四季、折々、戀

くるっ🐤ぽ

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 頭の後ろに両手の指を組んで枕の代わりにし、乾いた土手の上に寝転んだ。頭の上には生い茂った木の枝が青々とした葉を密集させ、そこから差し込む木漏れ日が目蓋の裏にも眩しい。樹生みきおはそれを、鬱陶しいと言わぬばかりに、カンカン帽を顔の上に乗せる。眠るつもりはない。ただ、寝転んでいるだけである。
 ふわふわと夢とうつつの間を彷徨って、そこから永久に目覚めないでいたい。そう思うことが、樹生にはある。センチメンタルなつもりはない。ただ、起きていることが面倒だと思うだけだ。鮮やかな光を見て、様々な音を聞いて、色々な匂いを嗅いで……そういうことが、面倒だと思うだけだ。
 だからといって、眠れば夢が襲ってくる。夢の中には夢の世界の光があり、音があり、匂いがあった。だから、夢と現の境を、あっちへ行き、こっちへ行く。太陽と草の香は、樹生をそういう頭にするのにちょうど良かった。
 こうなった樹生の目を開けさせるのは、他人が、何だそんなこと、と思うような何気ないことだったりする。
 その日も、そうだった。
「樹生お兄さま」
 草を踏む音がして、目を開けると妹の佳恵よしえだった。樹生はカンカン帽を頭から避けて、目の下の頰をふっくらとさせた。
「やぁ、よしちゃん」
「やぁ、じゃありませんよ。こんなところにいて……」
 白い日傘を持った佳恵は、青い薄物の着物を着て、市松模様の帯を締めていた。樹生は派手な柄の着物を着て、土手の上に寝そべっていた。いつもの妹と、兄の姿である。
「僕は寝ていたんだよ」
 樹生は言って、上体を起こした。すると、暑さに耐えかねて緩めていた襟元が崩れた。樹生がそれを直そうとする前に、日傘を置いた佳恵が樹生の元に跪いて襟元を直した。樹生は子どもが母親に着替えさせられるように素直に、佳恵に身を任せた。
「ありがとう」
 佳恵は樹生の背中についた細かい草も払ってくれているようだ。
「よしちゃんがお嫁に行ったら、誰が僕を見つけてくれるんだろうねぇ」
 樹生の言葉を、佳恵は無言で聞いていた。たわむれだと思ったのだろう。
 樹生は、カンカン帽を頭に被り、白い歯を見せて笑った。
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