113 / 114
殿下、どうしましょう?
9 約束
しおりを挟む
――――パラリッと紙を捲る音に俺は目を覚ました。
揺れる蝋燭の柔らかい光が見え、そしてクッションにもたれながら俺の隣に座って何かの書類を難しい顔で読んでいるレオナルド殿下の横顔が見えた。
……しごと、してるのかな。
俺は寝起きの頭で、ぬくぬくとしたベッドの中でそんな事を考える。そしていつの間にか服を着ている事に気がついた。
……レオナルド殿下がきせてくれたのかな。からだ、きれいになってる。
俺はまだぽやっとする頭で思いつつ、レオナルド殿下を見つめる。
書類を見つめるその横顔はまさに大人の男で、どこか色っぽい。でも前髪を下ろした姿は少しだけ若くて、俺はまだ青年だったレオナルド殿下を思い出す。
……本当に昔から綺麗な人だなぁ。かっこいいお兄さんだとは思ってたけど、年を取って更にカッコよさが増すなんて。俺なんて中身は変わんないし、背ばかり伸びて魅力はないのに。
そう思うけれどレオナルド殿下が『可愛いよ、セス』と囁く言葉を思い出して、頬がポッと熱くなる。
……男の俺が可愛いわけないのに。可愛いって言えば、フェニの事とかだよ。
そんな事を考えながら、夕方に別れたばかりの愛しい小鳥の事を思い出す。そしてその相方の不死鳥の事も。
……フェニとジークさん、今は仲良くしてるかな。
二人の独特で、軽妙な会話を思い出して俺は内心くすりと笑う。
でも同時に俺はアレク殿下から聞いたことを思い出した。それはフェニが大きくなるには時間がかかるという事を聞いた時に、もう一つの事を。
『不死鳥というのは五百年の時を生き、何度も転生する。故に魂の番というものが存在するらしい。魂の番とは運命の相手で、何度生まれ変わっても出会うようになっているそうだ。そしてずっと共に生きていく……不死鳥の孤独を癒す術なのだろうな』
そうアレク殿下が教えてくれた。
……魂の番か。フェニとジークさんはそうなんだろうな。ジークさんは生まれる前のフェニの事を知っている風だったし。それに何よりジークさんの目には愛情がある。けれどそれは俺達とはまた違ったものだ。……そうだな、まるで俺に向けるレオの瞳みたいな。
「セス、起きたの?」
声をかけられて俺はハッと顔を上げる。そうすればレオナルド殿下がこちらを見ていた。
「あ……うん、今起きました」
本当は少し前に起きてたけど、顔を眺めてたなんて少し照れ臭くて俺はちょっとした嘘を吐いた。でもそんな俺の頭をレオナルド殿下は優しく撫でる。
「体は大丈夫?」
レオナルド殿下に気遣われて俺は少し恥ずかしい。二人で何をしたのか思い出しちゃうから。
「あ、う、うん。大丈夫」
「そうか。さっきはすまなかったね、セスが可愛すぎて自制が利かなかった」
レオナルド殿下は申し訳なさそうに謝った。でも俺は。
「……大丈夫。それに俺も……きもち、よかったし」
俺はもごもごと小さな声で答える。でもレオナルド殿下にはしっかり聞こえていたようで、嬉しそうな顔をして「そうか」と答えた。
なので俺はその笑みを見てもぞもぞっと起き上がると、こてっとレオナルド殿下の肩に寄りかかった。なんだか甘えたくて。
そしてその意図を汲んでくれたのか、レオナルド殿下はそっと俺を抱き寄せてくれた。逞しい体は俺が寄りかかってもびくともしない。温かくて、いつまでもこうしていたいと思うほど居心地がいい。
……フェニ達と同じように、俺もレオと魂の番だったらいいな。
「レオ……これからも俺の傍にいてくださいね」
俺が想いを口にすればレオナルド殿下は「勿論だよ、セス」とすぐに答えてくれた。そう答えてくれるのはわかっていたけれど、やっぱり言葉にしてもらえると嬉しい。なので、ほかほかした気持ちでいたのだが。
「これからセスと、もっとやらしい事もしたいし」
「へ!? や、やらしいことっ?!」
思わぬ発言に俺は声を上げる。でもレオナルド殿下は驚く俺ににっこりと微笑んだ。
「ああ、そうだよ」
……そうだよって。今日ので十分だったのに、あれ以上の事があるっていうの!?
