来たりすることになるだろう。
国王は大層喜び、褒美としてジェサイアに国を上げての盛大な結婚式を上げると約束してくれた。
結婚式までの間、ジェサイアとルビーは離れで生活することになった。ジェサイアは自分の執務室をそちらに移動すると、ルビーはその執務室の横にある部屋を私室として割り当てられた。とはいえその部屋はジェサイアとも兼用なので、ふたりの寝室といったほうがよいぐらいであった。
ルビーは日中、ジェサイアの執務室で補助的仕事をこなしたり、その合間に結婚式で着るドレスのデザインや装飾品のデザインの打ち合わせ、そして肌のコンディションを整えるためのマッサージをしたりと、忙しく過ごしていた。
日中も時々、ジェサイアに求められることがあったが、夜は夜でもっと激しく求められ一日中ぐったりしていることもあった。
「パイロープと話をつける間、君とほとんど一緒にいられなかったのだから、これぐらいは当然だ。それに、少し油断すると君は私がどれだけ君を愛しているのか忘れてしまうようだから、その体に覚えさせておかないとね」
ルビーはこんなにも自分が溺愛されていることを、幸せに思い目まぐるしく忙しい日々も楽しく過ごしていた。
そしてあっという間に結婚式の当日となった。
控室でメイドたちに手伝われながらドレスに袖を通すと、化粧をして王太子妃用のティアラを頭に載せた。
ルビーはその重みを感じながら、真っ直ぐに鏡に映る自分を見つめた。これからは、この重みに責任を感じながら、しっかり務めを果たさなければ、と心に誓う。
周囲のメイドたちは、ティアラを載せたルビーを見て次々に賛辞を口にした。
「本当に美しいですわ」
「王妃殿下も大変お美しかったとお聞きしておりますけれど、ルビー様も負けていませんわ!」
「本当ですわね、こんなにも美しいんですもの。王太子殿下が溺愛するのも頷けますわね~」
アルメリアは『王太子殿下が溺愛』していると言われ、思わず顔を赤くした。
なぜなら昨晩のことを思い出してしまったからだ。
「愛している。明日やっと君は僕のものになる」
ジェサイアがそう呟いた。ルビーはそれに慌てて答える。
「私はもう、身も心もジェシー様のものですわ」
すると、ジェサイアは困ったような顔をした。
「だが、形としてそれを証明するものがないだろう? 極端な話だが、突然君が国を捨ててどこかへ消えてしまったとしたら、今の私では公に君を追いかけることもできない。どこか他所の国へ行かれたら、手も足も出ないだろう」
「に、逃げるだなんてそんなこと……」
「いや、実際君は何度か僕から逃げ出そうとしただろう? 身を引こうとしたのだろうが、あれは相当堪えたよ。だが、君は明日から僕の妃になる。今後どんなに逃げようとも、絶対に逃してはあげられないから覚悟してくれ」
ルビーは、そのあとの激しい睦ごとも思い出すと、顔から火が出そうだった。
ガーネットは出掛ける支度をしているとき、前夜のことを思いだす。なかなか寝付けずにいたガーネットに気がついたオスカーが、少しの間話し相手をしてくれたのだ。
「ガーネット、寝れないのか?」
「えぇ、なんだか自分のことのように緊張してしまって」
「そうか。そういえば、私も自分たちの結婚式の前夜とても緊張して眠れなかった。何と言っても、ずっと恋い焦がれていた相手と、やっと結ばれる日がきたのだからな。完璧に式をこなさなければと思ってとても緊張したし、君と結婚できると思うととても興奮したものだ」
そう言いながら、オスカーはガーネットにホットミルクを手渡した。
「オスカーが緊張? いつも冷静沈着なオスカーからは想像できませんわ。式の当日も、緊張した様子はありませんでしたし。やっぱり私ばっかりオスカーが好きなのだって思いましたもの」
「昔から君への感情は表情に出さないようにしていたからね、癖になっているのだろう。だが、今ではそれを後悔している。君に愛情を示していれば、君を勘違いさせて悲しませることもなかったのに」
ガーネットは苦笑して返した。
「でも、今はオスカーが私にメロメロなのが、わかってますもの。それで十分ですわ」
そう言うとホットミルクを口にした。
「熱っ!」
