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おまけ
感謝祭ー後編ー
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それから夜も更けた頃。
「いやー、今日の陛下の挨拶はよかったなー。それにセス様も見れたし!」
「ああ、どんな美少年かと思ったが意外に素朴で! でもどことなく可愛らしい感じの方だったよな。噂以上にレオナルド王子の方がセス様に惚れているみたいだしなぁ」
「バルコニーに出ている間はずっとぴったりくっついていたなー。ありゃ相当だぞ」
「俺、城に勤めてる奴から聞いたけどレオナルド王子が溺愛してるらしいぞ」
「へえ? そんなになのか? あのレオナルド王子がそこまでするっていうのなら、性格もいい方なんだろう」
「ああ、すごく腰の低い方らしいぞ。今じゃ王族の一人だっていうのに、そんなところは全然ないらしい」
「そうなのかぁ……でもよ。やっぱりレオナルド王子がそこまで溺愛するってことは夜がすごいんじゃねーか? あんな純朴そうな顔で夜はせまったりして。純情そうな方が結構エロ」
男がそこまで言いかけた時。
どこからともなく小石が飛んできて、テーブルの上に置いていたマグカップに当たってバタンッと倒れた。中には温かいワインがたっぷりと入っていて、男の足にその温かい、いや熱いワインがかかった。
「あっちぃ!!」
「うわ! 何やってんだよ!」
「すみません! 雑巾くださーい!」
テーブルを囲んで店のテラスでワイワイと話しこんでいた男達は立ち上がって片づけを始めた。もうさっきの話など忘れているだろう。
だが、そんな彼らに冷たい視線を向ける者が一人。しかし、その視線はすぐに柔らかいものに変わった。
「レオ、お待たせしました!」
お店から俺が出るとレオナルド殿下はにっこりと笑った。
「お目当てのものは買えた? セス」
「はい!」
俺はそう返事をして手元にあるものをレオナルド殿下に見せた。
「じゃあ、行こうか」
レオナルド殿下はそう言って、俺の手を引いて広場へ歩き出した。
感謝祭では、名の通り一年の無事を神に感謝するのだが、その感謝はただお祈りするだけじゃない。感謝の気持ちを込めて、女神様の銅像に小さなお供えするのだ。『また来年もいい年を送れますように』と。
そして広場には女神様の銅像が建っていて、町の人はここにお供え物を置いていく。お供え物の中身はそれぞれだが、基本的に食べ物が多い。
なぜならそのお供え物は教会に勤める神官が翌日回収し、近くの孤児院に分けられるからだ。なので、お供え物のほとんどがお菓子だったする。
かくゆう俺もお供えにうさぎさんの形をしたクッキーを包んで貰った。勿論、レオナルド殿下の分も。
「わぁ、人がいっぱいですね」
「広場からが一番花火が綺麗に見えるからね。ほら、お供えに行こう」
レオナルド殿下は俺の手を引いて女神様の銅像の前までやってきた。銅像の周囲には多くのお供え物があり、俺はその中にそっと自分とレオナルド殿下の分のお供え物を置いた。
そして二人で女神様にお祈りをする。
でもお祈りをした後、レオナルド殿下はおもむろに俺にこう言った。
「私の分まですまないね、セス」
そう言ったレオナルド殿下の視線の先には俺が買ったお供え物のクッキーの包み。どうやら俺が買ったことに対して言っているみたいだけど……。
「それを言うなら俺の方ですよ。いつもレオナルド殿下が出してくれるじゃないですか、昼の分も支払って貰っちゃったし。これぐらい俺にも出させてください、俺だって働いてるんですから」
「頼もしいね。なら……年を取って働けなくなったら、セスに養ってもらおうかな?」
「何言ってるんですか、もう」
「はは、じょうだ」
「そんなの当たり前でしょ?」
……俺の方がちょっと若いんだし、レオナルド殿下を養うぐらいはできると思う。あ、勿論今みたいな生活はできないけど、二人だけの生活ならきっと俺の収入だけでも。……あれ? でも王族業に終わりってあるのかな? うーん??
