殿下、俺でいいんですか!?

神谷レイン

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閑話

従者ノーベンの回想 前編

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みなさま、お久しぶりです。
もう11月だと言うのに、まだまだ暑いですね。秋、どこに行ってしまったんでしょう?(´・ω・)?

まあ、それはさておき。
今回は結婚編でイニエスト公国に行っていたセス達が帰国して数日後の、レオナルドの従者ノーベン視線のお話です。さくっと読める前編後編です。お楽しみください!('ω')ノ

******************





 
 ――――それはイニエスト公国から帰ってきて数日後の事だった。
 ちょうど春爛漫の季節で、そろそろおやつの時間になる頃。

「ノーベン、いくらなんでも連日私に仕事を振りすぎじゃないか?」

 執務室で仕事をこなしていたレオナルドは羽根ペンを片手に、不満げな顔をしてノーベンに小言を告げた。しかし同じく事務作業をしていたノーベンは書類に目を通しながら、しれっとした顔で答える。

「そうですか? これぐらいこなせるでしょう?」
「それはそうだが、たまには私を労わって仕事量を減らしてくれてもいいんじゃないか? 最近はセスと夕食も取れていないんだぞ」

 レオナルドが言えば、ノーベンはようやく書類から顔を上げてにっこりと笑った。

「何をおっしゃいます。イニエスト公国に行っていた間の分も取り戻せてませんのに。夏に向けての各公共事業も迫っているのですから、これぐらいは当然です。それに殿下が冬の間、勝手にお休みを取られたせいもあるのですからね?」

 嫌味ったらしく言われてレオナルドは少しムッとするが、それについては言い返せないのでぐっと大人しく口を閉じた。
 そんなレオナルドを見て、ノーベンは内心くすっと笑う。

 ……こう言えば、レオナルド殿下は何も言えないですからねぇ。まあ、本当のところはレオナルド殿下の言う通り仕事を振りすぎていますが、今はランス殿下が他国に外遊中という事もありますし。夏の公共事業への取り組みが今年はかさんでいますから、もう少しの間頑張っていただかなければ。

 ノーベンはそう思ったが、もうそろそろおやつ時。休憩を入れてもいい頃合いだろう。

「しかし殿下もお疲れの様子ですし、そろそろ休憩を取りましょうか」

 席を立って言えば、レオナルドは素直に頷いた。

「ああ、そうしてくれ」

 レオナルドはすぐに羽根ペンを手放したが、厳しい従者は微笑んだ。

「私はお茶を取りに行って参りますが、殿下はどうぞ仕事の続きをなさっていてくださいね」
「……本当、私をこんな風にこき使うのはお前だけだ」
「そうですか? では私はお茶を取りに行って参りますので」

 しれっとした顔をしてノーベンは部屋を出た。しかしドアを閉める瞬間、目の端でレオナルドが不服そうな顔をしながらもまた羽根ペンを持っているのを見て、ふふっと笑みを零した。

 ……文句は言いますが、意外に真面目なんですから。

 ノーベンはそう思いつつも春の陽気で温かな廊下をひとり歩く。花の匂いが漂い、窓の外を見れば新緑が美しい。

 だが、景色を見ながら歩いていたノーベンは不意にレオナルドと出会ったのもこんな暖かな春の日和だったな、と不意に思い出した。

 ……思い返せば、レオナルド殿下との付き合いも随分と長くなりましたね。その間に色々な事がありましたが、出会った頃より大分変わられて。出会った頃はこんな風になるなんて思いもしませんでしたよ。

 ノーベンは珍しく誰もいない廊下をほくそ笑みながら歩き、レオナルドと出会った頃を思い出した。
 それはまだレオナルドが十五歳、ノーベンが二十歳の時の事だった。




 ◇◇




 ――――当時、二十歳のノーベンは若くして王の従者の補佐、王室執務官と呼ばれる候補生の一人として王城で働いていた。

 だがある日、突然の人事異動があり、ノーベンは第三王子の従者という大役を任される事となった。それは異例の出世で、本来なら喜ぶべきところだったが、ノーベンは手放しで受け入れる事はできなかった。
 なぜなら、その当時の王子達はそれぞれに問題があったからだ。

 ……アレキサンダー殿下は表情が薄く、人と関わろうとしない。ランス殿下は逆に遊び呆けて、王城を抜け出してばかり。そして第三王子のレオナルド殿下と言えば、もう何度も従者を変えているという話だ。私で務まるのだろうか……いや、会う前から弱気になってはいけない。私は私なりの最善を尽くすのみだ。

