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おまけ
殿下、現実世界ですよ!ーハロウィン前編ー
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皆さま、いかがお過ごしでしょうか?
完結したけどまたまた物語を書いてしまいました(笑)
というのも…。こちらのアルファポリスさんと小説家になろうさんの方で同時掲載しているのですが、お気に入り&ブックマーク数がなんと合計6000越え!
その上、つい最近小説家になろうさんでの閲覧数がなんと150万を超えまして((((;゚Д゚)))
(アルファポリスさんの閲覧数は見れないのでわからないのですが(汗))
読んでくれている皆さまにお礼がしたく、この物語を書きました。ですので楽しんで頂けると幸いです。
アリガトウ('ω')ノ
**************
――――俺の名前はセス。
二十歳の医大生だ。俺はさる事情により、ある人と結婚を(正確にいうと同性パートナー?ってやつを)した。その、ある人とは十一歳年上で大企業の御曹司でもあるレオナルドさん。
とってもカッコいい人で、なんでもこなせる人だ。
だから一緒に暮らし始めてもうすぐ一年近くだけど、未だに俺が相手でいいのかな? ってちょっと思ったりする。けど俺は、レオナルドさんと一緒に暮らせてとっても幸せだ。
でも、まさかあんな事になるなんて……。俺はまだ知らなかった――――。
◇◇◇◇
――――十月のある秋の日。
夕方、いつもより早い時間にレオナルドさんが帰ってきた。夕食を作っていたエプロンをつけたまま俺は慌てて玄関に向かう。
「おかえりなさい、レオナルドさん!」
「ただいま、セス」
レオナルドさんはそう言うと、俺の頬にちゅっとただいまのキスをした。最近、ようやくこのキスにも慣れてきたところである。でも……。
「ふふ、セスからお風呂上がりのいい匂いがする」
レオナルドさんは目を細めて俺を優しい眼差しで見つめた。サファイアみたいな青い瞳が煌めいて、とても美しい。この神々しい微笑みに、俺は未だ慣れないでいる。
『ぷきゅぅっ』
俺の中のうさぎが恥ずかしさに呻く。
「さ、さっき入ったからっ。……それよりお疲れさまです、今日は早かったですね」
俺は少し顔を赤らめ、目を逸らして言った。
「仕事が早くに終わってね。それとお土産を買ってきたよ」
レオナルドさんはそう言って俺に小さなケーキの箱を差し出した。
「これは?」
「最近秋めいてきただろう? だからモンブランとパンプキンケーキを会社の近くのパティスリーで買ってきたんだ。食後に一緒に食べよう」
「ありがとうございます!」
俺がお礼を言うとレオナルドさんはにこっと笑った。
……こういう細やかな気遣いが、本当に嬉しいな。へへっ。
俺はケーキ箱を両手に抱え、嬉しさに顔が緩む。でもそんな俺の頬をレオナルドさんの手が触れ、そっと顔が近づいてきた。
……あ、キスされる!
そう思って俺はドキドキしながらも自然と瞼を閉じた。そしてレオナルドさんの吐息がかかるほど近づいた時。
――――ドンドドドドンッ!
