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「マルク殿下、婚約破棄してください」
「フレア? 君は自分が何を言っているのかわかっているのか?」
「えっ、はい。今流行ってるいるではないですか? まさか殿下は知らな……」
「おいおいお前はまた……それは知っているわ!! 俺が言ってるのはそういうことではない。フレアは俺をいったい何だと思っているんだ?」
マルク殿下はサラサラヘアな金髪をかき上げながら、私を残念な子供を見るような目で見つめてくる。
「あのですね……マルク殿下はマルク殿下ですよ? この国の王太子、未来の国王です!!」
「そうだ。わかっているではないか。なら婚約者のフレアはなんだ?」
「私ですか……お飾り妻では?」
「はぁ」
大きなため息を1つこぼす姿は、カッコよさを半減させてしまう。
「ため息をつくと幸せが逃げますよ」
「いいや。俺はお前の愛さえあれば他の幸せなどどうでもいいんだがな……どうしてこうも伝わらないのだろうか」
頭を抱えているので、いつもの片頭痛だろうとそっと頭を撫でてあげる。
「ナデナデ。痛いの痛いのとんでいけー」
「はぁ。お前はどうして……そうなるんだろうな。鈍感すぎるというか……でも俺もあれだよな。頭を撫でられると嬉しくなってしまうんだからこれが惚れた弱みだよな」
「マルク殿下、何か言いましたか?」
「マジか……聞いていなかったのか。はぁ」
「殿下これで3つの幸せが逃げましたよ。私が全部回収しますね」
私は大きく息を吐いてから一気に吸い込む。
スーハ―
「ゴホッゴホッ」
「バカだな。そんな勢いよく吸い込むからだ。誰かいるか?」
「はい殿下」
「フレアにお水を持ってきてくれ」
「かしこまりました」
執事のクロエがなぜかニコニコと笑って私を見ている。
「殿下そんな面白い顔していますか?」
「違うよ。は……」
殿下は口を抑えていた。
きっとまたため息をつく予定だったのだろう。
昔からため息ばかり出る殿下を元気づけるためにと私が呼ばれたのだ。
宰相として働いていた父が殿下と同じ年齢だという理由で娘の私を紹介したらしい。
それ以来私は、時間があればお城にやってきては殿下の話し相手になっていた。
正直ため息ばかりつくので、殿下は私のことを嫌っているとずっと思っていた。
なのに婚約の話が出たので驚いた。
父からは「殿下と結婚できることは最高のことでだな……」といかに素晴らしい話なのかと説き伏せられて別に好きな人もいないし、周囲も親が決めた相手と婚約していたので何も思っていなかったのだけど。
親友であるレイナが騎士団長レオと婚約破棄して、幼馴染のエリックと結婚すると聞いた時には涙が出そうになった。
ずっと2人は好き同士だったけど婚約を機に別れてしまった。
だから結ばれずに終わるのかと思っていたからだ。
やっぱり結婚するなら好きな人と結婚したい。
そう思ったから婚約破棄を申し出てみたけどやはり簡単ではなかったらしい。
「……おい、おい、フレア? 聞いているか? また考え事しているのか? ほら帰ってこい」
その声でハッとすると目の前にいる殿下に驚いてしまった。
「あっ、殿下? いつの間に私の元へ来てくれたのですか? あ、水ですか?」
殿下が持ってきたグラスを受け取り、ぐびーっと一気飲みした。
「はぁ。フレアは本当にどうすれば俺を見てくれるんだ?」
「はい? 今も目の前で見ているではないですか?」
「そうじゃないんだよ!! もう……でもそんな鈍感なお前もかわいんだから……俺もやばいな」
「どうしました? やばいってまた頭痛ですか? 頭撫でますか?」
「いやいいよ。しかし俺はフレアとは婚約破棄しないからな。それだけは覚えておけ?」
「えっー!!」
「えーっじゃない!! フレア頼むよ。そんな残念そうな顔しないでくれ。地味に凹むんだよ」
「なにかわかりませんが、殿下のイケメン度がどんどん減少してきているのでそろそろ帰りますね。失礼します」
私はそのまま城を後にすることにした。
