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殿下、どうしましょう?
4 膝枕
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「……父さんもこんな気持ちだったんだな」
俺が思わず呟くと、レオナルド殿下は首を傾げて聞き返した。
「セス?」
「あ、いや……俺も勝手なことして父さんに怒られたことがあるなぁって思い出して」
答えるとレオナルド殿下は少し驚いた顔をした。
「お義父さんが? リーナが怒る姿は容易に想像つくが」
「まあ基本的に母さんの方が怒る回数は多かったですね。でもだからこそ、父さんに怒られた時の事は印象深くて」
「一体セスは何をしてしまったの?」
レオナルド殿下は興味ありげに俺に尋ねた。なので俺は素直に答える。
「まあ色々ありましたけど、一番怒られたのは薬科室で管理している温室に勝手に入った事かなぁ」
「温室に?」
「はい、子供の頃に。たぶんまだレオナルド殿下と会う前の時の事だったと思いますけど、俺、温室に忍び込んだんです」
「忍び込んだ?」
「母さんたちのお話がつまらなくなっちゃって。それで前に父さんと一緒に温室に入れてもらった事があった時に入り口のナンバー式の鍵の開け方を覚えていたからそれで勝手に……。でもそれを父さんに見つかってすごく怒られて」
『セス! どうして勝手に入たんだっ!!』
そう怒られた声が今でも蘇る。でもそれは怒られても仕方ないことだった。大人になった今ならよくわかる。
「温室にはたくさんの植物があるけど、その中には触れただけでも毒に侵されるような危険なものもあるから」
「なるほどね」
「あの頃は何とも思っていなかったけど……今なら父さんの気持ちがよくわかります」
……父さん、すっごく怒ったもんな。それで最後には俺が泣くよりも先にボロボロと泣いちゃって。
『セス! もう、本当に勝手に、入っちゃ、駄目だぞ!! お父さん、セスに何かあったら……何かあったら! うっううっ、そんなの耐えられないぃぃっ!』
俺は怒りながらも盛大に泣いた父さんを思い出す。
……大人ってこんなに泣くものなの? ってちょっと思ったっけ。でも父さんが真剣に怒ってくれたから。俺の事を想ってくれて言った事だとわかったから、俺はもう二度と温室に勝手に入ることはしなくなった。本当、今でもあの時の父さんには悪いことをしたなって思う。
俺はしみじみと思い返す。
「セスにもそんな時があったんだね。でも、私がセスと会う時はいつもお行儀よくしていたような気がするが?」
レオナルド殿下は顎に手を当てて、過去を思い出しながら呟いた。だから俺は、どうしていつもお行儀良くしていたのか教えることにした。
「ああ、それは。その……かっこいいお兄ちゃんと一緒にいるのが嬉しくて大人しくしてたんですよ」
……あの時からレオナルド殿下はカッコよかったもんなぁ。その上、俺は一人っ子だから年上のお兄さんが出来たみたいで嬉しくて。まあ、その人とこんな風に夫夫になるなんてあの頃は思ってもみなかったけど。
なんて考えているとレオナルド殿下はそっと俺の手の上に大きな手を重ねた。
「格好いいって思ってくれてたの?」
嬉しそうに尋ねられて俺は正直に答える。
「それは……その。今でもそう思ってますよ」
俺は目の前にいる美丈夫に視線を向ける。豪奢な金髪にサファイアみたいな綺麗な青の瞳。端正な顔立ちは俺にだけは甘く。そして服の下に隠れている彫刻のような体は同じ男として惚れ惚れするほどだ。
「セスにそう思って貰えるのは嬉しいな」
レオナルド殿下は言いながら重ねた俺の手を指先でなんだかいやらしく撫でてくる。その上、美しい青い瞳はなんだか怪しい光が宿ってきているような……。
俺はこれまでの経験から身の危険を感じ、慌てて目を逸らした。
「あ、それより! あの頃は色々としてもらってばかりで。お返しってことじゃないけど、レオは俺に何かして欲しいことはないですか?」
俺は怪しい雰囲気を流そうと話題を振ってみた。そうすればレオナルド殿下は「して欲しいこと?」と呟き、少し考えた後すぐに答えた。
「そうだな。折角なら膝枕でもしてもらおうかな?」
「ひざ、まくら? そんなのでいいんですか? 例えば回復薬を作って欲しいとか、何か買って欲しいとか……まあ俺よりレオの方がお金持ってると思うけど」
「いいや、それより膝枕がいいな」
レオナルド殿下はハッキリと答えた。だから、そんなのでいいのかな? と思いつつ俺は「まあ、レオがいいのなら」と答えて、その場で正座してみる。
「どうぞ?」
レオナルド殿下に声をかければ「では」と嬉しそうな顔をして体を横にすると、俺の膝にそっと頭を乗せた。ずしっとした重みが膝にかかる。
……人の頭って意外に重いんだなぁ。けどこの角度でレオをみるの、なんだか新鮮かも。
俺はじっとレオナルド殿下を見つめてしまう。長い金色のまつ毛が光に当たってキラキラしている。
「セス、そう見つめられると恥ずかしいな」
レオナルド殿下はふふっと笑って俺に言った。なので俺は慌てて顔を上げて目を逸らす。
「ご、ごめんなさいっ」
「いや……しかしセスの太ももは柔らかくて気持ちいいな」
「そう、ですか?」
……むしろ硬くないのかな?