玄関のドアを誰かが叩き、俺達は目を開けて顔を見合わせた。そしてドアの方へ視線を向けると声が聞こえてきた。
「えちゅ~っ! ドア、あけちぇーっ!」
小さな可愛らしい声が響く。それは聞き覚えのある声だった。
「レオナルドさん、この声!」
「どうやら小さな訪問者みたいだな」
レオナルドさんはふうっと小さく息を吐き、玄関のドアをゆっくりと開けた。
そしてドアの向こうにいたのはとっても小さな人。
つやつやの赤い髪にぽってりとした白い頬、金色の瞳はくりくりしている。三歳の体はまだ小さく、手なんてお饅頭みたいな可愛らしさだ。でもその小さな手を上げて、彼は俺達に挨拶をした。
「あ、れおっ、えちゅ! こんばんわ~!」
にっこり笑顔で元気に挨拶したのは、お隣に住んでいるフェニ君だった。
◇◇◇◇
「えちゅ、おかわりくだちゃい!」
フェニ君は空のお椀を差し出して、元気に言った。夕食に出したきのこスープが気に入ったらしい。
「はい、ちょっと待っててね」
俺は空のお椀を受け取ってキッチンでスープを継ぎ足し、フェニ君の前に差し出す。
「はい、どうぞ」
「ありあと!」
フェニ君はにかっと笑って、木のスプーンを持つ。だがすぐに食べようとしたフェニ君に「フェニ、熱いからフーフーして食べなさい」とレオナルドさんは声をかけた。
するとフェニ君は素直に「はぁーい」と返事をして、フーフーしながら小さな口で一口ずつ食べる。その姿はなんとも微笑ましい。
……フェニ君、可愛いなぁ。ちゃんという事も聞くし、偉いなぁ。
俺はフェニ君の可愛さに見とれて、穴が開くほど見つめてしまう。しかしその隣でレオナルドさんがフェニ君に尋ねた。
「ところでフェニ、ジークはどうした?」
「ん? ジークはねぇ、ちゅかれておねんねしてる!」
フェニ君はハキハキと答えた。ジークさんとはフェニ君の保護者で、フェニ君と共に俺達の部屋の隣に住んでいる。
「疲れて眠ってるの?」
「うん! あれちゅくった後にねちゃった!」
俺が尋ねるとフェニ君はソファに置いている白い布を指さして言った。それはこの家に来るときにフェニ君か持ってきたものだ。
……あれか。ただの布だと思ってたけど、違うのかな?
「フェニ君、あれって何なの?」
俺が尋ねるとフェニ君はにっと笑って「あとで見せてあげる―!」と答えた。
そしてデザートのケーキも食べた後、フェニ君は布の正体を俺達に見せて教えてくれた。
「ちょりっくおあちょりーとぉーっ!」
フェニ君は定番の文句と共に白い布を頭からかぶり、目の付いた小さなお化け姿を俺達に披露してくれた。
「そうか、そろそろハロウィンかぁ!」
俺が呟くとフェニ君はとことこっとソファに座っている俺の元にやってきて、ズボンの裾を引っ張った。
「ねー、えちゅ。ふぇに、おばけになれてるぅ?」
小さなおばけがこてんっと首を傾げる。その姿は恐ろしさよりも可愛さが上回っている。こんなにも怖くないおばけがどこにいるだろう?
「うん、なれてるよ。可愛いおばけさんだ、きっといっぱいお菓子が貰えるよ」
「ほんちょ!? やっちゃぁー!」
フェニ君は嬉し気に声を上げ、布をひらひらさせながらその場で踊り出した。でもそんなフェニ君に隣に座っていたレオナルドさんが尋ねた。
「フェニ、ハロウィンに近くの家を回るのか?」
「ううん、よーちえんのイベンチョなの!」
「へぇ、幼稚園のイベントでやるんだぁ。楽しそうだねぇ」
レオナルドさんの問いにフェニ君が答えた後、俺は頷きながら呟いた。
……確かに子供にはいいイベントかも。ハロウィンだけは大人からお菓子をたくさんもらえる日だからなぁ。
俺はそう思いつつ、小さなおばけフェニ君を見つめる。だがそんな俺にフェニ君はいきなり「ね、えちゅもいっしょにおばけしよー!」と誘った。
「え、俺?! でも俺は大人だし」
「おちょなはだめなの?」
「いや、駄目ってわけじゃないけど」
……ハロウィン当日は大人がコスプレして繁華街で闊歩したりするもんなぁ。でも、俺がおばけをして誰が楽しいのか。そりゃレオナルドさんが仮装とかしたらカッコいいだろうけど。……レオナルドさんなら魔法使いとか悪魔の格好とか。吸血鬼とか、すごく似合いそう!
