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第百八話 どうしてよいかわからない
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内容は、国同士のいさかいが生じたさいは即刻取り消すことなど、当たり障りのないことが書かれており、特別に目を引く要項はなかった。
アルメリアは、大事をとってスペンサー伯爵にも内容を確認してもらう。
「問題ないでしょう」
そう言うと、スペンサー伯爵はアウルスを見て頷く。
「では、こちらに署名をお願い致します」
アルメリアがそれに署名すると、アウルスが手を差し出したので握手した。
「これから長いお付き合い、よろしくお願い申し上げます」
「こちらこそ、よろしくお願い致しますわ」
緊張とそれ以外の様々な感情により、アルメリアは鼓動が早くなるのを感じながら、なんとか平静を装って微笑み返すと手を離そうとした。だが、アウルスはその手を握りしめたまま離そうとせず、アルメリアの目をじっと見つめた。
どうしたのかとアルメリアは困惑しながらアウルスの顔を見ると、アウルスは口を開いた。
「クンシラン公爵令嬢、一つお願いがございます」
アルメリアは一体なにを言われるのかと、緊張しながら答える。
「はい、なんでしょうか」
「私はしばらくロベリア国にとどまり、ルリユ海域を行商する船や、その乗組員をこの目で確認せねばなりません。できれば、クンシラン公爵令嬢に直接ご案内いただければ幸いです」
アルメリア自身、ツルス港に行かなければならないと思っていたので、案内すること事態に問題はない。だがツルス港はヒフラのような田舎町ではなく、貿易の要でもある。そんな港を皇帝に案内して回ってもよいものなのか、少々疑問に思った。そこで、おそらくアウルスの正体を知っているだろうムスカリに視線をやり、その判断を委ねた。
ムスカリは明らかに不機嫌そうな表情をしていたが、アルメリアと目が合うと、微笑み言った。
「問題ないだろう、案内してやるといい。特使どの、しばらく君には私のアルメリアを預けよう」
アウルスはムスカリに体を向き直すと膝を折り、頭を下げた。
「お許しくださり、有り難う存じ上げます。ではクンシラン公爵令嬢は今後、責任を持って私がお預かりいたしますので、お任せください」
「では、もう用はないのだな。下がっていい」
「はい、ですがもう一つだけ、皇帝陛下よりお預かりしているものがございます」
そう言うと颯爽と立ち上がり、アルメリアの手を取る。
「皇帝よりクンシラン公爵令嬢に、プレゼントがあるそうです。今からお渡ししたいのですが……」
アウルスはそのままムスカリに向き直り無言で見つめた。ムスカリはそれに不機嫌そうな顔で無言で頷き許可を出した。
「では、御膳を失礼致します」
アウルスはそう言って胸に手を当てお辞儀すると、アルメリアの手を引いて歩き始めた。
アルメリアは慌てて振り向くとムスカリに向かって、歩きながら頭を下げる。
「殿下、申し訳ございません。失礼致します」
ムスカリは少し悲しげに微笑んでいた。
執務室を出て周囲に誰もいなくなると、アルメリアは責めるようにアウルスに言った。
「殿下に対して今の態度はよろしくありませんわ。大変失礼です。それになぜ陛下が、こちらにいらせられているのですか? しかも、陛下が私とツルスにご一緒なさるなんて……」
矢継ぎ早に捲し立てられ、アウルスは立ち止まると振り返った。
「陛下と呼ぶのはうまくないな、それにせっかく君はわたしをアズルと読んでくれていたのに、どうしたと言うんだ?」
確かにそうだが、今はどうしても距離をとりたい気持ちが大きく、素直になれずにいた。だが、この気持ちをアウルスにぶつけるのは、お門違いだろう。
「申し訳ありません、あまりにも突然いらせられたので、驚いてしまって……。これから気を付けますわね」
そう言って微笑んだ。アウルスはしばらくアルメリアを見つめ、その返答に納得していないような顔をしたが、それ以上問い詰めることを諦めたようだった。
「そうか、わかった」
アルメリアが押し黙ると、アウルスはゆっくり優しく言った。
「なんの連絡もなしに、急に君の目の前に現れ、君を驚かせてしまったことは謝る。だが、今回のルリユ海域通行許可を発行するのは、ルリユアイランドが帝国領になってはじめてのことだ。君のことは信用しているが、それとは別に現地調査が必要だった。だが、私が直接動いていると周囲にばれてしまうのは困るしね。ロベリアに来るにはこの方法しかなかった」
