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最終章「プロポーズは指輪と共に!」

10 フェルナンドとヒューゴ

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 ――翌日の昼。
 俺は寝不足で、遅くに目を覚ました。なので、レノはとっくに出かけていて。

 ……今日もレノはシアさんのところか。お爺に頼まれたからって毎日行き過ぎじゃねーのぉ? 『昨日は突然夜中に来て悪かったな』って言いたかったのに。

 俺は遅めの朝食を取った後、運動がてら庭を散歩し、花壇を眺めながら口を尖らせていた。そして眠る前に落ち着いたはずのムカムカが俺の中でまた芽生え、なんなら昨日よりムカムカしていた。

 ……今までこんなこと、なかったのに。……悪いものは食ってないし。病気でもないし。なんだろ? それに今日は、昨日聞き忘れてたサラおばちゃんの事を尋ねたかったのにな。

 俺はスケッチブックに描かれていた若い少女の絵を思い出す。

「うーん、あれはサラおばちゃん……なのかなぁ」

 確証はない、だが俺の勘が『あの絵はサラおばちゃんだ』と囁く。

 ……レノは知っているのかな。でもレノはサラおばちゃんが神聖国で暮らしていたらしいってことしか言わなかったし、知らないのかも? まー、家族にも内緒にしてることってあるよなぁ。けど、もしサラおばちゃんが神聖国で皇女様の侍女をしていたなら、どうしてバルト帝国へ? 皇女様と一緒に来たわけでもなさそうだし。うむむ。

 俺は眉間に皺を寄せて考える。
 しかし、そこへ庭の手入れをしていたフェルナンドがやってきた。

「おや、坊ちゃん。どうしたんですか、こんなところで」

 フェルナンドは朗らかに笑って言う。

「フェルナンド。……別にどうもしてないけどぉ」

 そう答えたが、子供の頃から俺を知っているフェルナンドに嘘は通用しなかった。

「レノがいなくて不貞腐れてる、とか?」
「べ、別にそんなんじゃないし!」

 フェルナンドに言われて俺はすぐに否定する。でもフェルナンドはくすくすっと笑った。

 ……この見透かされてる感! ぐぅ、これが大人というものか。……俺も精神年齢は大人だけど(たぶん)。

「ちょっと考え事をしてただけだよ」
「考え事ですか、何か悩み事でも?」
「うん、サラおばちゃんの事で」

 俺が答えるとフェルナンドはピンッと何かに気がついた顔をみせた。きっとヒューゴから昨日の話を聞いていたのだろう。

「サラさん、ですか」
「フェルナンド、サラおばちゃんの昔話とか聞いたことない?」

 俺はフェルナンドに尋ねてみる。フェルナンドとサラおばちゃんは本邸で一緒に働いていたから、何か知っているかもしれないと思ったのだ。
 でもフェルナンドは首を横に振った。

「いいえ、サラさんの昔の話は聞いたことがないですね。本邸に来る前の事はあまり言いたくなさそうにしてましたし。でも、気になるなら執事長に聞いてみては? 元々サラさんは執事長のお知り合いでしたし。それに奥様もご存じなのでは?」

 フェルナンドに言われて俺はハッとする。

 ……そうだ! なんでその事を忘れてたんだろ?! お爺が悪徳貴族の家から追い出されたサラおばちゃんとレノを保護したって話じゃん!! それに母様は子供の頃、皇女様(ノエルのお母さん)と交流があったんだから、もしかしたらそこでサラおばちゃんの事を知ってたのかも。だから使用人として雇い入れる事を許可したのか!?

「いい答えになりましたか?」

 フェルナンドに聞かれ、俺は頭を上下に振る。

「うん! ありがとう、フェルナンド」
「いいえ、坊ちゃんのお役に立てたなら」

 フェルナンドはニコッと笑って言った。だから俺は告げる。

「いつだって役に立ってくれてるよ。こうして別邸まで一緒に来てくれて。いつもありがとう」

 俺がお礼を言うと、フェルナンドは照れた顔を見せた。

「そんな、大袈裟ですよ」
「大袈裟じゃないよ。フェルナンドもヒューゴも一緒に来てくれて、俺、すごい助かってるもん。二人がいてくれてよかったよ」
「坊ちゃん、それは俺達の台詞ですよ」

 フェルナンドはそう俺に言った。でも俺は、二人に迷惑をかけてばかりで何かした覚えはない。

 ……何かしたかな? 子供の頃から迷惑しか、かけていないよーな?

 しかしそんな事を考えていると、そこへヒューゴがやって来た。

「フェル、坊ちゃんもここにいたんですか」
「ヒュー」
「ヒューゴ」

 フェルナンドと俺は現れたヒューゴに視線を向ける。

「もう昼食の時間ですよ」

 どうやら昼飯を呼びに来たらしい。でも俺は遅めの朝食をとったからまだお腹は空いてない。

 ……今日は寝坊したからなぁ。今夜は早く寝れるといいけど……昨日はなんであんなに眠れなかったんだろ。今日もレノに添い寝させるか?

 なんて考えてると、そそそっとヒューゴが俺に近づいてきた。

「ところで坊ちゃん、レノとはどこまで進んだんです?」

 突然ヒューゴはにやついた顔で俺に尋ねてきた。なので俺は思わず、素っ頓狂な声を上げる。

「は!?」

 ……どこまでって、何も進んでないですけど!? いや、まあ神聖国でレノに襲われそうになって、ティクビを触られたけども。チューだってもう慣れちゃって……ゴニョニョ(恥)

 俺は神聖国での事を思い出して、ちょっと恥ずかしくなる。けどそんな俺を見てヒューゴはますます楽し気な顔で俺を見つめた。

「ははーん、やっぱり進展があったわけですね? 昨日の夜も、レノの部屋に行っていたようですし?」
「なんでその事!」
「昨日、俺も夜中に目が覚めて水を飲みに厨房に行ったんですよ。その時、見かけましてね。坊ちゃんも積極的ですね~、部屋を訪ねるなんて」

 ヒューゴに言われて俺はすぐに撤回する。

「ち、違うよ! 昨日の夜は眠れなくて、レノに添い寝してもらいに行っただけ!」

 俺が正直に答えるとヒューゴは信じられない、という顔で俺を見つめた。
 なんだよぅ!

「それ、本気で言ってます?」
「本気って、事実だけど」

 俺が答えるとヒューゴは頭を抱え、小声で呟いた。

「ここまで坊ちゃんがお子ちゃまだとは。レノ、かわいそ」

 ……ちょっと、聞こえてますけケド?! それにお子ちゃまってなんだ、お子ちゃまって! 

 俺はそう思うがヒューゴは俺の顔をちらっと見た。

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