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第四章「ディープな関係!?」

24 デンゼルさん

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 ――翌朝の朝食後。
 門の前に一台の馬車と数名の騎士がやって来た。彼らはアシュカを迎えに来た神聖国からの遣いで、俺やレノ、屋敷のみんなでアシュカを見送ることとなった。




「キトリー様には、大変ご迷惑をおかけしました!」

 屋敷の玄関先で頭を下げて謝ったのは、浅黒い肌にスキンヘッド、三十代のキリリとした顔立ちのアシュカ付き神官・デンゼルさんで。俺はアシュカ繋がりで、当然デンゼルさんとも顔見知りだった。

 ……デンゼルさん、毎回アシュカに振り回されて大変だな。

 俺は迎えに来たデンゼルさんを見て、思わず心の中で労う。

「いえ、お気になさらずに。それよりデンゼルさん、折角来たのですから少しウチで休憩されては?」

 俺はそう提案するがデンゼルさんはアシュカの首根っこを捕まえたまま首を横に振った。

「いえ、これ以上お邪魔してはご迷惑ですので。それに大神殿へ帰って、こちらの方にたっぷりとお説教しないといませんので」

 デンゼルさんはギロッとアシュカを睨んで言った。しかしアシュカはどこ吹く風。

「デンちゃん、ごめんって」

 悪びれた素振りもないアシュカにますますデンゼルさんの眉間の皺が深くなる。

「全く、貴方と言うお方は。ご自分の立場を弁えてください!」
「わかってる、わかってる。だから今回は大人しく帰るよ。……もうちょっとキトリーと一緒にいたかったけど、これ以上キトリーに構っていたらレノに怒られそうだし?」

 アシュカは俺の後ろに立つレノを見て言った。そうすればレノは爽やかな声で返事をした。

「どうぞ、おかえりはお気をつけて」
「厭味ったらしいなぁ、ホント。やっぱりキトリー、レノじゃなくて僕と付き合った方がいいんじゃない?」

 アシュカは俺に尋ねてくる。おかげで後ろからの圧が怖い。

「それはもう最初の内に答えただろう? お前とは付き合えないって」

 俺が告げると、アシュカは困ったように息を吐いた。アシュカも思い出したからだろう、あのミルク寒天を作ってくれた日に俺がハッキリと断った事を。

『あのなぁ、アシュカ!……そりゃ俺はお前の事、好きだ。でもそれは友人としてで。そもそも俺は今、レノと付き合ってる。それなのに不義理をすることはできない……あいつ、俺の事すごい、好きみたい、だし』

 そう俺はアシュカに言ったのだ。

「もう少し考えてくれてもいいのに、余地もくれないんだから」

 アシュカはそう言うと口を尖らせ、そしてレノを見る。その目にはからかいが含んでいた。

「あーあ。結局、二人の仲を取り持っちゃったみたいだしなぁー」

 アシュカはレノと俺を見て言い、俺は昨晩の事をパッと思い出して顔を赤くする。むっちゅぅっと熱烈なキスをしたことを。

「べべべべ、別に俺達はいつもどーりだぞ!?」
「ますます怪しい。……今朝からキトリー、何か様子が変だよね? 昨日の夜、何かあったんじゃないの?」

 アシュカは疑うように俺を見る。なので俺は自然と目を逸らす。

「何も、ないデス」

 俺はそう答えたがアシュカはまだ疑っていた。しかしそんなアシュカにデンゼルさんは声をかけた。

「アシュカ様、キトリー様を困らせてはいけません。そろそろ行きますよ」

 デンゼルさんに促され、アシュカは「はいはい」と答え、俺を見た。

「じゃあ、キトリー。またね。……ザック君と子供達にお別れを言えないのは残念だけど、よろしく伝えておいて」
「ああ、わかった」
「皆さんも、今日までお世話になりました」

 アシュカが俺の後ろに控えるみんなに伝えると、お爺が一番に声を上げ、それにヒューゴとフェルナンドも続く。

「ほっほっほっ、また来てください」
「そうですよ。また色々と作りますよ!」
「またお庭を案内させて下さい」

 三人が告げるとアシュカは嬉しそうに笑った。

「はい、また遊びにきますね」
「その時は私も一緒ですよ」

 デンゼルさんは目を光らせて言い、アシュカは「わかってるよ」と苦笑した。

「じゃあ、キトリー。またね? レノも」
「あまりお会いしたくありませんが、キトリー様の友人としてならやぶさかではありません」
「友人ね。でも残念ながら僕はまだ諦めたわけじゃないから。そーいう事でよろしく」

 アシュカが宣戦布告のように言うとレノはにっこりと笑った。

「ご勝手にどうぞ。私は坊ちゃんと別れる気はありませんので」

 レノが言うと二人の間に視線が行き交い、バチバチと火花が散る。そしてその間に挟まれる、俺。

 ……あの、俺のいないところでやってくれませんかね。そーいうの。

 そう思いつつも俺はアシュカに声をかけた。

「アシュカ。また遊びに来いよな、また湖に行こうぜ」

 俺は手を差し出して別れの挨拶をする。そうすればアシュカは困ったように笑った。

「これだから、キトリーには困っちゃうよ」

 ……困るって何がだ?

 俺はわからなくて片眉を上げるが、アシュカは俺が差し出した手をぐっと握ると、グイッと自分の方へと引っ張った。当然引っ張られた俺は前のめりになる。
 そして声を上げようとしたが。

「わッ、んっ!?」

 俺の声は途切れた。なぜならアシュカが俺にちゅっと軽くキスをして口を塞いだから。



 ……ギャアアアアーーッ!
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