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第五章「告白は二人っきりで!」

7 ノアさん

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「私が出ます」

 レノは立ち上がるとすぐにドアへと向かった。そしてドアを開くと、そこにはノアと呼ばれていた若い女性神官さんが立っていた。

「失礼します。お茶とお菓子をお持ちいたしましたが、いかがでしょうか?」

 ノアさんの手にはカートがあり、どうやらお茶セットを持ってきてくれたようだ。ちょうど甘いものが欲しいと思っていた所なので、ありがたい。

「レノ、ぜひ入ってもらって」

 俺はすかさず声をかけ、レノはドアを大きく開けてカートを押すノアさんを中に入れた。
 ノアさんは二十代後半ぐらいの見た目で、黒髪に黒い瞳を持つ、大人しい感じの人だ。そしてここでは珍しい和顔。なので俺の良く知る庭師を思い出す。

「あの、もしかしてノアさんは東にあるワカ島の出身ですか?」

 俺が尋ねるとノアさんは少し驚いた顔を見せた。

「はい。よくご存じで」
「いや、うちの庭師もワカ島の出身なので。あ、その前に名乗ってませんでしたね。俺はキトリー、こっちは従者のレノと言います。お茶、ありがとうございます。ちょうど飲み物が欲しいと思っていたので助かりました」

 俺がベッドから立ち上がって言うと、ノアさんはにこやかな笑顔を見せた。

「お疲れのところお邪魔かと思いましたが、良かったですわ。……改めまして、私はランネット様の世話係を仰せつかっております、ノアと申します。ランネット様からキトリー様にご不便がないよう言われておりますので、なんでもおっしゃってくださいませ」
「ありがとうございます」

 俺はお礼を言いつつ、ノアさんを見る。

 ……姉ちゃんもこの顔立ちを懐かしく思ってノアさんを世話係にしてるのかな? 俺もフェルナンドが傍にいると、ついついほっこりしちゃうもんね~。やっぱ洋食続きだと和食が食べたくなる、みたいな。ま、あの姉の事だからそれだけの理由じゃないだろうけど。

 俺はうちにいる庭師を思い出す。だが、その庭師が家を出る時に心配そうな顔をしていたことも思い出し、俺はノアさんに早速頼みごとをすることにした。

「あ、ノアさん。早速お願いがあるんですけど、手紙を家に送りたいのでペンと便箋を貰えませんか?」
「便箋ですね、畏まりました。すぐにご用意いたしましょう、他に何か必要なものはございますか?」
「今のところは特に。……何もないよな? レノ」
「ございません」

 俺が問いかけるとレノはすぐに頷いた。

「では後程、お手紙をお持ちいたしますね。今は先にお茶を淹れさせていただきます」

 ノアさんはそう言うと、カートの上でお茶の準備をし始め、部屋にあったテーブルの上にお菓子とティーカップを並べ始めた。その手際の良さはレノに負けていない。

 ちなみにテーブルの上を見れば、大きなお皿に小さなフルーツタルトがいくつか置かれている!
 オレンジにぶどう、キウイに桃にラズベリー、夏が旬の果物がいっぱいだ。

 ……うわぁー、おいしそう! 神聖国って南にあるから果物がたくさん採れるんだよなぁ。それにしても、色々な果物が乗ってて宝石箱みたい。じゅるるるっ。

 そして俺が涎を垂らしそうになりながら見つめている間にノアさんは紅茶を淹れたティーカップをテーブルに二つ並べた。

「こちらをどうぞ」

 ノアさんはにこやかに言い、俺はすぐさま席に着く。目の前には美味しそうなフルーツタルトに、美しいティーカップに淹れられた紅茶。

「レノ、早速頂こう」

 俺はきりっとした顔でレノに言う。そうすればレノは少し呆れた顔を見せたが、向かいの席に座った。

「では、私は便箋とペンを持ってきますので、少々お待ちください」
「お願いします」

 俺の言葉の後、ノアさんは頭を軽く下げて部屋を出て行った。途端、俺の顔は崩壊する。

「レノ、レノ~っ! このフルーツタルト、めっちゃうまそうじゃなーい?!」

 俺がフルーツタルトが乗ったお皿を掲げて言う。そのノリはJK(女子高生)にも負けないノリだ。そしてそんな俺をレノはさっきより呆れた顔で見せた。

「本当、キトリー様はお菓子に目がないですね」
「だって見てよ、この造形美! 食べるのもったいないぐらいじゃん、食べるけど」
「アナタのその切り替えの早さは見習いたいものですよ」

 レノはそう言いつつ紅茶を口にした。

 ……なんだよー。こんな美しいフルーツタルトみたら、誰だって興奮するもんだろー。レノにはわかんないかな~、この美学!

 俺はそう思いつつ小さなフルーツタルトを片手で取る。そして「では、いっただっきまーす!」と大きな口を開けて早速パクリッと食べた。
 そうすれば、タルトのサクッとした生地に甘すぎないカスタード、旬で甘い果実たちが一気に口の中に広がる。

「んっ、んっ、んっまーい!」

 俺は叫んだ後、そのままパクパクッと二口で食べきってしまう。疲れもあるせいか、甘さが体の奥まで染み渡る。糖分サイコー!!

 ……ん~、やっぱりお菓子って偉大。長旅の疲れが癒されるぅ~。

 俺はもぐもっぐしながら、しみじみと思う。そしてもう一つ食べようと手を伸ばしたが、取ろうとしたフルーツタルトを横からレノに取られてしまった。

「あっ!」
「一人で食べないでください」

 レノはそう言うとパクッとフルーツタルトを食べた。そうすれば、レノの瞳が僅かに動く。うまいものを食べた時の反応だ。でもレノは「まあまあですね」と答えた。

 ……全く、素直じゃない奴じゃのぅ。

 俺はそんな事を思いつつ、もう一つのフルーツタルトを手に取ってパックンと口にした。

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