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5話

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目的の邸宅についたらしく、みんなが馬車から降りようとする。タニアとやらがまた僕を抱えて降りようとしたのですっと避けて、お嬢様の隣を歩く。少し悔しそうにしてる。お嬢様の前では狼藉はしないようで、これからもこの人間を盾にしていこうと心に誓った。

さて早速みんなが入るであろう玄関に僕も入ろうとしたら突然に護衛が僕を掴み上げた。

「こらこら、お前はまだこっちだ」

「そんな乱暴にあつかったらかわいそうですわ」

「大丈夫ですよ。この程度であれば一応これでも魔物ですから」

そういって首根っこをもって少し左右に揺らす。なんて奴だ。お嬢様に助けを求める視線を送るとすぐさま援護が飛んできた。

「泣きそうな顔をしてますわ。いい加減によしてあげなさい。宿舎でも虐めないようにお願いしますわ」

「はい。わかってますよ」

そういってやっと僕の首だけではなくお尻ももって安定した抱きかかえのポーズになる。だがしかし、こんな高い所で浮いてるのは怖いし下ろしてほしい。暴れると危ないだろうかと思いながら、手足をぶんぶんと動かし必死に下ろすように訴える。

「怖がってますわ。おろしてあげて頂戴」

「ですが、また邸宅に入ろうとするだけですよ」

「この子は賢いですから、きっとわかってくれますわ」

「そうですかなあ?」

「大丈夫ですわ。おろしてあげて」

お嬢様はずっと僕の味方のようで、ここでも僕の気持ちを汲んでくれた。そしてその言葉で渋々ながら護衛は僕を地面にゆっくりと下ろした。
そもそも魔物が人間の言葉を理解できないと思ってることが腹立たしくて間違ってるところだ。
僕達魔物は人間の言葉を理解はしてる。だが襲ってるだけだ。言葉を理解してないのではなく拒否してるのだ。
魔物たちも生きるために襲ってるはずだ、多分。そうだった気がする。
とりあえず、馬鹿だと思われるのは嫌なのでこの一時はこの護衛の言うことを全部聞いてやることにする。

「それじゃあホワイト君、こっちに来るんだ」

護衛は棒読みで言う。まるっきり僕を信じてない証拠だ。見てろよときりっと向きを変えて護衛の方を向く、そして早く案内しろと強めのにゃぁを放つ。

「ほらきっちり理解してますわ。この子はきっと特別な子なの。神様からの贈り物ね」

うふふとお嬢様は得意げに笑う。護衛は少し変な顔をしている。

「それでは契約の準備ができるまでよろしくお願いしますわ」

「承知いたしました」

護衛はお嬢様に礼をして、僕にこっちだと先導する。
僕は当然のようについていく。恐れ入るがいいといった気持ちだ。
護衛は時折僕の方をちらちらと振り返っては歩き振り返っては歩く。さっさと歩けばいいものをまだ僕の心配をしているようだ。この護衛こそ馬鹿なものだ。理解してなければついてこないだろうに、わかってるから付いてきてることを目の前で見てるのに理解すらしてない。
こんな人間が仕えていてはお嬢様も大変だろうと少しかわいそうに思う。それ相応の食事と寝床にありつけるなら、僕がこの人間に代わって守っても良いと思えるくらいには、この護衛はひどく感じた。
それから数分か桁が上がるかくらい歩くとやっと宿舎についたらしい。遠すぎる、歩くだけでくたびれるほどだ。
これだけ離す必要があるのか、どうせなら併設すればいいものをと思ったが、食事の時に学んだ人間は無駄を好むということを思い出して。なるほどと勝手に理解した。

「こっちだ」

護衛は扉を開けて中に僕を誘導する。
建物自体は簡素で少々臭い。耐えきれぬほどではないが、まあ鎧などを着てるような人間がいっぱいいるところなのだろうから仕方ない。廊下をしばらく歩くと護衛はとまり、ここだと言って扉を開けた。
どうやらここは護衛の自室らしく、そこそこ広い部屋でベッドもあり、いくつか訓練用の物品と報告書などの作成ようの机がある簡素な部屋だ。

「ここで少しの間くつろいでくれ。食事の時間になったら持ってきてやる。なんていってもわからないよな?」

そう言って鎧を脱ぎ所定の場所らしきところにおいてベッドに横になった。
何と失礼な奴だ。わかってるに決まってる。あと僕が寝る場所はどこだ?
護衛の短慮のせいで僕はまず寝る場所の確保から考えないといけなかった。
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