「すまない、少し温めすぎたようだ。あまり台所に立つことがないからな。やはり、不慣れなことはしてはいけないね」
ガーネットは驚いてまじまじとオスカーを見つめる。
「オスカー、貴方、これ自分で入れましたの?」
「そうだ。最愛の妻になら何でもしてあげたいというものだ。どれ、そんなことより見せてごらん」
オスカーは、ガーネットの手からホットミルクの入ったコップを取り上げると、サイドテーブルに置きガーネットの唇に触れ口内を覗く。
「少し赤くなっているね、だが舐めておけば治る」
そう言うと唇を重ねた。
早朝準備を整えると、サファイアはメイドの前で何度もぐるりと一回転してみせた。
「本当にこの格好で大丈夫かしら? ルビー様や王太子殿下に失礼はないかしら?」
「はい、奥様。問題ありませんわ。それに、とてもよくお似合いです」
そう言うメイドの後ろからカールが声をかける。
「大丈夫、よく似合っている」
そう言うと、カールはサファイアにキスをして抱き上げた。
「カール、恥ずかしいですわ!」
「なぜ? 可愛いのだから仕方がないだろう」
すると、周囲のメイドたちはクスクスと笑っていたが、メイド長が無表情で一歩前に進み出ると言った。
「旦那様、奥様を溺愛してらっしゃるのはわかりますが、大切な日に奥様の肌が露出している場所に跡をつけるのはお止めください。化粧で隠すのに苦労いたしました」
すると、カールはがっかりした顔をしてサファイアの首筋を見た。
「わざとつけたのに、見えなくしてしまったのか……」
サファイアは言われたことにやっと気づき、顔を赤くすると首筋を押さえた。
「カール、恥ずかしいですわ。以前もお母様に、跡について指摘されたことがありますのよ? あのときも私恥ずかしくて」
カールは優しくサファイアの唇を指でなぞりながら見つめる。
「人妻だろうと、なんだろうと、不埒な輩が君に目をつけかねないのだから仕方のないことなんだよ」
そこでメイド長が横から口を挟む。
「旦那様は少々やりすぎです。それから夜も少しお控えくださらないと、奥様が御体を壊してしまいます」
「確かにそうかもしれないな、気をつけよう。さて、遅れてはいけないからね、もうそろそろ出なければ」
サファイアはメイド長にそんなことを言われ、顔を見ることができずにそのままカールの胸に顔を埋めた。
カールはそんなサファイアを優しく抱きかかえたまま、馬車へと乗り込んだ。
「なぁ、俺たち本当にパートナーとして結婚式に参加してもいいのか?」
結婚式会場である宮廷の庭で、席につくとオニキスは不安そうにハリーにそう訊いた。
「もちろん、招待状には僕たちふたり、パートナーとしての参加してほしいと書かれているんだから大丈夫さ」
「でも、こんなに公の場でそうやって公言したら、お前もう絶対に嫁さんもらえなくなるかもしれないんだぞ? 本当にいいのかよ」
今だにそんなことを言うオニキスに、ハリーは機嫌を悪くしたのか少しむっとした顔をした。
「君は僕が嫁をもらってもかまわないと言うのか?」
オニキスは俯くと、しばらく沈黙しそのあと呟くように言った。
「絶対に嫌だ」
「じゃあ二度と口にするな。僕はこうやって公の場で、堂々と君とパートナーだと宣言できるのを楽しみにしていたんだ。がっかりさせないでほしい」
オニキスはハリーのその台詞にハッとして、顔を上げハリーを見つめる。
「ごめん、俺すごい酷いこと言ったな」
「いや、わかってくれればいい」
ハリーはオニキスの頭を引き寄せると、自分の頭にくっつけた。
「僕の隣に君がいないなんて、考えられないよ」
そう言うと軽くキスをした。
「俺も、お前以外が隣りにいるなんて考えられねぇ」
そうしてギュッとハリーの胸に抱きつく。しばらくそうしていたが、オニキスが口を開いた。
「なぁ」
「なんだい? オニキス」
「もしも、俺が嫁さんもらうことになってたら、お前どうした?」
ハリーはそう言われて、改めて考える。もしも、あの父親が強引にオニキスの婚約を決めてしまったなら……。
「君をどこかへ隠しただろうね。そして、君の気持ちが僕を向いていなければ、そのまま閉じ込めたかもしれない」
オニキスは、さっと体を離すとハリーの顔を見た。
