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第三章「キスは不意打ちに!」
18 フラグ
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――その後。おばさんこと、ミス・ラナーは殺人未遂という事で北の刑務所に送られ、これ以来、俺とジェレミーは腐れ縁となり、幼馴染兼婚約者となった。
ま、名ばかりの、ですが。そしてすっかり元気になったジェレミーは優しい性格のまま育ち、本来の秀才さで学園では学歴トップを抑え、成長と共にすくすくと身長も伸びた。腹筋も綺麗に割れている。
……なんか俺だけ仕様違くないッ?! なんで俺だけワンパック!? あれか、あれなのか!? ジェレミーは王子様だからかッ!? キィィィィッ!
俺は目の前に座る友人ジェレミーを見て、嫉妬の視線を向ける。だがジェレミーは爽やかな顔して俺を見た。
「キトリー、どうした?」
「いーえ、なんでもニャーですよ」
俺はちょっとくさくさした気持ちになり、投げやりに答える。そんな俺にジェレミーは首を傾げた。
「ジェレミー様、気にしないでください。情緒不安定なのにはいつもの事ですから」
レノはしれっと息を吐くように失礼な事を言う。
「オイ、誰が情緒不安定だ!」
当然俺は食って掛かるが、レノは素知らぬ顔で紅茶を飲む。こんにゃろー!
でもそんな俺達を見てジェレミーは笑った。
「やっぱり相変わらず仲がいいね、二人は」
「仲良くない」
俺は間髪入れずに言うが、ジェレミーは首を横に振った。
「仲がいいよ、子供の頃からね。そしてキトリーは変わらない。……今回もありがとう」
ジェレミーは小さくお礼を言い、感謝が宿る目で俺を見る。けど俺は。
「俺は今も昔もやりたいようにやっただけだよ。それに大事なのはこれからだ。サウザーみたいなのが、また出てこないとも限らない。だから、ディエリゴの為にもよろしくやってくれよ? ジェレミー」
俺が頼めば、ジェレミーはしっかりと頷いた。子供の時と違い、その目には強さがある。
「ああ、勿論。できうる限りの事はしていく」
しっかりとした返答に俺は安心すると共に、ちょっと頼もしく、そして感慨深い。
……ジェレミーも大人になったもんだなぁ。いやー、子供の頃から一緒にいたから親戚の子が大きくなったみたいな気持ちに。おいちゃん、感動。ウルウル(涙)
俺はちょっと心の中でホロリする。でもジェレミーは本当に成長した。サウザーの件だって、実はジェレミーが最初におかしいと気がつき、俺はそれをきっかけにあの爺さんを暴いたに過ぎない。
……おばさん(ミス・ラナー)の一件から、ジェレミーは人をよく見るようになったからなぁ。その洞察力たるや、小さな不正も見逃さない。うーむ、この国の未来は安泰ですな!
なんて俺は腕を組んで安心する、けど。
「でもそう言えば。二人が結婚する時、元婚約者である私が参加していいものかな?」
ジェレミーは真面目な顔をして、突拍子もない質問をブッ込んできた。
「はっ!?」
……結婚ッ!? 何言ってんの!!
俺は驚くが俺の隣に座る奴は涼しい顔して。
「勿論ですよ。ぜひ私達の結婚式にはご参加ください」
……おいぃぃぃっ! 何言ってんだ、オマエはッ!
「そうだよね。いざとなれば変装してでも! 結婚式の時にはいっぱいお祝いを持って行くよ」
……ジェレミーも何言ってんだ! いや、お祝いはありがたいケドネ?!
「ありがとうございます、ジェレミー様。決まり次第、招待状をお送りさせていただきますね。ぜひディエリゴ様とお越しください」
……そして、オメーは何サラッと『予定してます』みたいな顔で言ってんだ!
「楽しみだなぁ、キトリーとレノの結婚式」
ジェレミーはニコニコしながら言い、俺はようやく口を開く。
「ちょ、何言って、フゴフゴーッ!」
俺が全力で否定しようとしたら、レノは問答無用で俺の口を塞いできた。何すんだヨッ!!