なんて思っているとレオナルド殿下はころんっと向きを変え、うつ伏せになって顔を俺の膝に埋めた。
「レオ?」
……顔を下にしたら苦しくない??
そう思うけどレオナルド殿下は無言のまま微動だにしない。どうしたんだろう? と様子を窺っていたら、すぅーっはぁーっと何度も深呼吸している!
「ちょっ、レオ!」
……そんなところで深呼吸しないでっ!
俺は慌てて声を上げたが、レオナルド殿下は深呼吸を止めない。むしろ「あぁ、セスのいい匂いだ」なんて呟いてる!!
……俺の匂いってなに!? というか、そんなところの匂いを嗅がないでーっ!
俺は恥ずかしくて「レオ、もうだめっ!」と注意するけどレオナルド殿下は俺の言葉を聞かず、更には両手を伸ばして俺のお尻をもにもにっと揉みだした。
「えっ!? やっ、ちょっとぉ!」
「ああ、いい感触だ」
レオナルド殿下は楽し気に呟き、もにもにっと俺のお尻を触り続ける。そんな事をされたら、今朝つけられた欲情がまた再燃してしまう。
……うぅっ、朝も触られたからなんだかやらしい気持ちに。でもフェニとウィギー薬長が帰ってくるしっ。ううううっ!!
だから俺はハッキリとレオナルド殿下に言った。
「も、もうっ、レオ、膝枕は終わりッ!!」
そう言えばレオナルド殿下はようやく俺のお尻から手を離し、のっそりと体を起こした。
「もう終了?」
「もうダメ!」
俺は顔を赤くしながら、フゥーフゥーッと息巻いて言う。そうすれば、残念そうな顔をしながらもレオナルド殿下は「わかったよ」と答えた。
でも、いっぱい触られた俺はもんもんっと胸の中がくすぶっている。
……うぅ、俺から止めたけどなんだかレオに一杯触りたい気持ち。でも、抑えなきゃ。
俺は胸のくすぶりを落ち着かせるために呼吸を整える。でもそんな俺にレオナルド殿下に問いかけた。
「じゃあ、今度は私が膝枕をしよう。セス、どうかな?」
「レオが? ……変なことしない?」
俺がじとっと見つめて言えば、レオナルド殿下はニコッと笑った。
「変なことってなにカナ?」
そう尋ねられたら俺は何も答えられない。だって言葉にするのは恥ずかしい。
「さぁ、遠慮せずにどうぞ……それとも昔みたいに抱っこしようか?」
レオナルド殿下はぽんぽんっと膝を叩いて言い、俺は子供の頃を思い出す。父さんにしてもらうように、何度かレオナルド殿下に抱っこしてもらって眠った事を。
「あ、あれは子供だったからっ。今は大丈夫です!」
「おや、そうかい? 残念だな」
レオナルド殿下はふふっと笑いながら言った。
……これ、完全にからかわれてる。
俺は頬を赤くしながら、むぅっと口を閉じる。でもそんな俺にレオナルド殿下は微笑んだ。
「ごめんごめん。セスの反応が可愛らしくてついね。さあ、何もしないからこちらにおいで」
レオナルド殿下に優しく誘われて、俺は大人しく体を横にして、頭をレオナルド殿下の膝に乗せる。筋肉質な太ももは硬く、でもどこか心地いい。
……ん、これはこれでクッションよりいいかも。
俺は何気なくそう思うけれど、ふと見上げればレオナルド殿下がこちらを愛おし気に見つめている。だから俺の胸がぴょんっと跳ねる。
その上、俺の気持ちを知らずかレオナルド殿下は無言のまま俺に手をかざすと、俺の目元を隠していた前髪を払ってくれた。その優しい仕草に俺の胸はぴょぴょんっとまた跳ねて、落ち着かない。しかも下から見上げるレオナルド殿下はやっぱりカッコいい。
……本当、この人ってどの角度で見てもカッコいいな。
そう思うと胸がますますドキドキして、体がむずむずしてきた。
……ううぅっ、やっぱりレオに触れたい!
