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冬
二
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父の待ち人らしき人は、その翌日の昼間に現れた。自分は朝食を食べた後、一人で何か書き物をし始めた父をそのままにして朝風呂へ向かった。昨日、入れなかった露天風呂に入ってみたかったのである。
外の空気は肌に刺すような寒さだった。自分は、ヒュッと言いながら風呂に入った。外の空気が冷たいからか、湯の中は尚のこと快く感じられた。自分は、自分以外誰もいないのを良いことに、湯船の中で泳いだり、祖父の謡を大きく伸びやかな声で真似をしたりした。
風呂から上がってきても、父はまだ書き物をしていた。書き物はだいぶ長くなっていて、畳の上に父が書いたものの裾が伸びていた。父は目を伏せたまま自分に、佐喜雄、お前は随分と長風呂のようだがそんなにここの風呂が気に入ったかい、と訊いた。自分は、はい、気に入りました、と答えた。父は、そうかい、お前みたいに朝から長風呂をしていたら、肌がお爺さんのようにフニャフニャになったりしないかい、と言った。自分は、父の珍しい冗談らしき言葉に驚いたが、父はニコリともしておらず、何か調べ物でもするものか分厚い書物を開いていた。自分は、あんなものを鞄の中に持っていたらここに来るときも相当大変だったろうに、父はちっともそのことを感じさせなかったと思いながら、自分の湯上がりの手足を見つめた。赤くなって、つるんとしているようですよ、と言うと、父はただ、ふん、と言った。自分の湯上がりの手足を見つめているうち、自分は昨日の老人との会話を思い出した。お父さん、ここの下女は美しいですか、と父に訊くと、父は書き物をしていた手をピタリと止めて、自分の顔を振り返った。父を振り向かせるつもりのなかった自分は、そのことに多少驚いた。
佐喜雄、と父は自分の名前を呼んだ。佐喜雄、ここの下女は確かに美しいかもしれないが、これからやって来る人は、正に天女のような人だよ。この世の者とは思われない、花の化身のような美しさだよ。
自分は厳格な父から、天女、とか、花の化身、という言葉が出てきたことに再び驚かされた。本当にそんな人がいらっしゃいますか、と訊くと、父は迷いなく、いる、と答えた。だって、天女なら天上に帰ってしまうし、花の化身なら枯れてしまうじゃないですか、と自分は夢の中にいるような父よりもよっぽど現実的なことを言ったつもりだった。しかし父は、口元に温かい微笑の波すら漂わせながら、いや、いる、と答えた。天上に帰らない天女も、枯れない花の化身もいるのだ、と言った。自分は、叱りつけられたときよりも父が怖く感じられた。
庭に目線を投げかけると、血のように赤い椿の花が咲いているのが見えた。黄色い花心が、自分の怯える心を甘く、誘い込むようだった。自分は、いっそう怖くなった。
昼食に近い時間帯になると、梅の花が描かれた襖が開いて、下女が現れた。昨日、夕食を運んできた、どこかのっぺらぼうに似た白い下女だと、自分は気がついた。下女は、いらっしゃいました、と父に言った。父は読みかけていた書物を閉ざして、お通しして、と下女に言った。
下女の後ろから現れたのは、美しい二人の姉妹か、母娘に見えた。自分は父に倣って居住まいを正しながら、父が天女のよう、とか、花の化身、と言ったのはこの人のことかと思った。
その人は、鴇色の地に白い小花を散らした着物を着ていて、コートを脱ぐと華やかな帯の結び目が目についた。娘の方はその当時は珍しかった洋服を着ていた。緑の地のスカートの裾に刺繍された、繊細な蔓と花が複雑に絡み合った模様が鮮やかだった。母か姉か知らぬその人と比べると肌の色が浅黒く、それが深みを持った光沢を帯びて光っていた。その、姉妹とも母娘とも知れぬ二人の天女か花の化身は、父に向かって丁寧に頭を下げた。子どもの自分にも同様にしてくれたのが、自分には誇らしくも、嬉しくも、また、照れ臭くも感じられた。
