殿下、俺でいいんですか!?

神谷レイン

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殿下、どうしたんですか??

0 王妃様に届いた手紙

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 夏も終わりかけの季節。
 ある長閑な昼前、王妃の元に一通の手紙が届いた。

「王妃様、こちらにお手紙が」

 カレンの従者は、お盆に乗っている手紙を差し出した。

「あら、誰からかしら?」

 王妃であるカレンは優雅な手つきで手紙を受け取り、差出人を見た。

「まあ、リーナからだわ! 久しぶりね」

 カレンは笑顔を見せ、親友からの手紙にうきうきとした様子で封を切った。
 カレンはリーナが旅に出てから、こうした手紙のやり取りをずっとしていた。リーナは旅の事を書き、カレンはセスの事を書いて。
 そして今回はどんな旅の事が書いてあるのだろう? と便箋を取り出してワクワクしながら内容を読むと、そこには思わぬ事が書いてあった。

『親愛なるカレンへ
 元気にしていますか? こちらは相変わらずです。
 ところで近々、国に帰ります。勿論、セスの結婚の件で。
 一応知らせておこうと思ってこの手紙を送りましたが、もしかしたら手紙が着く頃には私達も国に戻っているかもしれません。私達がそちらに着くのは、恐らくコスコスの花が咲く時期だと思います。会えることを楽しみにしています。貴方の友、リーナより』

 手紙にはそう書いてあった。

 ……コスコスの花が咲く時期?

 カレンは心の中で呟き、部屋に飾られている花瓶に目を向ける。そこには今朝、城の庭で咲いたばかりのコスコスの花が活けられていた。

「大変! セスを呼んで頂戴!」

 カレンが従者に言った時、ちょうどそこへ使用人がやってきた。

「王妃様、門の前にセス様のご両親様が来たと報告が」
「まあ、もう!? セスを呼んで、門へ迎えに行かせなさい!」

 カレンが言うと使用人は「はい」と返事をして、そのまま駆け足で去って行った。
 そして、カレンは従者に視線を向ける。

「この後は予定があったわね」
「はい、この後は、先日学園で優秀な成績を修めたご令嬢たちのお目通りとお茶会、夕方には女性健康促進会のご婦人方との会食です」

 どちらとも一カ月前から予定が組まれていた外せない面会だ。

「リーナに会いたかったけれど、今日は無理そうね」

 カレンはため息交じりに残念そうに呟いた。けれど王妃という重い立場から、身勝手な事は出来ない。

「明日なら、ご予定を空けることが可能です」
「お願い。あと陛下にも声をかけておいて……まあ陛下は急に予定を空けることは無理でしょうけれど」
「はい、畏まりました」

 従者はそう言った後、ちらりとカレンに視線を向けた。

「ところでレオナルド殿下にご連絡しなくて、よいのですか?」
「ああ、しなくても大丈夫でしょう」

 どうせ、連絡しなくてもリーナ達はレオナルドの元に行くでしょう。その為に、今回は帰ってきたようなものでしょうし……。

 カレンは「ふぅ」と小さく息を吐いた。

 レオナルド、ちゃんと認めてもらえるかしら? リーナは大丈夫だとは思うけれど、セスの父親の方が……ね。

 そう思いつつカレンは小さく呟き、コスコスの花を見つめた。

「頑張るのよ、レオナルド」






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 お気に入り、そして感想をくださった読者様、ありがとうございます!
 まさか、こんなにお気に入りに登録して頂けると思っていなかったので、未だにびっくりしております。
 本当に感謝です。

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