俺はちらっと隣にいるレオナルドさんに見て、脳内で仮装した姿を思い浮かべる。どの姿もクールでカッコいい!
「ね、えちゅもしよーよ!」
フェニ君は俺のズボンをグイグイと引っ張ってねだった。
「う、うーん」
……フェニ君の小さなおばけは可愛いけど、俺みたいにひょろいのが布のシーツを被ってもなぁ。
「ねぇ、えちゅーっ」
しようよ、と懇願するフェニ君の視線に俺は困惑する。だがその時ちょうどピンポーンとチャイムが鳴った。時刻は八時過ぎ、俺は誰が来たのかすぐに予想がつく。
だから俺はこれ幸いと席を立ち、フェニ君を誘った。
「フェニ君、一緒に玄関へ行こう」
俺はお化け姿のままのフェニ君と一緒に玄関へと向かい、そしてドアを開ければそこには予想通りの人が立っていた。
「すまない、うちのがまた世話になったな」
玄関先でそう言ったのはジークさんだった。フェニ君のお迎えに来たのだ。
フェニ君はジークさんを見るなり駆け寄って「ジークぅ!」とその足元にぺちょっとくっついた。そんなフェニ君をジークさんはひょいっと腕に抱える。
「なんだ、もう被ってたのか」
「おやおや、可愛いおばけだねぇ」
ジークさんが言った後に、思わぬ声が聞こえて後ろを見れば、そこには意外な人が立っていた。
「あーっ、らんちゅだぁ!」
「やぁ、フェニ君。それにセス、レオナルド、こんばんは」
そう笑顔で言ったのはレオナルドさんのお兄さん、ランスさんだった。
「ランス兄さん!」
「ランスさん! どうしたんですか?」
久しぶりに家にやってきたランスさんに俺達は驚いた。
「夜分にすまない。今日しか時間がなくてね」
「いえ、それは構いませんが。何かあったんですか? ランスさん」
「特別な事ではないんだが、この招待状を渡しに来たんだ」
ランスさんはそう言うと、一枚の招待状を俺に差し出した。
「招待状?」
俺は招待状を受け取り、中身を見る。そこにはカボチャの絵と共に『ハロウィンパーティーへのご招待』と書かれていた。
「ハロウィンパーティー?」
「ああ、十月三十一日にホテルの会場を貸し切って、会社関係者の家族・友人を集めていわゆる仮装パーティーをするつもりなんだ。だからセスもレオナルドと一緒に来ないかい? もし良かったら、フェニ君もおいで。景品くじもあるんだよ?」
ランスさんはにこっと笑ってフェニ君に言った。
「ふぇにもいっていいのー!? いきちゃーい!」
「いいんですか?」
フェニ君は片手を上げて答え、ジークさんがランスさんに尋ねた。
「構わないよ。仮装用の服を持っていなくても貸衣装屋を呼ぶつもりだから手ぶらで来てくれればいい」
「ふぇに、このおばけさんするぅー!」
「いいね、楽しみだ。セスとレオナルドはどうする?」
ランスさんに尋ねられて、俺はレオナルドさんに視線を向ける。
「参加は決定事項なのでは?」
「察しのいい弟を持って俺は幸せだ」
レオナルドさんが尋ねるとランスさんはニコッと笑った。
「じゃ、招待状も渡したし、みんなの出席も取れた事だし、俺は帰るよ。この後も予定があってね」
ランスさんはそう言うと腕時計を見た。どうやらこの後も忙しいようだ。
「じゃあ、みんな。またハロウィンの日に会おう。バイバイ、フェニ君」
「ばいばぁい!」
フェニ君は手を振り、俺達は軽やかな足取りで帰るランスさんを見送った。
……ハロウィンパーティーかぁ。どんな感じなんだろう?