「良い席をジェレミー様とディエリゴ様には用意させていただきますよ」
「フゴフゴ!(おいおい!)」
「ありがとう。二人が結婚かぁ。なかなか感慨深いなぁ」
「フゴーフー!!(ちがーう!)」
「はは、それは私もですよ。キトリー様もこんなに喜んで」
レノは笑いながら言うが俺は怒り爆発だ。
「フッゴ―――ッッ!!!(誰が喜んどるかーッ!)」
しかし、二人は俺をそっちのけで楽しく談笑する。
……俺の意見は置いてきぼりか、コノヤロウ! 俺は結婚式なんてやらないんだからなー!!
俺は心の中で叫んだが、レノとジェレミーは聞いちゃいなかったのだった――。
◇◇◇◇
しかし、それからあっという間に夕方になり。
……俺は結婚しないからな~っ。
という念をジェレミーに送りつつ(言ったら言ったで、レノが余計な茶々をいれてくるので)、別れの挨拶をしていた。
「じゃあ、またな。ジェレミー、ディエリゴ。おっちゃんにはよろしく言っておいてくれ」
俺は見送る二人にこそっと言った。一応人払いをしているが、どこで誰が聞いてるともしれんからな。
「わかった。また遊びに来てくれるのを待ってるよ」
「それまで二人とも仲良くね」
……また遊びにって俺、また女装しないとじゃん。それに仲良くって。
俺がちらりとレノを見れば、奴はにこりと笑った。
「仲良くしましょうね?」
「オコトワリシマス」
「大丈夫。勝手に仲良くしますから」
……何を仲良くするつもりダッ! 既成事実でも作る気か!? 許さんゾ!!
俺は少しレノから距離を取る。でもそんな俺を見た二人は微笑ましそうに笑った。
……こいつら、他人事だと思って~。全く、家に来た時は別れるって大騒ぎしてたのに。現金なもんだぜ。でもま、二人のほのぼのわくわく第三シーズンも見たいしな。仲良くしといてくれ。ムフッ。
俺はジェレミーとディエリゴを見て、内心ほくそ笑む。
「ま、とにかく帰るわ。でも、その前にディエリゴにこれやるよ」
俺は隠し持っていた紙袋を取り出す。そして、その紙袋がなんなのかレノはすぐに気がついた。
「それは、ムグッ」
俺は喋りそうなレノの口を片手で塞ぎ、紙袋をディエリゴに差し出す。
「有効活用してくれ」
「なんなの?」
ディエリゴは不思議そうな顔をするが、俺から紙袋を疑いもなく受け取った。
「中身は後で見てくれ。じゃあ、俺はレノを連れて帰るから」
「う、うん?」
そそくさと帰ろうとする俺にディエリゴは戸惑いながらも答えた。そして俺は早々と馬車に乗る。そんな俺を見て、レノは小さくため息を吐きながらもジェレミーとディエリゴに深く頭を下げて別れの挨拶をした。
「主人が雑で申し訳ございません。ではジェレミー王子、ディエリゴ様、我々はこれにて失礼します」
「気を付けて」
「レノさん、キトリーを頼みます」
「はい、勿論です」
レノはジェレミーとディエリゴに返事をしてから、馬車に乗った。そしてドアが閉められ、御者が「出立します」と声をかけると馬車がゆっくりと動き始める。
「じゃあな、二人とも」
「またね!」
俺が最後に一言言うと、ディエリゴは寂しそうな顔をして手を挙げた。そして隣にいるジェレミーも。……って、泣いてる。ヘタレ王子だなぁ、やれやれ。
……でもま、これからはディエリゴが傍にいるから大丈夫だろう。
俺は心優しい幼馴染と勇気ある友人に手を振り返す。
「別邸に戻る前にお二人に会えてよかったですね、坊ちゃん」
レノは俺の向かいの席に座り、馬車の窓からジェレミー達を見て言った。そして同じく遠くなっていく二人を眺める俺は。
「そうだな。ま、もう二度と女装は勘弁だけど」
俺がそう言うとレノは堪らずと言った様子でくすっと笑った。
「よくお似合いなのに。よければドレスをお贈りしますが?」
「結構デス! ドレスはもうこれっきりでいいよ」
二人の姿が見えなくなり、俺はやれやれと一息をつきながら答える。
「そうですか、残念です。もっといろんなドレスを着たキトリー様を見たかったですが」
「冗談じゃねーっての。もう誰に言われたって着ないからな!」
俺は辟易した顔でレノを見た。しかし、この後このフラグはしっかりと母様に回収されてしまうのだった。
「キトリー、そんな可愛い格好をして。どうして私に一言もないのかしら?」
帰宅後、玄関に出迎えに来た母様が俺を捕まえて言った。その目は嬉々としている……これは嫌な予感。
「え、いやだって母様、朝から婦人会で」
いなかったじゃん。と言いたい俺の言葉は遮られ、母様はにっこりと笑った。
「私の昔のドレスがあるわ。ちょっと私の部屋にいらっしゃい」
「え! 俺、部屋でゆっくりゴロゴロ」
まったりする予定が!!