なんて考えているとレオナルド殿下は俺の手をぎゅっと握った。
「ん?」
顔を上げてレオナルド殿下を見ると、なんでかすごく嬉しそうな顔をしていた。
「レオ? どうしたんです?」
「いや、セスはセスだなって思っただけさ」
「……?」
「セスはいつも私を幸せにしてくれる」
「……今のドコに?」
そんなことを感じるトコが??
俺はわからなくて眉間に皺を寄せたが、そんな折、花火が上がり始めた。
「あ、花火!」
俺は声を上げ、広場にいた他の人もみんな城から上がり始めた花火に視線を向けた。
雲一つない冬の空に明るい花火が綺麗に打ちあがる。
……うわぁ、綺麗な花火だなぁ。
そう呑気に思ったけど花火を見上げる俺にレオナルド殿下はそっと顔を寄せて、俺の唇に軽いキスをした。まだ少しワインの香りがする唇で。
「れ、レオ!」
いっぱい人がいるのに!!
「みんな花火を見ていて、私たちの事なんか気が付いてないさ」
レオナルド殿下は悪びれることなく俺に言ったが、俺はやっぱり人がいるところでキスするのは恥ずかしい!
「だ、だからって! んもぉーっ」
「はは、ごめん。セスが好きだから我慢できなかった」
……もぅ、もぅっ! そんな風に言われたら怒れないじゃないかぁ!
「もー、そんな風に言ってもダメですからね!」
俺が言うとレオナルド殿下は俺の耳元に顔を寄せて甘い声で囁いた。
「じゃあ、花火が終わったら早く人目のないところに行こう? 早くセスに体を温めて欲しい」
魅惑的な低音ボイスで囁かれたら、俺の胸がおかしいぐらい飛び跳ねる。
『むっきゅむっきゅうううっ!!』
兎は大喜びだ。
……もう、この人って、この人ってぇえ!
「ねぇ、セス。ダメ、かな?」
色っぽく囁くのに、最後は俺に甘えるような瞳で見つめてくるんだから。……こんなの抵抗しようがないじゃないか!
「だ、ダメじゃない。でも、は、花火が終わって……からですよっ!」
「うん。わかってる」
レオナルド殿下は俺が返事をすると、嬉しそうにニコニコ笑顔で返事をした。
そして俺の手を握ってレオナルド殿下は言った。
「セス、大好きだよ」
嬉し気な顔で言われて、俺はほっぺを真っ赤に染めるしかなかった。
……俺だって大好きですよ、レオナルド殿下。
その想いは繋いだ手をぎゅっと握り返して伝えた。そしてチラッとレオナルド殿下を見れば、サファイアの瞳を細めて俺を見ている。
どうやら俺の想いは通じたみたいだ。それが嬉しくって俺の頬が自然と緩んでしまう。
……どうか来年も、その次も……ずっとレオナルド殿下と過ごせますように。
俺は打ちあがる花火を見つめ、そう女神様に願ったのだった。
一方、城では。
「全く、最後の最後まで気が抜けない一年でしたね」
ノーベンは補佐室でため息を吐きながら、温めたワインを飲んでいた。
……仕事が終わって就業外。普段なら補佐室で酒を飲むなんてことはしませんが、まあ今日ぐらいいいでしょう。今日しか飲めないのですし。
ノーベンはそう自分に言い訳をして、温かいワインをこくりと飲んだ。
そして窓から見える花火に視線を向けた。
……殿下とセス君は今頃広場で花火を見てるんですかねぇ? あの変態王子、羽目を外してセス君にまた無理をさせなければいいですけど。やれやれ。
ノーベンはそう思いつつも、机の上に置いてある書類をちらりと見た。
そこには複数の貴族の子息と、そして一人の男の事が載っていた。
それは皆、レオナルドがイニエスト公国に行っている間にセスに無礼な言葉を吐いたり、態度を取った者達で、ノーベンがレオナルドに命じられて報告書にまとめていたものだった。
そして今日、その者達の事をちょっと調べたら、皆、地方に飛ばされ、今までの地位を剥奪されていた。
……まあ、仕方ないと言えば仕方ないですけどね。
セスに無礼な事を言ったのは、元から素行が悪かった者達ばかり。自分の地位や力を誇示して相手に膝を折らせる、強請や恐喝などもしていた者達だった。
『特権階級に身を置く者は自分の力や地位を理解しておかなければならない。なのに己の為に乱用するとは。……彼らにはそれ相応の処罰が必要だな』
レオナルドはそう言ってにっこりと笑った。
そんなレオナルドにノーベンは『よくもまあ、そんな事が言えますね。一番乱用してるのは殿下では?』と嫌味たっぷりに言いかけそうになったが、それをぐっと喉の奥に押し込んで違うセリフを吐いた。
『なら、どうなさるおつもりで?』
『なに、私自ら手を下すまでもない。まあ、ちょっと藪を突くがな』
悪巧みの顔で笑ったレオナルド。
その笑みにノーベンは悪寒が走ったが、触らぬ神に祟りなし。
『そうですか』
ノーベンはそれだけ答えて、その後放置していた。しかし、やっぱり気になって少し調べれば子息たちはそれぞれ身分を剥奪されたり、地方の修道院に送られていた。
完全にレオナルドの仕業だ。
……一体何をしたのか。あの人の事ですから、自分の手は汚してないんでしょうねぇ。はぁ、全く怖いものです。来年は穏便に過ごしたいものですね。ま、その為にはセス君、よろしくお願いしますよ。
ノーベンは女神に祈るのではなく、セスに願ったのだった。
「ん?」
……何か聞こえたようなぁ?
「セス、どうしたの?」
「あ、いえ」
……気のせいかな?
俺が思うとレオナルド殿下はふっと笑って俺の耳元で囁いた。
「花火も終わったし、そろそろ行こうか」
甘い囁きに俺は恥ずかしいながらも小さく答えた。
「ぅ、ぅん」
俺が答えるとレオナルド殿下は俺の手を引っ張って、まだ感謝祭の熱が冷めやらぬ賑やかしい道を足早に歩いた。
町にある俺の部屋へと続く道を……。
おわり
*********
時期と内容がクリスマス的なのは、実はクリスマス辺りに投稿しようかと思っていたからです。しかし間に合わず……なので投稿する予定はなかったのですが、みんなそろそろ忘れた頃だろうと思って、気づかれないようにそっと投稿することにしました(笑)
楽しんでいただけたなら嬉しいです。
「いやー、今日の陛下の挨拶はよかったなー。それにセス様も見れたし!」
「ああ、どんな美少年かと思ったが意外に素朴で! でもどことなく可愛らしい感じの方だったよな。噂以上にレオナルド王子の方がセス様に惚れているみたいだしなぁ」
「バルコニーに出ている間はずっとぴったりくっついていたなー。ありゃ相当だぞ」
「俺、城に勤めてる奴から聞いたけどレオナルド王子が溺愛してるらしいぞ」
「へえ? そんなになのか? あのレオナルド王子がそこまでするっていうのなら、性格もいい方なんだろう」
「ああ、すごく腰の低い方らしいぞ。今じゃ王族の一人だっていうのに、そんなところは全然ないらしい」
「そうなのかぁ……でもよ。やっぱりレオナルド王子がそこまで溺愛するってことは夜がすごいんじゃねーか? あんな純朴そうな顔で夜はせまったりして。純情そうな方が結構エロ」
男がそこまで言いかけた時。
どこからともなく小石が飛んできて、テーブルの上に置いていたマグカップに当たってバタンッと倒れた。中には温かいワインがたっぷりと入っていて、男の足にその温かい、いや熱いワインがかかった。
「あっちぃ!!」
「うわ! 何やってんだよ!」
「すみません! 雑巾くださーい!」
テーブルを囲んで店のテラスでワイワイと話しこんでいた男達は立ち上がって片づけを始めた。もうさっきの話など忘れているだろう。
だが、そんな彼らに冷たい視線を向ける者が一人。しかし、その視線はすぐに柔らかいものに変わった。
「レオ、お待たせしました!」
お店から俺が出るとレオナルド殿下はにっこりと笑った。
「お目当てのものは買えた? セス」
「はい!」
俺はそう返事をして手元にあるものをレオナルド殿下に見せた。
「じゃあ、行こうか」
