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第四章「ディープな関係!?」
6 ミルク寒天withみかん
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翌朝。俺はびょんびょんと四方八方に寝癖がついたまま、朝ご飯を食べていた。
……昨日、明かりを消した記憶ないんだけどな~。俺、消したのかな? でもレノは何も言わないし。普段なら嫌味の一つでも飛んでくるんだが。
俺は部屋に朝食を運んできたレノを見て思う。いつもなら朝ご飯はお爺やメイドさん達と一緒に食堂で食べるのだが、今日は寝坊したので部屋飯だ。
……いつものレノなら起こした後、二度寝なんて許してくれないのに今日は二度寝もさせてくれたもんなぁ~。昨日疲れてたから? それにしてもなんだか不気味。
俺はイチゴジャムをたっぷり塗ったトーストをかじかじ食べながら思う。でも訝しげにする俺にレノは声をかけた。
「キトリー様、屋敷を開けていた間の仕事が溜まっておりますので朝食後は執務室で書類に目を通して下さい。お手紙もいくつか届いておりますので、そちらも必ず読まれますよう」
「んー、わかったー」
俺はもぐもぐごっくんっと紅茶でトーストを胃まで送る。
「ところでアシュカは何してんの?」
「朝食を食べられて、今はフェルナンドさんの案内で庭を散歩されてます」
「朝食……量は大丈夫だった?」
「昨日の食べっぷりを見て、ヒューゴさんが多めに用意していたので大丈夫でした。ですが確実に食料が足りなくなるので、今日の午後に配送依頼をしています。なのでその時にノエル君達のお土産を渡されてはいかがですか」
レノの助言に俺は素直に「うん、そーする」と答える。
……アシュカは見た目によらず大食漢だからな。でも、お土産があったからちょうど良かったか? まあ、俺が直々に持って行ってもよかったけど。
俺はナプキンで口元を拭きながら思う。でもそこへお爺がやって来た。
「坊ちゃん、失礼しますぞ」
「おはよー、お爺」
「おはようございます、坊ちゃん。ほっほっほっ、今日はなかなか個性的な髪型をしてらっしゃいますな」
お爺は俺の頭を見て言った。
「アハハ、昨日は髪を乾かさずに眠ったから。それよりどったの?」
「実は昨日、調べるように言われた事について」
そうお爺は言った。実は昨日、俺はお爺にある事を調べるように頼んでいたのだ。しかし昨日の今日で調べをつけてくるとは。
「ヒュゥッ! さっすがお爺、仕事が早いねぇ。で、どうだったの?」
「はい。実は」
お爺はそう言うと、俺の耳元に顔を寄せると小声で教えてくれた。そしてお爺からの情報を全部聞き終わった俺は。
「なるほど、なるほど。そういう事だった訳ね」
俺は腕を組んで一人頷いた。
……アシュカがここに来た理由はそう言う事だったのか。
◇◇
それから、昼も過ぎておやつの時間。
「ん~っ、何度見てもいいわ~」
俺は執務室の椅子に座りながら目の前に並べた二冊の本を見つめる。
それは帝都でゲットしたローズ・クラウン先生の『騎士と魔法使い』のサイン本とおっちゃん(王様)から貰った『愛ゆえに』初版本特典オリジナルイラストカード付きだ。
……あー、もうずっと眺めてられるな~。うふふっ。
書類に目を通し、手紙の返信も書き終わった俺は一段落して、休憩がてら本を眺めていた。しかし、そこへ足音が近づいてくる。
……おやつかな?
俺は机に並べていた本をこそこそと引き出しの中に入れる。するとすぐにコンコンッとドアがノックされた。
なので「どうぞ」と俺が答えるとドアが開く。だが、開いたドアから現れたのはレノでもお爺でも、ヒューゴですらなかった。
「や、キトリー。仕事はかどってる?」
そう言って顔を出したのはアシュカだった。俺は思わず席を立つ。
「アシュカ!」
「おやつを持ってきたよ!」
アシュカはカートを押して、俺の元までやってくる。
「なんで、アシュカが? レノやお爺はどうしたんだ?」
「二人は他の仕事をしてもらってるよ。こうでもしないと、今日一日キトリーに会えそうにもなかったからね」
アシュカは腰に手を当てて、フンッと鼻息を出した。
「あー、それはごめん。仕事が溜まってて。でもちょうど良かったわ。仕事も終えたところだから、お前と話そうと思ってたし」
「ホント? じゃあ、良かった」
アシュカは機嫌が直ったらしくニコッと笑って言った。そして俺はカートに乗っているアイスティーと本日のおやつを見る。
そこにはガラスの器に入っているミルク寒天(ミカン入り)が!
