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マルク殿下の悲し気な表情が頭から離れない。
「あの……どこに行くんですか?」
「決まっているだろう? 稽古だよ」
「いや……もう私舞台に出られなくて大丈夫です。やはり婚約破棄や真実の愛は物語だから成立するものであって、誰かを傷つけてまで突っ走るものではないと思います」
私の言動に気に食わなかったのかジョージ様は顔を盛大に歪めた。
「ふっ、物語だからか。だとすればフレアちゃん、今現在流行している婚約破棄ブームはどう説明するんだい?」
「あれは……できる人とできない人がいるんですよ!!」
「ハハハ、恋愛したことのない君にはまだ難しい問題だったのかもしれないね。けどね婚約破棄して真実の愛を見つけることは本当は素晴らしいんだよ」
ジョージ様は何か心当たりがあるのかいつもの演劇口調ではなくなっていた。
「確かにあの舞台を見ていればわかります。それに私も殿下に婚約破棄を申し出た身ですし……ですが、さっきの心配していた時の顔や私が出て行くときの表情を見たら、とんでもないことを私がしようとしているのではないかという気になってきました」
「そうかい、フレアちゃんは優しいんだね。でもね私も君みたいな子が初めてなんだよ。欲しいものは全力で奪うのがポリシーでね。それにあの殿下はもうジェニファーと結婚することになるんじゃないかな」
「えっ? どういうことですか?」
「ハハハ、別にいいだろう? 君も婚約破棄したいと思っていたんだから」
「そうですけど……そんなすぐに結婚ってなりますか?」
結婚の言葉を聞いて私は正直驚いてしまう。自分と婚約破棄すれば誰かと結婚するのはわかっていたはずだったけど、この胸の息苦しさはなんだろう。ため息が出てしまう。
「はぁ」
「まぁいい、今日の稽古からここの稽古場で暮らしていけばいい。きっと家の方にも捜索が行くだろう」
「両親をこれ以上心配させたくないので帰ります」
私は劇場から家に帰ろうとしたところ、両親が劇場にやってきていた。
「フレア?! 騒ぎを聞きつけて街を歩いていたところ、この子がフレアはここにいると教えてくれたわ」
お母様が撫でていた頭はレオだった。
「ジョージ様、お連れしました」
レオは唇を一文字にしたままそれ以上話さない。
「あぁ、ご苦労だった」
ジョージ様はそのままお母様に近づきゆっくりと見つめていくと、どうやらお母様の様子がおかしい。
それに気づいたお父様が制止させようとしたけどもう遅かったようだ。
「ジョージ様に娘のフレアをお願いします」
「えっ? キャメルどういうことだい?」
「ふっ、ありがとうござます、マダム」
そう言ってお母様の頬に口づけするとそのまま倒れてしまった。
「お、お母様!! ジョージ様お母様に何をしたんですか?」
「何もしていないよ。これが普通の女性の反応なんだよ」
「おかしいですよ!! なら同じ劇場の仲間の女性はどうしてですか?」
「あーあれは……抱けばみんな収まるみたいなんだよ」
ジョージ様は頭をポリポリと掻きながら照れくさそうに言った。
「な、なんですって……そんなことって……」
「フレアちゃん、男女の関係っていうのはそんなものだよ。だから君の場合はね、逆なんじゃないかと思うんだ。抱けばずっと私を愛し続けるのかもしれない。君がきっと私の運命の相手なんだ」
舞台上で言えば「運命の相手」という言葉は破壊力があって憧れ素敵って思ったのだろうけど、実際の発言はあまりにも下品でひどい。
「ジョージ様……仮にもうちの両親がおりますし、こんな小さな子がいる前でそのようなことを申し上げないでください。私は帰ります」
「そうか、わかった。ならこうしよう。君がここにいてくれるならばマルク殿下の騒ぎはどうにかしてあげよう」
「えっ……それって……」
「婚約破棄はしてもらうが、理由はあの高級宿と女性と共にしたからではない。私の婚約者を救ってくれるため致し方なかったということにしてやる」
「はい? 婚約者? いったいどういう意味ですか?」
私は全く意味が分からずにいたのだけど、なぜかマルク殿下の経歴に傷がつかないならと少しホッと安心していた自分がいたのだった。