「嘘つけ! お前がそんなことするわけない。それに、おま、お前のことずっとその、あ、あ、愛してたから、俺がお前を、拒むわけないだろ!」
オニキスはそう言うと耳まで赤くして、恥ずかしそうにそっぽを向いた。ハリーはそんなオニキスの頭にキスをすると、優しく抱き寄せた。
「そうか、ありがとう。僕も君を愛してるよ」
そのとき、結婚式の開始を告げる花火が上がった。
花火に引き続き、開始のベルが鳴ると宮廷の大きな扉が開きジェサイアとルビーが出てきた。管弦楽団が静かな音楽を奏でる中、全員が緊張した面持ちでまっていると二人は前へ歩み出る。
そうして、二人はゆっくりと立会人の前に行くと、婚姻の書類をお互いに読み上げサインした。
立会人は声高らかに告げる。
「この契約書を持って、ここに二人の婚姻の成立とする」
「異議なし!」
来賓客全員がそう叫ぶと、ジェサイアは我慢できないとばかりにルビーを抱き上げた。
「この国の将来が永遠に平和で素晴らしいものにすることを、そして、私の妻ルビーを生涯この国と共に守り抜くことをこの場で誓おう!」
そしてルビーに向き直る。
「ルビー、僕のルビー。僕と結婚してくれてありがとう。これからはお互いに支え合って生きていこう。君のつらいとき、悲しいとき、嬉しいとき、そのすべてを分かち合おう。愛してる」
「ジェシー様、私も心から愛しております。一生お側にいさせてくださいませ」
そう言って、しばらく見つめ合うとキスをした。そして抱きしめるとジェサイアはルビーの耳元で呟く。
「もう一生君を離さない」
その場の全員が歓声を上げ、拍手を送った。
こうして、それぞれ全員がずっと死がふたりを分つまで、幸せに暮らしていくのでした。ルビーはこのあと、すぐに子供を身ごもり、次々に男の子を三人出産。サファイアは立て続けに女の子を二人出産し、ガーネットは女の子と男の子の双子を出産した。
三人の子どもたちは幼馴染として仲良く成長し、この国を支え合って行くことになるのてすが、それはまた別のお話。
国王は大層喜び、褒美としてジェサイアに国を上げての盛大な結婚式を上げると約束してくれた。
結婚式までの間、ジェサイアとルビーは離れで生活することになった。ジェサイアは自分の執務室をそちらに移動すると、ルビーはその執務室の横にある部屋を私室として割り当てられた。とはいえその部屋はジェサイアとも兼用なので、ふたりの寝室といったほうがよいぐらいであった。
ルビーは日中、ジェサイアの執務室で補助的仕事をこなしたり、その合間に結婚式で着るドレスのデザインや装飾品のデザインの打ち合わせ、そして肌のコンディションを整えるためのマッサージをしたりと、忙しく過ごしていた。
日中も時々、ジェサイアに求められることがあったが、夜は夜でもっと激しく求められ一日中ぐったりしていることもあった。
「パイロープと話をつける間、君とほとんど一緒にいられなかったのだから、これぐらいは当然だ。それに、少し油断すると君は私がどれだけ君を愛しているのか忘れてしまうようだから、その体に覚えさせておかないとね」
ルビーはこんなにも自分が溺愛されていることを、幸せに思い目まぐるしく忙しい日々も楽しく過ごしていた。
そしてあっという間に結婚式の当日となった。
控室でメイドたちに手伝われながらドレスに袖を通すと、化粧をして王太子妃用のティアラを頭に載せた。
ルビーはその重みを感じながら、真っ直ぐに鏡に映る自分を見つめた。これからは、この重みに責任を感じながら、しっかり務めを果たさなければ、と心に誓う。
周囲のメイドたちは、ティアラを載せたルビーを見て次々に賛辞を口にした。
「本当に美しいですわ」
「王妃殿下も大変お美しかったとお聞きしておりますけれど、ルビー様も負けていませんわ!」
「本当ですわね、こんなにも美しいんですもの。王太子殿下が溺愛するのも頷けますわね~」
アルメリアは『王太子殿下が溺愛』していると言われ、思わず顔を赤くした。
なぜなら昨晩のことを思い出してしまったからだ。
「愛している。明日やっと君は僕のものになる」
ジェサイアがそう呟いた。ルビーはそれに慌てて答える。
