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第一章「レノと坊ちゃん」
最終話 ヘビーだぜ
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「たんま! ど、同意のない行為に拒否権を行使しますッ!!」
俺は片手を挙手して権利を主張した。
「ほぅ、そう来ましたか」
「お前だって、嫌々ながらの相手なんて嫌だろ!? ナッ!?」
「……嫌がるキトリー様ですか。それも面白そうですね?」
ひえええええぇぇっ! このドSめッ! 離れろ、むっつりスケベ!
「ハハッ、ジョウダンデスヨ」
レノは笑って俺に言った。でもこの棒読み感、絶対ちょっとは本気が入ってた!
「とにかく、お触りはナシ! いいな!?」
「それじゃ、何もできないじゃないですか」
お前は何をする気なんだ、俺で! と言いたいが、返ってくる言葉が怖い。なので俺は「ウゥゥゥゥッ」と子犬の様に唸るしかない。
でも、そんな俺にレノは小さくため息を吐き……。
「はぁ、仕方ないですね。わかりましたよ」
「ホントか!?」
よかった。俺の貞操は守られた!!
「ええ、いくらでも待ちますよ。ただ私はしつこいですからね?」
Oh、どうやら俺の貞操は先延ばしになっただけのようデス。
「うぅ……どんだけ俺の事が好きなんだよ」
俺は思わず小言の様に呟いてしまう。だけど返ってきた言葉に俺は赤面する羽目になった。
「誰よりも大好きですよ。キトリー様」
微笑まれて、俺は「うぐっ」とまたも呻くことになった。
「では、お触りしませんので、添い寝ぐらいはいいですよね?」
「は?」
俺が間抜けな声を上げている内にレノは上着とズボンを脱ぎ、下着姿になった。細いくせにムキムキマッチョな体が現れる。
「なななっ、何!?」
「私が昔から寝る時に服を着ないのは知っているでしょう?」
そういやレノは昔から寝る時は裸族だったな? なんて思い出している内にレノは勝手にベッドに横になった。まあ、俺のベッド。無駄にでかいからいいけど。
「さ、もう夜も遅いですから寝ますよ」
「う、でもぉ」
……俺、媚薬を飲んじゃったし。というか飲まされたんだけど。一緒に寝て大丈夫か? 朝チュン展開は勘弁なんだけど。『お、お尻に違和感が……これってまさか?』とか、ヤだぞ?
「あの瓶は元から空です。それこそ同意なく、あんなものを飲ませませんよ」
「え? そうなの?」
……じゃあ、俺の体が熱く感じたのってなんなん? もしやプラシーボ効果ってやつか? 恥ずかしッ!
「こうでもしないと、一向に進展しないと思いましたのでね。ほら、横になって。さっさと寝てください」
「わかったよ」
……ん? でも、それって俺を騙したんじゃぁ?
「さっさと横にならないと押し倒しますよ」
「はいぃっ!」
俺は大人しくレノの隣に寝た。まあ子供の頃に何度か添い寝はしているので、大丈夫だろう……多分。
「寝ている間に俺になんかしたら絶交だかんな!」
俺が何度目かの絶交宣言を言うと、レノは適当に「はいはい」と返事をした。
……うむむ、なんだか流されてる感じあるけど。もーいいや、レノは何にもしないって言ったんだから。さっさと寝よ。
俺はそう開き直って目を閉じ、寝る体勢に入った。しかし、目を瞑ってしばらく。じぃーっと俺を見つめる視線が気になる。
「あー、もう! そんなに見てたら寝にくいちゅーの!」
俺を見つめるレノに向かって俺は叫んだ。だがレノは嬉しそうにくしゃっと笑った。滅多に見ない笑顔に俺は胸がドキッと鳴る。
「すみません。ずっとこの日が来るのを待ち望んでいたので、嬉しくて」
……ん゛ん゛っ、急に可愛い事言うなよ!
「何言ってんだよ。子供の頃はよく寝てただろ。……もう、レノも早く寝ろよ」
俺はそれだけを言うとレノに背中を向けて寝た。
……あー、びっくりした! 急にあんなこと言うなんて。しかもあの笑顔は反則だろ! ドキドキするじゃん!