部屋の中には大きなため息が充満していたのだった。
「フレア? 君は自分が何を言っているのかわかっているのか?」
「えっ、はい。今流行ってるいるではないですか? まさか殿下は知らな……」
「おいおいお前はまた……それは知っているわ!! 俺が言ってるのはそういうことではない。フレアは俺をいったい何だと思っているんだ?」
マルク殿下はサラサラヘアな金髪をかき上げながら、私を残念な子供を見るような目で見つめてくる。
「あのですね……マルク殿下はマルク殿下ですよ? この国の王太子、未来の国王です!!」
「そうだ。わかっているではないか。なら婚約者のフレアはなんだ?」
「私ですか……お飾り妻では?」
「はぁ」
大きなため息を1つこぼす姿は、カッコよさを半減させてしまう。
「ため息をつくと幸せが逃げますよ」
「いいや。俺はお前の愛さえあれば他の幸せなどどうでもいいんだがな……どうしてこうも伝わらないのだろうか」
頭を抱えているので、いつもの片頭痛だろうとそっと頭を撫でてあげる。
「ナデナデ。痛いの痛いのとんでいけー」
「はぁ。お前はどうして……そうなるんだろうな。鈍感すぎるというか……でも俺もあれだよな。頭を撫でられると嬉しくなってしまうんだからこれが惚れた弱みだよな」
「マルク殿下、何か言いましたか?」
「マジか……聞いていなかったのか。はぁ」
「殿下これで3つの幸せが逃げましたよ。私が全部回収しますね」
私は大きく息を吐いてから一気に吸い込む。
スーハ―
「ゴホッゴホッ」
「バカだな。そんな勢いよく吸い込むからだ。誰かいるか?」
「はい殿下」
「フレアにお水を持ってきてくれ」
「かしこまりました」
執事のクロエがなぜかニコニコと笑って私を見ている。
「殿下そんな面白い顔していますか?」
「違うよ。は……」
殿下は口を抑えていた。
きっとまたため息をつく予定だったのだろう。
昔からため息ばかり出る殿下を元気づけるためにと私が呼ばれたのだ。
宰相として働いていた父が殿下と同じ年齢だという理由で娘の私を紹介したらしい。
それ以来私は、時間があればお城にやってきては殿下の話し相手になっていた。
正直ため息ばかりつくので、殿下は私のことを嫌っているとずっと思っていた。
なのに婚約の話が出たので驚いた。
父からは「殿下と結婚できることは最高のことでだな……」といかに素晴らしい話なのかと説き伏せられて別に好きな人もいないし、周囲も親が決めた相手と婚約していたので何も思っていなかったのだけど。
親友であるレイナが騎士団長レオと婚約破棄して、幼馴染のエリックと結婚すると聞いた時には涙が出そうになった。
ずっと2人は好き同士だったけど婚約を機に別れてしまった。
だから結ばれずに終わるのかと思っていたからだ。
やっぱり結婚するなら好きな人と結婚したい。
そう思ったから婚約破棄を申し出てみたけどやはり簡単ではなかったらしい。
「……おい、おい、フレア? 聞いているか? また考え事しているのか? ほら帰ってこい」
その声でハッとすると目の前にいる殿下に驚いてしまった。
「あっ、殿下? いつの間に私の元へ来てくれたのですか? あ、水ですか?」
殿下が持ってきたグラスを受け取り、ぐびーっと一気飲みした。
「はぁ。フレアは本当にどうすれば俺を見てくれるんだ?」
「はい? 今も目の前で見ているではないですか?」
「そうじゃないんだよ!! もう……でもそんな鈍感なお前もかわいんだから……俺もやばいな」
「どうしました? やばいってまた頭痛ですか? 頭撫でますか?」
「いやいいよ。しかし俺はフレアとは婚約破棄しないからな。それだけは覚えておけ?」
「えっー!!」
「えーっじゃない!! フレア頼むよ。そんな残念そうな顔しないでくれ。地味に凹むんだよ」
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私はそのまま城を後にすることにした。
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