悪役令嬢は救国したいだけなのに、いつの間にか攻略対象と皇帝に溺愛されてました

みゅー

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第八十八話 作戦会議

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 二人でソファに並んで腰掛けると、アウルスはアルメリアの手を両手で包み込んだ。アルメリアは恋人が自分を甘やかしているような、そんな甘い雰囲気に恥ずかしくなりアウルスの顔が見れずに俯いた。
 すると、アウルスはそんなアルメリアの顔を覗き込み、優しく問いかける。

「領民たちとはどんな話を?」

 アルメリアは、なんとか気を取り直しアウルスの顔を見ると口を開いた。

「アズルと先日話した内容とかわりありませんでしたわ。それと、物資の受け渡し場所の決め方がわかりました」

 そう言って、アウルスの手を離すと、テーブルの上に地図を取り出し広げた。地図には三カ所印がつけてある。

「まず、確認したいのですけれど、わたくしが領民から聞いた受け渡し場所はこの三カ所でしたわ。アズルが把握している場所と変わりないでしょうか」

 アルメリアがその三カ所を順に指差すと、アウルスはその指先を目で追い、一か所ずつ確認する。

「確かに、変わりないようだ」

 確認を取ると、アルメリアは、その都度山賊から次の受け取り場所の指定があることを話した。アウルスはそれを聞くと微笑んだ。

「なるほど、わかった。その情報を入手できるなら、我々は計画を立てて実行に移せば良いだけのようだな」

「はい。それともう一つ面白い情報がありましたわ。本当かどうかはわかりませんけれど、山賊たちは仲間割れをしているみたいなんですの。イーデンという兵士がこちらに協力を申し出たそうですわ」

 そして、イーデンから渡されたというメモを取り出すとアウルスに手渡した。アウルスは驚いたような顔をしてそのメモを受け取ると、それを見つめじっとなにかを考えているようだった。アルメリアがその様子を見て静かに返事を待っていると、しばらくしてアウルスは口を開いた。

「私の知っている限りだと、その兵士はとても真面目な兵士だったと記憶している。脱走したときに、奴らのことを書いた資料には目を通したからそれは確かだろう。それに、奴らは人質を抱えている。そんなに時間をかけたくないはずだ。それなのに罠を仕掛けるメリットは今のところないように思うが、わからないな」

 おおよそで、アルメリアの考えたことと一致していた。

「こちらの重要な情報を流さずに、協力だけさせようと思ってますの」

「そのときの行動によって真偽を確認するということだな?」

「はい。イーデンは危険を犯してまで接触してきました。そして今、その名前も本名だとアズルによって確認ができましたから、少しは信頼できると思います」

 アウルスはアルメリアの手を握る手に少しだけ力を入れ微笑む。

「君がそう言うなら、そうしよう。ところで、作戦について君の考えは?」

 アウルスは皇帝である。本来ならアルメリアに作戦についての意見を伺う必要などない。それなのに、アルメリアの意見を聞いて、尊重してくれようとしていることに内心驚きながら答える。

「山賊はわたくしの顔を知りません。ですからわたくしが囮になろうかと思ってますの。うちの農園長のエドガーの娘と偽って、彼らの前に出れば絶対に興味を持つと思いますわ」

 それを聞くとアウルスは苦悶の表情を浮かべ、拒絶の意思を示した。

「その作戦は容認できかねる。君を危険に晒すなどありえないことだ」

「ですが、山賊を油断させ注意を引くには子どもであり、事情を知っているわたくしが適任ですわ」

 アウルスは苦虫を噛み潰したような顔をした。

「確かにそうだが、君になにかあったらどうする」

 思わずにっこり微笑むとアルメリアは言った。

「あら、アズルがわたくしを守ってくださるでしょう?」

 今までアウルスにはペースを乱され続けていたので、アルメリアはほんの意趣返しでそう言った。するとアウルスは一瞬驚いた顔をしたが、すぐにいつものように笑みを浮かべる。

「わかった、そういうことならば君を必ず守ると誓おう」

 そう言うと、アルメリアの頬に手を伸ばし顔を近づけた。キスをされると思ったアルメリアは、思わずギュッと目を閉じて身構えた。だが、アウルスはアルメリアの耳の後ろに唇が触れるか触れないかぐらいのキスをすると、頬を指の裏側で優しく撫でただけだった。

 アルメリアは、一瞬キョトンとした顔でアウルスを見つめたが、自分がキスをされると勘違いしたことや、今されたことについて恥ずかしくてたまらなくなり、顔を赤くするとアウルスから慌てて目をそらして言った。

「では、あの、その作戦でよろしくお願いいたします!」

 アウルスは、そんなアルメリアの様子を楽しそうに見つめ微笑んだ。

「君が私を頼ってくれるなんて、こんなに嬉しいことはないな。ではそういうことで、あとは細かい打ち合わせをしよう」

 アルメリアは咳払いをすると気を取り直して、地図に視線を落とした。受け渡しに使われている三ケ所とも、背後が山であったり、森であったりと山賊の逃げやすい場所だった。

「この三ケ所は、包囲するには難しい場所かもしれませんわね」

「確かにそうだが……」

 地図の四方を見つめていたアウルスが、ある一ヵ所で目を止めた。

「この地図はどこから入手したものかわかるか?」

「えぇ。この地図はわたくしが作ったものですわ」

 素早くアルメリアの顔を見るとアウルスは驚いた顔をした。

「君がこの地図を?」

「はい、昔の地図があったのですがざっくりとしか書かれておりませんでしたし、間違いが多くて。領地内を見回ったときに、あれば便利だろうと思って作りましたの。変化があれば都度書き換えるようにしてますから、建物や地形的には実際とほぼ変わりないと思いますわ」

 その説明を受けてアウルスは感心したように、もう一度地図に視線を落とす。

「まさか、こんな精密な地図を君が書いたとは。最初に地図を見せてもらったときに、君の領地には素晴らしい測量士がいるものだと思ったが。まさか君が書いたとは思いもしなかった。君は良い意味で本当にこちらの予想を裏切るな」

「とんでもないことでございます。時間をかけてゆっくり書けば誰にでもできることですわ」

 アウルスは、そう言うアルメリアをじっと見つめると口を開いた。

「君の素晴らしいところは、他の貴族と違って謙遜するところだろうな。献身的で前に出すぎない、だが自分の意見を持っていてしっかり発言できる。そういった女性はなかなかいない」

 そう言って微笑んだ。アルメリアはなんと答えて良いかわからず、恥ずかしくて俯いた。アウルスはそんなアルメリアを愛おしそうにじっと見つめていたが、思い出したかのように話をもどした。

「では、この地図のこの場所、ここに川があるのは確かなのだな?」

「はい、確かですわ。数年前に川の支流でがけ崩れがあって、川の流れが変わったんですの。それで以前はなかった場所に川が流れるようになったのですわ。アズルは以前の地図を見たことがありますの?」

「一応ロベリア国の大雑把な地図は持っている。だが、その地図は数年前のものなのだろう、この川は記載されていない。奴らが持っている地図も帝国のものと同じだろうから、この川は記載されていないだろうな」

 アルメリアは、はっとしてアウルスの顔をみつめる。そんなアルメリアの顔をアウルスは見つめ返し微笑む。

「そうだ、気づいたか? 奴らはこの川の存在を知らずにここを受け渡し場所にしている」

 そう言って、印のついたある一か所を指差した。 

「では上手く川の方へ彼らを誘導すれば、簡単に捕らえることができますわ!」
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