恐怖心で現状維持をした結果～妹からもパーティーからも捨てられて～

20話

　ミレティアはふーっと白い息を吐いて盾を担いでこちらを見る。

「大丈夫そうか？」

「ええ。たぶん」

　僕はそう答えて、先に置いていった魔法使いのもとへと駆け寄った。

「大丈夫ですか？」

「あんたのせいで死にかけた以外はね」

「それは......。すみません」

「冗談よ。襲われてたら死んでたかもしれないしね。ありがとう。礼はしたいけど、私今は忙しいの。また今度ギルドでお礼するわ」

　そう言って無理に立ち上がろうとする。さっきの衝撃で立つのも絶え絶えのようだ。

「帰り道送っていきましょうか？」

「私は帰らないわ」

「帰らないって、そんな状態で何をするんですか？」

「いいから放っておいてちょうだい」

　甲高い声が響くとその様子に違和感を覚えたのかミレティアも駆け寄ってきた。

「どうしたどうした？」

「その。帰らないって言ってて。大丈夫かなと」

「なるほどな。でもまあ行きたいなら行かせてやれ。それがルールだ」

「そんな！」

「死んだら自分が悪い。声掛けで止まらないなら仕方ないさ」

　まじめな顔で腕を組みながら言うミレティアに違和感を感じ、そんなことが起こっていいのかと僕が考えていると突然魔法使いは倒れたまま泣き始めた。
　この混沌とした状態がより混沌とかして、僕は泣いてる魔法使いとミレティアを交互に見ることしかできなかった。

「でもまあ私も死なせたいわけじゃないさ」

　そういって近づき魔法使いが落ち着くまでミレティアは傍に座っていた。