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第五十六話 アルメリアの本音
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「お久しぶりです。城下へは昨日戻ってきました。本当は帰ってきてすぐにこちらに顔を出したかったのですが、書類仕事が残っていたもので、今日の午前中はそれを片付けていて、挨拶が遅れて申し訳ありません」
そう言うと、スパルタカスに気づき一礼する。
「城内統括も、こちらにお見えになっていたのですね。ご一緒しても?」
「もちろんです。閣下、よろしいですか?」
断る理由はない、アルメリアは笑顔で頷く。
「もちろんですわ。みなさんとお茶をするのは本当に久しぶりですわね。こうしてまたお茶をご一緒できるのは嬉しいことですわ」
リアムが苦笑しながら答える。
「騎士団の内部調査が大々的に行われましたからね、城下に残っていた貴族は、教会派の貴族ばかりではないでしょうか。とは言っても城内が手薄になってもいけませんから、彼らも必要な存在だったのですが」
「そうなんですのね……。あら、ごめんなさい案内もしていませんでしたわ。どうぞお座りになって」
リアムは一礼するとスパルタカスの隣に座った。お茶が運ばれるのを待ち、アルメリアは口を開く。
「訊いてもよろしいかしら?」
「何です? 答えれることならなんでも」
手に持っていたティーカップをソーサーに戻し、リアムはアルメリアに微笑みかける。
「騎士団の内部調査とはなんですの?」
「以前アルメリアから指摘され、パウエル領で問題になった件で参謀、まぁ、私の父なんですが。その参謀がこの件を重くみて、王太子殿下にことの顛末を詳しく報告したようです。そして、王太子殿下から『もっと深く掘り下げて調査せよ』と、各領土の統括にお達しがあったのです」
「そのようなことがありましたのね」
午前中ムスカリとアドニスが言っていたのはこの事だったのかと、アルメリアは納得した。
すると、リアムは自嘲気味に笑いアルメリアを見つめる。アルメリアは首をかしげた。
「なにかありましたの?」
「いえ、少し思い出したことがあるのです。参謀は最初に私からその件の報告を受けたとき、大層君を気に入ったようです。そして、私は叱責されました『お前はまるで見る目がない。殿下はもちろん、スペンサーの小倅すら彼女の聡明さにいち早く気づいていたというのに、お前ときたら……』とね」
と、苦笑した。
「リアムの働きあってのことでしたのに、私の手柄のようになってしまって申し訳ないですわ」
「いいえ、アルメリアの今までの行いを相対的に見ての判断だったのでしょう。それに確かに私が初めてアルメリアにお会いしたときの、あの態度は最悪なものでしたしね。君が寛大な心の持ち主だから良かったようなものの、通常許されないことです」
それを受けて、アルメリアはいたずらっぽく笑うと言った。
「確かに。私もあのときは、立場上あの対応が一番妥当だと思ったからそうしただけですもの。あのときのことを思い出せば、気分が悪くなったりすることもありますわ。でも、あの後こうしてずっと気にかけて頂いていますし、もう忘れますわ。そのかわり、この次はありませんわよ?」
アルメリアはそう言って、やんわりあのときのリアムの迂闊な言動を窘めた。リアムは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑顔になると頭を下げた。
「はい、仰せの通り以後気をつけます。本当に君には敵わない」
そして、アルメリアはすぐにスパルタカスを見ると言った。
「スパルタカス、貴男もですわ。最初に私の屋敷に訪ねてきたときの言動は酷かったですわ、反省してくださいませ」
スパルタカスは急に自分に矛先を向けられ、動揺したがすぐに頭を下げた。
「はい、もちろんです。とても反省しています」
「よろしい」
アルメリアは満足そうに頷いてみせた。そして三人で顔を見合わせるとスパルタカスは困ったように苦笑いをし、リアムも苦笑しながら頭を掻いた。アルメリアはそんな二人を見て口元を隠してくすくすと笑った。
「ごめんなさい、こんな話はもうおしまいにしましょう。ところで、騎士団の調査をしたなら、今後しばらくはまた忙しくなるのではなくて?」