父はその人に、大きくなられましたな、と言った。その人は、今年で十五になりますわ、と答えた。娘のことを話しているらしかった。どうやら母娘であるらしかった。その人は、潤んで滴るような目で自分を見て、大きくなられて……と言いかけた。実際、涙ぐんでいるように感じられた。
自分は、父が母への裏切りの場面に自分を連れ出したとも、父が母を裏切っているとも感じていなかった。今、思い返してもそう思う。父の目は、男がただ美しい女に向けるものとは違う、何か透き通るような穢れなき目でその人を見ていた。子どもが大人になって、懐かしい思い出を振り返っているかのような。その人もまた、父の目を通して、遠い昔を振り返っているようだった。
美しい姿をして、美しい着物を着て、美しい娘もいる。それなのに、その人はどこか不幸そうに見えた。鮮やかな幸福の中に、儚くも確かに存在している不幸だった。その不幸が、この美しい人を、天女のようにも花の化身のようにも見せていると感じた。
父は、佐野もお気の毒で……と言いかけた。佐野という人が父の古い知人だと、自分は後から知った。自分は美しい人の娘に手を引かれ、こちらへおいで、と耳元で囁かれた。耳朶に当たる、娘の息遣いがくすぐったかった。娘は美しい母に、お母様、私、お邪魔してはいけないからこの子と外で遊んで来るわ、と言って厚手のコートを羽織った。自分は、何が何だかよく分からないまま、娘に手を引かれて外に出た。
外には降り積もった雪がそのままだった。娘は自分の手を引いて、ずんずんと雪の中を歩いた。娘の髪に結ばれたリボンが、自分を異世界に誘う妖精の手首に見えた。
娘は自分を振り返り、ねぇ、あなた知っていて、と笑った。笑うと、大きな切れ長の目が猫の目のようになる娘だった。
この山で、昔死んだ人がいたのだという。ただ死んだのではない。想い合っていた男女が心中し損なって、片方だけ生き延びたのだという。枝先に縄を括りつけて首を吊ろうとしたのか、毒を飲んだのか、崖から落ちたのか、心中の手段は曖昧である。とにかく、片方だけ生き延びて、伴侶も得て、子を成した。今頃まで生き残っていたとしても、だいぶ老齢だろうということだった。自分は、生き延びたのは男ですか、女ですか、と娘に問うた。娘は、分からないわ、そんなこと、と急につまらなそうに答えた。自分は娘の反応から、本当に心中し損なった男女がいたか疑わしいものだ、と思った。
本当にそんなことがあったんですか、と自分は少し小馬鹿にするつもりで娘に言った。そんなことがあってもおかしくないじゃない、と娘は怒ったように目を丸めた。それから自分の耳元で、悪戯を思いついたように、崖を見に行きましょう、と言った。自分は、嫌だったが、娘に猫のような目で、意気地なし、と笑われるのはもっと嫌だった。自分は頷いた。娘は白い歯を見せて満足そうに笑った。
娘は再び自分の手を引いて、歩き出した。雪の中を歩き続けて、軟弱な自分の脚は重くなっていった。娘は一向に疲れた様子を見せなかった。途中、落ちていた椿の花を拾ってその蕊に鼻先を寄せると、自分にもその椿を握らせて、同じことをするようにと言った。冷たい雪の匂いがツンと鼻腔を刺して、奥にある優しい花の匂いが、それを癒やそうとするようだった。或いはそれは、娘の魔力の匂いだったのか。