俺はひっそり胸を押さえて思った。
……けどレノと添い寝するの、全然嫌じゃないな。やっぱりレノとは付き合いがながいからか? それとも俺、意外にレノの事がしゅき……いや、考えるのはよそう。そして寝ようッ!
俺はぎゅっと目を閉じた。けどそんな俺にレノが近寄ってくる気配がした。
「おやすみなさい、坊ちゃん」
優しくて甘い低めの声に俺は胸がドキッとまた変な風に鳴った。
……うぅっ、天然イケメンってこわいよーっ!
俺は一人心の中で叫んだが、俺のドキドキと心配を他所にレノは明かりを消して先に眠りにつき、俺も遅めの就寝をしたのだった。
◇◇◇◇
――――しかし翌朝。
チュンチュンッと爽やかな朝を迎え、俺は目を覚ました。
しかし目を開ければ目の前には素敵な胸板が見えているではないか。しかも俺がレノに抱き着いている。
……ぎゃわっ!!
俺は慌ててレノから離れた。どうやら眠っている間にレノに抱き着いてしまったらしい。
……レノって蛇獣人だから体温が低くて、ちょっと冷たくて気持ちいいんだよな。抱き着いたのもそのせいだな。うんッ!
心の中で言い訳しつつ、俺はハッとして自分の体を確認した。体に違和感はない。
……良かったー! 朝チュン回避できたみたいッ!
俺はホッと息を吐く、だが。
「んっ」
まだ寝ているレノが色っぽく声を出し、身じろぎをした。子供の頃はよく一緒に寝たもんだが、大人になってから寝る事はなかった。だからレノの寝顔はレアだ。
……うーん、寝ていても綺麗な顔をしてるなぁ。まつ毛長いし。顎のラインとかシュッとしてて、胸板も張りがあって筋肉を感じるなぁ~。
そして俺はついつい好奇心に負けて、夏用の薄いかけ毛布をぺろっと軽く捲ってみた。
だがそこには見てはいけないものがあって、俺はぱふんっと一回閉じ、息を整えてからもう一度かけ毛布を捲った。
……う、嘘だろっ。
俺はレノの下半身を見て、プルプルッと震え、ぱふんっともう一度かけ毛布を閉じた。
だってレノの息子さんが下着を押し上げて元気に『オハヨウ』って朝勃っちしてるんだけど、その大きさが尋常じゃないんだもんッ!!
……ナニアレ? えっ、蛇だけにアナコンダサイズってか!? ヘビー過ぎるよ!!
俺はレノの息子さんの大きさに驚きを隠せなかった。そしてフッと恐ろしい事を考えてしまう。もしもレノと俺がドッキングするような事があれば……と。
「ひぇえええっ。無理だ、俺の尻が割れるッ!!」
俺は両頬を抑えて思わず叫んだ。
しかし、そんな俺にどこからともなくツッコむ声が。
「お尻は最初から割れてますよ、坊ちゃん」
いつの間にか起きていたレノに言われて、俺は「ぎゃわあっ!」と大きな叫び声を上げてベッドから転げ落ちた。
そして、その叫び声を聞きつけたお爺やフェルナンドとヒューゴ、その上使用人達にまで俺とレノが同衾(正確には添い寝)した事を目撃され、俺達が付き合っている事は周知の事実となってしまったのだった。
◇◇◇◇
「ううっ、みんなの視線が辛い」
昼前、俺は執務室の机に突っ伏して嘆いた。だって屋敷の中を歩けば、みんな妙に生温かい目で見てくるんだもん!
「まあまあ、早かれ遅かれ皆さんには知れる事だったからいいじゃないですか」
レノはまるで他人事のように言ってくる。全ての元凶だと言うのに!
だが、何も言わずに目だけで抗議すれば。
「それとも、なんとも思っていない使用人と一緒に寝た、と皆さんに伝えますか?」
「なにそれ。俺、ビッチみたいじゃんか。ムゥッ」
俺は頬を膨らませて言うと、レノはフッと笑った。
「なら、我慢することですね。きっとすぐに慣れますよ」
「そうかなぁ」
……それよりもレノと俺の仲が公認になってしまった。しかも、なーんかみんながウェルカムモードなんだよな~。驚く雰囲気もなかったし……。
俺はそう思いつつチラッとレノを見る。そうすればレノはにこっと笑うだけで。
「なんか、外堀を埋められている気がする」
俺がぼそっと呟けば、レノは聞こえなかったのか首を傾げた。
「なんですか?」
「いや、なんでもない。とりあえず今日は一日中、執務室にいる」
「畏まりました……。ところでキトリー様」
「ん、なに?」
俺が顔を上げて目の前に立つレノを見れば、思わぬ事を言い始めた。
「お暇の件、やはり頂きたいのですがよろしいですか?」
「え!? なんで!」
俺が付き合うって言ったら、帝都に帰らないって言ったじゃん!! あ、いや、少し考えるって言ってたか?