そう思うが母様は俺を着せ替え人形にする気満々で。
「ほら、行くわよ」
グイグイと力強い手に引っ張られ、俺に拒否権などなかった。
「レノ!」
ヘルプ・ミーッ!
俺はレノに助けを求めるが、案の定こいつは楽し気に笑って。
「奥様、私もお手伝いします」
なんて言いやがった。この裏切り者ぉぉぉぉぉッ! 主人を助けんかい!!
「さすがレノ、気が利くわね。じゃあ一緒に行きましょう」
「ちょッ!」
俺は反論しようとするがルンルン気分の母様が俺を逃してくれるわけもなく、その上裏切ったレノにはニッコリ笑顔を見せられる始末で。
唯一セリーナだけが心配顔で俺を見送った。
……もーっ! おウチ(別邸に)帰る―ッ!!
だが、その叫びも空しく。俺を使った母様の着せ替え人形は父様とロディオンが帰ってくるまで行われた。
……俺に権利と言うものはないんか……ぐすん(泣)
********************
《おまけ》
――それは母様の着せ替え人形をさせられている時だった。
「じゃあキトリー、次はこっちの服よ。レノ」
「はい、奥様」
レノは母様の従者の如く、指示を受けて俺にドレスを持ってくる。
「もー、ヤダ!」
俺は拒否るが、レノはドレスをこちらに見せる。
「流行の服は嫌いですか? キトリー様も男なら聞き分けて着てください。三分間待ってあげますから」
……お前はどこぞのムのつく大佐かッ!!
なんて一幕があったり、なかったり……(笑)
ま、名ばかりの、ですが。そしてすっかり元気になったジェレミーは優しい性格のまま育ち、本来の秀才さで学園では学歴トップを抑え、成長と共にすくすくと身長も伸びた。腹筋も綺麗に割れている。
……なんか俺だけ仕様違くないッ?! なんで俺だけワンパック!? あれか、あれなのか!? ジェレミーは王子様だからかッ!? キィィィィッ!
俺は目の前に座る友人ジェレミーを見て、嫉妬の視線を向ける。だがジェレミーは爽やかな顔して俺を見た。
「キトリー、どうした?」
「いーえ、なんでもニャーですよ」
俺はちょっとくさくさした気持ちになり、投げやりに答える。そんな俺にジェレミーは首を傾げた。
「ジェレミー様、気にしないでください。情緒不安定なのにはいつもの事ですから」
レノはしれっと息を吐くように失礼な事を言う。
「オイ、誰が情緒不安定だ!」
当然俺は食って掛かるが、レノは素知らぬ顔で紅茶を飲む。こんにゃろー!
でもそんな俺達を見てジェレミーは笑った。
「やっぱり相変わらず仲がいいね、二人は」
「仲良くない」
俺は間髪入れずに言うが、ジェレミーは首を横に振った。
「仲がいいよ、子供の頃からね。そしてキトリーは変わらない。……今回もありがとう」
ジェレミーは小さくお礼を言い、感謝が宿る目で俺を見る。けど俺は。
「俺は今も昔もやりたいようにやっただけだよ。それに大事なのはこれからだ。サウザーみたいなのが、また出てこないとも限らない。だから、ディエリゴの為にもよろしくやってくれよ? ジェレミー」
俺が頼めば、ジェレミーはしっかりと頷いた。子供の時と違い、その目には強さがある。
「ああ、勿論。できうる限りの事はしていく」
しっかりとした返答に俺は安心すると共に、ちょっと頼もしく、そして感慨深い。
……ジェレミーも大人になったもんだなぁ。いやー、子供の頃から一緒にいたから親戚の子が大きくなったみたいな気持ちに。おいちゃん、感動。ウルウル(涙)
俺はちょっと心の中でホロリする。でもジェレミーは本当に成長した。サウザーの件だって、実はジェレミーが最初におかしいと気がつき、俺はそれをきっかけにあの爺さんを暴いたに過ぎない。
……おばさん(ミス・ラナー)の一件から、ジェレミーは人をよく見るようになったからなぁ。その洞察力たるや、小さな不正も見逃さない。うーむ、この国の未来は安泰ですな!