俺はちょっと不安を感じていたが、フェニ君はワクワクしているようだった。
「えちゅ、たのちみだね!」
フェニ君はニコニコしながら言い、俺は「そうだね」と微笑んだ。
完結したけどまたまた物語を書いてしまいました(笑)
というのも…。こちらのアルファポリスさんと小説家になろうさんの方で同時掲載しているのですが、お気に入り&ブックマーク数がなんと合計6000越え!
その上、つい最近小説家になろうさんでの閲覧数がなんと150万を超えまして((((;゚Д゚)))
(アルファポリスさんの閲覧数は見れないのでわからないのですが(汗))
読んでくれている皆さまにお礼がしたく、この物語を書きました。ですので楽しんで頂けると幸いです。
アリガトウ('ω')ノ
**************
――――俺の名前はセス。
二十歳の医大生だ。俺はさる事情により、ある人と結婚を(正確にいうと同性パートナー?ってやつを)した。その、ある人とは十一歳年上で大企業の御曹司でもあるレオナルドさん。
とってもカッコいい人で、なんでもこなせる人だ。
だから一緒に暮らし始めてもうすぐ一年近くだけど、未だに俺が相手でいいのかな? ってちょっと思ったりする。けど俺は、レオナルドさんと一緒に暮らせてとっても幸せだ。
でも、まさかあんな事になるなんて……。俺はまだ知らなかった――――。
◇◇◇◇
――――十月のある秋の日。
夕方、いつもより早い時間にレオナルドさんが帰ってきた。夕食を作っていたエプロンをつけたまま俺は慌てて玄関に向かう。
「おかえりなさい、レオナルドさん!」
「ただいま、セス」
レオナルドさんはそう言うと、俺の頬にちゅっとただいまのキスをした。最近、ようやくこのキスにも慣れてきたところである。でも……。
「ふふ、セスからお風呂上がりのいい匂いがする」
レオナルドさんは目を細めて俺を優しい眼差しで見つめた。サファイアみたいな青い瞳が煌めいて、とても美しい。この神々しい微笑みに、俺は未だ慣れないでいる。
『ぷきゅぅっ』
俺の中のうさぎが恥ずかしさに呻く。
「さ、さっき入ったからっ。……それよりお疲れさまです、今日は早かったですね」
俺は少し顔を赤らめ、目を逸らして言った。
「仕事が早くに終わってね。それとお土産を買ってきたよ」
レオナルドさんはそう言って俺に小さなケーキの箱を差し出した。
「これは?」
「最近秋めいてきただろう? だからモンブランとパンプキンケーキを会社の近くのパティスリーで買ってきたんだ。食後に一緒に食べよう」
「ありがとうございます!」
俺がお礼を言うとレオナルドさんはにこっと笑った。
……こういう細やかな気遣いが、本当に嬉しいな。へへっ。
俺はケーキ箱を両手に抱え、嬉しさに顔が緩む。でもそんな俺の頬をレオナルドさんの手が触れ、そっと顔が近づいてきた。
……あ、キスされる!
そう思って俺はドキドキしながらも自然と瞼を閉じた。そしてレオナルドさんの吐息がかかるほど近づいた時。
――――ドンドドドドンッ!
