アルカディア

長ネギトロ

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第四話

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「さて、君はこのあとどうするのか?」



「一人で、元居た2021年の日本に戻る方法を探します…」

「無理だぞ」

「え…?」

 即答だ。


「ということは、私は一生このまま…」

「まぁ、”今のところは”だな。」

 今のところ…?ということは…?



「朱雀さん!!」

「うわっ!?なんだ一体…」

 キリアは私の腕を突然掴んできた…


「頼み事があります!!」

「た、頼み事…?」


「取り敢えず、キリアの頼み事を聞いててはくれないだろうか?」

「それは、私になんの利益があるんですか?」

「利益があるかどうかわからない」

「じゃあ、やりません」

 利益がないなら、キッパリと断るのが正解だな。


「じゃあ、君は一人で生きていけるのか?」

「え?」

 ちょっと何を言っているかわからないが…


「…つい先程、私が異能力使えると言ったが」

「…はい」

「これが、キリアも使えるといったら?」


「え…キリアも使えるんですか??」


「キリア…例のアレを朱雀に見せるんだ…」


「これですか?」



 キリアは私に水晶みたいなものを見せてきた…見た目はそこら辺の宝石店で数千円程度で売ってそうな水晶だ。

「この水晶みたいなものがなんですか?」



「これは、私達異能力者における異能力の源『オペレーション・クリスタル』」

 この名前を聞いてまず初めに私は『とても中二臭くてダサい』と思った。


「そして、キリアが持っている異能は下手したら大量に死人が出るレベルの恐ろしい異能だ」

 なんか、さらに中二臭くなったぞ…

 というか、そんな危ない能力を所持している人の管理をこの世界に来て間もない無能力者に任せるのか!?


「もちろん、タダでやれとは言わないさ、君にはこれを授けよう」

 グナイゼナウという男は私に突然カードらしきものを投げてきた。

「これは…」

「これは、ブラックカードだ。全日本異能力協会に所属している人は月1億円まで無条件で使うことが出来ものだ」

 いや、金でどうにかなるとでも思っているのか…というか、協会に所属って何!?OKとも何も言ってないぞ?

「私、無能力者ですけど…」

「それなら問題ない、君にはこの『オペレーション・クリスタル』を授けよう」

 ブラックカードの他に、なんちゃらクリスタルとかいう奴も私に投げてきた…


「これがあれば、この世界も生き伸びていくことが可能だろう…」

 本当にこれ大丈夫か?

「そういえば、これはどのような能力が使えるんですか?」

「忘れた」

 おい。


「さて、私はここで…」

 グナイゼナウという男は至近距離にあった窓を開けた。そして、腰付近から昆虫の羽らしきものが来ていたスーツを突き破って生えてきた。

「え、ちょっと…」


「私はこの後用事がある、ではさらばだ」

 "バサッ"

 そのまま、窓から飛び立って行ってしまった…

 数多くの疑問が残ったままだが。


「そういえば、キリアの頼み事って何なんだ?」

 つい先程、後回しにされていた疑問を今聞く。




「…」

 キリアは一旦溜める素振りをした…そして、次のように答えた…



「お父さんを捜して欲しいんです!!!!」



「と、言われてもなぁ…」

 正直、嫌だ、やりたくない。私はキリアの父親の名前も顔も知らない。しかも、キリアの能力もヤバイという異能協会会長(笑)のお墨付きだ。さらに報酬は金…確かに、金は命より重いという言葉もあるが、流石に命の方が大事だ。



「そこを…どうにか…お願いします…もう朱雀さんしかいないんです…」

 キリアは再び、腕を掴んできた。目は潤んでいた…今にも泣きそうというか、もう泣いている…


「今まで、協会に所属してきた多くの人に頼んできたんですが、頼んだ全ての人の答えが、『お前の父親はもう死んでいる』と…」


 成程…大体わかった…


 どうやら、キリアの父親は行方不明だけど、長い間見つからなくて、殆どの人に死んだと思われているという訳だ…それはとても可哀想だ。

 これは仕方ない…



「わかったよ、キリアの父親捜しに協力する」


「うぅ…ありがとうございます!!朱雀さん!!」



 泣いている子をみたら放っておけないしな…


 でも、それはそうとして、私が手に入れたこのなんちゃらクリスタルの異能力って一体何なんだろうか…疑問に残る…



「朱雀さん!!まずは、松本にいきましょう!!」


 松本かぁ…確か私の時代の日本でいう名古屋のポジションに立つところか…

 でも、正直、乗り換えが面倒くさい。最低3回乗り換える必要があるしな…しかも、5時間くらいかかるだろう…




「さぁ、早く!!」

 キリアはまた私の腕を掴んだ。今度はかなり掴む力が強い。

 どうやら拒否権はないようだ。
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