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第五章「告白は二人っきりで!」
5 お泊りすることになりました
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――姉ちゃんから話を聞いて数十分後。
「キトリー様!」
俺が隣の部屋から姉ちゃん、ことランネット様と出てくるなりレノは椅子から立ち上がった。
「レノ、待たせたな」
「いえ、私は構いませんが……一体、中で何を?」
「ちょっと珍しいものを見せてもらっただけだよ。あと少し話をしただけ」
俺は言葉を濁しながら答える。
……さすがにレノにランネット様が前世の姉で、色々とお願い事をされてた。なんて言えないからなぁ。
俺は少し心配顔のレノを見て思う。
「まあ、そんだけだから。待たせて悪かったな」
「ごめんなさいね。キトリー様とついつい話し込んでしまって」
ランネット様である姉ちゃんが謝るとレノは「いえ」と小さく返事をした。
けれど、そこへドアがノックされる。
「ランネット様。デンゼルです、失礼してもよろしいでしょうか?」
ドアの向こうから聞こえてきたのはデンゼルさんの声だった。
「ええ、どうぞ」
姉ちゃんが答えると「失礼します」という声と共にドアが開き、デンゼルさんが現れる。そして俺とレノを見た。
「やはり、まだこちらにおられましたか。帰りの馬車のご用意が出来ましたので、ご連絡に参りました」
デンゼルさんはどうやら俺達の帰りの手配が終わった事を報せに来てくれたらしい。しかし、今となっては無駄足を踏ませてしまった。
「あー、その事なんだけど」
「キトリー様たちは数日、こちらに滞在されるようよ」
俺が言う前に姉ちゃんが微笑みながら告げ、デンゼルさんは勿論レノも驚いた顔を見せた。そしてレノはすぐに俺に問いかける。
「キトリー様、一体どうして」
「あー、ランネット様と話してやっぱりちょっと神聖国に滞在しようかなーって。ほら、俺がここに来ることなんてまた数年後とかになるかもしんないじゃん?」
「しかし先程までは帰ると」
「うん、さっきまではそのつもりだったんだけど。気が変わったの」
俺が告げるとレノは疑わしそうな目で俺を見つめる。なので俺は目を合わせないでおいた。
……俺だってさっきまでは帰る気でいたんだからな。でも、お願いされちゃったからしかたないだろー。
「そうでしたか! では、お部屋をご用意しなければいけませんね」
「ええ。デンゼルさん、お願いしていいかしら?」
「はい、畏まりました」
デンゼルさんは元々泊ることを勧めていたので、驚きはしても嬉々として返事をした。
「すみません、デンゼルさん。二度手間を取らせてしまって」
俺はデンゼルさんにぺこりと頭を下げる。でもデンゼルさんはにこやかに返事をした。
「いいえ、構いませんよ。こんなことはキトリー様におかけしたご迷惑ほどではございませんから」
……デンゼルさん、いい人!
俺はにこやかに言うデンゼルさんの後ろに後光を感じる。しかし「そうとなったら、早くお部屋をご用意しなければいけませんね。私は手配しに行きますので、またお呼びに参りますね」と言うなり、素早く部屋を出て行った。
なんとも行動が早い人だ。
けれど、そう思っていたらデンゼルさんとは入れ違いに若い女性神官がやって来た。
「ランネット様、ご祈祷のお時間です」
「ああ、もうそんな時間だったわね。ノア、私は一人で祭壇へ向かうからこちらの御客様を応接間にご案内してくれる? その後、その事をデンゼルさんに伝えて」
姉ちゃんは迎えに来た神官に頼んだ。そうすればノアと呼ばれた神官さんは「はい、畏まりました」と返事をした。
「では、キトリー様。私はお祈りをしに行かねばなりませんので、失礼しますわ。また時間が空き次第、お話しましょう?」
姉ちゃんはランネット様として俺に言った。なので俺もキトリーとして答える。
「はい、わかりました。また後でお会いしましょう」
俺が返事をすると姉ちゃんはにこっと笑って、軽やかに部屋を去って行った。
そして残った俺とレノと言えば。
「では、応接間にご案内させていただきますね」
ノアと言う神官さんに連れられて応接間に案内されることになったのだった。
◇◇
それから一時間後。
「はぁーっ、なーんか疲れたぁー」
俺は用意されたツインの客室ベッドに早速寝転がって呟いた。
大神殿はいわゆる王城なので、客室もきちんと用意されている。けれど、やっぱりそこは大神殿の中に作られているので客室内に華美なものはなく、泊まるには困らない程度に整えられていた。
でも部屋はきちんと掃除が行き届いているのか、どこを見てもピカピカだ。
……無駄に調度品とかあるより、きちんと掃除されてる方が意外と綺麗にみえたりするよな~。
俺は寝っ転がりながら呑気にそんなことを思う。けれどそんな俺の視界にレノがぬっと入ってくる。
「キトリー様、理由を教えてもらいましょうか」
レノは寝転がる俺を見下ろし、尋ねた。なので俺は体を起こす。
「理由って?」
「急に心変わりされた理由です。なぜ、帰ることを取りやめてこちらに滞在することに決めたのですか? ランネット様から何か言われましたね?」
レノは鋭い目で俺を見つめた。そこには確信めいたものが光っている。
……まあ、あれだけ帰るって言ってたのに急に心変わりしたら、そうなるよね。さっきはデンゼルさんがいた手前、話を流したけど……ま、レノになら言ってもいいでしょ。というか、言わないとずっとしつこく問いかけられそうだし。
俺はそう思ってランネット様が前世の姉である事以外をレノに話すことにした。