玄関のドアを誰かが叩き、俺達は目を開けて顔を見合わせた。そしてドアの方へ視線を向けると声が聞こえてきた。
「えちゅ~っ! ドア、あけちぇーっ!」
小さな可愛らしい声が響く。それは聞き覚えのある声だった。
「レオナルドさん、この声!」
「どうやら小さな訪問者みたいだな」
レオナルドさんはふうっと小さく息を吐き、玄関のドアをゆっくりと開けた。
そしてドアの向こうにいたのはとっても小さな人。
つやつやの赤い髪にぽってりとした白い頬、金色の瞳はくりくりしている。三歳の体はまだ小さく、手なんてお饅頭みたいな可愛らしさだ。でもその小さな手を上げて、彼は俺達に挨拶をした。
「あ、れおっ、えちゅ! こんばんわ~!」
にっこり笑顔で元気に挨拶したのは、お隣に住んでいるフェニ君だった。
◇◇◇◇
「えちゅ、おかわりくだちゃい!」
フェニ君は空のお椀を差し出して、元気に言った。夕食に出したきのこスープが気に入ったらしい。
「はい、ちょっと待っててね」
俺は空のお椀を受け取ってキッチンでスープを継ぎ足し、フェニ君の前に差し出す。
「はい、どうぞ」
「ありあと!」
フェニ君はにかっと笑って、木のスプーンを持つ。だがすぐに食べようとしたフェニ君に「フェニ、熱いからフーフーして食べなさい」とレオナルドさんは声をかけた。
するとフェニ君は素直に「はぁーい」と返事をして、フーフーしながら小さな口で一口ずつ食べる。その姿はなんとも微笑ましい。
……フェニ君、可愛いなぁ。ちゃんという事も聞くし、偉いなぁ。
俺はフェニ君の可愛さに見とれて、穴が開くほど見つめてしまう。しかしその隣でレオナルドさんがフェニ君に尋ねた。
「ところでフェニ、ジークはどうした?」
「ん? ジークはねぇ、ちゅかれておねんねしてる!」
フェニ君はハキハキと答えた。ジークさんとはフェニ君の保護者で、フェニ君と共に俺達の部屋の隣に住んでいる。
「疲れて眠ってるの?」
「うん! あれちゅくった後にねちゃった!」
俺が尋ねるとフェニ君はソファに置いている白い布を指さして言った。それはこの家に来るときにフェニ君か持ってきたものだ。
……あれか。ただの布だと思ってたけど、違うのかな?
「フェニ君、あれって何なの?」
俺が尋ねるとフェニ君はにっと笑って「あとで見せてあげる―!」と答えた。
そしてデザートのケーキも食べた後、フェニ君は布の正体を俺達に見せて教えてくれた。
「ちょりっくおあちょりーとぉーっ!」
フェニ君は定番の文句と共に白い布を頭からかぶり、目の付いた小さなお化け姿を俺達に披露してくれた。
「そうか、そろそろハロウィンかぁ!」
俺が呟くとフェニ君はとことこっとソファに座っている俺の元にやってきて、ズボンの裾を引っ張った。
「ねー、えちゅ。ふぇに、おばけになれてるぅ?」
小さなおばけがこてんっと首を傾げる。その姿は恐ろしさよりも可愛さが上回っている。こんなにも怖くないおばけがどこにいるだろう?
「うん、なれてるよ。可愛いおばけさんだ、きっといっぱいお菓子が貰えるよ」
「ほんちょ!? やっちゃぁー!」
フェニ君は嬉し気に声を上げ、布をひらひらさせながらその場で踊り出した。でもそんなフェニ君に隣に座っていたレオナルドさんが尋ねた。
「フェニ、ハロウィンに近くの家を回るのか?」
「ううん、よーちえんのイベンチョなの!」
「へぇ、幼稚園のイベントでやるんだぁ。楽しそうだねぇ」
レオナルドさんの問いにフェニ君が答えた後、俺は頷きながら呟いた。
……確かに子供にはいいイベントかも。ハロウィンだけは大人からお菓子をたくさんもらえる日だからなぁ。
俺はそう思いつつ、小さなおばけフェニ君を見つめる。だがそんな俺にフェニ君はいきなり「ね、えちゅもいっしょにおばけしよー!」と誘った。
「え、俺?! でも俺は大人だし」
「おちょなはだめなの?」
「いや、駄目ってわけじゃないけど」
……ハロウィン当日は大人がコスプレして繁華街で闊歩したりするもんなぁ。でも、俺がおばけをして誰が楽しいのか。そりゃレオナルドさんが仮装とかしたらカッコいいだろうけど。……レオナルドさんなら魔法使いとか悪魔の格好とか。吸血鬼とか、すごく似合いそう!
