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第三章「キスは不意打ちに!」
1 我が友
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今日からまたまた始まります。
今回もクスッと笑っていただければ幸いです。
ちょっと長めの全23話、最後までどうぞお付き合いくださいませ(・ω・)/
************
「ちょ、レノ。苦しっ……あっ」
「もう少しですから」
「んんっ、や、もぉ、だめだってぇっ」
吐息交じりに俺は背後にいるレノに言った。でもレノは容赦してくれない。
「はぁ、んーっ! も、苦しぃってばっ」
「我慢して、坊ちゃん」
「もう、むりぃぃっ」
俺は身を捩らせて、涙を滲ませた。
……どうして俺がこんなことに?
それはディエリゴがやって来たことが発端だった――――。
◇◇◇◇
領地に帰る日。
レノと話している所に我が友ディエリゴが突然やってきた。
「キトリー! 俺、ジェレミーと婚約破棄するッ!」
そうドアを開けて入ってくるなり、俺に抱きついて言った。
「な、なんだってぇぇえええええっ!?」
俺は思わず叫ぶ。
……なっ、何があったわけ!?
そしてディエリゴの発言にさすがのレノも驚いていた。
「ディエリゴ様、ジェレミー王子と一体何が?」
「そ、そうだよ、ディエリゴ!」
俺は目の前にいるディエリゴに尋ねる。その目元はほんのり赤くなり、瞳は潤んでいる。そしてうさ耳はへたっと垂れていた。むむ、可愛いじゃないか。
「キトリーッ、ジェレミーの奴ってば俺がいるのにっ!」
うるうると瞳を潤ませて言ったがディエリゴは最後の言葉を言いたくないのか、ぐっと口を閉じた。
「ディエリゴがいるのに、どうしたんだよ? まさかアイツが浮気でもした、なんて言うんじゃないだろうな? あははははっ」
「っ!」
「……え、マジ?」
俺は冗談で言ったつもりだった。しかしディエリゴの顔が悲し気に歪み、それが答えだった。
……あのディエリゴLOVEなジェレミーがッ? 『ディーが好きだと叫びたい!』とでも言い出しそうな、あのジェレミーが浮気だと!? うっそーん。
「キトリぃーッ!」
「お、おいおい。そりゃ何かの勘違いだろ? ジェレミーが浮気なんて」
俺が言いかけるとディエリゴは食い気味に否定した。
「勘違いじゃない、だってジェレミーはッ!」
そう言った矢先、先程と同じようにドアが勢いよく開かれた。
「ディー!」
金髪を揺らして現れた美青年は、我が幼馴染、へたれのジェレミーだった。いや、見かけは王子らしくカッコいんだけどな。
「ジェレミー!?」
俺が声を上げるとジェレミーは俺の元、いや俺の傍にいるディエリゴの元へやってきた。
「ディー、逃げないで私の話を聞いて?」
「嫌だ! ジェレミーの話なんか聞くもんか!」
「ディー、お願いだよ。説明させて?」
「何が説明だ! 俺はハッキリとこの目で見たんだから!」
「だから、それは違うんだ」
「何が違うんだよ。どんな言い訳も俺は聞かないぞ!」
「ディー、言い訳なんて。私は説明を……私が愛してるは君だけだ」
「そんな言葉で俺は騙されない!」
「ディー、そんな事を言わないで」
「俺に喋りかけるなっ!」
ディエリゴが拒否するものだから、ジェレミーが泣き出しそうになり、眉毛が八の字になっている。それでもディエリゴの怒りは収まらないのか痴話喧嘩は終わりを見せず、ついに俺の堪忍袋の緒がプチっと切れた。
「シャラーーーーーープッ!」
俺が大きな声で言うと、二人は目を丸くして驚いた顔をした。だが、俺はそんな二人にニッコリ笑顔を見せる。
「喧嘩するほど仲がいいとはゆーけれど、俺をその痴話げんかに巻き込むんじゃありません! こういうのは俺のいないところでやりなさい!」
陰でこっそり見るから!
最後の一言を言わずに俺は腰に手を当てて、フンスッと鼻息を出す。
「ご、ごめん。キトリー」
「すまない」
素直に謝った二人に俺は「わかればよろしい」と偉そうに腕を組む。……とは言っても、目の前にいる二人は王子様と婚約者で、俺の方が身分は下なのだが。
そしてジェレミーは俺の元婚約者で、ディエリゴは俺からジェレミーを奪ったにっくき相手という事になっているんだが……まあそれはさておき。
「で? 一体、何があったんだ? ちょいと俺にテルミー(Tell me)してみなさい。ん」
俺は指先をくいくいっと動かして耳を二人に傾ける。そうすればディエリゴが先に口を開いた。
「それはジェレミーが」
「浮気した、だろ? で、そうなのか? ジェレミー」
俺が問いかければジェレミーは全力で否定した。
「そんな訳ない!」
「じゃあ、なんで最近城に出入りしている女の人とこそこそしてるの? それって、それってっ……そういう事なんでしょ!?」
ディエリゴは涙目でジェレミーに告げた。そしてジェレミーと言えば。
「それは……そうだけど、でも違うんだっ。ディー」
「何が違うんだ! 違うならあの人は何なんだっていうんだ!」
「それはっ」
「ほら、言い切れない! やっぱり」
ディエリゴは最後まで言えなくて、ぐぅっと唇を噛んだ。そしてそれをジェレミーは眺めるだけで。
……だから俺の前で喧嘩するんじゃないっつーの。俺は陰で眺めたい派なんだからぁ。……でもま、二人をくっつけた俺がちゃんとアフターケアをしないと、かな。やれやれフー。
「ディエリゴ、たぶんそれは勘違いだと思うぞ。あとジェレミー、内緒にしたいんだろうが、この状況じゃちゃんと言わないとお前の行動は意味がなくなるぞ」
俺が告げるとジェレミーはぐっと口を閉じた。でも逆にディエリゴは俺に食って掛かる。
「俺は勘違いなんかしてないよ! キトリーもジェレミーの肩を持つつもり!?」
キッと俺を睨んでディエリゴは言ったが、俺は推察した事を告げる。
「ジェレミーの肩を持つ気はないよ。ただ、ディエリゴが見た綺麗なお姉さんって言うのはたぶん宝石商の人だろう」
俺が教えるとディエリゴは目をまん丸にして、うさ耳をぴょこんっと揺らした。
「宝石商?」
「そうだよ。きっとジェレミーがディエリゴに贈り物でもしたくて、宝石商のデザイナーを呼んだんだろ。でもその贈り物は秘密だったからジェレミーは内緒にしていたわけ」
「俺に贈り物? ……ジェレミー。そう、なのか?」
ディエリゴが尋ねるとジェレミーは観念したようで、素直に答えた。
「ああ。そうだよ、ディーに何か贈り物をしたくて……もうすぐ誕生日だろう? だから、こっそり」
「俺の為?」
ディエリゴが尋ねるとジェレミーはこくりと頷いた。
「勘違いさせてごめん、ディー」
「え、あっ……俺の方こそ勘違いしてごめん。まさか俺の為にしてることだなんて思わなくてっ」
「いや、私が何も告げずにいたのが悪いんだ」
「ジェレミー」
「私にはディーしか見えてないよ」
二人は見つめ合い、熱い視線を交わし始める。
……もうっ、そーいうのは俺のいないところでやりなさいってば! たく仕方のない奴らだぜっ、ムフー。
「坊ちゃん、心の呟きの割には顔がにやけてますよ」
「ぬッ!?」
レノに背後から呟かれて俺は変な声が出る。そのせいで二人の視線が俺に向けられ、俺はにやついた顔を引き締めた。
「ん゛っんーっ、コホン! ともかく仲直りができたようで結構。もう痴話喧嘩しないように!」
俺はわざとらしく咳ばらいをして言う。後ろからレノの呆れた視線を妙に感じるが……放っておこう。てか、毎度のことながら人の心を読むんじゃありませんヨ!
「ありがとう、キトリー。いつも助けてもらってばかりだ」
ディエリゴは少し照れた顔で言い、ジェレミーも俺にお礼を言った。
「本当にその通りだな。ありがとうキトリー」
「いいってことよ。これも友達のよしみってやつさ」
俺がくっつけた二人だからな。何より破局されたら、再び俺にお鉢が回ってくる可能性があるからな。なので、そのまま仲良くしておいてくれ。
「そうか。でも……どうして私が宝石商を呼んでいるとわかったんだ? 秘密にしていたんだが」
ジェレミーは率直な疑問を俺にぶつけてきた。
「あ~、そうだなぁ。なんとなくそうかなって。ほら、俺って勘がいいからさ?」
俺は明後日の方向を見て、嘘を吐く。
……その宝石商、ヒューゴの親戚(ヒューゴ姉)がやっているから俺も顔見知りなんだよな~。
なので、ジェレミーがディエリゴの為に宝石を買おうとしていたのは以前から耳にして知っていたのだ。だが疑う事を知らない人の好い王子様は。
「なるほど! 確かにキトリーは昔から勘がよかったな」
ニコニコしながら俺を見つめた。
……ぐっ、曇りなき眼(まなこ)で俺を見るなぁ~!
俺はキラキラした瞳を向けられ、顔を背けた。そんな俺を見かねてか、レノが助け舟を出してくれる。
「それよりディエリゴ様、私達がここにいるとよくご存じでしたね?」
「ロディオン様がキトリーが帰ってきたって嬉しそうに言っていたから」
その会話を聞き、俺は思い出す。
……そういや兄様、ディエリゴの王妃教育を手伝ってるんだっけ?
「なるほどね。しかしなぁ、俺とお前は一応恋敵って事になってるんだから家に来たらダメだろー」
俺が思わずツッコむとディエリゴはうさ耳をまたぺたんっと下ろした。
「それはそうだけど……キトリーしか思い浮かばなくて」
その可愛い仕草にぐっと心を掴まれてしまう。それは卑怯だぞ、ディエリゴ!
「まあ、来ちまったもんは仕方ないけど」
……そういや、会うのも例のあの日以来だしなぁ。
そう俺が思うと、ジェレミーも同じことを思ったのか。
「でも元気そうにしてて安心したよ。キトリーが別邸に行くのはわかっていたけど、あの日以来だからね」
それはジェレミーとの婚約破棄の一幕をしたあの舞踏会以来。俺は傷心を癒すべく別邸に雲隠れしていた。
……まあ、悠々自適な生活を求めて別邸に行ってたんだけどね。その割には事件もありましたが。……いやしかし、ジェレミーもディエリゴを追いかけてきたのはわかるけど元婚約者の俺のところに来ちゃダメっしょ。これがドラマなら、めちゃくちゃ修羅場よ? 視聴率は取れそうだけど。ウムウムッ。
なんて脱線しながら考えていたのだが、そこへいつの間にか部屋を出ていたセリーナが慌てた様子で戻ってきた。
……どしたん?
今回もクスッと笑っていただければ幸いです。
ちょっと長めの全23話、最後までどうぞお付き合いくださいませ(・ω・)/
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「ちょ、レノ。苦しっ……あっ」
「もう少しですから」
「んんっ、や、もぉ、だめだってぇっ」
吐息交じりに俺は背後にいるレノに言った。でもレノは容赦してくれない。
「はぁ、んーっ! も、苦しぃってばっ」
「我慢して、坊ちゃん」
「もう、むりぃぃっ」
俺は身を捩らせて、涙を滲ませた。
……どうして俺がこんなことに?
それはディエリゴがやって来たことが発端だった――――。
◇◇◇◇
領地に帰る日。
レノと話している所に我が友ディエリゴが突然やってきた。
「キトリー! 俺、ジェレミーと婚約破棄するッ!」
そうドアを開けて入ってくるなり、俺に抱きついて言った。
「な、なんだってぇぇえええええっ!?」
俺は思わず叫ぶ。
……なっ、何があったわけ!?
