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殿下、ちょっと待って!!
7 またもお風呂で?! 前編 ※
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それから俺達は夕飯を食べ、その後そのまま風呂に入ることになったのだが……。
「ぁうぅぅぅ~~ぅ」
フェニは温かな湯船の中、俺の膝の上ですっかり疲れ切っていた。そしてその一方で俺達の対面に座るレオナルド殿下はにこにこと楽しそうだ。
そんなレオナルド殿下をフェニはじとっと恨みがましい目で見ている。だが、レオナルド殿下は何のそのだ。
……フェニはすっかり疲れ切っちゃってるな。レオナルド殿下に洗われて、ずっと暴れていたもんなぁ。
俺はさっき見た光景を思い出す。
これまでは俺と雛鳥だったフェニが一緒にお風呂に入って、俺がフェニの体を桶に入れて洗っていた。
でも今日はレオナルド殿下も一緒に入ることになり、フェニの体をレオナルド殿下が洗ったのだ。
『セスは疲れているだろう? 私がしよう』とにこにこ笑顔で。
当然フェニは嫌がったが力の強さではレオナルド殿下に勝てず、フェニはわっしわっしっと頭と体を洗われ、最後には疲れ果ててなされるがままだった。
昨日までは雛鳥のフェニを見るのも嫌そうだったのに、フェニが子供になってから手の平返しがすごい。
レオナルド殿下って実は意外と子供が好きなのかな?
俺はそう思って、胸がツキンッと痛くなる。
……もしもレオナルド殿下が好きな人や子供が欲しいって思ったら、俺は……。
「セス、何考えてるの?」
「え?」
対面に座るレオナルド殿下に声をかけられて、俺は俯いていた顔を上げる。
「何か、思いつめている顔をしているよ?」
「あ、え? そ、そんな顔をしてます?」
どんな顔をしていたんだろう、俺。
「何かあった?」
「え、あ……いや、その、別になんでもないですよ」
俺は嘘を吐いた。だって、こんなことをレオナルド殿下には言えない。言ったら、この優しい人はきっと否定するだろうから。
「そう?」
「はい、何でもないです」
俺は念を押すように誤魔化した。
「セスが何でもないなら、いいんだよ」
レオナルド殿下は微笑んで、下りている前髪を掻き上げた。色っぽい男の仕草に俺はついつい目を奪われてしまう。
……けれど、いつかこの仕草も俺じゃない誰かが見る日が来てしまうのだろうか?
ツキンッと胸が痛くなり、俺の中の兎が『むきゅぅぅぅぅ』と寂し気に鳴く。
「セス、そろそろフェニを風呂から出した方がいいんじゃないだろうか? 溺れそうだよ」
レオナルド殿下に言われて俺はハッと我に返る。俺の膝の上にいるフェニはうとうとっと眠そうにしている。このままではぶくぶくっと溺れてしまいそうだ。
「フェニ、ごめん。そろそろ出ようか」
俺はフェニを抱えて風呂場から出ようとしたが、それをレオナルド殿下が制した。
「私が外に出そう」
レオナルド殿下はフェニを軽々と抱きかかえる。それを見て、俺の胸がざわざわと痛みだす。
いつかレオナルド殿下が本当の子供を持った時、こんな風にするのかな? って思ったら、心臓がバラバラになってしまいそう。
「……セス、なんて顔してるんだい」
「え?」
俺はレオナルド殿下の声に、顔を上げて見た。するとレオナルド殿下は心配そうな顔で俺を見ていた。
「な、何でもないですよ」
俺は誤魔化した。そんな俺にレオナルド殿下は何も言わず、少し間を置いてから浴槽から出て脱衣所に向かった。
俺は風呂に一人残されるんだ、と膝を抱えて思ったが、レオナルド殿下はドアを開けると外に待機している男の使用人さんを呼んだ。そしてすでにくてんっと眠っているフェニをバスタオルで包むと「フェニに服を着させ、部屋に連れていくようノーベンに言付けてくれ」と預けて頼んだ。
使用人さんは「畏まりました」と答えると眠ったままのフェニを連れて行った。
その後、レオナルド殿下はドアを閉めて、俺の方に振り返った。
「れ、レオナルド殿下?」
俺はぴくっと体を揺らして、俺をじっと見つめるサファイアの瞳に怯える。俺の気持ちの奥まで見透かしてしまいそうな瞳に。
そしてレオナルド殿下は俺を捉えたまま戻ってくると、再び浴槽に入って俺に詰め寄った。
「セス、何か言いたいことがあるんだろう? なんだい?」
「あ、うっ……」
「セス?」
レオナルド殿下の瞳が俺に言う、言うまでここから出さないと。
だから、俺は仕方なくちょっとだけ本当の事を伝えた。
「いや……レオナルド殿下、子供が好きなのかなぁーって、思って。フェニが雛鳥の時にはあんなに嫌ってたのに、子供になった途端、すっごく構うから」
俺が顔を逸らして伝えると、レオナルド殿下は少しの沈黙の後、ふふっと笑った。
……なんで笑い?!
そう思ってレオナルド殿下を見ると、そっと俺に手を伸ばして頬に触れた。
「別に子供が好きってわけじゃないよ。フェニがセスに似ているからだよ」
「え? 俺に??」
俺が尋ねるとレオナルド殿下は「ああ」と答えて、頷いた。そこに嘘はない。
「もしも私が子供好きというなら、きっとジュリアナとアンジェリカに構い倒しているよ」
「あ……確かに」
姪っ子として可愛がってはいるようだったけどそれ以上の感情はないみたいで、レオナルド殿下は王女様達にあまり興味を示していなかった。それを王女達も感じているのか、レオナルド殿下には一線引いていた。俺に構うみたいな気軽さは全くない。
「私は昔からあまり子供が得意ではなくてね」
「そうなんですか? でもフェニは」
「フェニはセスに似ているから。フェニと関わっているとセスの子供の頃を思い出す」
レオナルド殿下は俺の目元をすりすりと親指の腹で優しく撫でる。
なんだか、ぞくぞくする触り方だ。
「でも、そういや子供が得意じゃなかったら、どうして俺が子供の頃、あんなに構ってくれたんです? 王妃様や母さんに頼まれたから?」
俺に構ってくれるレオナルド殿下は記憶の限り、嫌そうにしていなかった。
でもあれは演技だったんだろうか?
小さな不安がぽつっと胸にできる。でもその不安をレオナルド殿下はすぐに吹き飛ばしてくれた。
「セスは特別だよ。実を言うと、リーナや母上に頼まれる前に私が面倒を見ると言っていたんだ」
「え? そうだったんですか?」
知らなかった真実を教えられて俺は驚く。レオナルド殿下は無理やり頼まれたのだと思っていたから。
「でもあの時レオナルド殿下は十八歳で、俺はまだ七歳で……つまんなくなかったですか? 俺の相手」
「そんなことないよ。セスと一緒にいて、私はいつも癒されていたよ。今と同じようにね」
優しく微笑まれて俺は胸がドキッと鳴る。
「お、俺、癒してますか?」
「ああ、傍にいてくれるだけで癒されてる。……でも、もっと癒して欲しい」
レオナルド殿下はそこまで言うと、浴槽の縁に手をかけて俺を囲うように覆い被さった。見上げるとそこには屈強な腕と隆起した体、そして伝わってくる熱と蠱惑的な視線がまっすぐと俺に降り注ぐ。
それだけでも十分許容オーバーだと言うのに、レオナルド殿下は俺の頬に水滴をぽたりっと落としながら耳元で甘く囁いた。
「セスの体でじっくりとね?」
『きゅーーーーーぅっ!』
兎が一際大きく鳴いて、俺の中で暴走し始めた。
待て待て、落ち着けーーーーっ!!