「そんなに心配なされなくても、五日したら戻ってきますからご安心を」
「へっ!? 戻ってくんの!?」
「はい、戻ってきますよ」
「な、俺はてっきりレノが辞めるって……。じゃあ、帝都に何しに帰るんだ?」
俺が尋ねればレノはハッキリと答えた。
「母の五十歳の誕生日ですので、今回は帰ろうかと」
「サラおばちゃんの!」
そう言えば、そろそろ誕生日だったな! 俺もプレゼント用意しなくちゃ! ……じゃなくって!!
「なので、お暇頂けますか?」
「なんだよ、それなら五日と言わず一週間ぐらい休んでいいよ。つーか、普通に休みって言えよな。俺はてっきり!」
「私が辞めると? そんなわけないじゃないですか」
レノはにっこりと笑って俺を見た。その憎たらしい顔を見て俺はわかってしまった。レノは俺が勘違いをしている事に気がつきながら、教えなかったんだと。
……ぐううぅぅっ、俺はてっきりレノが辞めると思って、付き合うって言ったのにぃ!
「では一週間ほどお休みを頂きますね?」
レノは宣言し、俺がうぐうぐ唸っている間に部屋を出て行こうとした。しかしドアに手をかけレノは振り返った。
「ああ、そうそう。そう言えば教えてませんでしたね?」
「あん? なんだよ」
俺はぶすくれた顔でレノに尋ねた。
するとレノは涼やかな笑顔で俺にハッキリと告げたのだった。
「私の好みのタイプは、馬鹿正直でからかいがいがある方ですよ」
レノはそう言うと部屋を颯爽と出て行った。しかし、言われた方の俺は……。
「馬鹿正直でからかいがいのある人? ……つまり俺がそうだって事か!? プンギャアアアーッ!」
……レノ、許すまじ!
俺がその場で地団駄を踏んだのは、言うまでもなかった。
「フフ、いつまでも楽しい方ですね」
そうレノが廊下を楽し気に歩いているのも知らないで……。
おわり
ーーーー第二章「デートはお手柔らかに!」へ続く!!
****あとがき******
いかがでしたか?
笑いを求めて書いたお話でしたが、くすっと笑えたでしょうか(*´ω`)
では暫しの別れ!( `ー´)ノ
俺は片手を挙手して権利を主張した。
「ほぅ、そう来ましたか」
「お前だって、嫌々ながらの相手なんて嫌だろ!? ナッ!?」
「……嫌がるキトリー様ですか。それも面白そうですね?」
ひえええええぇぇっ! このドSめッ! 離れろ、むっつりスケベ!
「ハハッ、ジョウダンデスヨ」
レノは笑って俺に言った。でもこの棒読み感、絶対ちょっとは本気が入ってた!
「とにかく、お触りはナシ! いいな!?」
「それじゃ、何もできないじゃないですか」
お前は何をする気なんだ、俺で! と言いたいが、返ってくる言葉が怖い。なので俺は「ウゥゥゥゥッ」と子犬の様に唸るしかない。
でも、そんな俺にレノは小さくため息を吐き……。
「はぁ、仕方ないですね。わかりましたよ」
「ホントか!?」
よかった。俺の貞操は守られた!!
