106 / 114
殿下、どうしましょう?
2 ピクニック
しおりを挟む「……えちゅぅ」
寝言を呟きながらぷぅぷぅと眠るフェニのまだ赤い頬を、ベッドに腰掛けていた俺はそっと優しく撫でた。
……泣きつかれて寝ちゃったけど、本当に何があったんだろう? こんなに目元を赤くして。
まだ赤みが引かない目元を見て俺は胸が痛くなる。
……フェニはいつも笑顔が一番なのに、あんな風に泣かれちゃうとこっちまで悲しくなっちゃうよ。
俺は愛しい小鳥を眺めながら思う。でもそこへレオナルド殿下がそっと戻ってきた。
「セス、フェニは?」
「二人が出た後、泣きつかれて眠ちゃいました。ジークさんは?」
「話をした後、帰ったよ。今フェニと会っても、また泣いて怒るだろうからね」
「そうですね……。でも、フェニが怒った理由は聞けました?」
俺が尋ねるとレオナルド殿下は首を横に振った。
「ジークと話したが、答えてくれなかったよ」
「……そうですか」
俺はそう答えて、フェニの寝顔をもう一度眺める。
「まあ、とりあえず今日は私達の方でフェニを預かった方がいいだろう。ジークにもそう伝えている。明日にはまた来ると言っていた」
レオナルド殿下の提案に俺は頷く。しかし俺が心配そうな顔をしていたからか、レオナルド殿下は元気づけるようにこめかみ辺りにキスをした。
「レオ」
「心配しなくても大丈夫だよ。きっと仲直りする、私達がしたようにね」
レオナルド殿下は微笑み、俺も微笑み返す。
「そうですよね」
そう答えれば、俺とレオナルド殿下の会話にフェニが目を覚ました。
「んん、えちゅ……れお?」
目をぱちぱちっと瞬かせた後、フェニはむくりと体を起こした。
「フェニ、大丈夫?」
俺が声をかけると、フェニはなぜここにいるのか思い出したようで寝起きのぽやぽやしていた表情から一転、可愛い額に皺を寄せた。
「ん、だいじょーぶ」
そう言葉では言うけれど、表情は全然大丈夫そうじゃない。まだ怒っている顔だ。
……どうしたらいいのかな。
俺が困っているとレオナルド殿下はそっとフェニの頭を撫でた。
「とりあえずフェニも起きた事だし、三人で朝食でも取ろうか。フェニが来ているのだから、朝食にはフェニの好きなコーンスープを出して貰うようにしよう」
レオナルド殿下が言えば、フェニはパッと嬉しそうな顔を見せた。とうもろこしはフェニの好物だ。
「こーんすーぷ!」
フェニが答えると、小さな体からぐぅっとお腹の虫が聞こえてきた。
「ご飯を食べて、話はそれからにしよう」
レオナルド殿下が提案するとフェニは素直に「ん」と答えた。少しだけ機嫌の直ったフェニを見て俺はちょっとホッとする。
そしてレオナルド殿下に視線を向ければ、パチンっと俺にウインクした。大丈夫だよ、と俺に言うように。
……レオ、やっぱりすごいな。俺ってばオロオロするばっかりで。本当、今でも思うけど、なんで俺がフェニの守護者に選ばれたのかな。絶対レオの方が適任だったような気がするけど。
俺はそんな事を思うが、フェニがくいくいっと俺の服の袖を引っ張った。
「えちゅ、いっしょにごはん食べよ」
フェニに誘われ、思い出した疑問を胸に仕舞って俺は頷いた。
「うん、一緒に食べようか」
それから俺達は朝食を一緒に取り、フェニはコーンスープを三杯もおかわりした。そしてご飯を食べて満腹になったからか少しは機嫌が直ってきたようだったが……朝食の後、フェニが来た事を聞きつけたカレンちゃんが俺達の部屋へとやって来た。
◇◇
「フェニちゃん! 相変わらず可愛いわねぇー!」
嬉々とした顔で言うカレンちゃんに対し、フェニはすぐさま俺の後ろに隠れた。いつも可愛がられ、もみくちゃにされるから警戒しているのだろう。