俺は体の疼きを抑えきれず、起き上がるとじっとレオナルド殿下を見つめた。
「セス? どうしたの?」
レオナルド殿下に尋ねられ、俺は尋ねてみる。
「レオ……その、キス、してもいい?」
恥ずかしいけど尋ねてみれば、レオナルド殿下は少し驚いた顔をの後、すぐに微笑んだ。
「勿論! セスからのキスはいつでも大歓迎だよ?」
「……じゃ、じゃあ、目を瞑って?」
俺がお願いするとレオナルド殿下はすぐに目を閉じた。なので、俺は周りをキョロキョロと見渡してフェニとウィギー薬長がいないことを確認すると、レオナルド殿下に身を寄せ、ちゅっと掠めるキスをした。
……全然足りないけど、これで我慢っ。
俺は物足りなさを感じながらそう思った。でも、ぐっといつの間にかレオナルド殿下の手が俺の腰に周り、パチッとサファイアの瞳が開いて怪しい光を灯して俺を見つめた。
「セス、それだけじゃ物足りないな」
「へ? ……んんっ!」
俺の戸惑う声を飲み込む様にレオナルド殿下は俺に熱いキスをした。食む様に俺の唇に触れると舌で唇をこじ開け、中に入ると舌を絡め、撫ぜてきた。
くちゅくちゅと唾液が混ざる音が響き、上顎の弱いところを責められ、俺は鼻から甘い声が出る。
「ん、んふっ……は、はぁ……れお」
「ふふ、可愛いね、セス。顔が蕩けてる」
レオナルド殿下は唇を離すと俺の頬を指先で撫ぜて優しく言った。そして俺と言えば、熱を落ち着かせようと思ってキスをしたのに、すっかりレオナルド殿下からのキスで余計に熱が盛り上がってしまった。
……このままレオともっとキス、したい。もっと触れたいな。
俺はそう思うけど、レオナルド殿下はそんな俺の耳元で甘く囁いた。
「そんな顔、いけないな。セスをこのまま抱きたくなる」
レオナルド殿下は困ったような表情で俺を見つめ、我慢するように言った。
……そんな顔って、どんな顔してるんだろう? ……でも、俺だってここが外じゃなければレオともっとくっついて。
そう思った時だった。
「んもぉー、またふたりでいちゃいちゃしてるのー?」
どこからともなく声が聞こえ、ハッとして振り向けば、そこにはいつの間にか戻ってきたフェニがいた。ただし少し呆れ顔で。
そしてフェニがいるという事はウィギー薬長もその後ろにいるという事で。
「……お邪魔、だったかな?」
ウィギー薬長は少々気まずそうな顔で俺達に言った。
なので俺の中の熱は一気に冷め、代わりに羞恥心がその身を襲う。
……みみみ、見られたぁっ!? キャアアアアアアッ!!
俺は恥ずかしくって。でもどこにも逃げられないから思わず両手で顔を隠す。
「えちゅ、どちたの?」
無邪気なフェニは首を傾げながら聞き、恥ずかしさのあまり言葉を失くした俺の代わりにレオナルド殿下が答えた。
「フフッ、セスは時々照れ屋さんなんだよ。フェニ」
「ふぅーん? しょなの?」
レオナルド殿下が言えば、フェニはわかったようなわかっていないような返事をし、その意味がわかるウィギー薬長は困ったように笑っていた。
――――それから。
『じゃあ、私はそろそろ行くよ』と言うウィギー薬長と別れ、俺達はフェニが取ってきた野いちごと共に、来た時と同じように馬に乗って城へと戻った。
そして、フェニと共にジークさんが来るのを俺達は待ったが……。
その日の夜、迎えに来ると言ったはずのジークさんは―――――日を跨いでも迎えに来なかった。
*****************
GW、みなさんいかがお過ごしですか?