「うわー! ミルク寒天だぁ!」
久しく食べていなかったミルク寒天に俺は目を輝かせる。寒天は海の海藻が原料だから、内陸地が多いバルト帝国内ではあまりお目にかかれないのだ。特にこんな田舎では。
「しかも、ミカンが入ってる! おいしそ~。でも、これってもしかして?」
俺がちらりと視線を向ければ、アシュカはニコッと笑った。
「一番最初に出会った時、これを作ってあげたら喜んでくれただろう? だから材料を持ってきたんだ」
「マジかー。ありがと!」
俺がお礼を言うとアシュカはフフッと朗らかに笑った。
「どういたしまして。さ、先におやつを食べよう」
「おう! アシュカの椅子を持ってくるな」
俺はすぐさま動いて執務室に置いてある椅子を俺の隣に持ってくる。その間にアシュカは机の上にアイスティーとミルク寒天を置いた。
そしてお互いに席に座り、早速おやつを頂く。冷たい内に食べねば!
「いっただきまーす!」
俺はスプーンですくってパクリと食べる。そうすればつるんとした舌触りと共にミルクの味と砂糖の甘さが口の中に広がり、シロップ漬けされたミカンのほのかな酸っぱさが口の中をさっぱりとさせる、つまり。
「んまーいっ!」
俺は感動に声を上げる。
「喜んでくれてよかった、作った甲斐があるよ。材料をまだまだ持ってきてるから、食べたくなったら言ってね?」
アシュカはにこやかに言い、自分用に作った特大ミルク寒天を大スプーンで食べる。うーん、いい食いっぷり。
「ありがとう、アシュカ。やっぱり持つべきものは友だなぁ~」
俺はもうミルク寒天を食べながら、しみじみと言う。でも俺の言葉を聞いた途端、アシュカの手が止まった。
「違うよ。キトリーが特別だからだよ?」
アシュカが真面目な顔をして言うものだから、俺はミカンを喉に詰まらせそうになる。
んぐっ!
……昨日、明かりを消した記憶ないんだけどな~。俺、消したのかな? でもレノは何も言わないし。普段なら嫌味の一つでも飛んでくるんだが。
俺は部屋に朝食を運んできたレノを見て思う。いつもなら朝ご飯はお爺やメイドさん達と一緒に食堂で食べるのだが、今日は寝坊したので部屋飯だ。
……いつものレノなら起こした後、二度寝なんて許してくれないのに今日は二度寝もさせてくれたもんなぁ~。昨日疲れてたから? それにしてもなんだか不気味。
俺はイチゴジャムをたっぷり塗ったトーストをかじかじ食べながら思う。でも訝しげにする俺にレノは声をかけた。
「キトリー様、屋敷を開けていた間の仕事が溜まっておりますので朝食後は執務室で書類に目を通して下さい。お手紙もいくつか届いておりますので、そちらも必ず読まれますよう」
「んー、わかったー」
俺はもぐもぐごっくんっと紅茶でトーストを胃まで送る。
「ところでアシュカは何してんの?」
「朝食を食べられて、今はフェルナンドさんの案内で庭を散歩されてます」
「朝食……量は大丈夫だった?」
「昨日の食べっぷりを見て、ヒューゴさんが多めに用意していたので大丈夫でした。ですが確実に食料が足りなくなるので、今日の午後に配送依頼をしています。なのでその時にノエル君達のお土産を渡されてはいかがですか」
レノの助言に俺は素直に「うん、そーする」と答える。
……アシュカは見た目によらず大食漢だからな。でも、お土産があったからちょうど良かったか? まあ、俺が直々に持って行ってもよかったけど。
俺はナプキンで口元を拭きながら思う。でもそこへお爺がやって来た。
「坊ちゃん、失礼しますぞ」
「おはよー、お爺」
「おはようございます、坊ちゃん。ほっほっほっ、今日はなかなか個性的な髪型をしてらっしゃいますな」
お爺は俺の頭を見て言った。
「アハハ、昨日は髪を乾かさずに眠ったから。それよりどったの?」
「実は昨日、調べるように言われた事について」
そうお爺は言った。実は昨日、俺はお爺にある事を調べるように頼んでいたのだ。しかし昨日の今日で調べをつけてくるとは。
「ヒュゥッ! さっすがお爺、仕事が早いねぇ。で、どうだったの?」
「はい。実は」
お爺はそう言うと、俺の耳元に顔を寄せると小声で教えてくれた。そしてお爺からの情報を全部聞き終わった俺は。
「なるほど、なるほど。そういう事だった訳ね」
俺は腕を組んで一人頷いた。
……アシュカがここに来た理由はそう言う事だったのか。
◇◇
それから、昼も過ぎておやつの時間。
「ん~っ、何度見てもいいわ~」
俺は執務室の椅子に座りながら目の前に並べた二冊の本を見つめる。
それは帝都でゲットしたローズ・クラウン先生の『騎士と魔法使い』のサイン本とおっちゃん(王様)から貰った『愛ゆえに』初版本特典オリジナルイラストカード付きだ。
……あー、もうずっと眺めてられるな~。うふふっ。
書類に目を通し、手紙の返信も書き終わった俺は一段落して、休憩がてら本を眺めていた。しかし、そこへ足音が近づいてくる。
……おやつかな?
