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10(マルク殿下視点)
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約束の9時になろうとしていたのに、いまだにフレアは現れない。
なぜなんだ!!
婚約破棄を言い出したのもきっとあの劇の影響なのはわかっていた。こうなることは予想できたからこそフレアにはチケットが手に入らないようにあらゆる手配を尽くしていたのに。
それに昨日はなんとなく劇場に足を運ぶような気がしていたから、護衛をつけて先に窓口でフレアが来たら断ってもらうように先回りしていたはずだ。
なのに、どうして見られたんだろうかと不思議に思っていた矢先だった。
「マルク殿下、大変でございます。フレア様が……」
「フレアがどうしたんだ!!」
俺は立ち上がると焦りから転びそうになってしまった。
報告に来た騎士の1人が見知らぬ女性を連れて来ていた。
「マルク殿下……お初にお目にかかります。ジェニファー・ピナレロと申します」
茶色の髪の女性は髪を振り乱れた状態でおかしな雰囲気を感じたが、身なり的には貴族令嬢なのは間違いなさそうだ。
「今は名前などどうでもいい。フレアがどうしたんだ。早く言え」
「あ、すみません。初めは気付かなかったのですが調べた結果あの女……いえ殿下の婚約者様だと知ったのでお知らせに参りました」
「だから前振りが長いぞ!! フレアがどうしたか言えっ!!」
この女の話し方はなぜだか鼻につく。フレアは大丈夫なのか心配でいたたれない。
「あのですね……その……非常に言いにくいのですけど……」
「あぁ!! イライラするな。早く言えよ」
「あ、っと、そのですね、殿下の婚約者様が男性とその……宿へ」
「はぁ? 何を言っている? フレアが男性と一緒にいるわけないだろう。男に興味なんてないフレアなのだ。バカを言うな。お前もさては私の婚約者を狙っているのだな、そのような戯言など信じるはずないだろう、帰れ!!」
「ちょっと? 誰が婚約者の座を狙っているですって? 失礼しちゃうわ。わたしはいつだってジョージ様しか愛していないわよ。珍しくジョージ様があの女に特別視しているみたいだから私も焦ってるというのに……」
「ま、待て。どういうことだ? フレアの相手はジョージとかいう役者なのか?」
「だからそうだと言っているでしょ? 早く行かないと食われても知りませんわよ?」
「く、食われるって……まさか抱かれ……ってフレアはそんなような女じゃない!! 俺の婚約者を侮辱した罪で処刑してやろうか」
俺はカッとして頭に血が上っていた。その女性に殴りかかろうとしてしまっていたところを騎士たちに止められてしまった。
「ふっ、悪かった」
「王太子であろう人がそんな下品なまねするのね」
「おいっ、殿下に失礼だ!!」
一人の騎士がそう言ってその女性の頭を下げさせようとしたがそれを手で制止する。
「いや、今のは俺が悪かったから見逃してやる。それよりフレアは今どこにいる?」
俺は少し冷静になった頭で尋ねる。
「あそこです。ここから5分くらいの路地裏にあるピンキーですよ」
「なんだと……あそこは別名売春宿と呼ばれているところじゃないか!! 今すぐ行くぞ」
俺は騎士たちを連れて高級宿ピンキーへと向かう。
「あの……そのあそこ殿下とはいえカップルしか入れませんが……」
この女性はなぜか後ろからついてきたようで、その鋭い指摘で俺たちは高級宿の前で立ち止まる。
「そうだった。ここは隣国が管理しているため権力が使えないんだった」
「私でよければ……ご一緒しましょうか?」
「フレア以外とこのような場所……だがしかし致し方ない。行って来る」
と騎士たちに言うと一人の騎士が言った。
「殿下、ですが……人の目もありますしそれだけはお止めになられた方がいいかと思います。わたくしが変わりに入ります」
「いや、フレアに何かあったら心配だから俺が入る。お願いできるか? 確か名前はジェニファーだったな?」
「あ、はい」
俺たちは無事受付をしてピンキーに潜入することができたのだった。
なぜなんだ!!