なんて俺は腕を組んで安心する、けど。
「でもそう言えば。二人が結婚する時、元婚約者である私が参加していいものかな?」
ジェレミーは真面目な顔をして、突拍子もない質問をブッ込んできた。
「はっ!?」
……結婚ッ!? 何言ってんの!!
俺は驚くが俺の隣に座る奴は涼しい顔して。
「勿論ですよ。ぜひ私達の結婚式にはご参加ください」
……おいぃぃぃっ! 何言ってんだ、オマエはッ!
「そうだよね。いざとなれば変装してでも! 結婚式の時にはいっぱいお祝いを持って行くよ」
……ジェレミーも何言ってんだ! いや、お祝いはありがたいケドネ?!
「ありがとうございます、ジェレミー様。決まり次第、招待状をお送りさせていただきますね。ぜひディエリゴ様とお越しください」
……そして、オメーは何サラッと『予定してます』みたいな顔で言ってんだ!
「楽しみだなぁ、キトリーとレノの結婚式」
ジェレミーはニコニコしながら言い、俺はようやく口を開く。
「ちょ、何言って、フゴフゴーッ!」
俺が全力で否定しようとしたら、レノは問答無用で俺の口を塞いできた。何すんだヨッ!!
「良い席をジェレミー様とディエリゴ様には用意させていただきますよ」
「フゴフゴ!(おいおい!)」
「ありがとう。二人が結婚かぁ。なかなか感慨深いなぁ」
「フゴーフー!!(ちがーう!)」
「はは、それは私もですよ。キトリー様もこんなに喜んで」
レノは笑いながら言うが俺は怒り爆発だ。
「フッゴ―――ッッ!!!(誰が喜んどるかーッ!)」
しかし、二人は俺をそっちのけで楽しく談笑する。
……俺の意見は置いてきぼりか、コノヤロウ! 俺は結婚式なんてやらないんだからなー!!
俺は心の中で叫んだが、レノとジェレミーは聞いちゃいなかったのだった――。
◇◇◇◇
しかし、それからあっという間に夕方になり。
……俺は結婚しないからな~っ。
という念をジェレミーに送りつつ(言ったら言ったで、レノが余計な茶々をいれてくるので)、別れの挨拶をしていた。
「じゃあ、またな。ジェレミー、ディエリゴ。おっちゃんにはよろしく言っておいてくれ」
俺は見送る二人にこそっと言った。一応人払いをしているが、どこで誰が聞いてるともしれんからな。
「わかった。また遊びに来てくれるのを待ってるよ」
「それまで二人とも仲良くね」
……また遊びにって俺、また女装しないとじゃん。それに仲良くって。
俺がちらりとレノを見れば、奴はにこりと笑った。
「仲良くしましょうね?」
「オコトワリシマス」
「大丈夫。勝手に仲良くしますから」
……何を仲良くするつもりダッ! 既成事実でも作る気か!? 許さんゾ!!