……でも、そんなに警戒しなくても大丈夫なのに。
そう思いつつも俺は挨拶をした。
「王妃様、おはようございます」
俺が声をかけると、カレンちゃんはずいっと近寄って真顔で俺を見た。なにやら不機嫌そう、何かおかしなことを言っただろうか? と思ったが、カレンちゃんは。
「セス、王妃様じゃないでしょっ」
大真面目な顔をして俺に言った。
「か、カレンちゃん、おはよう」
言い直すとカレンちゃんは嬉しそうににこっと笑った。でも。
……他の人がいない時は名前で呼んでって言われてるけど……俺なんかが王妃様を名前で、しかもちゃん付けして呼んでいいのかな? 陛下も気にしてはないようだけど。というか、この前陛下にも『セスよ、お義父さんと呼んでいいんだぞっ』と言われたんだよな。けど国王陛下を『お義父さん』……なんか恐れ多い。
俺は事務仕事でよく腰を痛めている陛下に薬科湿布を持って行った時、そう言われた事を思い出した。けれど、思い出していると隣に立つレオナルド殿下が俺の肩をそっと抱き寄せる。
「レオナルド殿下?」
「母上、セスが困ってます。いい加減その呼び名をセスに強要する事、改めてはくれませんかね?」
息子であるレオナルド殿下が苦言を呈する様に言うと、カレンちゃんはフフンッと鼻であしらった。
「あら、強要なんて失礼ね。それに別にセスは困ってないわよね?」
「え? ま、まぁ」
……確かに困ってないかな。呼ぶだけだし。ただ、俺がこんな風に呼んでいいのか不安はあるけど。
そう思うけど俺の返事にカレンちゃんは嬉しそうに笑った。
「ほぅら、見て見なさい。セスは困っていないでしょう。醜い嫉妬からくる言いがかりはおよしない? レオナルド」
カレンちゃんに勝ち誇った顔で言われ、レオナルド殿下は呆れた顔で「はぁ」とため息を吐いた。そして俺を見ると「セス、嫌な事は嫌だと言っていいんだからね?」と心配する様に告げた。でも、別に嫌な事なんて何一つない。
「俺は大丈夫ですよ?」
「やっぱりセスはいい子ね!」
カレンちゃんはニコニコして言い、それからその場にしゃがんで俺の足元に隠れているフェニに目線を合わせた。
「久しぶりね、フェニちゃん」
「……おはよう、ござーます」
フェニは警戒しながらも挨拶をした。でもカレンちゃんは気にせず、話しかける
「去年ぶりね、今回は遊びに来たのかしら?」
事情を知らないカレンが尋ねるとフェニはむぐっと口を閉じた。その表情を見て、カレンちゃんはすぐに遊びに来たのではないことを察したようだ。
「あら、違うようね。でも折角来たのだから、今日はセス達と城の裏にある水辺へピクニックに行ってきてはどうかしら?」
「ぴくにっく? ぴくにっくってなぁに?」
突然の提案にフェニは目をぱちりと瞬かせて問いかけた。
「お外に行って、景色を見ながらご飯を食べたり、のんびりすることよ。フェニちゃん、最近二人とも仕事詰めだったから一緒に連れて行ってくれないかしら?」
カレンちゃんが頼むとフェニは少し考えた後「うーん……いいよ」と答えた。その返答にカレンちゃんは「ありがとう」と言うと、立ち上がって俺達を見た。
「レオナルド、セス、たまには外の空気を吸って、二人でのんびりしてきなさい」
カレンちゃんの提案にレオナルド殿下は俺へと視線を向ける。
「セスはどうしたい?」
問いかけられて俺はすぐさま「構いませんよ」と答えた。今日は二人とも休みだし、特に予定を入れていない。空を見れば、ピクニックに行くには打ってつけの快晴だ。それになにより。
「えちゅ、ぴくにっく、行こ!」
フェニが行きたそうにしているので、俺に断る理由はなかった。