そしてディエリゴの発言にさすがのレノも驚いていた。
「ディエリゴ様、ジェレミー王子と一体何が?」
「そ、そうだよ、ディエリゴ!」
俺は目の前にいるディエリゴに尋ねる。その目元はほんのり赤くなり、瞳は潤んでいる。そしてうさ耳はへたっと垂れていた。むむ、可愛いじゃないか。
「キトリーッ、ジェレミーの奴ってば俺がいるのにっ!」
うるうると瞳を潤ませて言ったがディエリゴは最後の言葉を言いたくないのか、ぐっと口を閉じた。
「ディエリゴがいるのに、どうしたんだよ? まさかアイツが浮気でもした、なんて言うんじゃないだろうな? あははははっ」
「っ!」
「……え、マジ?」
俺は冗談で言ったつもりだった。しかしディエリゴの顔が悲し気に歪み、それが答えだった。
……あのディエリゴLOVEなジェレミーがッ? 『ディーが好きだと叫びたい!』とでも言い出しそうな、あのジェレミーが浮気だと!? うっそーん。
「キトリぃーッ!」
「お、おいおい。そりゃ何かの勘違いだろ? ジェレミーが浮気なんて」
俺が言いかけるとディエリゴは食い気味に否定した。
「勘違いじゃない、だってジェレミーはッ!」
そう言った矢先、先程と同じようにドアが勢いよく開かれた。
「ディー!」
金髪を揺らして現れた美青年は、我が幼馴染、へたれのジェレミーだった。いや、見かけは王子らしくカッコいんだけどな。
「ジェレミー!?」
俺が声を上げるとジェレミーは俺の元、いや俺の傍にいるディエリゴの元へやってきた。
「ディー、逃げないで私の話を聞いて?」
「嫌だ! ジェレミーの話なんか聞くもんか!」
「ディー、お願いだよ。説明させて?」
「何が説明だ! 俺はハッキリとこの目で見たんだから!」
「だから、それは違うんだ」
「何が違うんだよ。どんな言い訳も俺は聞かないぞ!」
「ディー、言い訳なんて。私は説明を……私が愛してるは君だけだ」
「そんな言葉で俺は騙されない!」
「ディー、そんな事を言わないで」
「俺に喋りかけるなっ!」
ディエリゴが拒否するものだから、ジェレミーが泣き出しそうになり、眉毛が八の字になっている。それでもディエリゴの怒りは収まらないのか痴話喧嘩は終わりを見せず、ついに俺の堪忍袋の緒がプチっと切れた。
「シャラーーーーーープッ!」
俺が大きな声で言うと、二人は目を丸くして驚いた顔をした。だが、俺はそんな二人にニッコリ笑顔を見せる。
「喧嘩するほど仲がいいとはゆーけれど、俺をその痴話げんかに巻き込むんじゃありません! こういうのは俺のいないところでやりなさい!」
陰でこっそり見るから!
最後の一言を言わずに俺は腰に手を当てて、フンスッと鼻息を出す。
「ご、ごめん。キトリー」
「すまない」
素直に謝った二人に俺は「わかればよろしい」と偉そうに腕を組む。……とは言っても、目の前にいる二人は王子様と婚約者で、俺の方が身分は下なのだが。
そしてジェレミーは俺の元婚約者で、ディエリゴは俺からジェレミーを奪ったにっくき相手という事になっているんだが……まあそれはさておき。
「で? 一体、何があったんだ? ちょいと俺にテルミー(Tell me)してみなさい。ん」
俺は指先をくいくいっと動かして耳を二人に傾ける。そうすればディエリゴが先に口を開いた。
「それはジェレミーが」
「浮気した、だろ? で、そうなのか? ジェレミー」
俺が問いかければジェレミーは全力で否定した。
「そんな訳ない!」
「じゃあ、なんで最近城に出入りしている女の人とこそこそしてるの? それって、それってっ……そういう事なんでしょ!?」
ディエリゴは涙目でジェレミーに告げた。そしてジェレミーと言えば。
「それは……そうだけど、でも違うんだっ。ディー」
「何が違うんだ! 違うならあの人は何なんだっていうんだ!」
「それはっ」
「ほら、言い切れない! やっぱり」
ディエリゴは最後まで言えなくて、ぐぅっと唇を噛んだ。そしてそれをジェレミーは眺めるだけで。
……だから俺の前で喧嘩するんじゃないっつーの。俺は陰で眺めたい派なんだからぁ。……でもま、二人をくっつけた俺がちゃんとアフターケアをしないと、かな。やれやれフー。
「ディエリゴ、たぶんそれは勘違いだと思うぞ。あとジェレミー、内緒にしたいんだろうが、この状況じゃちゃんと言わないとお前の行動は意味がなくなるぞ」
俺が告げるとジェレミーはぐっと口を閉じた。でも逆にディエリゴは俺に食って掛かる。
「俺は勘違いなんかしてないよ! キトリーもジェレミーの肩を持つつもり!?」
キッと俺を睨んでディエリゴは言ったが、俺は推察した事を告げる。