俺は机に並べていた本をこそこそと引き出しの中に入れる。するとすぐにコンコンッとドアがノックされた。
なので「どうぞ」と俺が答えるとドアが開く。だが、開いたドアから現れたのはレノでもお爺でも、ヒューゴですらなかった。
「や、キトリー。仕事はかどってる?」
そう言って顔を出したのはアシュカだった。俺は思わず席を立つ。
「アシュカ!」
「おやつを持ってきたよ!」
アシュカはカートを押して、俺の元までやってくる。
「なんで、アシュカが? レノやお爺はどうしたんだ?」
「二人は他の仕事をしてもらってるよ。こうでもしないと、今日一日キトリーに会えそうにもなかったからね」
アシュカは腰に手を当てて、フンッと鼻息を出した。
「あー、それはごめん。仕事が溜まってて。でもちょうど良かったわ。仕事も終えたところだから、お前と話そうと思ってたし」
「ホント? じゃあ、良かった」
アシュカは機嫌が直ったらしくニコッと笑って言った。そして俺はカートに乗っているアイスティーと本日のおやつを見る。
そこにはガラスの器に入っているミルク寒天(ミカン入り)が!
「うわー! ミルク寒天だぁ!」
久しく食べていなかったミルク寒天に俺は目を輝かせる。寒天は海の海藻が原料だから、内陸地が多いバルト帝国内ではあまりお目にかかれないのだ。特にこんな田舎では。
「しかも、ミカンが入ってる! おいしそ~。でも、これってもしかして?」
俺がちらりと視線を向ければ、アシュカはニコッと笑った。
「一番最初に出会った時、これを作ってあげたら喜んでくれただろう? だから材料を持ってきたんだ」
「マジかー。ありがと!」
俺がお礼を言うとアシュカはフフッと朗らかに笑った。
「どういたしまして。さ、先におやつを食べよう」
「おう! アシュカの椅子を持ってくるな」
俺はすぐさま動いて執務室に置いてある椅子を俺の隣に持ってくる。その間にアシュカは机の上にアイスティーとミルク寒天を置いた。
そしてお互いに席に座り、早速おやつを頂く。冷たい内に食べねば!
「いっただきまーす!」
俺はスプーンですくってパクリと食べる。そうすればつるんとした舌触りと共にミルクの味と砂糖の甘さが口の中に広がり、シロップ漬けされたミカンのほのかな酸っぱさが口の中をさっぱりとさせる、つまり。
「んまーいっ!」
俺は感動に声を上げる。
「喜んでくれてよかった、作った甲斐があるよ。材料をまだまだ持ってきてるから、食べたくなったら言ってね?」
アシュカはにこやかに言い、自分用に作った特大ミルク寒天を大スプーンで食べる。うーん、いい食いっぷり。
「ありがとう、アシュカ。やっぱり持つべきものは友だなぁ~」
俺はもうミルク寒天を食べながら、しみじみと言う。でも俺の言葉を聞いた途端、アシュカの手が止まった。
「違うよ。キトリーが特別だからだよ?」
アシュカが真面目な顔をして言うものだから、俺はミカンを喉に詰まらせそうになる。
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