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第四章「ディープな関係!?」

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 ――――それから俺達はスイカを食べ後、片づけをして帰ることになった。

 だが屋敷に帰る前に子供達を送る為、村へと寄り道。ただし、子供達と村の中に入ったのはザックとフェルナンドだけだ。
 公爵令息の俺が村に行くと大人達は畏まっちゃうし、アシュカの存在がバレたら面倒くさいから、俺達は村の出入り口付近にある川にかかった橋の上で馬から下りて待機。そしてその俺達のお守りを任されたのはヒューゴだった。

 ……よかった。アシュカと二人だと、またメロメロな甘い雰囲気になるところだった。

 俺は隣に立つヒューゴの存在に内心ほっと息を吐く。

「坊ちゃん、どうしたんですか?」
「いや、なんでも」

 ヒューゴに尋ねられた俺は曖昧に答える。でもそんな俺に、隣に立つアシュカが尋ねた。

「ねぇキトリー、質問があるんだけど」
「ん? どした?」

 俺が聞き返せば、アシュカの視線は村の中の子供達に向かっていた。そして村の中には一組の夫婦がいる。子供達を迎えに来た両親だ。だが、その親を見て不思議に思ったのだろう……なぜなら。

「あの子達の親、獣人じゃないんだね。それにあの子達って兄弟だったの?」

 アシュカは呟くように俺に尋ねた。
 獣人の子は両親が共に獣人か、片親が獣人でなければ獣人の子は生まれない。時折、先祖返りで人間同士でも生まれてくることはあるが稀だ。しかし三人の両親は二人とも人間。
 その上、三人は同じ白銀狐の獣人であっても兄弟とは言うほど顔は似ていなかった。

「あー、それはなぁ~。先祖返りでぇ~。三人は顔の似てない兄弟でぇ~」
「嘘はいけませんよ、坊ちゃん」

 俺の隣からお叱りの声が飛んでくる。

 ……うぐっ、だって説明すんの面倒なんだもん。

 そう思いながら指先をツンツンしてたら、代わりにヒューゴが説明した。

「あの子達は坊ちゃんが保護した子達なんですよ。だから彼らは養い親なんです」
「キトリーが保護した? それって、どういう経緯で?」
「人身売買をしていた組織を坊ちゃんが潰した時に」

 ヒューゴが言えば、アシュカの視線が俺に注がれる。だから言いたくなかったのにぃー。

「わが国では建国以来、人身売買を厳しく取り締まっています。ですが属国となったイルスタン地方では獣人に対する差別が未だ残っているところもありましてね。イルスタン地方では属国になった後も人身売買組織が秘密裏に残っていたんです。で、その組織を坊ちゃんが潰した時に保護したのがあの三人なんですよ。三人とも珍しい希少種の白銀狐の獣人ですから、また狙われるともしれないのでこの村で保護してるんです。この村は元騎士が多いですから」
「いや、俺一人でやったわけじゃないよ? みんなの協力があってこそだし。それにジェイク達は親を亡くしてたから、うちで預かった方がいいかなーって俺は提案しただけで。実際、俺はなーんもしてないから」

 俺はヒューゴの説明に後付けするが、アシュカの瞳は俺を見つめるばかりだ。

 ……ちょいちょい、アシュカさん。人の話を聞いてますかね?

「ともかく、そういう訳だから」

 俺はフイッと川の流れを見つめる。でもそんな俺を見つめながらアシュカは呟いた。

「そうか。だからあの三人はあんなにキトリーを慕っているんだね」

 しみじみと言った様子でアシュカは言い、俺は首を傾げる。

 ……慕っている?? いや、どーみても同等ぐらいに見られてると思うんだが。さっきも俺が食べようとした二個目のスイカ、横取りされたし。ぐぅぅぅっ、食い物の恨みは怖いんだぞ! 俺は大人だから許せるけど!

「キトリーはちょっと自分を過小評価して見せ過ぎじゃない? 褒められることをしてるのに」

 そう言われて俺はフゥっと息を吐き、アシュカを見た。

「あのなぁ、小さな子供に何ができるってんだ。大人が子供を守るのは当然のことだ。その後の面倒をみるのもな。それに……もしも、あの子らの努力でどうにかなるんだったら俺もここまで手を貸さなかったさ。でも、あの子らは努力できる環境すら与えられていなかった。だから褒められるというなら、あの子達の方だよ。今を一生懸命生きてるあの子達の方が俺よりずっと」

 俺がハッキリと告げると、急に強い風が吹いた。おかげで俺か被っていた麦わら帽子がぴゅうっと飛んでいく。

「あ、俺のぼうしぃ!」
「取ってきますよ。ちょっと待っててください、坊ちゃん」

 ヒューゴがすかさず走って取りに行ってくれる。帽子は川に落ちず、川べりの草むらにパサッと落ちただけだから取ってすぐに戻ってくるだろう。

 ……紐結んどけばよかった。ぬかった~。

 俺は取りに行ってくれているヒューゴを眺めながら思う。しかしそんな俺にアシュカは声をかけた。

「キトリー、君って人は」

 そう言うから俺は続きが気になって顔を上げた。そして問いかけたのだが。

「あん? な、ぅむっ!?」

 問いかけようとした口を塞がれた、アシュカの唇で。

 ……へ????????????????

「ごめん。でも、我慢できなかった」

 アシュカはすぐに唇を離すとイケメンの爽やかな笑顔で微笑んだ。だが、何が起こったかわからない俺の脳は停止したままだ。
 しかし、その内に帽子を取りに行っていたヒューゴと子供達を送ってきたザックとフェルナンドが戻ってきた。

「お待たせしました坊ちゃん。帰りましょうか……坊ちゃん?」

 フェルナンドに問いかけられて、俺は何とか「ハ、イ」と答えた。しかし脳内はバグったまま。

 ……今、一体何が起こったんだ?





 ――そして、俺の脳が処理を済ませてアシュカにキスされたと理解したのは、屋敷に戻り、夕食も済ませて風呂に入った後だった。

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