「ジェレミーの肩を持つ気はないよ。ただ、ディエリゴが見た綺麗なお姉さんって言うのはたぶん宝石商の人だろう」
俺が教えるとディエリゴは目をまん丸にして、うさ耳をぴょこんっと揺らした。
「宝石商?」
「そうだよ。きっとジェレミーがディエリゴに贈り物でもしたくて、宝石商のデザイナーを呼んだんだろ。でもその贈り物は秘密だったからジェレミーは内緒にしていたわけ」
「俺に贈り物? ……ジェレミー。そう、なのか?」
ディエリゴが尋ねるとジェレミーは観念したようで、素直に答えた。
「ああ。そうだよ、ディーに何か贈り物をしたくて……もうすぐ誕生日だろう? だから、こっそり」
「俺の為?」
ディエリゴが尋ねるとジェレミーはこくりと頷いた。
「勘違いさせてごめん、ディー」
「え、あっ……俺の方こそ勘違いしてごめん。まさか俺の為にしてることだなんて思わなくてっ」
「いや、私が何も告げずにいたのが悪いんだ」
「ジェレミー」
「私にはディーしか見えてないよ」
二人は見つめ合い、熱い視線を交わし始める。
……もうっ、そーいうのは俺のいないところでやりなさいってば! たく仕方のない奴らだぜっ、ムフー。
「坊ちゃん、心の呟きの割には顔がにやけてますよ」
「ぬッ!?」
レノに背後から呟かれて俺は変な声が出る。そのせいで二人の視線が俺に向けられ、俺はにやついた顔を引き締めた。
「ん゛っんーっ、コホン! ともかく仲直りができたようで結構。もう痴話喧嘩しないように!」
俺はわざとらしく咳ばらいをして言う。後ろからレノの呆れた視線を妙に感じるが……放っておこう。てか、毎度のことながら人の心を読むんじゃありませんヨ!
「ありがとう、キトリー。いつも助けてもらってばかりだ」
ディエリゴは少し照れた顔で言い、ジェレミーも俺にお礼を言った。
「本当にその通りだな。ありがとうキトリー」
「いいってことよ。これも友達のよしみってやつさ」
俺がくっつけた二人だからな。何より破局されたら、再び俺にお鉢が回ってくる可能性があるからな。なので、そのまま仲良くしておいてくれ。
「そうか。でも……どうして私が宝石商を呼んでいるとわかったんだ? 秘密にしていたんだが」
ジェレミーは率直な疑問を俺にぶつけてきた。
「あ~、そうだなぁ。なんとなくそうかなって。ほら、俺って勘がいいからさ?」
俺は明後日の方向を見て、嘘を吐く。
……その宝石商、ヒューゴの親戚(ヒューゴ姉)がやっているから俺も顔見知りなんだよな~。
なので、ジェレミーがディエリゴの為に宝石を買おうとしていたのは以前から耳にして知っていたのだ。だが疑う事を知らない人の好い王子様は。
「なるほど! 確かにキトリーは昔から勘がよかったな」
ニコニコしながら俺を見つめた。
……ぐっ、曇りなき眼(まなこ)で俺を見るなぁ~!
俺はキラキラした瞳を向けられ、顔を背けた。そんな俺を見かねてか、レノが助け舟を出してくれる。
「それよりディエリゴ様、私達がここにいるとよくご存じでしたね?」
「ロディオン様がキトリーが帰ってきたって嬉しそうに言っていたから」
その会話を聞き、俺は思い出す。
……そういや兄様、ディエリゴの王妃教育を手伝ってるんだっけ?
「なるほどね。しかしなぁ、俺とお前は一応恋敵って事になってるんだから家に来たらダメだろー」
俺が思わずツッコむとディエリゴはうさ耳をまたぺたんっと下ろした。
「それはそうだけど……キトリーしか思い浮かばなくて」
その可愛い仕草にぐっと心を掴まれてしまう。それは卑怯だぞ、ディエリゴ!
「まあ、来ちまったもんは仕方ないけど」
……そういや、会うのも例のあの日以来だしなぁ。
そう俺が思うと、ジェレミーも同じことを思ったのか。
「でも元気そうにしてて安心したよ。キトリーが別邸に行くのはわかっていたけど、あの日以来だからね」
それはジェレミーとの婚約破棄の一幕をしたあの舞踏会以来。俺は傷心を癒すべく別邸に雲隠れしていた。
……まあ、悠々自適な生活を求めて別邸に行ってたんだけどね。その割には事件もありましたが。……いやしかし、ジェレミーもディエリゴを追いかけてきたのはわかるけど元婚約者の俺のところに来ちゃダメっしょ。これがドラマなら、めちゃくちゃ修羅場よ? 視聴率は取れそうだけど。ウムウムッ。
なんて脱線しながら考えていたのだが、そこへいつの間にか部屋を出ていたセリーナが慌てた様子で戻ってきた。
……どしたん?
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