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 ジョージ様はにっこりとほほ笑みながら、私の頬に手を置く。

「顔は火照っているようだな。一応は私を男として認識しているようだな」

「あ、あの……その……手はなんですか? 仮にも私婚約者がいる身なのですけど……」

「そうなのかい? まぁ君のような美貌と豊満なボディを持っていれば婚約者の1人や2人いるだろうね」

「お、お褒め頂き光栄です。それでさっきのお話なんですけど……」

「そうだったね。私の婚約者になってほしいんだ」

「はい?」

 やっぱりさっきのはどうやら聞き間違いではなかったようだ。

「私を見て目がハートマークにならない女性など初めてなんだ。だから君こそ真実の相手なんじゃないかと思ってね」

 私を見つめる瞳があまりに熱っぽくて勢いに押されて「はい」と頷いてしまいそうになる。

 さすがは演者だわ!!

 けれど私は先程の女性の言葉を思い出して我に返った。

「もしかして……さっき言ってたファンサービスってこういうことだったんですね!! ちょっと私本気にしちゃいそうでした」

「えっ? う、うん? そうなるのか? ここまでひどい扱いされるのは初めてだよ」

 ジョージ様はケラケラと笑っている。

「何がそんなにおかしいのですか?」

「ハハハ、君の婚約者もさぞ大変だろうね。こんな鈍感な子だったら……でも余計に気に入ったよ。本気で狙おうかな?」

「もう、殿はこんなの私にもお優しいのですね」

「おー交わし方というか、演技も上手いな。気に入った。今度君も舞台に出てみるかい?」

「えっ? 待ってください。ファンサービスってどこまでなんですか? 私わからなくなってきました」

 怒涛のようにプロポーズされたかと戸惑っていたら、今度は舞台に出てみるかなんて……

 意味が分からなくて頭が追い付かない。

「今日はファンサービスはしなかったよ。言ったろ? なんだかまたあの人が揉めていたみたいだから。それに……今日は私としては無茶をしすぎたからね」

 ファンサービスはしていないということは舞台には立てるということだろうか。

 私は好奇心の方が勝っていたのでこう答えていた。

「……あの素晴らしい舞台には立ってみたいです!!」

「そうかい? なら決まりだね。明日から練習に参加できるかい?」

「あ、はい。よろしくお願いします」

「それでは朝8時に来てくれ。先程のレオに迎えに行かせるから劇場まで来てくれ」

「はい。わかりました」

 私は喜びを隠せない。
 劇を見られただけで幸せなのにこんな奇跡みたいなことってあるのかしら。

「それでは明日からよろしく」

 そう言ってジョージ様は投げキッスをして部屋から出て行った。

 私も部屋から出ようとすると、再びさっきの男の子がやってきて言った。

「ねぇ、おねえさんはジョージ様のこと好きなの?」

「えっ? そうね……演技は素晴らしいと思うけど、本当の姿を私は知らないから何とも言えないわ」

「そうですか……ならジョージ様を助けてあげてください」

「えっ? どういう意味……?」

「それは……」

 どこからか誰かが「レオーどこにいるんだ」と探しているようだ。

「呼ばれているんじゃない? 今日はありがとうね。小さいのに演技が上手ね」

「あ、ありがとう。じゃあ明日」

 照れくさそうに子供っぽい笑みを浮かべてその場から去っていく。

「さてと、帰りましょう」

 私は劇場を後にして家に帰ると、騎士たちが家を囲んでいたのだった。
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