一話冒頭に書き込もうと思っていましたが、忘れていたのでこちらに。
今回のお話は全十話、一日二話、0時に投稿していきます。
明日もお楽しみに~('ω')ノ
俺が思わず呟くと、レオナルド殿下は首を傾げて聞き返した。
「セス?」
「あ、いや……俺も勝手なことして父さんに怒られたことがあるなぁって思い出して」
答えるとレオナルド殿下は少し驚いた顔をした。
「お義父さんが? リーナが怒る姿は容易に想像つくが」
「まあ基本的に母さんの方が怒る回数は多かったですね。でもだからこそ、父さんに怒られた時の事は印象深くて」
「一体セスは何をしてしまったの?」
レオナルド殿下は興味ありげに俺に尋ねた。なので俺は素直に答える。
「まあ色々ありましたけど、一番怒られたのは薬科室で管理している温室に勝手に入った事かなぁ」
「温室に?」
「はい、子供の頃に。たぶんまだレオナルド殿下と会う前の時の事だったと思いますけど、俺、温室に忍び込んだんです」
「忍び込んだ?」
「母さんたちのお話がつまらなくなっちゃって。それで前に父さんと一緒に温室に入れてもらった事があった時に入り口のナンバー式の鍵の開け方を覚えていたからそれで勝手に……。でもそれを父さんに見つかってすごく怒られて」
『セス! どうして勝手に入たんだっ!!』
そう怒られた声が今でも蘇る。でもそれは怒られても仕方ないことだった。大人になった今ならよくわかる。
「温室にはたくさんの植物があるけど、その中には触れただけでも毒に侵されるような危険なものもあるから」
「なるほどね」
「あの頃は何とも思っていなかったけど……今なら父さんの気持ちがよくわかります」
……父さん、すっごく怒ったもんな。それで最後には俺が泣くよりも先にボロボロと泣いちゃって。
『セス! もう、本当に勝手に、入っちゃ、駄目だぞ!! お父さん、セスに何かあったら……何かあったら! うっううっ、そんなの耐えられないぃぃっ!』
俺は怒りながらも盛大に泣いた父さんを思い出す。
……大人ってこんなに泣くものなの? ってちょっと思ったっけ。でも父さんが真剣に怒ってくれたから。俺の事を想ってくれて言った事だとわかったから、俺はもう二度と温室に勝手に入ることはしなくなった。本当、今でもあの時の父さんには悪いことをしたなって思う。
俺はしみじみと思い返す。
「セスにもそんな時があったんだね。でも、私がセスと会う時はいつもお行儀よくしていたような気がするが?」
レオナルド殿下は顎に手を当てて、過去を思い出しながら呟いた。だから俺は、どうしていつもお行儀良くしていたのか教えることにした。
「ああ、それは。その……かっこいいお兄ちゃんと一緒にいるのが嬉しくて大人しくしてたんですよ」
……あの時からレオナルド殿下はカッコよかったもんなぁ。その上、俺は一人っ子だから年上のお兄さんが出来たみたいで嬉しくて。まあ、その人とこんな風に夫夫になるなんてあの頃は思ってもみなかったけど。
なんて考えているとレオナルド殿下はそっと俺の手の上に大きな手を重ねた。
「格好いいって思ってくれてたの?」
嬉しそうに尋ねられて俺は正直に答える。
「それは……その。今でもそう思ってますよ」
俺は目の前にいる美丈夫に視線を向ける。豪奢な金髪にサファイアみたいな綺麗な青の瞳。端正な顔立ちは俺にだけは甘く。そして服の下に隠れている彫刻のような体は同じ男として惚れ惚れするほどだ。
「セスにそう思って貰えるのは嬉しいな」
レオナルド殿下は言いながら重ねた俺の手を指先でなんだかいやらしく撫でてくる。その上、美しい青い瞳はなんだか怪しい光が宿ってきているような……。
俺はこれまでの経験から身の危険を感じ、慌てて目を逸らした。
「あ、それより! あの頃は色々としてもらってばかりで。お返しってことじゃないけど、レオは俺に何かして欲しいことはないですか?」
俺は怪しい雰囲気を流そうと話題を振ってみた。そうすればレオナルド殿下は「して欲しいこと?」と呟き、少し考えた後すぐに答えた。
「そうだな。折角なら膝枕でもしてもらおうかな?」
「ひざ、まくら? そんなのでいいんですか? 例えば回復薬を作って欲しいとか、何か買って欲しいとか……まあ俺よりレオの方がお金持ってると思うけど」
「いいや、それより膝枕がいいな」
レオナルド殿下はハッキリと答えた。だから、そんなのでいいのかな? と思いつつ俺は「まあ、レオがいいのなら」と答えて、その場で正座してみる。
「どうぞ?」
レオナルド殿下に声をかければ「では」と嬉しそうな顔をして体を横にすると、俺の膝にそっと頭を乗せた。ずしっとした重みが膝にかかる。
……人の頭って意外に重いんだなぁ。けどこの角度でレオをみるの、なんだか新鮮かも。
俺はじっとレオナルド殿下を見つめてしまう。長い金色のまつ毛が光に当たってキラキラしている。
「セス、そう見つめられると恥ずかしいな」
レオナルド殿下はふふっと笑って俺に言った。なので俺は慌てて顔を上げて目を逸らす。
「ご、ごめんなさいっ」
「いや……しかしセスの太ももは柔らかくて気持ちいいな」
「そう、ですか?」
……むしろ硬くないのかな?