レオナルド殿下はそう言って、俺の手を引いて広場へ歩き出した。
感謝祭では、名の通り一年の無事を神に感謝するのだが、その感謝はただお祈りするだけじゃない。感謝の気持ちを込めて、女神様の銅像に小さなお供えするのだ。『また来年もいい年を送れますように』と。
そして広場には女神様の銅像が建っていて、町の人はここにお供え物を置いていく。お供え物の中身はそれぞれだが、基本的に食べ物が多い。
なぜならそのお供え物は教会に勤める神官が翌日回収し、近くの孤児院に分けられるからだ。なので、お供え物のほとんどがお菓子だったする。
かくゆう俺もお供えにうさぎさんの形をしたクッキーを包んで貰った。勿論、レオナルド殿下の分も。
「わぁ、人がいっぱいですね」
「広場からが一番花火が綺麗に見えるからね。ほら、お供えに行こう」
レオナルド殿下は俺の手を引いて女神様の銅像の前までやってきた。銅像の周囲には多くのお供え物があり、俺はその中にそっと自分とレオナルド殿下の分のお供え物を置いた。
そして二人で女神様にお祈りをする。
でもお祈りをした後、レオナルド殿下はおもむろに俺にこう言った。
「私の分まですまないね、セス」
そう言ったレオナルド殿下の視線の先には俺が買ったお供え物のクッキーの包み。どうやら俺が買ったことに対して言っているみたいだけど……。
「それを言うなら俺の方ですよ。いつもレオナルド殿下が出してくれるじゃないですか、昼の分も支払って貰っちゃったし。これぐらい俺にも出させてください、俺だって働いてるんですから」
「頼もしいね。なら……年を取って働けなくなったら、セスに養ってもらおうかな?」
「何言ってるんですか、もう」
「はは、じょうだ」
「そんなの当たり前でしょ?」
……俺の方がちょっと若いんだし、レオナルド殿下を養うぐらいはできると思う。あ、勿論今みたいな生活はできないけど、二人だけの生活ならきっと俺の収入だけでも。……あれ? でも王族業に終わりってあるのかな? うーん??
なんて考えているとレオナルド殿下は俺の手をぎゅっと握った。
「ん?」
顔を上げてレオナルド殿下を見ると、なんでかすごく嬉しそうな顔をしていた。
「レオ? どうしたんです?」
「いや、セスはセスだなって思っただけさ」
「……?」
「セスはいつも私を幸せにしてくれる」
「……今のドコに?」
そんなことを感じるトコが??
俺はわからなくて眉間に皺を寄せたが、そんな折、花火が上がり始めた。
「あ、花火!」
俺は声を上げ、広場にいた他の人もみんな城から上がり始めた花火に視線を向けた。
雲一つない冬の空に明るい花火が綺麗に打ちあがる。
……うわぁ、綺麗な花火だなぁ。
そう呑気に思ったけど花火を見上げる俺にレオナルド殿下はそっと顔を寄せて、俺の唇に軽いキスをした。まだ少しワインの香りがする唇で。
「れ、レオ!」
いっぱい人がいるのに!!
「みんな花火を見ていて、私たちの事なんか気が付いてないさ」
レオナルド殿下は悪びれることなく俺に言ったが、俺はやっぱり人がいるところでキスするのは恥ずかしい!
「だ、だからって! んもぉーっ」
「はは、ごめん。セスが好きだから我慢できなかった」
……もぅ、もぅっ! そんな風に言われたら怒れないじゃないかぁ!
「もー、そんな風に言ってもダメですからね!」
俺が言うとレオナルド殿下は俺の耳元に顔を寄せて甘い声で囁いた。
「じゃあ、花火が終わったら早く人目のないところに行こう? 早くセスに体を温めて欲しい」
魅惑的な低音ボイスで囁かれたら、俺の胸がおかしいぐらい飛び跳ねる。
『むっきゅむっきゅうううっ!!』
兎は大喜びだ。
……もう、この人って、この人ってぇえ!
「ねぇ、セス。ダメ、かな?」
色っぽく囁くのに、最後は俺に甘えるような瞳で見つめてくるんだから。……こんなの抵抗しようがないじゃないか!