「私はもう、身も心もジェシー様のものですわ」
すると、ジェサイアは困ったような顔をした。
「だが、形としてそれを証明するものがないだろう? 極端な話だが、突然君が国を捨ててどこかへ消えてしまったとしたら、今の私では公に君を追いかけることもできない。どこか他所の国へ行かれたら、手も足も出ないだろう」
「に、逃げるだなんてそんなこと……」
「いや、実際君は何度か僕から逃げ出そうとしただろう? 身を引こうとしたのだろうが、あれは相当堪えたよ。だが、君は明日から僕の妃になる。今後どんなに逃げようとも、絶対に逃してはあげられないから覚悟してくれ」
ルビーは、そのあとの激しい睦ごとも思い出すと、顔から火が出そうだった。
ガーネットは出掛ける支度をしているとき、前夜のことを思いだす。なかなか寝付けずにいたガーネットに気がついたオスカーが、少しの間話し相手をしてくれたのだ。
「ガーネット、寝れないのか?」
「えぇ、なんだか自分のことのように緊張してしまって」
「そうか。そういえば、私も自分たちの結婚式の前夜とても緊張して眠れなかった。何と言っても、ずっと恋い焦がれていた相手と、やっと結ばれる日がきたのだからな。完璧に式をこなさなければと思ってとても緊張したし、君と結婚できると思うととても興奮したものだ」
そう言いながら、オスカーはガーネットにホットミルクを手渡した。
「オスカーが緊張? いつも冷静沈着なオスカーからは想像できませんわ。式の当日も、緊張した様子はありませんでしたし。やっぱり私ばっかりオスカーが好きなのだって思いましたもの」
「昔から君への感情は表情に出さないようにしていたからね、癖になっているのだろう。だが、今ではそれを後悔している。君に愛情を示していれば、君を勘違いさせて悲しませることもなかったのに」
ガーネットは苦笑して返した。
「でも、今はオスカーが私にメロメロなのが、わかってますもの。それで十分ですわ」
そう言うとホットミルクを口にした。
「熱っ!」
「すまない、少し温めすぎたようだ。あまり台所に立つことがないからな。やはり、不慣れなことはしてはいけないね」
ガーネットは驚いてまじまじとオスカーを見つめる。
「オスカー、貴方、これ自分で入れましたの?」
「そうだ。最愛の妻になら何でもしてあげたいというものだ。どれ、そんなことより見せてごらん」
オスカーは、ガーネットの手からホットミルクの入ったコップを取り上げると、サイドテーブルに置きガーネットの唇に触れ口内を覗く。
「少し赤くなっているね、だが舐めておけば治る」
そう言うと唇を重ねた。
早朝準備を整えると、サファイアはメイドの前で何度もぐるりと一回転してみせた。
「本当にこの格好で大丈夫かしら? ルビー様や王太子殿下に失礼はないかしら?」
「はい、奥様。問題ありませんわ。それに、とてもよくお似合いです」
そう言うメイドの後ろからカールが声をかける。
「大丈夫、よく似合っている」
そう言うと、カールはサファイアにキスをして抱き上げた。
「カール、恥ずかしいですわ!」
「なぜ? 可愛いのだから仕方がないだろう」
すると、周囲のメイドたちはクスクスと笑っていたが、メイド長が無表情で一歩前に進み出ると言った。
「旦那様、奥様を溺愛してらっしゃるのはわかりますが、大切な日に奥様の肌が露出している場所に跡をつけるのはお止めください。化粧で隠すのに苦労いたしました」
すると、カールはがっかりした顔をしてサファイアの首筋を見た。
「わざとつけたのに、見えなくしてしまったのか……」
サファイアは言われたことにやっと気づき、顔を赤くすると首筋を押さえた。
「カール、恥ずかしいですわ。以前もお母様に、跡について指摘されたことがありますのよ? あのときも私恥ずかしくて」
カールは優しくサファイアの唇を指でなぞりながら見つめる。
「人妻だろうと、なんだろうと、不埒な輩が君に目をつけかねないのだから仕方のないことなんだよ」
そこでメイド長が横から口を挟む。
「旦那様は少々やりすぎです。それから夜も少しお控えくださらないと、奥様が御体を壊してしまいます」
「確かにそうかもしれないな、気をつけよう。さて、遅れてはいけないからね、もうそろそろ出なければ」
