上 下
3 / 34

3話

しおりを挟む
膝の上に乗って少しすると恐る恐るといった感じで僕をなで始めた。なかなかにうまいものだ。人間になでられるのはこれが初めてだけど、こんなに気持ちよいものならずっとしてもらっていてもいいくらいだ。抱きかかえられずにこれで終われば最高だなと思いそのまま目を瞑って身をゆだねる。

「すごく柔らかいわ」

「ほんとうですか?私も触ってもいいですか?」

「きっと大丈夫ですわ。このこすごく大人しくていい子ですもの」

もう一人も僕をなでるのに参加するようで、こちらは少々なで方があらくったく気持ちはいいが少しお嬢様に劣っている。最後には僕を抱きかかえた天敵もなでるのに参加し、こちらは抱き方はひどいものだったが、なで方は非常に気持ちよく3人の中で一番良いくらいだった。だがしかし尻尾や足先を執拗に触るものだからそこだけが不満だ。
2、3分ほど経つとなでるのが終わったのか食事の準備を始めだした。やっとこさありつけると喜んで用意された食事を見ると何やら白いものに赤やら緑やらが挟まって、なんともうまくなさそうだ。勝手に頂こうと思ってる僕が勝手に思うのだが、こんなものをわざわざ外に出て食べるなんて、人間は何を考えてるのかとんとわからない。
それでもとりあえず頂きたいのでお嬢様と呼ばれる人間の膝から降りて食べてる姿をじっと眺める。

「これが欲しいのかしら?」

「にゃぁ」

なかなかに物わかりのいい人間だ。だがしかしなかなか僕にくれない。こんなにいっぱいあるのにケチなものだ。

「あげても大丈夫なのかしら?」

お嬢様はそんなふうにつぶやく。なるほどそれを危惧していたのか。こう見えても僕はれっきとした魔物だ。大抵のものは食べられる。それに食べられないものは大体においでわかるのだ。これはきっと大丈夫なはずだと伝えたいのだが、人間の言葉はわかっても人間には僕たちの言葉は通じない。
仕方ないので手に持ってる物に直接食いつき食べれる証明をすることにした。

僕がとびつくとお嬢様は少し声をあげたが、僕が食べているのをみて大丈夫なのねと安心した様子だ。以降はすごく楽に頂くことができるようになった。
目のまえの物がなくなればどんどんと追加の白いものを積み上げてくれる。どうやらサンドウィッチというらしいが、見た目に反してかなりうまい。だが中の野菜というのがなければもっとおいしいだろうに、これがそのまま木になってるわけがない事を考えるとわざわざ苦みや酸味のあるものを入れてるらしい。パンとやらが中和してなかなかおいしいがなければもっとうまいだろうにと少し残念だ。

そんなこんなでおいしくいただきお腹が膨れるとやはり眠くなる。他の人間たちはまだまだ食事中のようだし、僕は一番居心地のよかったお嬢様の膝の上で寝ることにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
ファンタジー
王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!

ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。 なのに突然のパーティークビ宣言!! 確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。 補助魔法師だ。 俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。 足手まといだから今日でパーティーはクビ?? そんな理由認められない!!! 俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな?? 分かってるのか? 俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!! ファンタジー初心者です。 温かい目で見てください(*'▽'*) 一万文字以下の短編の予定です!

[完結]回復魔法しか使えない私が勇者パーティを追放されたが他の魔法を覚えたら最強魔法使いになりました

mikadozero
ファンタジー
3月19日 HOTランキング4位ありがとうございます。三月二十日HOTランキング2位ありがとうございます。 ーーーーーーーーーーーーー エマは突然勇者パーティから「お前はパーティを抜けろ」と言われて追放されたエマは生きる希望を失う。 そんなところにある老人が助け舟を出す。 そのチャンスをエマは自分のものに変えようと努力をする。 努力をすると、結果がついてくるそう思い毎日を過ごしていた。 エマは一人前の冒険者になろうとしていたのだった。

勇者に大切な人達を寝取られた結果、邪神が目覚めて人類が滅亡しました。

レオナール D
ファンタジー
大切な姉と妹、幼なじみが勇者の従者に選ばれた。その時から悪い予感はしていたのだ。 田舎の村に生まれ育った主人公には大切な女性達がいた。いつまでも一緒に暮らしていくのだと思っていた彼女らは、神託によって勇者の従者に選ばれて魔王討伐のために旅立っていった。 旅立っていった彼女達の無事を祈り続ける主人公だったが……魔王を倒して帰ってきた彼女達はすっかり変わっており、勇者に抱きついて媚びた笑みを浮かべていた。 青年が大切な人を勇者に奪われたとき、世界の破滅が幕を開く。 恐怖と狂気の怪物は絶望の底から生まれ落ちたのだった……!? ※カクヨムにも投稿しています。

処理中です...