「えぇ、でも現地での調査は終わりましたから、しばらくは城下で過ごせそうです。場合によっては現地へも行かなければなりませんが」
そこでスパルタカスが口を開く。
「そう言えば、本日行われた会食にて殿下が、閣下の意見を取り入れ騎士団の組織編成を行うと仰っていました。それに伴い、人員配置の見直しや兵士の査定、訓練方法などの変更も行われますから、騎士団の方も少し慌ただしくなるようです」
アルメリアは殿下の行動力に驚く。
「今日の午前中に少し話をしただけですのに、もうそのようなお話になっていますの?」
「はい。それにしても殿下とこの話をしたのは、今日の午前中……ですか?」
スパルタカスもリアムも驚いた様子になり、顔を見合わせる。そして、スパルタカスはアルメリアに視線を戻すと言った。
「殿下の即決力には驚かされます。ですが、本当に素晴らしい意見なので、即決は当然のことでしょう。閣下もこれから騎士団にアドバイスを求められ、忙しくなるかもしれません」
「そうですわね、殿下も私と参謀とで話をする必要が出てくる可能性があると仰ってましたから、そのつもりでいますわ」
突然色々やらねばならないことが増えてしまったので、スケジュールを調整せねばならないと考えていると、背後から声がかかる。
「あの、みなさんも来られていたのですね? 今日もお茶をご一緒にと伺ったのですが、お邪魔でしょうか?」
振り向くと、ルーファスが立っていた。アルメリアは、リアムとスパルタカスに向き直ると訊いた。
「ご一緒してもかまいませんわよね?」
二人とも笑顔で頷く。
「ルフス、どうぞ座って」
ルーファスはそう言われ、少し申し訳なさそうにアルメリアたちの輪に加わると、リアムとスパルタカスの顔を見て笑顔で言った。
「お二人とも戻られたのですね」
すると、スパルタカスが笑顔で答える。
「はい、それで久々にこちらに伺ったのです。ルフスはここには良く来るのですか?」
「えぇ、慰問のときなど登城したさいには寄らせていただいています」
と言ったところで、アルメリアに向き直る。
「そういえば、先日話してらした祝祭の日に演劇をしたいという話は、スパルタカスにはお話になられたのですか?」
アルメリアは、スパルタカスにその話をするのをすっかり忘れていた。
そう言うと、スパルタカスに気づき一礼する。
「城内統括も、こちらにお見えになっていたのですね。ご一緒しても?」
「もちろんです。閣下、よろしいですか?」
断る理由はない、アルメリアは笑顔で頷く。
「もちろんですわ。みなさんとお茶をするのは本当に久しぶりですわね。こうしてまたお茶をご一緒できるのは嬉しいことですわ」
リアムが苦笑しながら答える。
「騎士団の内部調査が大々的に行われましたからね、城下に残っていた貴族は、教会派の貴族ばかりではないでしょうか。とは言っても城内が手薄になってもいけませんから、彼らも必要な存在だったのですが」
「そうなんですのね……。あら、ごめんなさい案内もしていませんでしたわ。どうぞお座りになって」
リアムは一礼するとスパルタカスの隣に座った。お茶が運ばれるのを待ち、アルメリアは口を開く。
「訊いてもよろしいかしら?」
「何です? 答えれることならなんでも」
手に持っていたティーカップをソーサーに戻し、リアムはアルメリアに微笑みかける。
「騎士団の内部調査とはなんですの?」
「以前アルメリアから指摘され、パウエル領で問題になった件で参謀、まぁ、私の父なんですが。その参謀がこの件を重くみて、王太子殿下にことの顛末を詳しく報告したようです。そして、王太子殿下から『もっと深く掘り下げて調査せよ』と、各領土の統括にお達しがあったのです」
「そのようなことがありましたのね」
午前中ムスカリとアドニスが言っていたのはこの事だったのかと、アルメリアは納得した。
すると、リアムは自嘲気味に笑いアルメリアを見つめる。アルメリアは首をかしげた。
「なにかありましたの?」
「いえ、少し思い出したことがあるのです。参謀は最初に私からその件の報告を受けたとき、大層君を気に入ったようです。そして、私は叱責されました『お前はまるで見る目がない。殿下はもちろん、スペンサーの小倅すら彼女の聡明さにいち早く気づいていたというのに、お前ときたら……』とね」