「それは……わかってますわ」
そうではなく、なぜ今になって目の前に現れたのだと言いたかった。アルメリアはやっとアウルスを忘れはじめたところだったのだ。だが、そんな気持ちを知られるわけにはいかない。なんとか気持ちを落ち着かせると質問する。
「でも、アズルが帝国を離れてしまって大丈夫なんですの?」
すると、アウルスは微笑む。
「心配してくれているのか? 特に有事がなければ、有能な影武者が判断のいらない通常の執務ぐらいこなしてくれる。心配はいらない」
影武者がいるなど思ってもみなかったアルメリアは、改めてアウルスは雲の上の人物なのだと実感した。
「影武者がいるだなんて驚きですわ。それにしても影武者を用意しなければならないなんて、命の危険がありますの?」
「多少その心配もあるが……、ほとんどは私がこうしてあちらこちらに出かけるためにいるようなものだ。心配する必要はないよ」
そう言うと、アウルスはアルメリアを見つめ髪に触れるとそれを耳にかけた。そして、アルメリアの耳元を見てふっと笑った。
「良かった、そのピアスを着けてくれていたんだね」
アルメリアは恥ずかしくなり、思わずそれを手で隠し目をそらした。
「あの、色味といい、形といい、とても気に入ってますの。だから着けてただけですわ」
アルメリアはつっけんどんな言い方になってしまったと、少し後悔しながらアウルスを見る。すると、アウルスはとても嬉しそうに、愛おしそうにアルメリアを見つめていた。
「とても気に入ってくれたんだね……、それは良かった」
そう言ってピアスを隠すアルメリアの手をつかみ、指先にキスをする。
「アルメリア、会いたかった」
あまりに熱っぽく見つめてくるので、アルメリアは恥ずかしくなりどうしてよいかわからずに俯く。そんなアルメリアの頬をアウルスは優しく撫でた。心臓が激しく鼓動し、おまりにも恥ずかしくなりいたたまれなくなったアルメリアは、話題を変えることにした。
「あ、あの、ところで、突然殿下の御膳を失礼するほど渡したい物とは、一体なんですの?」
「そうだったね。それなんだが、君の屋敷に運ばせている。先ほどムスカリ殿下から許可はいただいていることだし、屋敷へ見に行こう」
そう言ってそのまま馬車へエスコートした。
アルメリアは、大事をとってスペンサー伯爵にも内容を確認してもらう。
「問題ないでしょう」
そう言うと、スペンサー伯爵はアウルスを見て頷く。
「では、こちらに署名をお願い致します」
アルメリアがそれに署名すると、アウルスが手を差し出したので握手した。
「これから長いお付き合い、よろしくお願い申し上げます」
「こちらこそ、よろしくお願い致しますわ」
緊張とそれ以外の様々な感情により、アルメリアは鼓動が早くなるのを感じながら、なんとか平静を装って微笑み返すと手を離そうとした。だが、アウルスはその手を握りしめたまま離そうとせず、アルメリアの目をじっと見つめた。
どうしたのかとアルメリアは困惑しながらアウルスの顔を見ると、アウルスは口を開いた。
「クンシラン公爵令嬢、一つお願いがございます」
アルメリアは一体なにを言われるのかと、緊張しながら答える。
「はい、なんでしょうか」
「私はしばらくロベリア国にとどまり、ルリユ海域を行商する船や、その乗組員をこの目で確認せねばなりません。できれば、クンシラン公爵令嬢に直接ご案内いただければ幸いです」
アルメリア自身、ツルス港に行かなければならないと思っていたので、案内すること事態に問題はない。だがツルス港はヒフラのような田舎町ではなく、貿易の要でもある。そんな港を皇帝に案内して回ってもよいものなのか、少々疑問に思った。そこで、おそらくアウルスの正体を知っているだろうムスカリに視線をやり、その判断を委ねた。
ムスカリは明らかに不機嫌そうな表情をしていたが、アルメリアと目が合うと、微笑み言った。
「問題ないだろう、案内してやるといい。特使どの、しばらく君には私のアルメリアを預けよう」
アウルスはムスカリに体を向き直すと膝を折り、頭を下げた。
「お許しくださり、有り難う存じ上げます。ではクンシラン公爵令嬢は今後、責任を持って私がお預かりいたしますので、お任せください」
「では、もう用はないのだな。下がっていい」
「はい、ですがもう一つだけ、皇帝陛下よりお預かりしているものがございます」