「あの……どこに行くんですか?」
「決まっているだろう? 稽古だよ」
「いや……もう私舞台に出られなくて大丈夫です。やはり婚約破棄や真実の愛は物語だから成立するものであって、誰かを傷つけてまで突っ走るものではないと思います」
私の言動に気に食わなかったのかジョージ様は顔を盛大に歪めた。
「ふっ、物語だからか。だとすればフレアちゃん、今現在流行している婚約破棄ブームはどう説明するんだい?」
「あれは……できる人とできない人がいるんですよ!!」
「ハハハ、恋愛したことのない君にはまだ難しい問題だったのかもしれないね。けどね婚約破棄して真実の愛を見つけることは本当は素晴らしいんだよ」
ジョージ様は何か心当たりがあるのかいつもの演劇口調ではなくなっていた。
「確かにあの舞台を見ていればわかります。それに私も殿下に婚約破棄を申し出た身ですし……ですが、さっきの心配していた時の顔や私が出て行くときの表情を見たら、とんでもないことを私がしようとしているのではないかという気になってきました」
「そうかい、フレアちゃんは優しいんだね。でもね私も君みたいな子が初めてなんだよ。欲しいものは全力で奪うのがポリシーでね。それにあの殿下はもうジェニファーと結婚することになるんじゃないかな」
「えっ? どういうことですか?」
「ハハハ、別にいいだろう? 君も婚約破棄したいと思っていたんだから」
「そうですけど……そんなすぐに結婚ってなりますか?」
結婚の言葉を聞いて私は正直驚いてしまう。自分と婚約破棄すれば誰かと結婚するのはわかっていたはずだったけど、この胸の息苦しさはなんだろう。ため息が出てしまう。
「はぁ」
「まぁいい、今日の稽古からここの稽古場で暮らしていけばいい。きっと家の方にも捜索が行くだろう」
「両親をこれ以上心配させたくないので帰ります」
私は劇場から家に帰ろうとしたところ、両親が劇場にやってきていた。
「フレア?! 騒ぎを聞きつけて街を歩いていたところ、この子がフレアはここにいると教えてくれたわ」
お母様が撫でていた頭はレオだった。
「ジョージ様、お連れしました」
レオは唇を一文字にしたままそれ以上話さない。
「あぁ、ご苦労だった」
ジョージ様はそのままお母様に近づきゆっくりと見つめていくと、どうやらお母様の様子がおかしい。
それに気づいたお父様が制止させようとしたけどもう遅かったようだ。
「ジョージ様に娘のフレアをお願いします」
「えっ? キャメルどういうことだい?」
「ふっ、ありがとうござます、マダム」
そう言ってお母様の頬に口づけするとそのまま倒れてしまった。
「お、お母様!! ジョージ様お母様に何をしたんですか?」
「何もしていないよ。これが普通の女性の反応なんだよ」
「おかしいですよ!! なら同じ劇場の仲間の女性はどうしてですか?」
「あーあれは……抱けばみんな収まるみたいなんだよ」
ジョージ様は頭をポリポリと掻きながら照れくさそうに言った。
「な、なんですって……そんなことって……」
「フレアちゃん、男女の関係っていうのはそんなものだよ。だから君の場合はね、逆なんじゃないかと思うんだ。抱けばずっと私を愛し続けるのかもしれない。君がきっと私の運命の相手なんだ」
舞台上で言えば「運命の相手」という言葉は破壊力があって憧れ素敵って思ったのだろうけど、実際の発言はあまりにも下品でひどい。
「ジョージ様……仮にもうちの両親がおりますし、こんな小さな子がいる前でそのようなことを申し上げないでください。私は帰ります」
「そうか、わかった。ならこうしよう。君がここにいてくれるならばマルク殿下の騒ぎはどうにかしてあげよう」
「えっ……それって……」
「婚約破棄はしてもらうが、理由はあの高級宿と女性と共にしたからではない。私の婚約者を救ってくれるため致し方なかったということにしてやる」
「はい? 婚約者? いったいどういう意味ですか?」
私は全く意味が分からずにいたのだけど、なぜかマルク殿下の経歴に傷がつかないならと少しホッと安心していた自分がいたのだった。
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