と、苦笑した。
「リアムの働きあってのことでしたのに、私の手柄のようになってしまって申し訳ないですわ」
「いいえ、アルメリアの今までの行いを相対的に見ての判断だったのでしょう。それに確かに私が初めてアルメリアにお会いしたときの、あの態度は最悪なものでしたしね。君が寛大な心の持ち主だから良かったようなものの、通常許されないことです」
それを受けて、アルメリアはいたずらっぽく笑うと言った。
「確かに。私もあのときは、立場上あの対応が一番妥当だと思ったからそうしただけですもの。あのときのことを思い出せば、気分が悪くなったりすることもありますわ。でも、あの後こうしてずっと気にかけて頂いていますし、もう忘れますわ。そのかわり、この次はありませんわよ?」
アルメリアはそう言って、やんわりあのときのリアムの迂闊な言動を窘めた。リアムは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに笑顔になると頭を下げた。
「はい、仰せの通り以後気をつけます。本当に君には敵わない」
そして、アルメリアはすぐにスパルタカスを見ると言った。
「スパルタカス、貴男もですわ。最初に私の屋敷に訪ねてきたときの言動は酷かったですわ、反省してくださいませ」
スパルタカスは急に自分に矛先を向けられ、動揺したがすぐに頭を下げた。
「はい、もちろんです。とても反省しています」
「よろしい」
アルメリアは満足そうに頷いてみせた。そして三人で顔を見合わせるとスパルタカスは困ったように苦笑いをし、リアムも苦笑しながら頭を掻いた。アルメリアはそんな二人を見て口元を隠してくすくすと笑った。
「ごめんなさい、こんな話はもうおしまいにしましょう。ところで、騎士団の調査をしたなら、今後しばらくはまた忙しくなるのではなくて?」
「えぇ、でも現地での調査は終わりましたから、しばらくは城下で過ごせそうです。場合によっては現地へも行かなければなりませんが」
そこでスパルタカスが口を開く。
「そう言えば、本日行われた会食にて殿下が、閣下の意見を取り入れ騎士団の組織編成を行うと仰っていました。それに伴い、人員配置の見直しや兵士の査定、訓練方法などの変更も行われますから、騎士団の方も少し慌ただしくなるようです」
アルメリアは殿下の行動力に驚く。
「今日の午前中に少し話をしただけですのに、もうそのようなお話になっていますの?」
「はい。それにしても殿下とこの話をしたのは、今日の午前中……ですか?」
スパルタカスもリアムも驚いた様子になり、顔を見合わせる。そして、スパルタカスはアルメリアに視線を戻すと言った。
「殿下の即決力には驚かされます。ですが、本当に素晴らしい意見なので、即決は当然のことでしょう。閣下もこれから騎士団にアドバイスを求められ、忙しくなるかもしれません」
「そうですわね、殿下も私と参謀とで話をする必要が出てくる可能性があると仰ってましたから、そのつもりでいますわ」
突然色々やらねばならないことが増えてしまったので、スケジュールを調整せねばならないと考えていると、背後から声がかかる。
「あの、みなさんも来られていたのですね? 今日もお茶をご一緒にと伺ったのですが、お邪魔でしょうか?」
振り向くと、ルーファスが立っていた。アルメリアは、リアムとスパルタカスに向き直ると訊いた。
「ご一緒してもかまいませんわよね?」
二人とも笑顔で頷く。
「ルフス、どうぞ座って」
ルーファスはそう言われ、少し申し訳なさそうにアルメリアたちの輪に加わると、リアムとスパルタカスの顔を見て笑顔で言った。
「お二人とも戻られたのですね」
すると、スパルタカスが笑顔で答える。
「はい、それで久々にこちらに伺ったのです。ルフスはここには良く来るのですか?」
「えぇ、慰問のときなど登城したさいには寄らせていただいています」
と言ったところで、アルメリアに向き直る。
「そういえば、先日話してらした祝祭の日に演劇をしたいという話は、スパルタカスにはお話になられたのですか?」
アルメリアは、スパルタカスにその話をするのをすっかり忘れていた。
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