なんて思っているとレオナルド殿下はころんっと向きを変え、うつ伏せになって顔を俺の膝に埋めた。
「レオ?」
……顔を下にしたら苦しくない??
そう思うけどレオナルド殿下は無言のまま微動だにしない。どうしたんだろう? と様子を窺っていたら、すぅーっはぁーっと何度も深呼吸している!
「ちょっ、レオ!」
……そんなところで深呼吸しないでっ!
俺は慌てて声を上げたが、レオナルド殿下は深呼吸を止めない。むしろ「あぁ、セスのいい匂いだ」なんて呟いてる!!
……俺の匂いってなに!? というか、そんなところの匂いを嗅がないでーっ!
俺は恥ずかしくて「レオ、もうだめっ!」と注意するけどレオナルド殿下は俺の言葉を聞かず、更には両手を伸ばして俺のお尻をもにもにっと揉みだした。
「えっ!? やっ、ちょっとぉ!」
「ああ、いい感触だ」
レオナルド殿下は楽し気に呟き、もにもにっと俺のお尻を触り続ける。そんな事をされたら、今朝つけられた欲情がまた再燃してしまう。
……うぅっ、朝も触られたからなんだかやらしい気持ちに。でもフェニとウィギー薬長が帰ってくるしっ。ううううっ!!
だから俺はハッキリとレオナルド殿下に言った。
「も、もうっ、レオ、膝枕は終わりッ!!」
そう言えばレオナルド殿下はようやく俺のお尻から手を離し、のっそりと体を起こした。
「もう終了?」
「もうダメ!」
俺は顔を赤くしながら、フゥーフゥーッと息巻いて言う。そうすれば、残念そうな顔をしながらもレオナルド殿下は「わかったよ」と答えた。
でも、いっぱい触られた俺はもんもんっと胸の中がくすぶっている。
……うぅ、俺から止めたけどなんだかレオに一杯触りたい気持ち。でも、抑えなきゃ。
俺は胸のくすぶりを落ち着かせるために呼吸を整える。でもそんな俺にレオナルド殿下に問いかけた。
「じゃあ、今度は私が膝枕をしよう。セス、どうかな?」
「レオが? ……変なことしない?」
俺がじとっと見つめて言えば、レオナルド殿下はニコッと笑った。
「変なことってなにカナ?」
そう尋ねられたら俺は何も答えられない。だって言葉にするのは恥ずかしい。
「さぁ、遠慮せずにどうぞ……それとも昔みたいに抱っこしようか?」
レオナルド殿下はぽんぽんっと膝を叩いて言い、俺は子供の頃を思い出す。父さんにしてもらうように、何度かレオナルド殿下に抱っこしてもらって眠った事を。
「あ、あれは子供だったからっ。今は大丈夫です!」
「おや、そうかい? 残念だな」
レオナルド殿下はふふっと笑いながら言った。
……これ、完全にからかわれてる。
俺は頬を赤くしながら、むぅっと口を閉じる。でもそんな俺にレオナルド殿下は微笑んだ。
「ごめんごめん。セスの反応が可愛らしくてついね。さあ、何もしないからこちらにおいで」
レオナルド殿下に優しく誘われて、俺は大人しく体を横にして、頭をレオナルド殿下の膝に乗せる。筋肉質な太ももは硬く、でもどこか心地いい。
……ん、これはこれでクッションよりいいかも。
俺は何気なくそう思うけれど、ふと見上げればレオナルド殿下がこちらを愛おし気に見つめている。だから俺の胸がぴょんっと跳ねる。
その上、俺の気持ちを知らずかレオナルド殿下は無言のまま俺に手をかざすと、俺の目元を隠していた前髪を払ってくれた。その優しい仕草に俺の胸はぴょぴょんっとまた跳ねて、落ち着かない。しかも下から見上げるレオナルド殿下はやっぱりカッコいい。
……本当、この人ってどの角度で見てもカッコいいな。
そう思うと胸がますますドキドキして、体がむずむずしてきた。
……ううぅっ、やっぱりレオに触れたい!
俺は体の疼きを抑えきれず、起き上がるとじっとレオナルド殿下を見つめた。
「セス? どうしたの?」
レオナルド殿下に尋ねられ、俺は尋ねてみる。
「レオ……その、キス、してもいい?」
恥ずかしいけど尋ねてみれば、レオナルド殿下は少し驚いた顔をの後、すぐに微笑んだ。
「勿論! セスからのキスはいつでも大歓迎だよ?」
「……じゃ、じゃあ、目を瞑って?」
俺がお願いするとレオナルド殿下はすぐに目を閉じた。なので、俺は周りをキョロキョロと見渡してフェニとウィギー薬長がいないことを確認すると、レオナルド殿下に身を寄せ、ちゅっと掠めるキスをした。
……全然足りないけど、これで我慢っ。
俺は物足りなさを感じながらそう思った。でも、ぐっといつの間にかレオナルド殿下の手が俺の腰に周り、パチッとサファイアの瞳が開いて怪しい光を灯して俺を見つめた。
「セス、それだけじゃ物足りないな」
「へ? ……んんっ!」
俺の戸惑う声を飲み込む様にレオナルド殿下は俺に熱いキスをした。食む様に俺の唇に触れると舌で唇をこじ開け、中に入ると舌を絡め、撫ぜてきた。
くちゅくちゅと唾液が混ざる音が響き、上顎の弱いところを責められ、俺は鼻から甘い声が出る。
「ん、んふっ……は、はぁ……れお」
「ふふ、可愛いね、セス。顔が蕩けてる」
レオナルド殿下は唇を離すと俺の頬を指先で撫ぜて優しく言った。そして俺と言えば、熱を落ち着かせようと思ってキスをしたのに、すっかりレオナルド殿下からのキスで余計に熱が盛り上がってしまった。
……このままレオともっとキス、したい。もっと触れたいな。
俺はそう思うけど、レオナルド殿下はそんな俺の耳元で甘く囁いた。
「そんな顔、いけないな。セスをこのまま抱きたくなる」
レオナルド殿下は困ったような表情で俺を見つめ、我慢するように言った。
……そんな顔って、どんな顔してるんだろう? ……でも、俺だってここが外じゃなければレオともっとくっついて。
そう思った時だった。
「んもぉー、またふたりでいちゃいちゃしてるのー?」
どこからともなく声が聞こえ、ハッとして振り向けば、そこにはいつの間にか戻ってきたフェニがいた。ただし少し呆れ顔で。
そしてフェニがいるという事はウィギー薬長もその後ろにいるという事で。
「……お邪魔、だったかな?」
ウィギー薬長は少々気まずそうな顔で俺達に言った。
なので俺の中の熱は一気に冷め、代わりに羞恥心がその身を襲う。
……みみみ、見られたぁっ!? キャアアアアアアッ!!
俺は恥ずかしくって。でもどこにも逃げられないから思わず両手で顔を隠す。
「えちゅ、どちたの?」
無邪気なフェニは首を傾げながら聞き、恥ずかしさのあまり言葉を失くした俺の代わりにレオナルド殿下が答えた。
「フフッ、セスは時々照れ屋さんなんだよ。フェニ」
「ふぅーん? しょなの?」
レオナルド殿下が言えば、フェニはわかったようなわかっていないような返事をし、その意味がわかるウィギー薬長は困ったように笑っていた。
――――それから。
『じゃあ、私はそろそろ行くよ』と言うウィギー薬長と別れ、俺達はフェニが取ってきた野いちごと共に、来た時と同じように馬に乗って城へと戻った。
そして、フェニと共にジークさんが来るのを俺達は待ったが……。
その日の夜、迎えに来ると言ったはずのジークさんは―――――日を跨いでも迎えに来なかった。
*****************
GW、みなさんいかがお過ごしですか?
一話冒頭に書き込もうと思っていましたが、忘れていたのでこちらに。
今回のお話は全十話、一日二話、0時に投稿していきます。
明日もお楽しみに~('ω')ノ
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