「ええ、いくらでも待ちますよ。ただ私はしつこいですからね?」
Oh、どうやら俺の貞操は先延ばしになっただけのようデス。
「うぅ……どんだけ俺の事が好きなんだよ」
俺は思わず小言の様に呟いてしまう。だけど返ってきた言葉に俺は赤面する羽目になった。
「誰よりも大好きですよ。キトリー様」
微笑まれて、俺は「うぐっ」とまたも呻くことになった。
「では、お触りしませんので、添い寝ぐらいはいいですよね?」
「は?」
俺が間抜けな声を上げている内にレノは上着とズボンを脱ぎ、下着姿になった。細いくせにムキムキマッチョな体が現れる。
「なななっ、何!?」
「私が昔から寝る時に服を着ないのは知っているでしょう?」
そういやレノは昔から寝る時は裸族だったな? なんて思い出している内にレノは勝手にベッドに横になった。まあ、俺のベッド。無駄にでかいからいいけど。
「さ、もう夜も遅いですから寝ますよ」
「う、でもぉ」
……俺、媚薬を飲んじゃったし。というか飲まされたんだけど。一緒に寝て大丈夫か? 朝チュン展開は勘弁なんだけど。『お、お尻に違和感が……これってまさか?』とか、ヤだぞ?
「あの瓶は元から空です。それこそ同意なく、あんなものを飲ませませんよ」
「え? そうなの?」
……じゃあ、俺の体が熱く感じたのってなんなん? もしやプラシーボ効果ってやつか? 恥ずかしッ!
「こうでもしないと、一向に進展しないと思いましたのでね。ほら、横になって。さっさと寝てください」
「わかったよ」
……ん? でも、それって俺を騙したんじゃぁ?
「さっさと横にならないと押し倒しますよ」
「はいぃっ!」
俺は大人しくレノの隣に寝た。まあ子供の頃に何度か添い寝はしているので、大丈夫だろう……多分。
「寝ている間に俺になんかしたら絶交だかんな!」
俺が何度目かの絶交宣言を言うと、レノは適当に「はいはい」と返事をした。
……うむむ、なんだか流されてる感じあるけど。もーいいや、レノは何にもしないって言ったんだから。さっさと寝よ。
俺はそう開き直って目を閉じ、寝る体勢に入った。しかし、目を瞑ってしばらく。じぃーっと俺を見つめる視線が気になる。
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俺はひっそり胸を押さえて思った。
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俺はぎゅっと目を閉じた。けどそんな俺にレノが近寄ってくる気配がした。
「おやすみなさい、坊ちゃん」
優しくて甘い低めの声に俺は胸がドキッとまた変な風に鳴った。
……うぅっ、天然イケメンってこわいよーっ!
俺は一人心の中で叫んだが、俺のドキドキと心配を他所にレノは明かりを消して先に眠りにつき、俺も遅めの就寝をしたのだった。
◇◇◇◇
――――しかし翌朝。
チュンチュンッと爽やかな朝を迎え、俺は目を覚ました。
しかし目を開ければ目の前には素敵な胸板が見えているではないか。しかも俺がレノに抱き着いている。
……ぎゃわっ!!
俺は慌ててレノから離れた。どうやら眠っている間にレノに抱き着いてしまったらしい。
……レノって蛇獣人だから体温が低くて、ちょっと冷たくて気持ちいいんだよな。抱き着いたのもそのせいだな。うんッ!
心の中で言い訳しつつ、俺はハッとして自分の体を確認した。体に違和感はない。
……良かったー! 朝チュン回避できたみたいッ!
俺はホッと息を吐く、だが。
「んっ」
まだ寝ているレノが色っぽく声を出し、身じろぎをした。子供の頃はよく一緒に寝たもんだが、大人になってから寝る事はなかった。だからレノの寝顔はレアだ。
……うーん、寝ていても綺麗な顔をしてるなぁ。まつ毛長いし。顎のラインとかシュッとしてて、胸板も張りがあって筋肉を感じるなぁ~。
そして俺はついつい好奇心に負けて、夏用の薄いかけ毛布をぺろっと軽く捲ってみた。
だがそこには見てはいけないものがあって、俺はぱふんっと一回閉じ、息を整えてからもう一度かけ毛布を捲った。
……う、嘘だろっ。
俺はレノの下半身を見て、プルプルッと震え、ぱふんっともう一度かけ毛布を閉じた。
だってレノの息子さんが下着を押し上げて元気に『オハヨウ』って朝勃っちしてるんだけど、その大きさが尋常じゃないんだもんッ!!
……ナニアレ? えっ、蛇だけにアナコンダサイズってか!? ヘビー過ぎるよ!!