崖は、自身の臆病を悟られたくないのを忘れてしまうほど高く、所々鋭い岩が飛び出しているのが見えた。こんなところから落ちては、まず助かるまい。とすると、心中し損なったという男女は、やはり首を吊るか、毒を飲むかしたのか。しかし、死ぬには首吊りや毒よりも、この高い崖から手と手を取り合って飛び降りる方が確実な気がする。やはり、そういう男女が昔いたとしても、本気で心中するつもりではなかったのかもしれないと、今は思う。その当時は、高い崖が、恐ろしかった。
高いわね、と娘は言いながら、崖の下を覗き込もうとした。すると、娘に手を引かれている自分の体も、一緒に傾いた。危ないですよ、と自分は娘に言った。娘は猫の目をして笑いながら、何故、と言った。何故って、落ちてしまうじゃありませんか、と自分が訴えかけると、娘は鈴を震わすような声で笑って、私、落ちても構わないのよ、と言った。
自分は両手で娘の腕をグンと引っ張った。娘の体は、自分の方に傾いた。勢い余って、雪の上に娘と一緒に倒れ込んだ。倒れる音は殆どしなかった。自分はただ雪の上に倒れ込み、娘は子どもの自分の腕に抱かれるというよりは、自分に添い寝するように優しく寄り添っていた。娘は自分の冷たい頰を撫でた。赤くなっている。そう言って、寄せられた娘の頰もまた冷たく、林檎のように赤かった。
ねぇ、と娘は誘うように言った。このまま一緒に、崖から落ちてしまいましょうか、私たち。
そう誘われたとき、自分は身を硬くさせた。恐ろしかった。娘は、冗談よ、と笑って、自分の体を抱き起こした。自分の細い手で簡単に倒れ込んだと思われなかった。冗談よ。娘は二度言って、自分の背中についた雪を優しく払ってくれた。自分は、身を硬くさせたままだった。娘は、そんな自分の体を温めるように、抱き寄せて摩った。娘の細い指が、自分の背中に何か図案を描いているようだった。自分は、何を描いているんですか、と情けないほどか細い声で娘に問うた。当ててご覧なさい、と娘は笑った。花ですか、と自分は言った。娘は笑って、答えなかった。
自分が恐れたものは、娘でも崖でもなかった。ただ娘に、落ちてしまいましょうか、と誘われたとき、何か深い谷の底を見たような気がした。そこは光の底とも、闇の底とも言えた。目が眩むほどまぶしくて、足がすくむほど昏い底だった。
外の空気は肌に刺すような寒さだった。自分は、ヒュッと言いながら風呂に入った。外の空気が冷たいからか、湯の中は尚のこと快く感じられた。自分は、自分以外誰もいないのを良いことに、湯船の中で泳いだり、祖父の謡を大きく伸びやかな声で真似をしたりした。
風呂から上がってきても、父はまだ書き物をしていた。書き物はだいぶ長くなっていて、畳の上に父が書いたものの裾が伸びていた。父は目を伏せたまま自分に、佐喜雄、お前は随分と長風呂のようだがそんなにここの風呂が気に入ったかい、と訊いた。自分は、はい、気に入りました、と答えた。父は、そうかい、お前みたいに朝から長風呂をしていたら、肌がお爺さんのようにフニャフニャになったりしないかい、と言った。自分は、父の珍しい冗談らしき言葉に驚いたが、父はニコリともしておらず、何か調べ物でもするものか分厚い書物を開いていた。自分は、あんなものを鞄の中に持っていたらここに来るときも相当大変だったろうに、父はちっともそのことを感じさせなかったと思いながら、自分の湯上がりの手足を見つめた。赤くなって、つるんとしているようですよ、と言うと、父はただ、ふん、と言った。自分の湯上がりの手足を見つめているうち、自分は昨日の老人との会話を思い出した。お父さん、ここの下女は美しいですか、と父に訊くと、父は書き物をしていた手をピタリと止めて、自分の顔を振り返った。父を振り向かせるつもりのなかった自分は、そのことに多少驚いた。
佐喜雄、と父は自分の名前を呼んだ。佐喜雄、ここの下女は確かに美しいかもしれないが、これからやって来る人は、正に天女のような人だよ。この世の者とは思われない、花の化身のような美しさだよ。