そう兎に言い聞かせるのに、頬が一気に熱くなるのがわかる。胸がドキドキして止まらない。
「セス、癒してくれる?」
「あ、うっ……俺、でよければ」
俺はレオナルド殿下の視線から逃れながら、もごもごと言った。でもレオナルド殿下はしっかりと俺の言葉を聞いていた。
「勿論、セスじゃなければ嫌だよ」
レオナルド殿下はそう言うと俺の顎に手を当てて、顔を上げさせるとちゅっと触れるだけのキスをした。
でも、それは最初だけでレオナルド殿下は次第に俺に深いキスをするようになった。
ちゅっちゅくっちゅうっ。
キスの音が浴室に響く。くちゅくちゅっと口腔内を掻きまわされて、俺の体はすぐに蕩けてしまう。
「んぁ……レオナルド殿下ぁ」
「セス、今はレオと呼んで」
レオナルド殿下は俺の頬にちゅっとキスをすると俺の腰に手を回して、俺を膝の上に抱きかかえた。
ひょこっと勃ち始めた俺の性器がレオナルド殿下の硬い腹筋についついっと当たる。
うう、恥ずかしい。
なのに、レオナルド殿下は俺をぎゅっと隙間なく抱きしめると俺の首筋に顔を埋めて囁いた。
「セス、愛しているよ」
ドキンッと胸が高鳴る。たった一言で俺の心は満たされ、そして思い知らされるんだ。
俺もこの人をどうしようもなく、もう愛してしまっている事を。
「俺も……俺も好きです。レオ」
俺が心から溢れた思いを告げると、レオナルド殿下は顔を上げて鼻先が触れ合う距離で俺を見つめた。
サファイアの瞳が俺をじっと見つめる。煌めく海の青さみたいな色。その瞳が俺だけを見ている。
恥ずかしい、嬉しい、隠れたい、いつまでも見ていたい。
そんな気持ちが俺の中で入り混じる。でもレオナルド殿下はちゅっと触れ合うだけのキスをすると、本当に嬉しそうな顔をした。
普段では絶対に見る事のない、俺だけしか知らない顔。
俺の中の兎がざわわわわっと毛羽立つ。
……うわーーーんっ、イケメンの微笑み、半端ないよぉぉぉぉっ!
あまりに眩しい笑みに俺はそれだけで心臓が破裂しそうになった。
ドキドキドキドキッ、胸が苦しい。
俺は支えを求めるようにレオナルド殿下の肩に手を置いた。そんな俺のお尻をレオナルド殿下はもみもみと揉み始める。
「あっんぅ」
「セスのお尻は弾力があって気持ちいいね」
レオナルド殿下はふふっと笑って俺の尻を堪能する。でもそうされると俺は変な気分になっちゃう。俺の性器がぴくぴく動いて、快感を得る為にレオナルド殿下の腹筋に擦りつけようと腰が動きそうになる。
……う、がまんっ。
でも、その事に気が付いたのだろう。レオナルド殿下は悶えている俺の耳朶を食み、尋ねた。
「セス、この前みたいに一緒に抜く?」
……この前みたいに。
俺はレオナルド殿下と一緒にこの浴槽で性器を扱かれた事を思い出す。確かにこの前、一緒に抜いたのは気持ち良かった。
でも俺の体はもう知っている、それよりももっと気持ちいい事。
「ぃやだ」
俺は頭をふるふる左右に振って拒否した。そしてレオナルド殿下の肩に置いていた手にぐっと力を籠める。
「今日は……ぃ……ほしぃ」
俺は恥ずかしくって小さい声でレオナルド殿下に強請った。
でもレオナルド殿下は絶対聞こえていたはずなのに俺に問いかけた。
「ん、何? セス」
にこにこと楽しそうな顔で俺に聞く。
うぅっ、絶対聞こえていたはずなのに!