俺はちらっと隣にいるレオナルドさんに見て、脳内で仮装した姿を思い浮かべる。どの姿もクールでカッコいい!
「ね、えちゅもしよーよ!」
フェニ君は俺のズボンをグイグイと引っ張ってねだった。
「う、うーん」
……フェニ君の小さなおばけは可愛いけど、俺みたいにひょろいのが布のシーツを被ってもなぁ。
「ねぇ、えちゅーっ」
しようよ、と懇願するフェニ君の視線に俺は困惑する。だがその時ちょうどピンポーンとチャイムが鳴った。時刻は八時過ぎ、俺は誰が来たのかすぐに予想がつく。
だから俺はこれ幸いと席を立ち、フェニ君を誘った。
「フェニ君、一緒に玄関へ行こう」
俺はお化け姿のままのフェニ君と一緒に玄関へと向かい、そしてドアを開ければそこには予想通りの人が立っていた。
「すまない、うちのがまた世話になったな」
玄関先でそう言ったのはジークさんだった。フェニ君のお迎えに来たのだ。
フェニ君はジークさんを見るなり駆け寄って「ジークぅ!」とその足元にぺちょっとくっついた。そんなフェニ君をジークさんはひょいっと腕に抱える。
「なんだ、もう被ってたのか」
「おやおや、可愛いおばけだねぇ」
ジークさんが言った後に、思わぬ声が聞こえて後ろを見れば、そこには意外な人が立っていた。
「あーっ、らんちゅだぁ!」
「やぁ、フェニ君。それにセス、レオナルド、こんばんは」
そう笑顔で言ったのはレオナルドさんのお兄さん、ランスさんだった。
「ランス兄さん!」
「ランスさん! どうしたんですか?」
久しぶりに家にやってきたランスさんに俺達は驚いた。
「夜分にすまない。今日しか時間がなくてね」
「いえ、それは構いませんが。何かあったんですか? ランスさん」
「特別な事ではないんだが、この招待状を渡しに来たんだ」
ランスさんはそう言うと、一枚の招待状を俺に差し出した。
「招待状?」
俺は招待状を受け取り、中身を見る。そこにはカボチャの絵と共に『ハロウィンパーティーへのご招待』と書かれていた。
「ハロウィンパーティー?」
「ああ、十月三十一日にホテルの会場を貸し切って、会社関係者の家族・友人を集めていわゆる仮装パーティーをするつもりなんだ。だからセスもレオナルドと一緒に来ないかい? もし良かったら、フェニ君もおいで。景品くじもあるんだよ?」
ランスさんはにこっと笑ってフェニ君に言った。
「ふぇにもいっていいのー!? いきちゃーい!」
「いいんですか?」
フェニ君は片手を上げて答え、ジークさんがランスさんに尋ねた。
「構わないよ。仮装用の服を持っていなくても貸衣装屋を呼ぶつもりだから手ぶらで来てくれればいい」
「ふぇに、このおばけさんするぅー!」
「いいね、楽しみだ。セスとレオナルドはどうする?」
ランスさんに尋ねられて、俺はレオナルドさんに視線を向ける。
「参加は決定事項なのでは?」
「察しのいい弟を持って俺は幸せだ」
レオナルドさんが尋ねるとランスさんはニコッと笑った。
「じゃ、招待状も渡したし、みんなの出席も取れた事だし、俺は帰るよ。この後も予定があってね」
ランスさんはそう言うと腕時計を見た。どうやらこの後も忙しいようだ。
「じゃあ、みんな。またハロウィンの日に会おう。バイバイ、フェニ君」
「ばいばぁい!」
フェニ君は手を振り、俺達は軽やかな足取りで帰るランスさんを見送った。
……ハロウィンパーティーかぁ。どんな感じなんだろう?
俺はちょっと不安を感じていたが、フェニ君はワクワクしているようだった。
「えちゅ、たのちみだね!」
フェニ君はニコニコしながら言い、俺は「そうだね」と微笑んだ。
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