そう思い、どんなことをするのか尋ねようとしたけれど、にっこりと微笑むレオナルド殿下の笑みが妙に怖くて、俺は自然と口を閉じた。
……き、聞かないでおこう。なんだか聞いたら怖いし。
俺は恐ろしさを感じて黙ったが、でもレオナルド殿下はそんな俺に色っぽい声を出して尋ねた。
「セス、何をするか気にならない?」
「ほぇ!? や、大丈夫です!」
「そう? でも、教えてあげたいな?」
レオナルド殿下はふふっと笑って俺に迫る。でも肩をがっしりと掴まれていて逃げられない。
……これ、聞いたら最後、絶対されそうな気がする!
「だ、大丈夫! 聞かなくて大丈夫です!!」
「そうかい? 残念だな。でもまぁ、今度でもいいか。言う前に実践という手もあるし」
レオナルド殿下は楽し気に言うと俺の頬にちゅっとキスをした。でもいつもならキスされて嬉しいのに、今の俺はちょっと恐怖しか感じなかった。
……レオ、俺に何をさせるんだろう。
そう思ったけれど、サファイアの瞳がうきうきと楽し気だったので俺は予感した。きっとどんな恥ずかしいことだって、この瞳に見つめられて頼まれてしまえば俺は引き受けてしまうのだろうと。
「セス、愛してるよ」
レオナルド殿下は微笑んで言い、俺はその言葉に返事をした。
「うん、レオ」
揺れる蝋燭の柔らかい光が見え、そしてクッションにもたれながら俺の隣に座って何かの書類を難しい顔で読んでいるレオナルド殿下の横顔が見えた。
……しごと、してるのかな。
俺は寝起きの頭で、ぬくぬくとしたベッドの中でそんな事を考える。そしていつの間にか服を着ている事に気がついた。
……レオナルド殿下がきせてくれたのかな。からだ、きれいになってる。
俺はまだぽやっとする頭で思いつつ、レオナルド殿下を見つめる。
書類を見つめるその横顔はまさに大人の男で、どこか色っぽい。でも前髪を下ろした姿は少しだけ若くて、俺はまだ青年だったレオナルド殿下を思い出す。
……本当に昔から綺麗な人だなぁ。かっこいいお兄さんだとは思ってたけど、年を取って更にカッコよさが増すなんて。俺なんて中身は変わんないし、背ばかり伸びて魅力はないのに。
そう思うけれどレオナルド殿下が『可愛いよ、セス』と囁く言葉を思い出して、頬がポッと熱くなる。
……男の俺が可愛いわけないのに。可愛いって言えば、フェニの事とかだよ。
そんな事を考えながら、夕方に別れたばかりの愛しい小鳥の事を思い出す。そしてその相方の不死鳥の事も。
……フェニとジークさん、今は仲良くしてるかな。
二人の独特で、軽妙な会話を思い出して俺は内心くすりと笑う。
でも同時に俺はアレク殿下から聞いたことを思い出した。それはフェニが大きくなるには時間がかかるという事を聞いた時に、もう一つの事を。
『不死鳥というのは五百年の時を生き、何度も転生する。故に魂の番というものが存在するらしい。魂の番とは運命の相手で、何度生まれ変わっても出会うようになっているそうだ。そしてずっと共に生きていく……不死鳥の孤独を癒す術なのだろうな』
そうアレク殿下が教えてくれた。
……魂の番か。フェニとジークさんはそうなんだろうな。ジークさんは生まれる前のフェニの事を知っている風だったし。それに何よりジークさんの目には愛情がある。けれどそれは俺達とはまた違ったものだ。……そうだな、まるで俺に向けるレオの瞳みたいな。
「セス、起きたの?」
声をかけられて俺はハッと顔を上げる。そうすればレオナルド殿下がこちらを見ていた。
「あ……うん、今起きました」
本当は少し前に起きてたけど、顔を眺めてたなんて少し照れ臭くて俺はちょっとした嘘を吐いた。でもそんな俺の頭をレオナルド殿下は優しく撫でる。
「体は大丈夫?」
レオナルド殿下に気遣われて俺は少し恥ずかしい。二人で何をしたのか思い出しちゃうから。
「あ、う、うん。大丈夫」
「そうか。さっきはすまなかったね、セスが可愛すぎて自制が利かなかった」
レオナルド殿下は申し訳なさそうに謝った。でも俺は。
「……大丈夫。それに俺も……きもち、よかったし」
俺はもごもごと小さな声で答える。でもレオナルド殿下にはしっかり聞こえていたようで、嬉しそうな顔をして「そうか」と答えた。
なので俺はその笑みを見てもぞもぞっと起き上がると、こてっとレオナルド殿下の肩に寄りかかった。なんだか甘えたくて。
そしてその意図を汲んでくれたのか、レオナルド殿下はそっと俺を抱き寄せてくれた。逞しい体は俺が寄りかかってもびくともしない。温かくて、いつまでもこうしていたいと思うほど居心地がいい。
……フェニ達と同じように、俺もレオと魂の番だったらいいな。
「レオ……これからも俺の傍にいてくださいね」
俺が想いを口にすればレオナルド殿下は「勿論だよ、セス」とすぐに答えてくれた。そう答えてくれるのはわかっていたけれど、やっぱり言葉にしてもらえると嬉しい。なので、ほかほかした気持ちでいたのだが。
「これからセスと、もっとやらしい事もしたいし」
「へ!? や、やらしいことっ?!」
思わぬ発言に俺は声を上げる。でもレオナルド殿下は驚く俺ににっこりと微笑んだ。
「ああ、そうだよ」
……そうだよって。今日ので十分だったのに、あれ以上の事があるっていうの!?