でも言わないと、レオナルド殿下はしてくれなさそうだ。
俺はレオナルド殿下にぎゅっと抱き着いた。こうしたら顔を見ないで言えるから。
「レオ、今日は……挿れて、ほしぃ」
俺がお願いするとレオナルド殿下はぎゅっと俺を抱き締めた。
「ああ、勿論だよ」
レオナルド殿下はそう言うと、早速俺のお尻に手を当てて清浄魔法を使った。一瞬ひやっとする感触に俺は「んん!」と声を上げてしまう。
でもその声を聞いたレオナルド殿下は俺の後孔の縁を指先で弄りながら言った。
「セスの色っぽい声をもっと聞きたい」
「ぁうぅぅぅ~~ぅ」
フェニは温かな湯船の中、俺の膝の上ですっかり疲れ切っていた。そしてその一方で俺達の対面に座るレオナルド殿下はにこにこと楽しそうだ。
そんなレオナルド殿下をフェニはじとっと恨みがましい目で見ている。だが、レオナルド殿下は何のそのだ。
……フェニはすっかり疲れ切っちゃってるな。レオナルド殿下に洗われて、ずっと暴れていたもんなぁ。
俺はさっき見た光景を思い出す。
これまでは俺と雛鳥だったフェニが一緒にお風呂に入って、俺がフェニの体を桶に入れて洗っていた。
でも今日はレオナルド殿下も一緒に入ることになり、フェニの体をレオナルド殿下が洗ったのだ。
『セスは疲れているだろう? 私がしよう』とにこにこ笑顔で。
当然フェニは嫌がったが力の強さではレオナルド殿下に勝てず、フェニはわっしわっしっと頭と体を洗われ、最後には疲れ果ててなされるがままだった。
昨日までは雛鳥のフェニを見るのも嫌そうだったのに、フェニが子供になってから手の平返しがすごい。
レオナルド殿下って実は意外と子供が好きなのかな?
俺はそう思って、胸がツキンッと痛くなる。
……もしもレオナルド殿下が好きな人や子供が欲しいって思ったら、俺は……。
「セス、何考えてるの?」
「え?」
対面に座るレオナルド殿下に声をかけられて、俺は俯いていた顔を上げる。
「何か、思いつめている顔をしているよ?」
「あ、え? そ、そんな顔をしてます?」
どんな顔をしていたんだろう、俺。
「何かあった?」
「え、あ……いや、その、別になんでもないですよ」
俺は嘘を吐いた。だって、こんなことをレオナルド殿下には言えない。言ったら、この優しい人はきっと否定するだろうから。
「そう?」
「はい、何でもないです」
俺は念を押すように誤魔化した。
「セスが何でもないなら、いいんだよ」
レオナルド殿下は微笑んで、下りている前髪を掻き上げた。色っぽい男の仕草に俺はついつい目を奪われてしまう。
……けれど、いつかこの仕草も俺じゃない誰かが見る日が来てしまうのだろうか?
ツキンッと胸が痛くなり、俺の中の兎が『むきゅぅぅぅぅ』と寂し気に鳴く。
「セス、そろそろフェニを風呂から出した方がいいんじゃないだろうか? 溺れそうだよ」
レオナルド殿下に言われて俺はハッと我に返る。俺の膝の上にいるフェニはうとうとっと眠そうにしている。このままではぶくぶくっと溺れてしまいそうだ。
「フェニ、ごめん。そろそろ出ようか」
俺はフェニを抱えて風呂場から出ようとしたが、それをレオナルド殿下が制した。
「私が外に出そう」
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いつかレオナルド殿下が本当の子供を持った時、こんな風にするのかな? って思ったら、心臓がバラバラになってしまいそう。
「……セス、なんて顔してるんだい」
「え?」
俺はレオナルド殿下の声に、顔を上げて見た。するとレオナルド殿下は心配そうな顔で俺を見ていた。
「な、何でもないですよ」
俺は誤魔化した。そんな俺にレオナルド殿下は何も言わず、少し間を置いてから浴槽から出て脱衣所に向かった。
俺は風呂に一人残されるんだ、と膝を抱えて思ったが、レオナルド殿下はドアを開けると外に待機している男の使用人さんを呼んだ。そしてすでにくてんっと眠っているフェニをバスタオルで包むと「フェニに服を着させ、部屋に連れていくようノーベンに言付けてくれ」と預けて頼んだ。
使用人さんは「畏まりました」と答えると眠ったままのフェニを連れて行った。
その後、レオナルド殿下はドアを閉めて、俺の方に振り返った。
「れ、レオナルド殿下?」
俺はぴくっと体を揺らして、俺をじっと見つめるサファイアの瞳に怯える。俺の気持ちの奥まで見透かしてしまいそうな瞳に。
そしてレオナルド殿下は俺を捉えたまま戻ってくると、再び浴槽に入って俺に詰め寄った。
「セス、何か言いたいことがあるんだろう? なんだい?」
「あ、うっ……」
「セス?」
レオナルド殿下の瞳が俺に言う、言うまでここから出さないと。
だから、俺は仕方なくちょっとだけ本当の事を伝えた。
「いや……レオナルド殿下、子供が好きなのかなぁーって、思って。フェニが雛鳥の時にはあんなに嫌ってたのに、子供になった途端、すっごく構うから」
俺が顔を逸らして伝えると、レオナルド殿下は少しの沈黙の後、ふふっと笑った。
……なんで笑い?!