「だ、ダメじゃない。でも、は、花火が終わって……からですよっ!」
「うん。わかってる」
レオナルド殿下は俺が返事をすると、嬉しそうにニコニコ笑顔で返事をした。
そして俺の手を握ってレオナルド殿下は言った。
「セス、大好きだよ」
嬉し気な顔で言われて、俺はほっぺを真っ赤に染めるしかなかった。
……俺だって大好きですよ、レオナルド殿下。
その想いは繋いだ手をぎゅっと握り返して伝えた。そしてチラッとレオナルド殿下を見れば、サファイアの瞳を細めて俺を見ている。
どうやら俺の想いは通じたみたいだ。それが嬉しくって俺の頬が自然と緩んでしまう。
……どうか来年も、その次も……ずっとレオナルド殿下と過ごせますように。
俺は打ちあがる花火を見つめ、そう女神様に願ったのだった。
一方、城では。
「全く、最後の最後まで気が抜けない一年でしたね」
ノーベンは補佐室でため息を吐きながら、温めたワインを飲んでいた。
……仕事が終わって就業外。普段なら補佐室で酒を飲むなんてことはしませんが、まあ今日ぐらいいいでしょう。今日しか飲めないのですし。
ノーベンはそう自分に言い訳をして、温かいワインをこくりと飲んだ。
そして窓から見える花火に視線を向けた。
……殿下とセス君は今頃広場で花火を見てるんですかねぇ? あの変態王子、羽目を外してセス君にまた無理をさせなければいいですけど。やれやれ。
ノーベンはそう思いつつも、机の上に置いてある書類をちらりと見た。
そこには複数の貴族の子息と、そして一人の男の事が載っていた。
それは皆、レオナルドがイニエスト公国に行っている間にセスに無礼な言葉を吐いたり、態度を取った者達で、ノーベンがレオナルドに命じられて報告書にまとめていたものだった。
そして今日、その者達の事をちょっと調べたら、皆、地方に飛ばされ、今までの地位を剥奪されていた。
……まあ、仕方ないと言えば仕方ないですけどね。
セスに無礼な事を言ったのは、元から素行が悪かった者達ばかり。自分の地位や力を誇示して相手に膝を折らせる、強請や恐喝などもしていた者達だった。
『特権階級に身を置く者は自分の力や地位を理解しておかなければならない。なのに己の為に乱用するとは。……彼らにはそれ相応の処罰が必要だな』
レオナルドはそう言ってにっこりと笑った。
そんなレオナルドにノーベンは『よくもまあ、そんな事が言えますね。一番乱用してるのは殿下では?』と嫌味たっぷりに言いかけそうになったが、それをぐっと喉の奥に押し込んで違うセリフを吐いた。
『なら、どうなさるおつもりで?』
『なに、私自ら手を下すまでもない。まあ、ちょっと藪を突くがな』
悪巧みの顔で笑ったレオナルド。
その笑みにノーベンは悪寒が走ったが、触らぬ神に祟りなし。
『そうですか』
ノーベンはそれだけ答えて、その後放置していた。しかし、やっぱり気になって少し調べれば子息たちはそれぞれ身分を剥奪されたり、地方の修道院に送られていた。
完全にレオナルドの仕業だ。
……一体何をしたのか。あの人の事ですから、自分の手は汚してないんでしょうねぇ。はぁ、全く怖いものです。来年は穏便に過ごしたいものですね。ま、その為にはセス君、よろしくお願いしますよ。
ノーベンは女神に祈るのではなく、セスに願ったのだった。
「ん?」
……何か聞こえたようなぁ?
「セス、どうしたの?」
「あ、いえ」
……気のせいかな?
俺が思うとレオナルド殿下はふっと笑って俺の耳元で囁いた。
「花火も終わったし、そろそろ行こうか」
甘い囁きに俺は恥ずかしいながらも小さく答えた。
「ぅ、ぅん」
俺が答えるとレオナルド殿下は俺の手を引っ張って、まだ感謝祭の熱が冷めやらぬ賑やかしい道を足早に歩いた。
町にある俺の部屋へと続く道を……。
おわり
*********
時期と内容がクリスマス的なのは、実はクリスマス辺りに投稿しようかと思っていたからです。しかし間に合わず……なので投稿する予定はなかったのですが、みんなそろそろ忘れた頃だろうと思って、気づかれないようにそっと投稿することにしました(笑)
楽しんでいただけたなら嬉しいです。
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