婚約破棄を言い出したのもきっとあの劇の影響なのはわかっていた。こうなることは予想できたからこそフレアにはチケットが手に入らないようにあらゆる手配を尽くしていたのに。
それに昨日はなんとなく劇場に足を運ぶような気がしていたから、護衛をつけて先に窓口でフレアが来たら断ってもらうように先回りしていたはずだ。
なのに、どうして見られたんだろうかと不思議に思っていた矢先だった。
「マルク殿下、大変でございます。フレア様が……」
「フレアがどうしたんだ!!」
俺は立ち上がると焦りから転びそうになってしまった。
報告に来た騎士の1人が見知らぬ女性を連れて来ていた。
「マルク殿下……お初にお目にかかります。ジェニファー・ピナレロと申します」
茶色の髪の女性は髪を振り乱れた状態でおかしな雰囲気を感じたが、身なり的には貴族令嬢なのは間違いなさそうだ。
「今は名前などどうでもいい。フレアがどうしたんだ。早く言え」
「あ、すみません。初めは気付かなかったのですが調べた結果あの女……いえ殿下の婚約者様だと知ったのでお知らせに参りました」
「だから前振りが長いぞ!! フレアがどうしたか言えっ!!」
この女の話し方はなぜだか鼻につく。フレアは大丈夫なのか心配でいたたれない。
「あのですね……その……非常に言いにくいのですけど……」
「あぁ!! イライラするな。早く言えよ」
「あ、っと、そのですね、殿下の婚約者様が男性とその……宿へ」
「はぁ? 何を言っている? フレアが男性と一緒にいるわけないだろう。男に興味なんてないフレアなのだ。バカを言うな。お前もさては私の婚約者を狙っているのだな、そのような戯言など信じるはずないだろう、帰れ!!」
「ちょっと? 誰が婚約者の座を狙っているですって? 失礼しちゃうわ。わたしはいつだってジョージ様しか愛していないわよ。珍しくジョージ様があの女に特別視しているみたいだから私も焦ってるというのに……」
「ま、待て。どういうことだ? フレアの相手はジョージとかいう役者なのか?」
「だからそうだと言っているでしょ? 早く行かないと食われても知りませんわよ?」
「く、食われるって……まさか抱かれ……ってフレアはそんなような女じゃない!! 俺の婚約者を侮辱した罪で処刑してやろうか」
俺はカッとして頭に血が上っていた。その女性に殴りかかろうとしてしまっていたところを騎士たちに止められてしまった。
「ふっ、悪かった」
「王太子であろう人がそんな下品なまねするのね」
「おいっ、殿下に失礼だ!!」
一人の騎士がそう言ってその女性の頭を下げさせようとしたがそれを手で制止する。
「いや、今のは俺が悪かったから見逃してやる。それよりフレアは今どこにいる?」
俺は少し冷静になった頭で尋ねる。
「あそこです。ここから5分くらいの路地裏にあるピンキーですよ」
「なんだと……あそこは別名売春宿と呼ばれているところじゃないか!! 今すぐ行くぞ」
俺は騎士たちを連れて高級宿ピンキーへと向かう。
「あの……そのあそこ殿下とはいえカップルしか入れませんが……」
この女性はなぜか後ろからついてきたようで、その鋭い指摘で俺たちは高級宿の前で立ち止まる。
「そうだった。ここは隣国が管理しているため権力が使えないんだった」
「私でよければ……ご一緒しましょうか?」
「フレア以外とこのような場所……だがしかし致し方ない。行って来る」
と騎士たちに言うと一人の騎士が言った。
「殿下、ですが……人の目もありますしそれだけはお止めになられた方がいいかと思います。わたくしが変わりに入ります」
「いや、フレアに何かあったら心配だから俺が入る。お願いできるか? 確か名前はジェニファーだったな?」
「あ、はい」
俺たちは無事受付をしてピンキーに潜入することができたのだった。
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