そう言うと颯爽と立ち上がり、アルメリアの手を取る。
「皇帝よりクンシラン公爵令嬢に、プレゼントがあるそうです。今からお渡ししたいのですが……」
アウルスはそのままムスカリに向き直り無言で見つめた。ムスカリはそれに不機嫌そうな顔で無言で頷き許可を出した。
「では、御膳を失礼致します」
アウルスはそう言って胸に手を当てお辞儀すると、アルメリアの手を引いて歩き始めた。
アルメリアは慌てて振り向くとムスカリに向かって、歩きながら頭を下げる。
「殿下、申し訳ございません。失礼致します」
ムスカリは少し悲しげに微笑んでいた。
執務室を出て周囲に誰もいなくなると、アルメリアは責めるようにアウルスに言った。
「殿下に対して今の態度はよろしくありませんわ。大変失礼です。それになぜ陛下が、こちらにいらせられているのですか? しかも、陛下が私とツルスにご一緒なさるなんて……」
矢継ぎ早に捲し立てられ、アウルスは立ち止まると振り返った。
「陛下と呼ぶのはうまくないな、それにせっかく君はわたしをアズルと読んでくれていたのに、どうしたと言うんだ?」
確かにそうだが、今はどうしても距離をとりたい気持ちが大きく、素直になれずにいた。だが、この気持ちをアウルスにぶつけるのは、お門違いだろう。
「申し訳ありません、あまりにも突然いらせられたので、驚いてしまって……。これから気を付けますわね」
そう言って微笑んだ。アウルスはしばらくアルメリアを見つめ、その返答に納得していないような顔をしたが、それ以上問い詰めることを諦めたようだった。
「そうか、わかった」
アルメリアが押し黙ると、アウルスはゆっくり優しく言った。
「なんの連絡もなしに、急に君の目の前に現れ、君を驚かせてしまったことは謝る。だが、今回のルリユ海域通行許可を発行するのは、ルリユアイランドが帝国領になってはじめてのことだ。君のことは信用しているが、それとは別に現地調査が必要だった。だが、私が直接動いていると周囲にばれてしまうのは困るしね。ロベリアに来るにはこの方法しかなかった」
「それは……わかってますわ」
そうではなく、なぜ今になって目の前に現れたのだと言いたかった。アルメリアはやっとアウルスを忘れはじめたところだったのだ。だが、そんな気持ちを知られるわけにはいかない。なんとか気持ちを落ち着かせると質問する。
「でも、アズルが帝国を離れてしまって大丈夫なんですの?」
すると、アウルスは微笑む。
「心配してくれているのか? 特に有事がなければ、有能な影武者が判断のいらない通常の執務ぐらいこなしてくれる。心配はいらない」
影武者がいるなど思ってもみなかったアルメリアは、改めてアウルスは雲の上の人物なのだと実感した。
「影武者がいるだなんて驚きですわ。それにしても影武者を用意しなければならないなんて、命の危険がありますの?」
「多少その心配もあるが……、ほとんどは私がこうしてあちらこちらに出かけるためにいるようなものだ。心配する必要はないよ」
そう言うと、アウルスはアルメリアを見つめ髪に触れるとそれを耳にかけた。そして、アルメリアの耳元を見てふっと笑った。
「良かった、そのピアスを着けてくれていたんだね」
アルメリアは恥ずかしくなり、思わずそれを手で隠し目をそらした。
「あの、色味といい、形といい、とても気に入ってますの。だから着けてただけですわ」
アルメリアはつっけんどんな言い方になってしまったと、少し後悔しながらアウルスを見る。すると、アウルスはとても嬉しそうに、愛おしそうにアルメリアを見つめていた。
「とても気に入ってくれたんだね……、それは良かった」
そう言ってピアスを隠すアルメリアの手をつかみ、指先にキスをする。
「アルメリア、会いたかった」
あまりに熱っぽく見つめてくるので、アルメリアは恥ずかしくなりどうしてよいかわからずに俯く。そんなアルメリアの頬をアウルスは優しく撫でた。心臓が激しく鼓動し、おまりにも恥ずかしくなりいたたまれなくなったアルメリアは、話題を変えることにした。
「あ、あの、ところで、突然殿下の御膳を失礼するほど渡したい物とは、一体なんですの?」
「そうだったね。それなんだが、君の屋敷に運ばせている。先ほどムスカリ殿下から許可はいただいていることだし、屋敷へ見に行こう」
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