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私はどうすれば婚約破棄できるのか研究するために演劇を見に行くことにした。
アマーレ劇場は、今日も大盛況で満席のためにチケットを買うことができなかった。
「もう私いつになったらこの演劇を観ることができるのかしら」
きっと父に言えばチケットなどすぐ手に入るだろう。だけどそんなことをすれば婚約破棄したがっていることがバレてしまう。それは防ぎたかったから頼まないでいたのだけど……
今日思い切って言ってしまった。
きっと友達のミーナが婚約破棄して幸せだと聞いたせいかもしれない。
これはまずい。父に怒られるかもしれない。
けれど考えてみる。殿下が一介の令嬢に婚約破棄を言い果たされたなど恥でしかないだろう。
なのできっと黙っていてくれるはずだとそう信じることにしよう。
それにしてもどうしてよ。早くいい案が知りたくて来たのにまた観れないなんて。
「あーあ、観てみたかったなー!!」
「お嬢さんどうしました?」
まるでどこかの絵画から飛び出してきたかのような綺麗な銀髪にスカイブルーの瞳をした美しい顔立ちの男性に思わず私は見入ってしまった。
「あ、あの……」
「私は怪しいものではありません。ってもしや……」
「えっ? なんですか?」
顔を近づけては、私を何度も上から下まで見てくると驚いたように言った。
「私のことを知らないなんてこんなことがあっていいのだろうか……もしやこの演劇をまだ観たことないのですか?」
「えっ、まぁ。ずっとチケットを買うために来るんですけどいつも満員御礼なので……」
「そうでしょう、そうでしょう。わたし……ってそうだ。ぜひ観て行って下さい」
そう言って私の手を握ると会場内へと入って行ったのだった。
「あの……私チケット持ってません!!」
「大丈夫ですよ」
そう言えばチケットを確認する年配の女性はニコニコとこっちを見ていた気がする。
もしかしてこの人って……
アマーレ劇場のご子息なのかしら?
私はよーく観察してみることにする。
年代は20代ってところかしら?
イケメン具合は殿下と同じくらいなのだけど……
見つめるだけで胸がドキドキしてくるのはどうしてだろうか?
今日殿下に婚約破棄を言ったことが、今さらながら遅れて心臓に負担がかかったのかしら?
「どうしました? いくら私が美しい顔だからって見つめすぎでは?」
「あの……その……申し訳ございませんでした」
目が合った瞬間、息が止まるかのように胸が苦しくなった。
「もしかして、私に何かなさりましたか?」
「何かとは……あぁ私を好きになってしまいましたか? 心配いりませんよ。ハハハ。みなさん魅了の魔法なんかいうものですから」
「やはり、ならこれは魅了の魔法のせいなのですね? びっくりしました」
「えっ? いや、今のは冗談ですよ?」
その男性が何か言っていたけど、連れて来られた場所から見た演劇の舞台のセットがすごすぎて何も頭に入ってこない。
「ちょっと、ジョージあなたなんでこんなとこに……ちょっとみんな気づいて見ているわよ。早く行くわよ」
「大丈夫だよ。このお嬢さんがさ、演劇を見たことないっていうから。立見席ならいいだろう?」
「ちょっと……もう何でもいいわ。行くわよ」
私は舞台に夢中だった。
全然違う世界がそこには広がっていた。
男性にお礼を言おうと振り返るとそこには誰もいなかったのだった。
アマーレ劇場は、今日も大盛況で満席のためにチケットを買うことができなかった。
「もう私いつになったらこの演劇を観ることができるのかしら」
きっと父に言えばチケットなどすぐ手に入るだろう。だけどそんなことをすれば婚約破棄したがっていることがバレてしまう。それは防ぎたかったから頼まないでいたのだけど……
今日思い切って言ってしまった。
きっと友達のミーナが婚約破棄して幸せだと聞いたせいかもしれない。
これはまずい。父に怒られるかもしれない。
けれど考えてみる。殿下が一介の令嬢に婚約破棄を言い果たされたなど恥でしかないだろう。
なのできっと黙っていてくれるはずだとそう信じることにしよう。
それにしてもどうしてよ。早くいい案が知りたくて来たのにまた観れないなんて。
「あーあ、観てみたかったなー!!」
「お嬢さんどうしました?」
まるでどこかの絵画から飛び出してきたかのような綺麗な銀髪にスカイブルーの瞳をした美しい顔立ちの男性に思わず私は見入ってしまった。
「あ、あの……」
「私は怪しいものではありません。ってもしや……」
「えっ? なんですか?」
顔を近づけては、私を何度も上から下まで見てくると驚いたように言った。
「私のことを知らないなんてこんなことがあっていいのだろうか……もしやこの演劇をまだ観たことないのですか?」
「えっ、まぁ。ずっとチケットを買うために来るんですけどいつも満員御礼なので……」
「そうでしょう、そうでしょう。わたし……ってそうだ。ぜひ観て行って下さい」
そう言って私の手を握ると会場内へと入って行ったのだった。
「あの……私チケット持ってません!!」
「大丈夫ですよ」
そう言えばチケットを確認する年配の女性はニコニコとこっちを見ていた気がする。
もしかしてこの人って……
アマーレ劇場のご子息なのかしら?
私はよーく観察してみることにする。
年代は20代ってところかしら?
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見つめるだけで胸がドキドキしてくるのはどうしてだろうか?
今日殿下に婚約破棄を言ったことが、今さらながら遅れて心臓に負担がかかったのかしら?
「どうしました? いくら私が美しい顔だからって見つめすぎでは?」
「あの……その……申し訳ございませんでした」
目が合った瞬間、息が止まるかのように胸が苦しくなった。
「もしかして、私に何かなさりましたか?」
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「やはり、ならこれは魅了の魔法のせいなのですね? びっくりしました」
「えっ? いや、今のは冗談ですよ?」
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「ちょっと……もう何でもいいわ。行くわよ」
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