実はランネット様に、この神聖国で起こっている継承問題を解決する事を依頼された事を。
「キトリー様!」
俺が隣の部屋から姉ちゃん、ことランネット様と出てくるなりレノは椅子から立ち上がった。
「レノ、待たせたな」
「いえ、私は構いませんが……一体、中で何を?」
「ちょっと珍しいものを見せてもらっただけだよ。あと少し話をしただけ」
俺は言葉を濁しながら答える。
……さすがにレノにランネット様が前世の姉で、色々とお願い事をされてた。なんて言えないからなぁ。
俺は少し心配顔のレノを見て思う。
「まあ、そんだけだから。待たせて悪かったな」
「ごめんなさいね。キトリー様とついつい話し込んでしまって」
ランネット様である姉ちゃんが謝るとレノは「いえ」と小さく返事をした。
けれど、そこへドアがノックされる。
「ランネット様。デンゼルです、失礼してもよろしいでしょうか?」
ドアの向こうから聞こえてきたのはデンゼルさんの声だった。
「ええ、どうぞ」
姉ちゃんが答えると「失礼します」という声と共にドアが開き、デンゼルさんが現れる。そして俺とレノを見た。
「やはり、まだこちらにおられましたか。帰りの馬車のご用意が出来ましたので、ご連絡に参りました」
デンゼルさんはどうやら俺達の帰りの手配が終わった事を報せに来てくれたらしい。しかし、今となっては無駄足を踏ませてしまった。
「あー、その事なんだけど」
「キトリー様たちは数日、こちらに滞在されるようよ」
俺が言う前に姉ちゃんが微笑みながら告げ、デンゼルさんは勿論レノも驚いた顔を見せた。そしてレノはすぐに俺に問いかける。
「キトリー様、一体どうして」
「あー、ランネット様と話してやっぱりちょっと神聖国に滞在しようかなーって。ほら、俺がここに来ることなんてまた数年後とかになるかもしんないじゃん?」
「しかし先程までは帰ると」
「うん、さっきまではそのつもりだったんだけど。気が変わったの」
俺が告げるとレノは疑わしそうな目で俺を見つめる。なので俺は目を合わせないでおいた。
……俺だってさっきまでは帰る気でいたんだからな。でも、お願いされちゃったからしかたないだろー。
「そうでしたか! では、お部屋をご用意しなければいけませんね」
「ええ。デンゼルさん、お願いしていいかしら?」
「はい、畏まりました」
デンゼルさんは元々泊ることを勧めていたので、驚きはしても嬉々として返事をした。
「すみません、デンゼルさん。二度手間を取らせてしまって」
俺はデンゼルさんにぺこりと頭を下げる。でもデンゼルさんはにこやかに返事をした。
「いいえ、構いませんよ。こんなことはキトリー様におかけしたご迷惑ほどではございませんから」
……デンゼルさん、いい人!
俺はにこやかに言うデンゼルさんの後ろに後光を感じる。しかし「そうとなったら、早くお部屋をご用意しなければいけませんね。私は手配しに行きますので、またお呼びに参りますね」と言うなり、素早く部屋を出て行った。
なんとも行動が早い人だ。
けれど、そう思っていたらデンゼルさんとは入れ違いに若い女性神官がやって来た。
「ランネット様、ご祈祷のお時間です」
「ああ、もうそんな時間だったわね。ノア、私は一人で祭壇へ向かうからこちらの御客様を応接間にご案内してくれる? その後、その事をデンゼルさんに伝えて」
姉ちゃんは迎えに来た神官に頼んだ。そうすればノアと呼ばれた神官さんは「はい、畏まりました」と返事をした。
「では、キトリー様。私はお祈りをしに行かねばなりませんので、失礼しますわ。また時間が空き次第、お話しましょう?」
姉ちゃんはランネット様として俺に言った。なので俺もキトリーとして答える。
「はい、わかりました。また後でお会いしましょう」
俺が返事をすると姉ちゃんはにこっと笑って、軽やかに部屋を去って行った。
そして残った俺とレノと言えば。
「では、応接間にご案内させていただきますね」
ノアと言う神官さんに連れられて応接間に案内されることになったのだった。
◇◇
それから一時間後。
「はぁーっ、なーんか疲れたぁー」
俺は用意されたツインの客室ベッドに早速寝転がって呟いた。
大神殿はいわゆる王城なので、客室もきちんと用意されている。けれど、やっぱりそこは大神殿の中に作られているので客室内に華美なものはなく、泊まるには困らない程度に整えられていた。
でも部屋はきちんと掃除が行き届いているのか、どこを見てもピカピカだ。
……無駄に調度品とかあるより、きちんと掃除されてる方が意外と綺麗にみえたりするよな~。
俺は寝っ転がりながら呑気にそんなことを思う。けれどそんな俺の視界にレノがぬっと入ってくる。
「キトリー様、理由を教えてもらいましょうか」
レノは寝転がる俺を見下ろし、尋ねた。なので俺は体を起こす。
「理由って?」
「急に心変わりされた理由です。なぜ、帰ることを取りやめてこちらに滞在することに決めたのですか? ランネット様から何か言われましたね?」
レノは鋭い目で俺を見つめた。そこには確信めいたものが光っている。
……まあ、あれだけ帰るって言ってたのに急に心変わりしたら、そうなるよね。さっきはデンゼルさんがいた手前、話を流したけど……ま、レノになら言ってもいいでしょ。というか、言わないとずっとしつこく問いかけられそうだし。
俺はそう思ってランネット様が前世の姉である事以外をレノに話すことにした。
実はランネット様に、この神聖国で起こっている継承問題を解決する事を依頼された事を。
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