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3章
31話
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そのまま裏口に出てねずみを呼ぶ。
「おーい。いるかい?」
「おせえぞ。で、どうなった」
「それがちょっと難しい感じになってしまって。少しあの住処でやっぱり居ててくれないか?」
と時間を稼げるように伝える。正直に出ていけと言ってもここで言い争いになって困るだけだ。折をみて適当にこの邸宅からは出てもらうにしても、今は居たってなんともないだろう。
「そうか。人間ってやつはめんどくせえ奴らばっかりだなあ。じゃあいっちょ戻るためにまた頼むわ」
とまた僕に跨る。これが最後だからと自分を騙しまた道を戻る。今日だけで何度往復するのだろうか。当分宿舎にいくのはやめようと心に誓いつつ僕は宿舎へと足を進めた。
宿舎につき、やっとねずみを穴に入れれるぞといったところで声がかかった。
「おい。猫。なにやってるんだ」
とボスが話しかけてくる。心なしか声が高い。これは厄介な人間に出会ってしまったぞと僕は思う。ボスこそがこのねずみを探し、なんなら退治しようとしていた張本人ではないか。見つかるなら穴に入れてからがベストだったというのに。そのまま逃げるわけにもいかず、ちょこちょことボスに近づく。そうするとねずみが言う。
「おい。この人間はだれだ?」
「この人間はここの騎士のトップだ。かなり強いらしい」
「みてえだな。ここの人間は何人か見てきたが体つきがちげえ」
「優しいから黙ってうなずいてれば、害もないよ」
と僕はそうあってほしいという願いを口にする。そうするとボスが何かを察してかまた僕に話す。
「お前たち今日の朝から邸宅の方に行ってたよなあ」
とどうやら僕たちを見かけていたらしい。
「その上の子は新しいペットか?」
と僕に訊く。こういうことになるから出来ればお嬢様で話を終わらせたかったのだがなあと思う。人間は馬鹿だからこんな風に話しかけては来るがこっちの言うことをまるで理解しない。とりあえずにゃぁとなきながら首を横に振って、出来る限り身振り手振り声ぶりで伝えるように努力する。
「ほうほう。じゃあそいつは誰のペットでもないんだな?」
にゃぁとこれにも答えて首を縦に振る。そうすると瞬きほどの時間でねずみは攫われボスの手の中にしまわれてしまった。
「おい。なにしやがる。はなせはなせ。猫たすけてくれ」
とねずみが叫ぶ。こうなってはもう僕にできることなど何もない。僕はその人間の為すままにすれば大丈夫なはずだよと思ってもない事を言う。
「猫。それじゃあまたな」
とボスはもう片方の手で僕を撫でて宿舎へと走って行ってしまった。解決はしたが、悲しい事件だった。僕は心でねずみに謝り。うまく逃げおおせれることを祈った。
「おーい。いるかい?」
「おせえぞ。で、どうなった」
「それがちょっと難しい感じになってしまって。少しあの住処でやっぱり居ててくれないか?」
と時間を稼げるように伝える。正直に出ていけと言ってもここで言い争いになって困るだけだ。折をみて適当にこの邸宅からは出てもらうにしても、今は居たってなんともないだろう。
「そうか。人間ってやつはめんどくせえ奴らばっかりだなあ。じゃあいっちょ戻るためにまた頼むわ」
とまた僕に跨る。これが最後だからと自分を騙しまた道を戻る。今日だけで何度往復するのだろうか。当分宿舎にいくのはやめようと心に誓いつつ僕は宿舎へと足を進めた。
宿舎につき、やっとねずみを穴に入れれるぞといったところで声がかかった。
「おい。猫。なにやってるんだ」
とボスが話しかけてくる。心なしか声が高い。これは厄介な人間に出会ってしまったぞと僕は思う。ボスこそがこのねずみを探し、なんなら退治しようとしていた張本人ではないか。見つかるなら穴に入れてからがベストだったというのに。そのまま逃げるわけにもいかず、ちょこちょことボスに近づく。そうするとねずみが言う。
「おい。この人間はだれだ?」
「この人間はここの騎士のトップだ。かなり強いらしい」
「みてえだな。ここの人間は何人か見てきたが体つきがちげえ」
「優しいから黙ってうなずいてれば、害もないよ」
と僕はそうあってほしいという願いを口にする。そうするとボスが何かを察してかまた僕に話す。
「お前たち今日の朝から邸宅の方に行ってたよなあ」
とどうやら僕たちを見かけていたらしい。
「その上の子は新しいペットか?」
と僕に訊く。こういうことになるから出来ればお嬢様で話を終わらせたかったのだがなあと思う。人間は馬鹿だからこんな風に話しかけては来るがこっちの言うことをまるで理解しない。とりあえずにゃぁとなきながら首を横に振って、出来る限り身振り手振り声ぶりで伝えるように努力する。
「ほうほう。じゃあそいつは誰のペットでもないんだな?」
にゃぁとこれにも答えて首を縦に振る。そうすると瞬きほどの時間でねずみは攫われボスの手の中にしまわれてしまった。
「おい。なにしやがる。はなせはなせ。猫たすけてくれ」
とねずみが叫ぶ。こうなってはもう僕にできることなど何もない。僕はその人間の為すままにすれば大丈夫なはずだよと思ってもない事を言う。
「猫。それじゃあまたな」
とボスはもう片方の手で僕を撫でて宿舎へと走って行ってしまった。解決はしたが、悲しい事件だった。僕は心でねずみに謝り。うまく逃げおおせれることを祈った。
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