 ノーベンはぐっと手を握って、部屋の前に辿り着いた。
 そしてノックをしてから声をかける。

「レオナルド殿下、失礼してもよろしいでしょうか」

 声をかければ、面倒くさそうな声で返事があった。

「入れ」

 許可を貰い、ドアを開ければ、部屋の中のソファには一人の少年が本を詰まらなさそうに読みながら座っていた。
 母親譲りの豪奢な金髪に宝石を思わせる青い瞳。そして十五歳にしてはしっかりとしている体躯。何より、気だるげなその表情も麗しく、誰もが唸るほどの美少年がそこにいた。

 ……何度か見かけたことはあったが、こうして間近で見るのは初めてだ。噂に違わぬ美貌だな。

 ノーベンは率直にそう思った。
 そしてまだ若きレオナルドは青い瞳をノーベンへと向けた。

「君が私の新しい従者か」

 声をかけられノーベンはすぐに返事をした。

「はい。お初にお目にかかります。ノーベンと申します。これからどうぞよろしくお願いいたします」
「……一体いつまで持つかな」

 レオナルドは詰まらなさそうに答えて、それからまた本に視線を向けた。その様子を見ながら、ノーベンは言葉に詰まる。
 レオナルドが自分に期待していないことは見るも明らかだったからだ。

 ……最初からこんな風でやっていけるだろうか。

 ノーベンは早速不安に思った。だが不意にレオナルドが読んでいる本に視線が向き、ノーベンは思わず驚きが声に出た。

「高等魔術応用理論!?」

 読んでいる本が十五歳で読むような本ではなく、魔術研究者が読むようなものでノーベンは驚きから声を上げてしまった。なので慌てて片手で口を塞いだが、レオナルドは『うるさい』とでも言うようにじろっと睨むとそのまま本を読み続けた。
 その姿を見ながら、ノーベンは感嘆してしまう。

 ……レオナルド殿下が優秀だとは聞いていたが、まさかあのような難しい本を読むとは。

 しかし、驚くのは早かったとノーベンは後に思う事になる。
 レオナルドの傍にしばらくいれば、噂以上の能力の高さに何度も驚かされる事となったからだ。学問はおろか、武芸においても騎士団のエリート達と肩を並ぶほどで、その上魔術もそつなくこなす。しかもそれだけに飽き足らず、どんな人も魅了するほどの美貌の持ち主。レオナルドがひとたび歩けば、桃色の吐息があちこちで聞こえた。

 ……まさに隙がないとはこの事だな。

 そうノーベンは心底思った。
 でも同時に、だからこそ今までの従者達が辞めていった理由も容易に分かってしまった。

 レオナルドは完璧過ぎるが故に、従者など必要ないのだ。そして王子の従者として充てられる者は特に優秀な者が多い。しかし、これほどに完璧な人が傍にいれば自分など取るに足らないと自信を喪失してしまうだろう。なによりレオナルド自身も他人に期待などしていなかった。

 それが今までの従者が辞めてしまった理由。

 ……優秀な者はたくさんいたのに、そこそこの私が王子の従者になぜ充てられたのか、ようやくわかった気がしますよ。


 数ヶ月の間レオナルドの傍にいて、ノーベンはやっと分かってきた。
 だが、わかったとしてもノーベンも他の従者と変わりない。素っ気ないレオナルドにいつまで自分が持つか、そう思っていたから。

 ……私から辞めることはないが、レオナルド殿下から申し出があれば他の者と変わらなければならないだろうな。しかし……レオナルド殿下は今のままでは。

 ノーベンはレオナルドとしばらく付き合い、ある一抹の不安を抱いていた。
 それはレオナルドがこのままでまでは人に興味を失い、悪い方向へ行ってしまうのではないか? というもの。

 ……レオナルド殿下は何においても出来てしまう。故に、常につまらなさそうだ。何もかも持っているから余計にそうなのかもしれない。だが、それでは他者に対する気持ちも薄れてしまうだろう。……今はご家族がいるからいい。しかしもっと歳を重ねた時、このままでいてしまえば最悪、魔獣よりも悪いものへと変貌してしまうのでは?

 ノーベンは考えながら、その不安はなぜか当たるような気がした。

 だからこそ、その不安を感じた時からノーベンはレオナルドに口やかましく構うようになった。煙たがられて、逃げられても。
 けれど、自分ではやはりレオナルドが変わることは無く。つまらなさそうな瞳の色は二年経っても同じまま。

 ……やはり、私では駄目なのかもしれない。誰か、レオナルド殿下を変える人が現れない限り。しかし、そんな人物がいるのだろうか。

 そう限界を感じていた三年目の初夏。
 ある頃を境に、レオナルドの瞳が急に輝き始めた事にノーベンは気がついた―――。



 ◇◇



「レオナルド殿下、最近何かいい事でもございましたか?」

 ノーベンが尋ねると十八歳へと成長したレオナルドは機嫌よく「まあな」と答えた。答えが返ってきたことにも驚いたが楽しげなレオナルドの表情にもノーベンは内心驚いた。
 だが、ノーベンはもっと驚くことになる。

「ノーベン、つかぬ事を聞くが、七歳の子が喜ぶこととは何だろうか?」

 問いかけられてノーベンは言葉に詰まった。

 ……レオナルド殿下が私に問いかけを!? 今まで会話らしい会話をしたことがなかったというのに!