自分は厳格な父から、天女、とか、花の化身、という言葉が出てきたことに再び驚かされた。本当にそんな人がいらっしゃいますか、と訊くと、父は迷いなく、いる、と答えた。だって、天女なら天上に帰ってしまうし、花の化身なら枯れてしまうじゃないですか、と自分は夢の中にいるような父よりもよっぽど現実的なことを言ったつもりだった。しかし父は、口元に温かい微笑の波すら漂わせながら、いや、いる、と答えた。天上に帰らない天女も、枯れない花の化身もいるのだ、と言った。自分は、叱りつけられたときよりも父が怖く感じられた。
庭に目線を投げかけると、血のように赤い椿の花が咲いているのが見えた。黄色い花心が、自分の怯える心を甘く、誘い込むようだった。自分は、いっそう怖くなった。
昼食に近い時間帯になると、梅の花が描かれた襖が開いて、下女が現れた。昨日、夕食を運んできた、どこかのっぺらぼうに似た白い下女だと、自分は気がついた。下女は、いらっしゃいました、と父に言った。父は読みかけていた書物を閉ざして、お通しして、と下女に言った。
下女の後ろから現れたのは、美しい二人の姉妹か、母娘に見えた。自分は父に倣って居住まいを正しながら、父が天女のよう、とか、花の化身、と言ったのはこの人のことかと思った。
その人は、鴇色の地に白い小花を散らした着物を着ていて、コートを脱ぐと華やかな帯の結び目が目についた。娘の方はその当時は珍しかった洋服を着ていた。緑の地のスカートの裾に刺繍された、繊細な蔓と花が複雑に絡み合った模様が鮮やかだった。母か姉か知らぬその人と比べると肌の色が浅黒く、それが深みを持った光沢を帯びて光っていた。その、姉妹とも母娘とも知れぬ二人の天女か花の化身は、父に向かって丁寧に頭を下げた。子どもの自分にも同様にしてくれたのが、自分には誇らしくも、嬉しくも、また、照れ臭くも感じられた。
父はその人に、大きくなられましたな、と言った。その人は、今年で十五になりますわ、と答えた。娘のことを話しているらしかった。どうやら母娘であるらしかった。その人は、潤んで滴るような目で自分を見て、大きくなられて……と言いかけた。実際、涙ぐんでいるように感じられた。
自分は、父が母への裏切りの場面に自分を連れ出したとも、父が母を裏切っているとも感じていなかった。今、思い返してもそう思う。父の目は、男がただ美しい女に向けるものとは違う、何か透き通るような穢れなき目でその人を見ていた。子どもが大人になって、懐かしい思い出を振り返っているかのような。その人もまた、父の目を通して、遠い昔を振り返っているようだった。
美しい姿をして、美しい着物を着て、美しい娘もいる。それなのに、その人はどこか不幸そうに見えた。鮮やかな幸福の中に、儚くも確かに存在している不幸だった。その不幸が、この美しい人を、天女のようにも花の化身のようにも見せていると感じた。
父は、佐野もお気の毒で……と言いかけた。佐野という人が父の古い知人だと、自分は後から知った。自分は美しい人の娘に手を引かれ、こちらへおいで、と耳元で囁かれた。耳朶に当たる、娘の息遣いがくすぐったかった。娘は美しい母に、お母様、私、お邪魔してはいけないからこの子と外で遊んで来るわ、と言って厚手のコートを羽織った。自分は、何が何だかよく分からないまま、娘に手を引かれて外に出た。
外には降り積もった雪がそのままだった。娘は自分の手を引いて、ずんずんと雪の中を歩いた。娘の髪に結ばれたリボンが、自分を異世界に誘う妖精の手首に見えた。
娘は自分を振り返り、ねぇ、あなた知っていて、と笑った。笑うと、大きな切れ長の目が猫の目のようになる娘だった。
