悪役令嬢は救国したいだけなのに、いつの間にか攻略対象と皇帝に溺愛されてました

みゅー

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第三十話 ペルシックの気苦労

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「爺、心配し過ぎだと思いますわ。正直、わたくしは女性としての可愛げがないですもの。魅力もありませんし。でも、そこまで爺が言うのなら、なるべく気をつけるようにしますわ」

 すると、ペルシックは頷く。

「そのようになさって下さいませ。それに、お嬢様はとても魅力的でございます。そこはご自覚下さい」

 そんな会話をしているうちに、張り出し陣の入口に到着した。かなり急な階段だったのだが、ペルシックは息一つ乱さず階段を下り、アルメリアを降ろすと一礼して下がっていった。
 その様子を見ていたスパルタカスが、またも申し訳なさそうな顔をした。

「先ほどは閣下の侍従を高齢と見下したような態度を取ってしまい、大変申し訳ありませんでした。この急な階段を閣下を抱えながら降りて、息一つ乱さないとは流石です。人を見た目で判断してはいけないと学習したばかりなのに、私はまた見た目で判断していたようです。反省せねばなりませんね」

 アルメリアはふっと笑う。

「スパルタカスは本当に謝ってばかりですわね。気にしすぎでしてよ? では、城壁内の案内もよろしくお願いしますわ」

 スパルタカスは苦笑いをすると、差し出されたアルメリアの手を取った。
 城は攻めるためのものではなく、防衛が第一を考えた作りになっているので、兵士たちの配置は外壁とその外側に集中しており、城壁内は若干手薄な感じがした。
 それでも宮廷のあるパラスは、頑丈な外壁に覆われており、強固に守りが固められているようだった。ここの護衛に関しては当然ながら部外秘と言うことで、ざっと説明を受けるだけとなった。

「宮廷のパラスを護衛するのは、叩き上げで騎士の称号を与えられたエリート精鋭部隊なんです。その中には家督を継げない貴族の次男や三男もいますが、当然ながら実力が伴わないとこの部隊にはいられませんので、真の実力者たちと言っても過言ではないでしょう」

 そのトップに君臨しているのがスパルタカスである。

「改めて聞くと、スパルタカスは本当に素晴らしい経歴ですのね」

 アルメリアは感心しながらスパルタカスを見つめた。スパルタカスは照れたように微笑むと腰にある剣の柄をぎゅっと握り答える。

「私には剣しかありませんので。ですがそれで評価されて有り難いことではあります」

 そう言うと説明の続きを再開した。

「城内の護衛部隊専用のパラスもあって、そこには騎士の居住区もありますよ」

 そうして最後に護衛部隊のパラスを案内してもらうと、全ての案内が終了した。

 案内も終わりアルメリアの執務室に戻ると、ちょうどお茶の時間となったため、アドニスがアルメリアの部屋を訪ねて来たところだった。

 ペルシックに部屋に通されたアドニスは、アルメリアの姿を見ると嬉しそうに微笑んだ。

「お茶の約束をしていましたよね?」

 そして、ふとアルメリアの横に立っているスパルタカスに視線をやり怪訝そうな顔をした。

「城内統括、なぜこちらに?」

 スパルタカスは一礼するとその質問に答える。

「今日は閣下に頼まれて、城内の兵舎や回廊などを案内しておりました」

 アドニスは一瞬不満げな顔をする。そして、アルメリアに向き直ると手を取った。

「アルメリア、城内統括ともお知り合いだったのですね。貴女は魅力的なので、どうしても周囲には人が集まってしまうようです。まぁ、それは仕方のないことだとは思います。ですが、それぐらいの用事ならば今後はまず、私にお申し付け下さい。兵舎などいくらでも案内させてもらいますよ」

 そう言って微笑むとじっとアルメリアを見つめる。

「もう少し私のことも頼って欲しいのです」

 アドニスは、まるで捨てられそうな子犬のような表情をしていた。アルメリアは苦笑する。

「そんなにアドニスにばかり頼っていられませんわ。それにやはり騎士団のことを聞くなら、城内統括であるスパルタカスの方が良いと思いましたの。でも決してアドニスが頼りないとか、そういったことではありませんのよ?」

 その後ろでドアがノックされ、ペルシックがドアを開けると、そこにリアムが立っていた。リアムを執務室の中に招き入れると、リアムは執務室に一歩足を踏み入れたところで驚いた反応をした。

「君たち、来ていたのか」

 そして、室内を見渡すとスパルタカスに目を止めた。

「アドニスはまだわかるとして、なぜ城内統括までがこちらに?」

 その問いにはアルメリアが答える。

「今、アドニスにも説明していたのですけれど、今日はスパルタカスにお願いして兵舎や回廊などを案内してもらいましたの」

 リアムは微笑む。

「そういうことだったのですね」

 そう言ってアルメリアに視線を向けたまま、下に視線をずらす。

「ところでアドニス、君はいつまでアルメリアの手を握っているつもりなんだ? それは紳士としてあるまじき行動なのでは?」

 アルメリアは、はっとして手を引くとアドニスの手の中からスルリと手を引き抜いた。

「ごめんなさい、はしたなかったですわね」

 するとリアムとアドニスは同時に首を振り同時に言葉を発した。

「「アルメリアは悪くありません!」」

「悪いのはアドニスだ」

「アルメリア、貴女が謝る必要はないのですよ? リアムも口に気を付けたまえ」

 室内の雰囲気が悪くなったところで、ペルシックがドアを開けるとお茶の準備を始めた。押されてくるカートとティーカップが揺れて立てる音に、皆が静まり返る。

「お嬢様、お茶の準備が整いました。皆様もご一緒に楽しめるよう準備ができております。本日は天気も気候もよろしいようですので、テラスで召し上がられてはいかがでしょうか」

 アルメリアは頷く。

わたくしもそれが良いと思いますわ。どうかしら?」

 その問いに全員が頷く。それを確認するとペルシックは一礼して言った。

「では紳士の皆様、テラスの方へお越し下さい」

 アルメリアは笑顔で全員の顔を見渡す。

「では、向かいましょう」

 テラスへ歩き始めると、みんなその後ろに続いた。

 テラスにでると、五人用のテーブル席が用意されていた。ペルシックのエスコートでアルメリアが座っると、その左右にアドニスとリアムが座り、それに続いてリカオンとスパルタカスが座った。
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