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クラリスへの恋心
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クラリス様は怯える私に謝罪する。
「すまない。こんな怖いを思いさせて……」
「いえ。私が勝手にお城を出たのが間違いでした」
「あぁアリーよ、目に涙を浮かべているではないか」
クラリス様は私の涙を指で拭ってくれる。
「あの……」
さっきまであんなにも怖かった男の人の手なのに、同じ手とは思えないほど優しく温かく感じる。
「こんな目に合わせたコイツを許せない。僕の気が済まない。アリーを先に城へと連れ帰ってくれ、フィナ」
「はい殿下。ですが……殿下自身がお手を汚すわけには」
「心配いらない。1発だけだ」
クラリス様が大きく拳を振りあげるとライン様は光る刃物を持って走っていた。
「クラリス様危ないっ」
私が叫んだと同時にクラリス様がライン様を壁まで吹っ飛ばしていたのだった。
ライン様は唇から垂れる血をふき取りながら
「どうしてだよ……1回くらいしたっていいだろう。減るもんじゃないし」
「なんだと? こっちはまだ1回もしていなんだ。って違うよアリー、誤解しないでくれ」
クラリス様のとんでもない発言を聞いてしまった私は体温が上昇して頭から湯気が出そうになっていた。
「あの……それは……その……」
「あぁもう。そんな色っぽい顔しないでくれよ。この下衆野郎にそれ以上アリーの魅惑的な部分を見せるわけにはいかないな」
クラリス様はそう言うと、もう一発ライン様の反対の頬に拳が食い込ませていた。
「殿下……それ以上は……」
フィナの声でクラリス様は冷静さを取り戻したようだ。
「そうだな。あとは法が裁いてくれるだろう」
「ははは。何が法だ。それなら暴力をふるったことにも罰せられないとおかしいだろう?」
ラインは口からペッと血を吐きながら言った。
「バカなのはお前だ。覚悟しておくといい。アリー行こう」
私はなぜかひょいと担がれるとお姫様のような抱っこをされていたのだった。
「あの……こんな物語のような恰好恥ずかしいです」
「僕がしたいだけだ、気にしないでくれ」
「殿下、ニヤニヤはおやめください。気持ち悪いです」
温かくなった心がフィナの声で一気に冷たくなった気がしたのだった。
「うるさい。アリーをこの腕に抱いておかなければ不安なんだ」
「えっ……とあの」
再び顔が真っ赤になってしまうとクラリス様は微笑みかけてくれた。
カッコ良すぎてクラクラしそうだ。
「アリーにその顔をされてしまうと我慢できないな」
チュッ
私の唇には温かい柔らかな感触を感じる。
「今のって……」
「すまないな。もう限界だった。可愛すぎるアリーが悪い」
そんな甘い言葉を囁かれ、お父様のことなどすっかり忘れてしまっていたのだった。
アリーにとっては父親の存在を忘れるなど初めての経験だった。
「すまない。こんな怖いを思いさせて……」
「いえ。私が勝手にお城を出たのが間違いでした」
「あぁアリーよ、目に涙を浮かべているではないか」
クラリス様は私の涙を指で拭ってくれる。
「あの……」
さっきまであんなにも怖かった男の人の手なのに、同じ手とは思えないほど優しく温かく感じる。
「こんな目に合わせたコイツを許せない。僕の気が済まない。アリーを先に城へと連れ帰ってくれ、フィナ」
「はい殿下。ですが……殿下自身がお手を汚すわけには」
「心配いらない。1発だけだ」
クラリス様が大きく拳を振りあげるとライン様は光る刃物を持って走っていた。
「クラリス様危ないっ」
私が叫んだと同時にクラリス様がライン様を壁まで吹っ飛ばしていたのだった。
ライン様は唇から垂れる血をふき取りながら
「どうしてだよ……1回くらいしたっていいだろう。減るもんじゃないし」
「なんだと? こっちはまだ1回もしていなんだ。って違うよアリー、誤解しないでくれ」
クラリス様のとんでもない発言を聞いてしまった私は体温が上昇して頭から湯気が出そうになっていた。
「あの……それは……その……」
「あぁもう。そんな色っぽい顔しないでくれよ。この下衆野郎にそれ以上アリーの魅惑的な部分を見せるわけにはいかないな」
クラリス様はそう言うと、もう一発ライン様の反対の頬に拳が食い込ませていた。
「殿下……それ以上は……」
フィナの声でクラリス様は冷静さを取り戻したようだ。
「そうだな。あとは法が裁いてくれるだろう」
「ははは。何が法だ。それなら暴力をふるったことにも罰せられないとおかしいだろう?」
ラインは口からペッと血を吐きながら言った。
「バカなのはお前だ。覚悟しておくといい。アリー行こう」
私はなぜかひょいと担がれるとお姫様のような抱っこをされていたのだった。
「あの……こんな物語のような恰好恥ずかしいです」
「僕がしたいだけだ、気にしないでくれ」
「殿下、ニヤニヤはおやめください。気持ち悪いです」
温かくなった心がフィナの声で一気に冷たくなった気がしたのだった。
「うるさい。アリーをこの腕に抱いておかなければ不安なんだ」
「えっ……とあの」
再び顔が真っ赤になってしまうとクラリス様は微笑みかけてくれた。
カッコ良すぎてクラクラしそうだ。
「アリーにその顔をされてしまうと我慢できないな」
チュッ
私の唇には温かい柔らかな感触を感じる。
「今のって……」
「すまないな。もう限界だった。可愛すぎるアリーが悪い」
そんな甘い言葉を囁かれ、お父様のことなどすっかり忘れてしまっていたのだった。
アリーにとっては父親の存在を忘れるなど初めての経験だった。
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