サファイアはメイド長にそんなことを言われ、顔を見ることができずにそのままカールの胸に顔を埋めた。
カールはそんなサファイアを優しく抱きかかえたまま、馬車へと乗り込んだ。
「なぁ、俺たち本当にパートナーとして結婚式に参加してもいいのか?」
結婚式会場である宮廷の庭で、席につくとオニキスは不安そうにハリーにそう訊いた。
「もちろん、招待状には僕たちふたり、パートナーとしての参加してほしいと書かれているんだから大丈夫さ」
「でも、こんなに公の場でそうやって公言したら、お前もう絶対に嫁さんもらえなくなるかもしれないんだぞ? 本当にいいのかよ」
今だにそんなことを言うオニキスに、ハリーは機嫌を悪くしたのか少しむっとした顔をした。
「君は僕が嫁をもらってもかまわないと言うのか?」
オニキスは俯くと、しばらく沈黙しそのあと呟くように言った。
「絶対に嫌だ」
「じゃあ二度と口にするな。僕はこうやって公の場で、堂々と君とパートナーだと宣言できるのを楽しみにしていたんだ。がっかりさせないでほしい」
オニキスはハリーのその台詞にハッとして、顔を上げハリーを見つめる。
「ごめん、俺すごい酷いこと言ったな」
「いや、わかってくれればいい」
ハリーはオニキスの頭を引き寄せると、自分の頭にくっつけた。
「僕の隣に君がいないなんて、考えられないよ」
そう言うと軽くキスをした。
「俺も、お前以外が隣りにいるなんて考えられねぇ」
そうしてギュッとハリーの胸に抱きつく。しばらくそうしていたが、オニキスが口を開いた。
「なぁ」
「なんだい? オニキス」
「もしも、俺が嫁さんもらうことになってたら、お前どうした?」
ハリーはそう言われて、改めて考える。もしも、あの父親が強引にオニキスの婚約を決めてしまったなら……。
「君をどこかへ隠しただろうね。そして、君の気持ちが僕を向いていなければ、そのまま閉じ込めたかもしれない」
オニキスは、さっと体を離すとハリーの顔を見た。
「嘘つけ! お前がそんなことするわけない。それに、おま、お前のことずっとその、あ、あ、愛してたから、俺がお前を、拒むわけないだろ!」
オニキスはそう言うと耳まで赤くして、恥ずかしそうにそっぽを向いた。ハリーはそんなオニキスの頭にキスをすると、優しく抱き寄せた。
「そうか、ありがとう。僕も君を愛してるよ」
そのとき、結婚式の開始を告げる花火が上がった。
花火に引き続き、開始のベルが鳴ると宮廷の大きな扉が開きジェサイアとルビーが出てきた。管弦楽団が静かな音楽を奏でる中、全員が緊張した面持ちでまっていると二人は前へ歩み出る。
そうして、二人はゆっくりと立会人の前に行くと、婚姻の書類をお互いに読み上げサインした。
立会人は声高らかに告げる。
「この契約書を持って、ここに二人の婚姻の成立とする」
「異議なし!」
来賓客全員がそう叫ぶと、ジェサイアは我慢できないとばかりにルビーを抱き上げた。
「この国の将来が永遠に平和で素晴らしいものにすることを、そして、私の妻ルビーを生涯この国と共に守り抜くことをこの場で誓おう!」
そしてルビーに向き直る。
「ルビー、僕のルビー。僕と結婚してくれてありがとう。これからはお互いに支え合って生きていこう。君のつらいとき、悲しいとき、嬉しいとき、そのすべてを分かち合おう。愛してる」
「ジェシー様、私も心から愛しております。一生お側にいさせてくださいませ」
そう言って、しばらく見つめ合うとキスをした。そして抱きしめるとジェサイアはルビーの耳元で呟く。
「もう一生君を離さない」
その場の全員が歓声を上げ、拍手を送った。
こうして、それぞれ全員がずっと死がふたりを分つまで、幸せに暮らしていくのでした。ルビーはこのあと、すぐに子供を身ごもり、次々に男の子を三人出産。サファイアは立て続けに女の子を二人出産し、ガーネットは女の子と男の子の双子を出産した。
三人の子どもたちは幼馴染として仲良く成長し、この国を支え合って行くことになるのてすが、それはまた別のお話。
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