俺はレノの息子さんの大きさに驚きを隠せなかった。そしてフッと恐ろしい事を考えてしまう。もしもレノと俺がドッキングするような事があれば……と。
「ひぇえええっ。無理だ、俺の尻が割れるッ!!」
俺は両頬を抑えて思わず叫んだ。
しかし、そんな俺にどこからともなくツッコむ声が。
「お尻は最初から割れてますよ、坊ちゃん」
いつの間にか起きていたレノに言われて、俺は「ぎゃわあっ!」と大きな叫び声を上げてベッドから転げ落ちた。
そして、その叫び声を聞きつけたお爺やフェルナンドとヒューゴ、その上使用人達にまで俺とレノが同衾(正確には添い寝)した事を目撃され、俺達が付き合っている事は周知の事実となってしまったのだった。
◇◇◇◇
「ううっ、みんなの視線が辛い」
昼前、俺は執務室の机に突っ伏して嘆いた。だって屋敷の中を歩けば、みんな妙に生温かい目で見てくるんだもん!
「まあまあ、早かれ遅かれ皆さんには知れる事だったからいいじゃないですか」
レノはまるで他人事のように言ってくる。全ての元凶だと言うのに!
だが、何も言わずに目だけで抗議すれば。
「それとも、なんとも思っていない使用人と一緒に寝た、と皆さんに伝えますか?」
「なにそれ。俺、ビッチみたいじゃんか。ムゥッ」
俺は頬を膨らませて言うと、レノはフッと笑った。
「なら、我慢することですね。きっとすぐに慣れますよ」
「そうかなぁ」
……それよりもレノと俺の仲が公認になってしまった。しかも、なーんかみんながウェルカムモードなんだよな~。驚く雰囲気もなかったし……。
俺はそう思いつつチラッとレノを見る。そうすればレノはにこっと笑うだけで。
「なんか、外堀を埋められている気がする」
俺がぼそっと呟けば、レノは聞こえなかったのか首を傾げた。
「なんですか?」
「いや、なんでもない。とりあえず今日は一日中、執務室にいる」
「畏まりました……。ところでキトリー様」
「ん、なに?」
俺が顔を上げて目の前に立つレノを見れば、思わぬ事を言い始めた。
「お暇の件、やはり頂きたいのですがよろしいですか?」
「え!? なんで!」
俺が付き合うって言ったら、帝都に帰らないって言ったじゃん!! あ、いや、少し考えるって言ってたか?
「そんなに心配なされなくても、五日したら戻ってきますからご安心を」
「へっ!? 戻ってくんの!?」
「はい、戻ってきますよ」
「な、俺はてっきりレノが辞めるって……。じゃあ、帝都に何しに帰るんだ?」
俺が尋ねればレノはハッキリと答えた。
「母の五十歳の誕生日ですので、今回は帰ろうかと」
「サラおばちゃんの!」
そう言えば、そろそろ誕生日だったな! 俺もプレゼント用意しなくちゃ! ……じゃなくって!!
「なので、お暇頂けますか?」
「なんだよ、それなら五日と言わず一週間ぐらい休んでいいよ。つーか、普通に休みって言えよな。俺はてっきり!」
「私が辞めると? そんなわけないじゃないですか」
レノはにっこりと笑って俺を見た。その憎たらしい顔を見て俺はわかってしまった。レノは俺が勘違いをしている事に気がつきながら、教えなかったんだと。
……ぐううぅぅっ、俺はてっきりレノが辞めると思って、付き合うって言ったのにぃ!
「では一週間ほどお休みを頂きますね?」
レノは宣言し、俺がうぐうぐ唸っている間に部屋を出て行こうとした。しかしドアに手をかけレノは振り返った。
「ああ、そうそう。そう言えば教えてませんでしたね?」
「あん? なんだよ」
俺はぶすくれた顔でレノに尋ねた。
するとレノは涼やかな笑顔で俺にハッキリと告げたのだった。
「私の好みのタイプは、馬鹿正直でからかいがいがある方ですよ」
レノはそう言うと部屋を颯爽と出て行った。しかし、言われた方の俺は……。
「馬鹿正直でからかいがいのある人? ……つまり俺がそうだって事か!? プンギャアアアーッ!」
……レノ、許すまじ!
俺がその場で地団駄を踏んだのは、言うまでもなかった。
「フフ、いつまでも楽しい方ですね」
そうレノが廊下を楽し気に歩いているのも知らないで……。
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