「ああ。今日はピクニックに行こうか、フェニ」
俺が告げるとフェニは「うん!」と元気よく答えた。
◇◇◇◇
それから俺とレオナルド殿下はフェニを連れ、馬に乗って城の裏にある水辺へとピクニックにやって来た。
小川から水が流れ、水草や小さな魚が泳いでいる綺麗な池だ。ここは野生動物たちの憩いの場でもあり、俺が子供の頃に何度かレオナルド殿下に連れてきてもらった思い出の場所でもある。
「ここに来るのは久しぶりですね。懐かしいなぁ~っ」
「そうだね、こうして来るのはセスが子供の頃以来だ」
レオナルド殿下は馬の背から荷物を下ろしながら言った。そして俺達の会話を聞いたフェニは首を傾げる。
「えちゅ、子供のころ、ここにきたの?」
「ああ、レオナルド殿下に連れられて何度もね。昔もこんな風にピクニックしたんだよ」
「れおと?」
「そうだよ。まあ、一緒にピクニックというか、レオナルド殿下が俺の子守をさせられていたような気もするけど」
「そんなことはないよ。それにセスは子守が必要なほど、手のかかる子じゃなかった」
「そう、ですかね?」
……うーん。でも今考えても、あれは絶対子守だったような気がするけど。
俺は顎に手を当ててそう思ったが、レオナルド殿下は大きな木の下に敷き布を広げて、その上に二つクッションを置くと俺とフェニに声をかけた。
「二人とも、どうぞ」
レオナルド殿下に促され、俺は「ありがとうございます」と言ってから靴を脱ぎ、クッションの上に座る。それを見て、フェニも真似をするように靴を脱いで、俺の隣に置かれているフカフカのクッションの上に座った。
その間にレオナルド殿下はテキパキと動き、クッキーや焼き菓子、小さなサンドイッチが入ったバスケットを俺達の前に置き、そしてティーカップを三つ用意すれば、ティーポットに茶葉を入れ、魔法瓶に詰めてきたお湯をティーポットに注いだ。そうすればすぐにいい香りが辺りに漂う。
「ん、この匂い、アップルティー?」
俺はくんくんっと香りを嗅いで呟く。するとレオナルド殿下は「正解」と答えて、ティーカップにお茶を注いでくれた。
「はい、どうぞ。セス」
レオナルド殿下は俺にお茶の入ったティーカップを渡してくれて、フェニには少し水を加えてぬるめにしたお茶を渡していた。
「レオ。これ、りんごのにおいするー」
「干し林檎を一緒にいれているからね。普通の方が良かった?」
「ん-ん-、いーにおい」
フェニはそう言うと、くぴっと一口飲んだ。なので、俺も温かいお茶をふぅふぅっと息を吹きかけてちょっと冷ましてから飲む。
……ん-、林檎のいい香りぃ~!
ほのかな甘さのお茶に俺はほっこりする。そしてその横でフェニはカップをレオナルド殿下に差し出した。
「レオ、おかわり!」
「はいはい」
レオナルド殿下は返事をすると、もう一杯お茶をフェニに注いであげた。どうやらフェニもこの美味しいアップルティーが気に入ったようだ。
……しかし最初の頃は二人ともお互いを毛嫌い? してた感じなのに、すっかり仲良くなったよなぁ。今更だけどフェニはレオナルド殿下に守護者をして欲しい、とか思わないのかな? というか、未だになんで俺が選ばれたのかな?
俺は二人を見てもんもんっと考える。だがそんな俺にフェニは声をかけた。
「えちゅ、どしたの?」
「ん? いや、フェニはどうして俺を守護者に選んだのかなぁと思って。レオナルド殿下の方が頼れるのに、と思って」
俺が何気なく尋ねると二人は顔を合わせてすぐに答えた。
「えちゅがいいの!」
「セスだけだよ」
あんまりに二人が息を合わせて答えるものだから俺はちょっと驚いてしまう。
「そ、そう?」
……二人とも同じ返事なんて。俺の何がいいんだろう?