この山で、昔死んだ人がいたのだという。ただ死んだのではない。想い合っていた男女が心中し損なって、片方だけ生き延びたのだという。枝先に縄を括りつけて首を吊ろうとしたのか、毒を飲んだのか、崖から落ちたのか、心中の手段は曖昧である。とにかく、片方だけ生き延びて、伴侶も得て、子を成した。今頃まで生き残っていたとしても、だいぶ老齢だろうということだった。自分は、生き延びたのは男ですか、女ですか、と娘に問うた。娘は、分からないわ、そんなこと、と急につまらなそうに答えた。自分は娘の反応から、本当に心中し損なった男女がいたか疑わしいものだ、と思った。
本当にそんなことがあったんですか、と自分は少し小馬鹿にするつもりで娘に言った。そんなことがあってもおかしくないじゃない、と娘は怒ったように目を丸めた。それから自分の耳元で、悪戯を思いついたように、崖を見に行きましょう、と言った。自分は、嫌だったが、娘に猫のような目で、意気地なし、と笑われるのはもっと嫌だった。自分は頷いた。娘は白い歯を見せて満足そうに笑った。
娘は再び自分の手を引いて、歩き出した。雪の中を歩き続けて、軟弱な自分の脚は重くなっていった。娘は一向に疲れた様子を見せなかった。途中、落ちていた椿の花を拾ってその蕊に鼻先を寄せると、自分にもその椿を握らせて、同じことをするようにと言った。冷たい雪の匂いがツンと鼻腔を刺して、奥にある優しい花の匂いが、それを癒やそうとするようだった。或いはそれは、娘の魔力の匂いだったのか。
崖は、自身の臆病を悟られたくないのを忘れてしまうほど高く、所々鋭い岩が飛び出しているのが見えた。こんなところから落ちては、まず助かるまい。とすると、心中し損なったという男女は、やはり首を吊るか、毒を飲むかしたのか。しかし、死ぬには首吊りや毒よりも、この高い崖から手と手を取り合って飛び降りる方が確実な気がする。やはり、そういう男女が昔いたとしても、本気で心中するつもりではなかったのかもしれないと、今は思う。その当時は、高い崖が、恐ろしかった。
高いわね、と娘は言いながら、崖の下を覗き込もうとした。すると、娘に手を引かれている自分の体も、一緒に傾いた。危ないですよ、と自分は娘に言った。娘は猫の目をして笑いながら、何故、と言った。何故って、落ちてしまうじゃありませんか、と自分が訴えかけると、娘は鈴を震わすような声で笑って、私、落ちても構わないのよ、と言った。
自分は両手で娘の腕をグンと引っ張った。娘の体は、自分の方に傾いた。勢い余って、雪の上に娘と一緒に倒れ込んだ。倒れる音は殆どしなかった。自分はただ雪の上に倒れ込み、娘は子どもの自分の腕に抱かれるというよりは、自分に添い寝するように優しく寄り添っていた。娘は自分の冷たい頰を撫でた。赤くなっている。そう言って、寄せられた娘の頰もまた冷たく、林檎のように赤かった。
ねぇ、と娘は誘うように言った。このまま一緒に、崖から落ちてしまいましょうか、私たち。
そう誘われたとき、自分は身を硬くさせた。恐ろしかった。娘は、冗談よ、と笑って、自分の体を抱き起こした。自分の細い手で簡単に倒れ込んだと思われなかった。冗談よ。娘は二度言って、自分の背中についた雪を優しく払ってくれた。自分は、身を硬くさせたままだった。娘は、そんな自分の体を温めるように、抱き寄せて摩った。娘の細い指が、自分の背中に何か図案を描いているようだった。自分は、何を描いているんですか、と情けないほどか細い声で娘に問うた。当ててご覧なさい、と娘は笑った。花ですか、と自分は言った。娘は笑って、答えなかった。
自分が恐れたものは、娘でも崖でもなかった。ただ娘に、落ちてしまいましょうか、と誘われたとき、何か深い谷の底を見たような気がした。そこは光の底とも、闇の底とも言えた。目が眩むほどまぶしくて、足がすくむほど昏い底だった。
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