そう思ってレオナルド殿下を見ると、そっと俺に手を伸ばして頬に触れた。
「別に子供が好きってわけじゃないよ。フェニがセスに似ているからだよ」
「え? 俺に??」
俺が尋ねるとレオナルド殿下は「ああ」と答えて、頷いた。そこに嘘はない。
「もしも私が子供好きというなら、きっとジュリアナとアンジェリカに構い倒しているよ」
「あ……確かに」
姪っ子として可愛がってはいるようだったけどそれ以上の感情はないみたいで、レオナルド殿下は王女様達にあまり興味を示していなかった。それを王女達も感じているのか、レオナルド殿下には一線引いていた。俺に構うみたいな気軽さは全くない。
「私は昔からあまり子供が得意ではなくてね」
「そうなんですか? でもフェニは」
「フェニはセスに似ているから。フェニと関わっているとセスの子供の頃を思い出す」
レオナルド殿下は俺の目元をすりすりと親指の腹で優しく撫でる。
なんだか、ぞくぞくする触り方だ。
「でも、そういや子供が得意じゃなかったら、どうして俺が子供の頃、あんなに構ってくれたんです? 王妃様や母さんに頼まれたから?」
俺に構ってくれるレオナルド殿下は記憶の限り、嫌そうにしていなかった。
でもあれは演技だったんだろうか?
小さな不安がぽつっと胸にできる。でもその不安をレオナルド殿下はすぐに吹き飛ばしてくれた。
「セスは特別だよ。実を言うと、リーナや母上に頼まれる前に私が面倒を見ると言っていたんだ」
「え? そうだったんですか?」
知らなかった真実を教えられて俺は驚く。レオナルド殿下は無理やり頼まれたのだと思っていたから。
「でもあの時レオナルド殿下は十八歳で、俺はまだ七歳で……つまんなくなかったですか? 俺の相手」
「そんなことないよ。セスと一緒にいて、私はいつも癒されていたよ。今と同じようにね」
優しく微笑まれて俺は胸がドキッと鳴る。
「お、俺、癒してますか?」
「ああ、傍にいてくれるだけで癒されてる。……でも、もっと癒して欲しい」
レオナルド殿下はそこまで言うと、浴槽の縁に手をかけて俺を囲うように覆い被さった。見上げるとそこには屈強な腕と隆起した体、そして伝わってくる熱と蠱惑的な視線がまっすぐと俺に降り注ぐ。
それだけでも十分許容オーバーだと言うのに、レオナルド殿下は俺の頬に水滴をぽたりっと落としながら耳元で甘く囁いた。
「セスの体でじっくりとね?」
『きゅーーーーーぅっ!』
兎が一際大きく鳴いて、俺の中で暴走し始めた。
待て待て、落ち着けーーーーっ!!