俺は少しレノから距離を取る。でもそんな俺を見た二人は微笑ましそうに笑った。
……こいつら、他人事だと思って~。全く、家に来た時は別れるって大騒ぎしてたのに。現金なもんだぜ。でもま、二人のほのぼのわくわく第三シーズンも見たいしな。仲良くしといてくれ。ムフッ。
俺はジェレミーとディエリゴを見て、内心ほくそ笑む。
「ま、とにかく帰るわ。でも、その前にディエリゴにこれやるよ」
俺は隠し持っていた紙袋を取り出す。そして、その紙袋がなんなのかレノはすぐに気がついた。
「それは、ムグッ」
俺は喋りそうなレノの口を片手で塞ぎ、紙袋をディエリゴに差し出す。
「有効活用してくれ」
「なんなの?」
ディエリゴは不思議そうな顔をするが、俺から紙袋を疑いもなく受け取った。
「中身は後で見てくれ。じゃあ、俺はレノを連れて帰るから」
「う、うん?」
そそくさと帰ろうとする俺にディエリゴは戸惑いながらも答えた。そして俺は早々と馬車に乗る。そんな俺を見て、レノは小さくため息を吐きながらもジェレミーとディエリゴに深く頭を下げて別れの挨拶をした。
「主人が雑で申し訳ございません。ではジェレミー王子、ディエリゴ様、我々はこれにて失礼します」
「気を付けて」
「レノさん、キトリーを頼みます」
「はい、勿論です」
レノはジェレミーとディエリゴに返事をしてから、馬車に乗った。そしてドアが閉められ、御者が「出立します」と声をかけると馬車がゆっくりと動き始める。
「じゃあな、二人とも」
「またね!」
俺が最後に一言言うと、ディエリゴは寂しそうな顔をして手を挙げた。そして隣にいるジェレミーも。……って、泣いてる。ヘタレ王子だなぁ、やれやれ。
……でもま、これからはディエリゴが傍にいるから大丈夫だろう。
俺は心優しい幼馴染と勇気ある友人に手を振り返す。
「別邸に戻る前にお二人に会えてよかったですね、坊ちゃん」
レノは俺の向かいの席に座り、馬車の窓からジェレミー達を見て言った。そして同じく遠くなっていく二人を眺める俺は。
「そうだな。ま、もう二度と女装は勘弁だけど」
俺がそう言うとレノは堪らずと言った様子でくすっと笑った。
「よくお似合いなのに。よければドレスをお贈りしますが?」
「結構デス! ドレスはもうこれっきりでいいよ」
二人の姿が見えなくなり、俺はやれやれと一息をつきながら答える。
「そうですか、残念です。もっといろんなドレスを着たキトリー様を見たかったですが」
「冗談じゃねーっての。もう誰に言われたって着ないからな!」
俺は辟易した顔でレノを見た。しかし、この後このフラグはしっかりと母様に回収されてしまうのだった。
「キトリー、そんな可愛い格好をして。どうして私に一言もないのかしら?」
帰宅後、玄関に出迎えに来た母様が俺を捕まえて言った。その目は嬉々としている……これは嫌な予感。
「え、いやだって母様、朝から婦人会で」
いなかったじゃん。と言いたい俺の言葉は遮られ、母様はにっこりと笑った。
「私の昔のドレスがあるわ。ちょっと私の部屋にいらっしゃい」
「え! 俺、部屋でゆっくりゴロゴロ」
まったりする予定が!!
そう思うが母様は俺を着せ替え人形にする気満々で。
「ほら、行くわよ」
グイグイと力強い手に引っ張られ、俺に拒否権などなかった。
「レノ!」
ヘルプ・ミーッ!
俺はレノに助けを求めるが、案の定こいつは楽し気に笑って。
「奥様、私もお手伝いします」
なんて言いやがった。この裏切り者ぉぉぉぉぉッ! 主人を助けんかい!!
「さすがレノ、気が利くわね。じゃあ一緒に行きましょう」
「ちょッ!」
俺は反論しようとするがルンルン気分の母様が俺を逃してくれるわけもなく、その上裏切ったレノにはニッコリ笑顔を見せられる始末で。
唯一セリーナだけが心配顔で俺を見送った。
……もーっ! おウチ(別邸に)帰る―ッ!!
だが、その叫びも空しく。俺を使った母様の着せ替え人形は父様とロディオンが帰ってくるまで行われた。
……俺に権利と言うものはないんか……ぐすん(泣)
********************
《おまけ》
――それは母様の着せ替え人形をさせられている時だった。
「じゃあキトリー、次はこっちの服よ。レノ」
「はい、奥様」
レノは母様の従者の如く、指示を受けて俺にドレスを持ってくる。
「もー、ヤダ!」
俺は拒否るが、レノはドレスをこちらに見せる。
「流行の服は嫌いですか? キトリー様も男なら聞き分けて着てください。三分間待ってあげますから」
……お前はどこぞのムのつく大佐かッ!!
なんて一幕があったり、なかったり……(笑)
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