婚約破棄が流行しているようなので便乗して殿下に申し上げてみましたがなぜか却下されました

SORA

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 控室に戻ると衣装や化粧をする人でみな忙しそうにしていた。

「フレア!! 早く着替えるわよ」

「あ、はい。すみません」

 あれよあれよと衣装の着替えを済ませる。

「フレアちゃん準備はできたかい?」

「ジョージ様できました」

「うん、いつもは可愛いけど今日の姿は美人で清楚系って感じでそそるね」

 ジョージ様は色っぽく舌なめずりをした。

「えっ、ありがとうございます」

「一つだけ言っておくよ。何があってもそのまま演劇を続けること。約束できるかい?」

「はい。私は覚えたセリフを言えばいいのですよね?」

「そうだよ。もしアドリブで来られた場合は自分の意思で答えること。わかったかな?」

「……なんだか意味がわかりませんが、なんとかやってみます。舞台に立っている間は恥を捨てて演じ切ります」

「そうだね。では頼むよ」

 そう言ってジョージ様は去っていくと、レオがこちらにやってきた。」

「ねぇ、ジョージ様の言葉の意味わかってる?」

「ん? 意味ってそのままでしょ?」

「……なんでもないです」

 レオはそう言ってジョージ様の後をついていく。

「いったいなんだったんだろう」

「あの子もね……色々複雑なのよ」

 教えてくれた女性は悲しそうに言ったのだった。

 ジョージ様が集合をかける。

「今日が上演最後の日だからみんな気を引き締めていくように」

「「はいっ」」

「あと今日はスペシャルなことが起きるクライマックスを準備してある。己の役者魂を試すときだ。それぞれがそのとき感じた役の感情で演じてくれ。お前たちならそれができると信じている」

「えっ、それはどういうことですか?」

 ルーベルトが尋ねるとジョージ様はフッと笑った。

「お前ならできるよ。未来のエースなんだからな」

「……そんな……」

 恥ずかしそうに照れるルーベルトが可愛く見える。レオはそれを見てズボンを強く握りしめていた。

 あんなに小さいのにもうちゃんとした立派な役者なのだ。

 お父さんに認められたいんだろう。

「それでは本日もよろしくお願いします」

「「おぉっ!!」」

「おっ」

 遅れて返事をした私に注目が集まるとジョージ様は言った。

「フレアちゃんは私の魅力に取り込まれなかった唯一の大切な女性だ。舞台上でミスをしてしまう可能性があるかもしれない。だがお前たち全員でフォローしてやってくれ。頼む」

 ジョージ様が頭を下げるとみんなは驚くように顔を見合わせている。

「ジョージ様が誰かのために頭を下げる……なんて」

「どうしてよ。何でも興味を示さない冷徹なジョージ様が……? ジョージ様……こんなにも着飾っているジェニファーが目に入りませんか?」

「……うん。今の君は平民だろう? 着飾っていないけれど」

 まっとうな意見を素で言えるあたりがなんとも恐ろしい。

「そうですけど……今日の相手は私ジェニファーでございます」

「フフフ。そうだといいな」

 ジョージ様の意味深な言葉と共に開幕を知らせる音が鳴り響いたのだった。


※次こそ最終話です※
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