そう兎に言い聞かせるのに、頬が一気に熱くなるのがわかる。胸がドキドキして止まらない。
「セス、癒してくれる?」
「あ、うっ……俺、でよければ」
俺はレオナルド殿下の視線から逃れながら、もごもごと言った。でもレオナルド殿下はしっかりと俺の言葉を聞いていた。
「勿論、セスじゃなければ嫌だよ」
レオナルド殿下はそう言うと俺の顎に手を当てて、顔を上げさせるとちゅっと触れるだけのキスをした。
でも、それは最初だけでレオナルド殿下は次第に俺に深いキスをするようになった。
ちゅっちゅくっちゅうっ。
キスの音が浴室に響く。くちゅくちゅっと口腔内を掻きまわされて、俺の体はすぐに蕩けてしまう。
「んぁ……レオナルド殿下ぁ」
「セス、今はレオと呼んで」
レオナルド殿下は俺の頬にちゅっとキスをすると俺の腰に手を回して、俺を膝の上に抱きかかえた。
ひょこっと勃ち始めた俺の性器がレオナルド殿下の硬い腹筋についついっと当たる。
うう、恥ずかしい。
なのに、レオナルド殿下は俺をぎゅっと隙間なく抱きしめると俺の首筋に顔を埋めて囁いた。
「セス、愛しているよ」
ドキンッと胸が高鳴る。たった一言で俺の心は満たされ、そして思い知らされるんだ。
俺もこの人をどうしようもなく、もう愛してしまっている事を。
「俺も……俺も好きです。レオ」
俺が心から溢れた思いを告げると、レオナルド殿下は顔を上げて鼻先が触れ合う距離で俺を見つめた。
サファイアの瞳が俺をじっと見つめる。煌めく海の青さみたいな色。その瞳が俺だけを見ている。
恥ずかしい、嬉しい、隠れたい、いつまでも見ていたい。
そんな気持ちが俺の中で入り混じる。でもレオナルド殿下はちゅっと触れ合うだけのキスをすると、本当に嬉しそうな顔をした。
普段では絶対に見る事のない、俺だけしか知らない顔。
俺の中の兎がざわわわわっと毛羽立つ。
……うわーーーんっ、イケメンの微笑み、半端ないよぉぉぉぉっ!
あまりに眩しい笑みに俺はそれだけで心臓が破裂しそうになった。
ドキドキドキドキッ、胸が苦しい。
俺は支えを求めるようにレオナルド殿下の肩に手を置いた。そんな俺のお尻をレオナルド殿下はもみもみと揉み始める。
「あっんぅ」
「セスのお尻は弾力があって気持ちいいね」
レオナルド殿下はふふっと笑って俺の尻を堪能する。でもそうされると俺は変な気分になっちゃう。俺の性器がぴくぴく動いて、快感を得る為にレオナルド殿下の腹筋に擦りつけようと腰が動きそうになる。
……う、がまんっ。
でも、その事に気が付いたのだろう。レオナルド殿下は悶えている俺の耳朶を食み、尋ねた。
「セス、この前みたいに一緒に抜く?」
……この前みたいに。
俺はレオナルド殿下と一緒にこの浴槽で性器を扱かれた事を思い出す。確かにこの前、一緒に抜いたのは気持ち良かった。
でも俺の体はもう知っている、それよりももっと気持ちいい事。
「ぃやだ」
俺は頭をふるふる左右に振って拒否した。そしてレオナルド殿下の肩に置いていた手にぐっと力を籠める。
「今日は……ぃ……ほしぃ」
俺は恥ずかしくって小さい声でレオナルド殿下に強請った。
でもレオナルド殿下は絶対聞こえていたはずなのに俺に問いかけた。
「ん、何? セス」
にこにこと楽しそうな顔で俺に聞く。
うぅっ、絶対聞こえていたはずなのに!
でも言わないと、レオナルド殿下はしてくれなさそうだ。
俺はレオナルド殿下にぎゅっと抱き着いた。こうしたら顔を見ないで言えるから。
「レオ、今日は……挿れて、ほしぃ」
俺がお願いするとレオナルド殿下はぎゅっと俺を抱き締めた。
「ああ、勿論だよ」
レオナルド殿下はそう言うと、早速俺のお尻に手を当てて清浄魔法を使った。一瞬ひやっとする感触に俺は「んん!」と声を上げてしまう。
でもその声を聞いたレオナルド殿下は俺の後孔の縁を指先で弄りながら言った。
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