そう思い、どんなことをするのか尋ねようとしたけれど、にっこりと微笑むレオナルド殿下の笑みが妙に怖くて、俺は自然と口を閉じた。
……き、聞かないでおこう。なんだか聞いたら怖いし。
俺は恐ろしさを感じて黙ったが、でもレオナルド殿下はそんな俺に色っぽい声を出して尋ねた。
「セス、何をするか気にならない?」
「ほぇ!? や、大丈夫です!」
「そう? でも、教えてあげたいな?」
レオナルド殿下はふふっと笑って俺に迫る。でも肩をがっしりと掴まれていて逃げられない。
……これ、聞いたら最後、絶対されそうな気がする!
「だ、大丈夫! 聞かなくて大丈夫です!!」
「そうかい? 残念だな。でもまぁ、今度でもいいか。言う前に実践という手もあるし」
レオナルド殿下は楽し気に言うと俺の頬にちゅっとキスをした。でもいつもならキスされて嬉しいのに、今の俺はちょっと恐怖しか感じなかった。
……レオ、俺に何をさせるんだろう。
そう思ったけれど、サファイアの瞳がうきうきと楽し気だったので俺は予感した。きっとどんな恥ずかしいことだって、この瞳に見つめられて頼まれてしまえば俺は引き受けてしまうのだろうと。
「セス、愛してるよ」
レオナルド殿下は微笑んで言い、俺はその言葉に返事をした。
「うん、レオ」
300
お気に入りに追加
4,071
あなたにおすすめの小説
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

「じゃあ、別れるか」
万年青二三歳
BL
三十路を過ぎて未だ恋愛経験なし。平凡な御器谷の生活はひとまわり年下の優秀な部下、黒瀬によって破壊される。勤務中のキス、気を失うほどの快楽、甘やかされる週末。もう離れられない、と御器谷は自覚するが、一時の怒りで「じゃあ、別れるか」と言ってしまう。自分を甘やかし、望むことしかしない部下は別れを選ぶのだろうか。
期待の若手×中間管理職。年齢は一回り違い。年の差ラブ。
ケンカップル好きへ捧げます。
ムーンライトノベルズより転載(「多分、じゃない」より改題)。
平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます
ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜
名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。
愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に…
「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」
美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。
🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶
応援していただいたみなさまのおかげです。
本当にありがとうございました!

それ以上近づかないでください。
ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」
地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。
まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。
転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。
ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。
「本当に可愛い。」
「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」
かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。
「お願いだから、僕にもう近づかないで」
【完結】相談する相手を、間違えました
ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。
自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・
***
執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。
ただ、それだけです。
***
他サイトにも、掲載しています。
てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。
***
エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。
ありがとうございました。
***
閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。
ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*)
***
2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

あなたと過ごした五年間~欠陥オメガと強すぎるアルファが出会ったら~
華抹茶
BL
子供の時の流行り病の高熱でオメガ性を失ったエリオット。だがその時に前世の記憶が蘇り、自分が異性愛者だったことを思い出す。オメガ性を失ったことを喜び、ベータとして生きていくことに。
もうすぐ学園を卒業するという時に、とある公爵家の嫡男の家庭教師を探しているという話を耳にする。その仕事が出来たらいいと面接に行くと、とんでもなく美しいアルファの子供がいた。
だがそのアルファの子供は、質素な別館で一人でひっそりと生活する孤独なアルファだった。その理由がこの子供のアルファ性が強すぎて誰も近寄れないからというのだ。
だがエリオットだけはそのフェロモンの影響を受けなかった。家庭教師の仕事も決まり、アルファの子供と接するうちに心に抱えた傷を知る。
子供はエリオットに心を開き、懐き、甘えてくれるようになった。だが子供が成長するにつれ少しずつ二人の関係に変化が訪れる。
アルファ性が強すぎて愛情を与えられなかった孤独なアルファ×オメガ性を失いベータと偽っていた欠陥オメガ
●オメガバースの話になります。かなり独自の設定を盛り込んでいます。
●最終話まで執筆済み(全47話)。完結保障。毎日更新。
●Rシーンには※つけてます。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる