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殿下、何してるんですか!?
12 従者の苦言
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レオナルド視点のお話です。
**************
ノース王国の末王子が帰国して数日後。
「殿下、またセス君を覗いているんですか?」
執務室、問いかけたのは私の従者ノーベンだった。ノーベンは私より五つほど年上で、私が十五歳の時から従者として勤めてくれている。
なので私がセスを求め、唆して結婚をした事を知る数少ない人物の一人だ。
ノーベンは頭も切れ、察しも良く、口も堅いので信頼を置いている。
「覗いているとは失礼だな。セスを見ているだけだろう?」
「それを覗いているというのです」
ノーベンは小さくため息をついて呆れたような目で私を見た。私はただ望遠鏡で薬科室にいるセスを見ているだけなのに。
ああ、今日もセスは可愛らしい。
「それにしても、反省していらっしゃるのですか?」
ノーベンが苦言を呈すように私に聞いてきた。それは私に説教をする時の声色で、私は望遠鏡から目を離し「何がだ?」とノーベンに尋ね返した。
ここでちゃんと聞かないと何時間も説教されることになるからだ。
「セシル様の事ですよ!」
「セシル様?」
私は何かセシル様に対して反省するような事をしただろうか?
その想いが顔に出ていたのか、ノーベンは私に告げた。
「殿下がセシル様に思わせぶりなことをしたから、今回のような事が起こったのですよ! 少しは反省なさい!」
「ああ、なんだその事か」
私はノーベンが何を言いたいのかわかって呟いた。
「別に思わせぶり、というか。少し試したかっただけなんだがな」
私はセシル様を思い返す。
実は去年ノース王国に行った時、私はセシル様に幼いセスにした事と同じ事をしたのだ。
花束を贈り、クッキーやお菓子を差し上げ、事ある毎にセシル様をお茶に誘ったりした。
なぜ、好きでもない相手にそんな事をしたのか? というと。これでセシル様が私に惚れるかどうか試したかったからだ。
その頃の私は、セスが全然私に惚れてくれなくて、もしかして私の今までのやり方がいけないんじゃないか? と疑問に思っていたのだ。
だから試したかった、他の子にすればどうなるのか。
そこで私はセシル様を選び、セスにした事と同じ事をセシル様にした。試す相手をセシル様に選んだ理由は他国に住んでいるし、相手も王族だから。面倒な事にならないと考えての事だった。
そして試した結果は見るも明らか。セシル様は私にすぐ懐き、好意を持つようになった。
それをみて私は、私のやり方は間違っていなかったのか、と再確認し、帰国の途に着いた。セシル様には『行かないで』と、その時大分泣かれてしまったが。
……しかし、まさかうちの国に来るとはな。セスもこれぐらい私を好きになってくれたらいいのに。
私は腕を組み、もう帰国したセシル様を思い返す。
セシル様が来るのは実はセスがセシル様に会うより先に国王から聞いていた。だから、私はセスにセシル様の事を先に伝えておくこともできた。
『ノース王国から近々末子の王子が来訪されるよ。十歳の黒豹獣人の少年だ』と。
でも私はそれをしなかった。
なぜなら、セシル様はセスにちょうどいい当て馬だと思ったからだ。
セスは私と結婚したが、私に愛があるか? と言われれば、まだまだ薄い。私はもっとセスに愛して欲しかった。
それには何か刺激が必要だ。恋愛小説然り、ハプニングがなければ愛は深まらない。
そこに、ちょうどいいタイミングで現れた恋敵役のセシル様。
……人は誰かに自分のものを奪われればそれに執着する。私をセシル様に取られるとなれば、セスも少しは執着を見せてくれるかもしれない。
そう思った私はセスがセシル様の正体が十歳の黒豹獣人であることをすっかり忘れているのを何気ない会話の内で確認し、その後『大きくなったら考えてあげますよ』とセシル様がセスに会うより前に王の執務室で拝謁して、お得意の変身魔法で大人の姿になるよう唆した。
私が十歳の少年に迫られてもセスは焦らないだろうと判断したからだ。
あとは仕事が忙しいと言ってセスと少し距離を置き、セスが廊下を通りかかった所でセシル様と楽しく話して、頭を撫でた。勿論、セシル様には思わせぶりな態度を示して。
おかげでセスは嫉妬し、寝込みを襲うような事までした。今まででは考えられないほどの進展ぶりだ。
……あの時のセスは可愛かったなぁ。ぽろぽろ泣いて。
私は思い出し、思わずほくそ笑む。そんな私にノーベンは心底呆れた眼差しを向けた。
「何を笑ってらっしゃるんですか、全く。反省なさいと言っているのに……。無駄に怪我までして」
ノーベンはそう言って私の右手をちらりと見た。
セシル様に切られた右手、今ではすっかり傷もなく綺麗に治っている。全てセスのおかげだ、だが……。
「現騎士団長と同等の方が、子供からナイフを奪うことなど造作もない事でしょうに」
まさにノーベンの言う通りだった。
私は本当はあの時、簡単に避けられたし、セシル様のナイフを奪う事は容易にできた。でも自らナイフに切られに行ったのだ。
私を傷つけられたら、セスがどういう反応をするのか見たくて。
結果、普段温厚なセスが私の為に怒り、傷を心配してくれた。あの時、私は内心嬉しくて、喜びを表に出さないよう大変だった。
だって切られて喜ぶなんておかしいだろう?
そして翌日は、手が痛いと嘘を吐いてセスを膝に乗せ、朝食を食べさせてもらった。あの時間はとても有意義なものだった。もっと深い傷を負っておけば良かったかもしれない、と思うほど。
だがその後、セシル様が謝りに来られて、セスが言った言葉には胸をぐさりと刺されるものがあった。
……好きな人には誠実でいなければならない、か。それならば私はセスにとって誠実ではないだろう。多くの嘘を吐いているから。……でも、私はセスに嘘を吐いてでもセスを手に入れたい。身も心も……。だから決して嘘が露見してはならない。嘘だとわからない内は、それは本当なのだから。
「それにしても、セシル様をセス君に会わせて良かったのですか?」
ノーベンは窺うように私に尋ねた。
まるで、セスにセシル様を会わせてはいけないような口ぶりだ。
「どうして、そう思うんだ?」
私が尋ねるとノーベンは、”あ、こいつ気が付いてない”という顔を見せた。
「セシル様を見ていて、なんとも思わないんですか?」
「……何がだ?」
少々生意気だが、行動力のある将来有望な少年だと思うが?
私はそんな風に思っていたがノーベンは違っていた。
「気が付いていらっしゃらないんですね。……セシル様は貴方にそっくりですよ」
「……私に?」
思わぬ言葉に私は驚いた。
「ええ、生意気なところも少々強引なところも、能力の高さもね」
ノーベンに言われてみれば、確かにそうかもしれない。しかしそれがなぜ、セスと会わせて良かったのか? という疑問になるんだ?
いまいちわかっていない私が視線で問いかけるとノーベンはハッキリと告げた。
「つまりセシル様がセス君の事を好きになってしまうのでは? と言っているんです」
「セシル様が?」
「そうです。あの一件からセシル様はセス君の事を大分気に入っていましたし、セス君が言う事はちゃんと聞いていました。殿下の元に来るよりも、長い時間セス君と過ごしていたのでは?」
ノーベンに言われてみれば確かに……。自分の方に好意を持っていると思っていたし、子供だからとあまり気にしていなかったが。
私は思い返して、ノーベンの言葉に納得する。
「セス君は優しいですが叱る時はちゃんと叱る事ができる人です、それは誰に対しても。甘やかされて育ったセシル様には新鮮に映ったでしょう。あとセシル様の殿下に向ける好きは、憧れのようなものだとご自身でも気が付いていらっしゃったのでは?」
ノーベンの言う通りだ。
セシル様は私の事を好きだと言ってはくれたが、それは大人の男に対する憧れみたいなものだ。それを愛と勘違いしている事はわかっていた。
だが……。
「セシル様がセスに向ける好意は違うと?」
「まだセシル様自身、気が付いていらっしゃらないと思いますがね」
ノーベンの言葉に私は顔を顰める。
セス本人は気が付いていないが、あの性格からかセスは人に好かれることが多い。セスの悪口を言うのはセスを知らない者だけだ。まあ、そういう輩はセスの耳に届く前に私が抹殺してきた。セスは誰も自分の悪口を言わない事に不審がっていたが。
私はいい当て馬だとセシル様をセスに近づけたが……もしかして余計な事をしてしまったのか?
一抹の不安が胸を過ぎる。
いや、しかし私はセスともう結婚しているのだ。何があっても離さない、それだけだ。……それにノーベンの思い過ごしかもしれないしな。
私はそう思い直す。
一方、その頃の薬科室では。
「へっぷし、へっぷし!」
「なんだ? セス、二回もくしゃみして」
くしゃみを二回したら、ウィギー薬長に声をかけられた。
風邪でも引いたか? と俺は思ったが、薬長は「誰かが噂してるのかもしれないな」と笑って言った。
俺の噂? 誰が?
俺は首を傾げながらも、目の前にある植木鉢を見つめた。
そこにはぴょこっと小さな双葉が生えている。セシル様がくれた種に芽が出たのだ。
……大きく育つといいなぁ。
俺は能天気に窓から入り込むぽかぽか陽気の中、小さな芽に笑みを綻ばせた。
だが十年後、すっかり大人になったセシル様が最強魔術師になり、俺に求婚する未来をこの時の俺もレオナルド殿下もまだ知らなかったのだったーーーー。
おわり
***あとがき***
本日までお付き合い頂き、ありがとうございました。
続編「殿下、何してるんですか!?」はいかがでしたか?
楽しんでいただけたなら幸いです。
次話のおまけの「王妃様からのお呼び出し!」も楽しんでいただけると嬉しいです。
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ノース王国の末王子が帰国して数日後。
「殿下、またセス君を覗いているんですか?」
執務室、問いかけたのは私の従者ノーベンだった。ノーベンは私より五つほど年上で、私が十五歳の時から従者として勤めてくれている。
なので私がセスを求め、唆して結婚をした事を知る数少ない人物の一人だ。
ノーベンは頭も切れ、察しも良く、口も堅いので信頼を置いている。
「覗いているとは失礼だな。セスを見ているだけだろう?」
「それを覗いているというのです」
ノーベンは小さくため息をついて呆れたような目で私を見た。私はただ望遠鏡で薬科室にいるセスを見ているだけなのに。
ああ、今日もセスは可愛らしい。
「それにしても、反省していらっしゃるのですか?」
ノーベンが苦言を呈すように私に聞いてきた。それは私に説教をする時の声色で、私は望遠鏡から目を離し「何がだ?」とノーベンに尋ね返した。
ここでちゃんと聞かないと何時間も説教されることになるからだ。
「セシル様の事ですよ!」
「セシル様?」
私は何かセシル様に対して反省するような事をしただろうか?
その想いが顔に出ていたのか、ノーベンは私に告げた。
「殿下がセシル様に思わせぶりなことをしたから、今回のような事が起こったのですよ! 少しは反省なさい!」
「ああ、なんだその事か」
私はノーベンが何を言いたいのかわかって呟いた。
「別に思わせぶり、というか。少し試したかっただけなんだがな」
私はセシル様を思い返す。
実は去年ノース王国に行った時、私はセシル様に幼いセスにした事と同じ事をしたのだ。
花束を贈り、クッキーやお菓子を差し上げ、事ある毎にセシル様をお茶に誘ったりした。
なぜ、好きでもない相手にそんな事をしたのか? というと。これでセシル様が私に惚れるかどうか試したかったからだ。
その頃の私は、セスが全然私に惚れてくれなくて、もしかして私の今までのやり方がいけないんじゃないか? と疑問に思っていたのだ。
だから試したかった、他の子にすればどうなるのか。
そこで私はセシル様を選び、セスにした事と同じ事をセシル様にした。試す相手をセシル様に選んだ理由は他国に住んでいるし、相手も王族だから。面倒な事にならないと考えての事だった。
そして試した結果は見るも明らか。セシル様は私にすぐ懐き、好意を持つようになった。
それをみて私は、私のやり方は間違っていなかったのか、と再確認し、帰国の途に着いた。セシル様には『行かないで』と、その時大分泣かれてしまったが。
……しかし、まさかうちの国に来るとはな。セスもこれぐらい私を好きになってくれたらいいのに。
私は腕を組み、もう帰国したセシル様を思い返す。
セシル様が来るのは実はセスがセシル様に会うより先に国王から聞いていた。だから、私はセスにセシル様の事を先に伝えておくこともできた。
『ノース王国から近々末子の王子が来訪されるよ。十歳の黒豹獣人の少年だ』と。
でも私はそれをしなかった。
なぜなら、セシル様はセスにちょうどいい当て馬だと思ったからだ。
セスは私と結婚したが、私に愛があるか? と言われれば、まだまだ薄い。私はもっとセスに愛して欲しかった。
それには何か刺激が必要だ。恋愛小説然り、ハプニングがなければ愛は深まらない。
そこに、ちょうどいいタイミングで現れた恋敵役のセシル様。
……人は誰かに自分のものを奪われればそれに執着する。私をセシル様に取られるとなれば、セスも少しは執着を見せてくれるかもしれない。
そう思った私はセスがセシル様の正体が十歳の黒豹獣人であることをすっかり忘れているのを何気ない会話の内で確認し、その後『大きくなったら考えてあげますよ』とセシル様がセスに会うより前に王の執務室で拝謁して、お得意の変身魔法で大人の姿になるよう唆した。
私が十歳の少年に迫られてもセスは焦らないだろうと判断したからだ。
あとは仕事が忙しいと言ってセスと少し距離を置き、セスが廊下を通りかかった所でセシル様と楽しく話して、頭を撫でた。勿論、セシル様には思わせぶりな態度を示して。
おかげでセスは嫉妬し、寝込みを襲うような事までした。今まででは考えられないほどの進展ぶりだ。
……あの時のセスは可愛かったなぁ。ぽろぽろ泣いて。
私は思い出し、思わずほくそ笑む。そんな私にノーベンは心底呆れた眼差しを向けた。
「何を笑ってらっしゃるんですか、全く。反省なさいと言っているのに……。無駄に怪我までして」
ノーベンはそう言って私の右手をちらりと見た。
セシル様に切られた右手、今ではすっかり傷もなく綺麗に治っている。全てセスのおかげだ、だが……。
「現騎士団長と同等の方が、子供からナイフを奪うことなど造作もない事でしょうに」
まさにノーベンの言う通りだった。
私は本当はあの時、簡単に避けられたし、セシル様のナイフを奪う事は容易にできた。でも自らナイフに切られに行ったのだ。
私を傷つけられたら、セスがどういう反応をするのか見たくて。
結果、普段温厚なセスが私の為に怒り、傷を心配してくれた。あの時、私は内心嬉しくて、喜びを表に出さないよう大変だった。
だって切られて喜ぶなんておかしいだろう?
そして翌日は、手が痛いと嘘を吐いてセスを膝に乗せ、朝食を食べさせてもらった。あの時間はとても有意義なものだった。もっと深い傷を負っておけば良かったかもしれない、と思うほど。
だがその後、セシル様が謝りに来られて、セスが言った言葉には胸をぐさりと刺されるものがあった。
……好きな人には誠実でいなければならない、か。それならば私はセスにとって誠実ではないだろう。多くの嘘を吐いているから。……でも、私はセスに嘘を吐いてでもセスを手に入れたい。身も心も……。だから決して嘘が露見してはならない。嘘だとわからない内は、それは本当なのだから。
「それにしても、セシル様をセス君に会わせて良かったのですか?」
ノーベンは窺うように私に尋ねた。
まるで、セスにセシル様を会わせてはいけないような口ぶりだ。
「どうして、そう思うんだ?」
私が尋ねるとノーベンは、”あ、こいつ気が付いてない”という顔を見せた。
「セシル様を見ていて、なんとも思わないんですか?」
「……何がだ?」
少々生意気だが、行動力のある将来有望な少年だと思うが?
私はそんな風に思っていたがノーベンは違っていた。
「気が付いていらっしゃらないんですね。……セシル様は貴方にそっくりですよ」
「……私に?」
思わぬ言葉に私は驚いた。
「ええ、生意気なところも少々強引なところも、能力の高さもね」
ノーベンに言われてみれば、確かにそうかもしれない。しかしそれがなぜ、セスと会わせて良かったのか? という疑問になるんだ?
いまいちわかっていない私が視線で問いかけるとノーベンはハッキリと告げた。
「つまりセシル様がセス君の事を好きになってしまうのでは? と言っているんです」
「セシル様が?」
「そうです。あの一件からセシル様はセス君の事を大分気に入っていましたし、セス君が言う事はちゃんと聞いていました。殿下の元に来るよりも、長い時間セス君と過ごしていたのでは?」
ノーベンに言われてみれば確かに……。自分の方に好意を持っていると思っていたし、子供だからとあまり気にしていなかったが。
私は思い返して、ノーベンの言葉に納得する。
「セス君は優しいですが叱る時はちゃんと叱る事ができる人です、それは誰に対しても。甘やかされて育ったセシル様には新鮮に映ったでしょう。あとセシル様の殿下に向ける好きは、憧れのようなものだとご自身でも気が付いていらっしゃったのでは?」
ノーベンの言う通りだ。
セシル様は私の事を好きだと言ってはくれたが、それは大人の男に対する憧れみたいなものだ。それを愛と勘違いしている事はわかっていた。
だが……。
「セシル様がセスに向ける好意は違うと?」
「まだセシル様自身、気が付いていらっしゃらないと思いますがね」
ノーベンの言葉に私は顔を顰める。
セス本人は気が付いていないが、あの性格からかセスは人に好かれることが多い。セスの悪口を言うのはセスを知らない者だけだ。まあ、そういう輩はセスの耳に届く前に私が抹殺してきた。セスは誰も自分の悪口を言わない事に不審がっていたが。
私はいい当て馬だとセシル様をセスに近づけたが……もしかして余計な事をしてしまったのか?
一抹の不安が胸を過ぎる。
いや、しかし私はセスともう結婚しているのだ。何があっても離さない、それだけだ。……それにノーベンの思い過ごしかもしれないしな。
私はそう思い直す。
一方、その頃の薬科室では。
「へっぷし、へっぷし!」
「なんだ? セス、二回もくしゃみして」
くしゃみを二回したら、ウィギー薬長に声をかけられた。
風邪でも引いたか? と俺は思ったが、薬長は「誰かが噂してるのかもしれないな」と笑って言った。
俺の噂? 誰が?
俺は首を傾げながらも、目の前にある植木鉢を見つめた。
そこにはぴょこっと小さな双葉が生えている。セシル様がくれた種に芽が出たのだ。
……大きく育つといいなぁ。
俺は能天気に窓から入り込むぽかぽか陽気の中、小さな芽に笑みを綻ばせた。
だが十年後、すっかり大人になったセシル様が最強魔術師になり、俺に求婚する未来をこの時の俺もレオナルド殿下もまだ知らなかったのだったーーーー。
おわり
***あとがき***
本日までお付き合い頂き、ありがとうございました。
続編「殿下、何してるんですか!?」はいかがでしたか?
楽しんでいただけたなら幸いです。
次話のおまけの「王妃様からのお呼び出し!」も楽しんでいただけると嬉しいです。
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