 なんて驚いているとレオナルドは「ノーベン、聞いているのか?」と聞いてきた。なのでノーベンは我に返り、慌てて答えた。

「あ、はい! 聞いておりますよ。七歳の子が喜ぶことですか? レオナルド殿下、そのように小さな子と会う機会が?」
「ああ。で、子供は何をしたら喜ぶだろうか?」

 レオナルドは思いつかないようで、考え込む様に顎に手を当てた。そんな思案する姿もノーベンは初めて見た。

 ……レオナルド殿下でも、悩むことがあったとは。

 そう思いつつも、ノーベンはこの会話を続けるべく問いかけてみた。

「そうですね。その子供にもよりますが、レオナルド殿下はその子とすでに面識が?」
「ああ。数回会ったが、とてもいい子で。以前は城の探索や本の読み聞かせをしたのだが、次は何をしたらいいだろうかと思ってな」
「その子は活発な子ですか? それとも大人しい感じの子でしょうか」
「そうだな。どちらかと言えば大人しい子かもしれないな。いや、だが行動力はあるし」

 レオナルドは思い返しながら答え、時折笑みを零した。
 初めて見る表情の連続にノーベンは言葉も出ない。

 ……レオナルド殿下はこんなにも表情豊かだっただろうか?

「ノーベン?」
「あ、いえ、すみません。その子が興味のある事はご存じで?」
「植物が好きだな。あと甘いものも好むようだ」
「そうですか。では、薬草園に連れて行ってあげては?」
「いや、そこはすでに行っていると思う」

 レオナルドはすぐに答え、ノーベンは少し眉を顰める。

 ……薬草園に? あそこは王宮勤めの薬剤魔術師しか立ち入れないはずだが? 誰かの子供なのだろうか。

 ノーベンは考えがふと過るが、別の案を出すことにした。

「では、馬に乗って城の裏手にある丘に散策に出られては? 今の時期ですと初夏の野花が咲いていると思いますよ。ついでにおやつも持って行けば、喜ぶのでは?」

 そうノーベンが提案すると、レオナルドは目を輝かせた。

「なるほど。それはいい案だ、今度会った時に聞いてみるとしよう」

 レオナルドはウキウキした様子で言い、その姿にノーベンはたまらず聞いていた。

「ところで殿下、一体その子は何者なのです? どなたか貴族のお子ですか?」

 ノーベンが尋ねるとレオナルドは隠すことなく答えた。

「リーナの息子だ」
「リーナ……殿下の乳母だったお方ですね」

 ノーベンはリーナとあまり面識がなく、思い出される姿はおぼろげだった。

 ……確か王妃様のご友人でもある方だったな。ご主人は薬科室を取りまとめている薬剤魔術師長のウィル・ダンウィッカ―氏だったはず。

 王宮でも時々見かける夫の方をノーベンは思い出す。
 実年齢よりずっと若い姿を持ち、なおかつ天才と呼ばれている事も。

 ……なるほど、彼の息子なら薬草園に入った事があるかもしれないな。確か、遅くにできた子で、ダンウィッカー氏が随分と溺愛していると耳にしたことがある。……しかし、レオナルド殿下はその子の事が可愛いのだろうか。弟、のように思っているのか?

 そう思いながらレオナルドを見るが、弟のように思っているようには見えない。どちらかというと恋をする男の顔で。

 ……いや、相手は子供だ。レオナルド殿下が……まさかな。

 ノーベンは気がついたが、気がつかなかったことにした。






 ――――しかしそれから月日が経ち。
 レオナルドの想いは確かなものだとノーベンにもわかり、相手のセスには同情を禁じえなかった。

 ……レオナルド殿下ならどんな手を使ってでも彼を落とすだろう、まだ子供だと言うのに。

 そう思って。
 だが、これまた人生とは面白いもので。レオナルドがどれだけ誘い文句を言ってもセスは一向に靡かず、というか気がついてすらおらず。まさに暖簾に腕押し状態。
 セスにはレオナルドの美貌も、優秀さも、権威も、何の意味も持たなかったのだ。

 なので、何もかも持ち、なんでもできるはずのレオナルドが試行錯誤する姿を、ノーベンは何度も目にする事となった。そして、セスに会う度にどんどん人間らしくなっていくレオナルドを見て、同時にホッとしたものだった。


 それから随分と経ち、今となっては――――。





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