俺はわからなくて首を傾げるけど、フェニは俺の服の袖をぎゅぅっと握った。
「レオもしゅきだけど、えちゅがいいの」
「そう? フェニがいいならいいんだけど」
俺が答えるとレオナルド殿下はくすっと笑った。
「セスこそが守護者にふさわしいよ。本人は気がつきにくいのかもしれないけれどね」
……俺にふさわしいところなんてないような気がするけど。でも、まぁフェニが望んでくれるならなんだっていいか。
レオナルド殿下にまで言われ、俺は一応納得する。そして、その横でフェニは「レオ、くっきー食べてい?」と聞いた。
「ああ、いいよ。セスも遠慮せずに食べていいからね?」
レオナルド殿下に言われて俺は「はい」と答え、フェニを見ればクッキーを両手で持ってもっぐもっぐとおいしそうに食べている。
……すっかり元気になったな。今なら理由を聞いてもいいかな?
「ねぇ、フェニ」
「ん? なあに?」
フェニはアップルティーで喉を潤しながら返事をした。なので、俺はおずおずと聞いてみる。
「今朝の事、もしよければ怒っていた理由を教えてくれないかな?」
「しょれは……」
フェニは呟くとどんどんと表情の雲行きが怪しくなってくる。なので俺は慌てて声を上げた。
「あ、勿論言いたくなかった言わなくていいんだよ?!」
俺が告げるとフェニは顔を横に振った。
「ううん、だいじょーぶ。……ふぇに、はなす。……あのね、えちゅ」
フェニは俺を見上げて言い、俺は耳を傾ける。
でもその時、思わぬ人物がそこに現れた。
「―――おや、セスじゃないか」
373
お気に入りに追加
4,072
あなたにおすすめの小説
国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!
古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます!
7/15よりレンタル切り替えとなります。
紙書籍版もよろしくお願いします!
妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。
成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた!
これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。
「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」
「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」
「んもおおおっ!」
どうなる、俺の一人暮らし!
いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど!
※読み直しナッシング書き溜め。
※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。

平民男子と騎士団長の行く末
きわ
BL
平民のエリオットは貴族で騎士団長でもあるジェラルドと体だけの関係を持っていた。
ある日ジェラルドの見合い話を聞き、彼のためにも離れたほうがいいと決意する。
好きだという気持ちを隠したまま。
過去の出来事から貴族などの権力者が実は嫌いなエリオットと、エリオットのことが好きすぎて表からでは分からないように手を回す隠れ執着ジェラルドのお話です。
第十一回BL大賞参加作品です。
平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます
ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜
名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。
愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に…
「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」
美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。
🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶
応援していただいたみなさまのおかげです。
本当にありがとうございました!
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

顔も知らない番のアルファよ、オメガの前に跪け!
小池 月
BL
男性オメガの「本田ルカ」は中学三年のときにアルファにうなじを噛まれた。性的暴行はされていなかったが、通り魔的犯行により知らない相手と番になってしまった。
それからルカは、孤独な発情期を耐えて過ごすことになる。
ルカは十九歳でオメガモデルにスカウトされる。順調にモデルとして活動する中、仕事で出会った俳優の男性アルファ「神宮寺蓮」がルカの番相手と判明する。
ルカは蓮が許せないがオメガの本能は蓮を欲する。そんな相反する思いに悩むルカ。そのルカの苦しみを理解してくれていた周囲の裏切りが発覚し、ルカは誰を信じていいのか混乱してーー。
★バース性に苦しみながら前を向くルカと、ルカに惹かれることで変わっていく蓮のオメガバースBL★
性描写のある話には※印をつけます。第12回BL大賞に参加作品です。読んでいただけたら嬉しいです。応援よろしくお願いします(^^♪
11月27日完結しました✨✨
ありがとうございました☆
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
みづき(藤吉めぐみ)
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

「じゃあ、別れるか」
万年青二三歳
BL
三十路を過ぎて未だ恋愛経験なし。平凡な御器谷の生活はひとまわり年下の優秀な部下、黒瀬によって破壊される。勤務中のキス、気を失うほどの快楽、甘やかされる週末。もう離れられない、と御器谷は自覚するが、一時の怒りで「じゃあ、別れるか」と言ってしまう。自分を甘やかし、望むことしかしない部下は別れを選ぶのだろうか。
期待の若手×中間管理職。年齢は一回り違い。年の差ラブ。
ケンカップル好きへ捧げます。
ムーンライトノベルズより転載(「多分、じゃない」より改題)。

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる