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番外編

君と二人だけの家

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今回もレノサイドの短編小説です。

****************



 ――――それは年が明けてすぐの事だった。
 私は坊ちゃんを連れてある場所へと来ていた。

「おおー、めちゃくちゃ綺麗になってんじゃん!」

 坊ちゃんは家の中に入り、辺りを見回して言った。
 その家とは、父であるバレンシアがシアに扮して住んでいた家だ。

「でも、どうしてここに俺を連れてきたんだ?」
「私の家になりましたので、ご報告を」

 私が何気なく伝えると坊ちゃんは驚いた顔を見せた。本当に感情が顔に出る人だ……面白い。

「えっ、レノの家になった!?」
「はい。父が住んでいましたが、私がそのまま買い取りましたので」
「買い取った!? なんで!?」

 坊ちゃんは不思議そうに私に尋ねた。それは無理もないだろう。
 最近ではほとんど坊ちゃんの部屋に入り浸っているが、私個人に与えられている部屋もあるし、別邸にいればヒューゴさんの美味しい料理も食べられる。だからわざわざ家を買う理由などないはずなのだ、けれど私は……。

「父はもう戻ってきませんし、元々長く住む予定ではないと聞いていました。なので、そのまま」
「そーいう意味じゃない! お前、別邸を出る気なのか?!」

 坊ちゃんは心配顔で私に尋ねた。この顔が見たかったから遠回しに答えたが……やっぱりちょっと意地悪だっただろうか。
 私は少しの罪悪感を覚え、今度こそ正直に答えた。

「いえ、出ませんよ。貴方の傍にいると言ったでしょう? でも、私にだって男の矜持というものがあります」
「おとこのキョージ?」

 なんだそれは? みたいな顔で坊ちゃんは私を見つめてくる。

「今ある場所は、全て公爵家に与えられた場所です。だから自分で何かを得たかったのです」
「それが、この家なのか? で、でも公爵家に与えられたものって言っても、それはレノが仕事をきちんとしてるからだろ? 別にタダで与えられているってわけじゃ」
「そうかもしれません。ですが気持ちの問題なのですよ。それに、これは私の夢でしたから」
「レノの夢? 家を持つことが??」

 坊ちゃんは緑の瞳を大きく開けて、私を見つめる。だからその瞳を見つめ返して私は答えた。

「いいえ。愛する人とこじんまりとした家で暮らすことが」

 私は告げながら、そっと坊ちゃんの手を握る。そうすれば坊ちゃんの頬がほんのりと赤く染まった。

「なっ! ……レノにそんなかわゆい夢があったとは知らなかったよ」

 坊ちゃんは目を逸らしながら小さく呟く。

「初めて口にしましたから。ですので坊ちゃん、たまにはこの家で私と二人で過ごしてくれますか?」

 私が尋ねれば坊ちゃんは逸らした目をこちらに向け、もごもごと口を動かした。

「レノがしたいなら……そんぐらい付き合う」
「ありがとうございます」

 私が笑って言えば、坊ちゃんは照れた顔を見せる。そしてその照れくささを隠す為か坊ちゃんは視線を部屋へと向けた。

「なぁレノ、家の中を見て回ってもいい?」
「ええ、勿論ですよ」

 私が答えると、坊ちゃんはすぐに家の中を探検し始めた。とはいっても平屋なのですぐに終わるが。
 けれど坊ちゃんは台所、洗面所や風呂場を楽し気に見て回り、私はその後姿を見ながら後ろ手で密かに鍵を閉めた。

 ……本当に危機感のない人ですね。

 私はそう思うけれど、坊ちゃんは気がつかずに最後の部屋に辿り着く。

「ここが寝室か~。綺麗にしてあるな……それにしてもベッド、やけに綺麗だな。新しいのを買ったのか?」

 坊ちゃんは振り返り、背後に立つ私に無邪気に尋ねてきた。なので私は坊ちゃんをそのままベッドへと押し倒す。

「わっ!? な、なんだ?!」

 坊ちゃんは驚くが、私はそんな坊ちゃんを見下ろしながら答えた。

「ええ、ベッドだけは新調しましたよ。私とアナタが使うものですから」

 ニコリと笑って言えば、ニブちんの坊ちゃんでも意味を察したようで、言葉もなく口をパクパクと動かした。まさに罠にかかった子ウサギ……いや、子カエルといった所だろうか。

「という訳でさっそく使いましょうか、坊ちゃん?」

 私はそう告げて坊ちゃんの服を脱がそうとする。けれど、坊ちゃんはささやかな抵抗をした。

「ちょ、ちょっと、何しようとしてんだ。お前は! まだ昼過ぎだぞ!?」
「昼過ぎでもいいじゃないですか。ここには誰もいないのですから、イチャイチャしましょう?」
「い、イチャイチャッ! それに誰もいないって……もしかして、お前が家を買ったのってこれが目的ッ!?」

 坊ちゃんは私が家を購入した本当の理由に気がついたようだ。
 別邸でも坊ちゃんに触れることはできるが、いつも誰かの目を気にしなければならない。けれど、ここならば気にせずに坊ちゃんに触れられる。いつだって、どこだって。

「そうだったとして、なにか問題あります?」

 私がニコニコしながら答えると坊ちゃんは私をじとっと見つめた。

「ひぃ、このスケベ! 変態! エロ大魔王!!」
「おや、エロ大魔王ですか。新しい名ですね。ではその名に恥じぬよう、振舞いましょうか」
「ひぇ!? な、何をする気だ!」
「何って……それは、ねぇ?」

 私が上着を脱ぎながら微笑んで言えば、坊ちゃんは「ひ」と息を飲んだ。

「さぁ、坊ちゃん。私と楽しい時間を過ごしましょうか?」
「なにが楽しい時間だッ! この前したばっかだろ! ちょっとは我慢しろ!!」

 そう言われ、私は年明け前に坊ちゃんと触れ合った事を思い出す。あれは確か、旦那様の手紙が届いた日の夜の事だ。

「この前って年明け前でしょう? それにアレはしたとは言いません」
「ハァ?! おまっ、よく言うな!! 俺はキスだけって言ったのに、ちゅうちゅうと人の体に吸い付いて! その上、俺の息子にまで! 挙句には!!」

 坊ちゃんはその先を言うのが恥ずかしいのか、ぐぅっと口を閉じた。なので私が代わりに答える。

「素股をしただけでしょう? 挿れてないんですから、してないのも同じですよ」
「同じじゃねーし! あんなのセッ、セッ、セッ……したのも一緒だ!!」

 坊ちゃんは恥ずかしいのか言葉を濁して言った。

「でも、坊ちゃんも気持ちよかったでしょ? 私に擦られて、後ろから突かれて、何回もイってましたもんね?」

 私が意地悪心で告げると坊ちゃんはとうとう顔を真っ赤にし「うぎゅっ」と唸った。

「というわけで、今日も気持ちよくなりましょうね?」

 私はちゅっと坊ちゃんのマシュマロみたいに柔らかい頬にキスを落とす。そして耳元で囁いた。

「ああ、それと。ここは森の中ですので、別邸でのように我慢せずに声を出していいですからね? 今日はいっぱい聞かせてください、坊ちゃんの可愛い声」

 間近で見つめて言えば、坊ちゃんには許容オーバーだったのか近くにあった枕を手に取ると私の顔にむぎゅりっと押しつけた。

「離れろ、このエロ大魔神めぇぇぇーーっ!!」

 ……大魔王から大魔神とは、随分と早いキャリアアップですね。では、ご期待に応えるとしましょうか。

 私は枕を押しつけられつつも坊ちゃんの手を取り、そのまま押し倒した。
 そして、どうなったかと言うと。




 ――――思う存分、坊ちゃんの可愛い声が聞けた、という事だけお教えしておきましょう。



*******************


エロ大魔神に昇格したレノでした(笑)

また来週の水曜日に、今度はキトリーサイドの短編を投稿します。来週もまたお楽しみに(*´ω`*)
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