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殿下、何してるんですか!?
2 美男子王子の登場
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それから休み明けの日。
「セス、この薬科湿布を陛下に持っていってくれないか? 最近腰を痛めたらしくてな」
ウィギー薬長は俺にそう言って、腰に効く薬科湿布がたくさん入った紙袋を渡した。
「わかりました。陛下は執務室ですか?」
「ああ、今日一日中いると聞いている」
「では、渡して来ますね」
「よろしく頼むよ」
ウィギー薬長の言葉に、俺はこくりと頷き、陛下のいる執務室に向かった。
……陛下が腰を痛めるなんて何をしたんだろー?
俺はそんな事を能天気に考えながら廊下を歩いた。
しかし、しばらく歩いて執務室の手前近くまで来ると、廊下の向こうから俺より少し年上かな? ってくらいの青年が歩いてくることに気が付いた。
綺麗にカールされた黒の巻き髪に、切れ長の琥珀色の瞳。シュッとした顔には高すぎない鼻と薄い唇。身長は俺と同じぐらいの175㎝ぐらいだろうか。レオナルド殿下とはまた違ったイケメンがそこにいた。
レオナルド殿下が竜と戦う勇ましい王子なら、彼は人魚や妖精に恋されそうな王子様だ。
うわぁ美男子だな~、と思わず俺は呟いてしまいそうなる。それくらい美形だった。
でも、その青年はその顔にこの国のものではない貴族の服を着ていた。
他国から来たのかなぁ?
自国のものではない貴族の正装をしている青年に俺は少し物珍しさからまじまじと見てしまった。でも俺が見ていると、その青年は俺に気が付き、まっすぐに俺に向かってきた。
ひぇ!? 俺が見てた事に文句でもっ!?
そう思ったのだが、青年は俺の前までずかずかと歩いてくると俺の前で立ち止まった。
「お前、セス・ダンウィッカーを知っているか?」
顔に似合った低い声で聞かれたが、俺は思いもよらぬことを聞かれ「へ?」と間抜けな声を出した。
俺に何か御用で? ……でも俺、この人知らないんだけど。
俺は心の中で呟いたが、勿論青年には聞こえていない訳で。
「セス・ダンウィッカーを知っているか?」
もう一度尋ねられた。これは素直に答えるべきなのだろうか……でも、嘘を吐いて後でばれたら大変そう。
「お……俺……ですけど」
俺は正直に答えた。すると青年は驚いた顔を見せた。
「お前がセス・ダンウィッカー?」
「はい」
「本当に?」
「はい」
「嘘じゃないだろうな」
「はい、本当です」
「……嘘だろ」
おい! 本当だって言ってるだろッ!!
一向に信じない青年に俺はイラっとして、俺は腰に下げている身分証明を見せた。
「俺です! ほら、ここに名前が書いてあるでしょ!」
身分証明は警備と安全の為、王宮で働く以上持ち歩かなければならない。身分証明には小さな木札に名前と所属、国の紋章、そして同じものが複製できないよう高等魔法がかけられている。
確固たる証明に、さすがの青年も俺がセス・ダンウィッカーだと納得したようで「本当なのか」と驚いた顔を見せた。
だから、最初から俺だって言っているのに! 全く~。
俺はそう思ったけれど、はて? この青年は俺に何の用だろう? その前になんで俺の事を? と疑問に思った。
しかし、俺が尋ねる前に青年は俺を上から下までジロジロと品定めするように見ると、その後すぐに「ふーん、お前がねぇ?」と鼻で笑った。
え? 今、俺、鼻で笑われました? なぜに??
今までこんな対応をされた事がないので、俺はぱちくりと目を瞬かせた。でもそんな俺に青年は口を開いた。
「こんなちんちくりんがレオナルド様の結婚相手だとは。平民だって聞いてたけれど、こんなにパッとしない、平凡なひょろ男だなんて!」
青年は腰に手を当てて、俺に向かって堂々と言い放った。
「ひょ、ひょろ男……」
まさか、こんな風に面と向かって悪口を言われると思っていなかったので俺は驚いた。
「そうだ! なんだ、自分はレオナルド殿下に相応しいとでも思っていたのか?」
青年はフンッと鼻を鳴らして笑った。
酷いことを言われて、少し傷つく。
でも、その一方で俺は妙な安心感を感じていた。
そ、そうだよな?! 俺ってやっぱりレオナルド殿下の相手には変だよな?! あー、良かった! レオナルド殿下に毎日可愛い、素敵、かっこいいよ、なんて言われるし、みんな何も言わないから、本当にそうなのかな? って勘違いしそうになっていたけど、やっぱり俺って平凡だよなぁ~!
俺は自分の美意識が正しくて、安心した。
危ない危ない、ちょっと間違えたら、ただの痛い勘違い野郎になっているところだった。
「聞いているのか! この平凡!」
何も答えない俺に苛立ったのか、青年はむっとした顔で俺を睨みつけた。
あ、ブサイクじゃなくてよかった。
悪口を言われているのに、ほっとした俺は普通に「聞いてますよ」と答えた。そんな俺に青年は更に苛立ったように、顔を少し赤くした。
「お前みたいな平凡、レオナルド様には相応しくない! どうやって取り入ったのか知らないけれど、さっさと離婚しろ!」
青年は俺を指さしてハッキリと言った。ここまで言われると最早清々しい。俺は青年のあまりの潔さに感動すら覚えていた。
……しかし離婚しろと言われてもなぁ、この前結婚したばかりだし。俺一人で離婚できるわけじゃないし。
そんな事を思っていると、そこにパタパタっと青年の従者らしき三人組が駆け寄ってきた。そしてがしっと青年の腕を掴む。
「王子! こんなところに!」
「ご勝手に歩かれては困ります」
「行きますよ!」
「おい、放せ!」
青年は叫んだが、彼らは無視して連行するように連れて行った。けれど、青年は俺を見て「離婚しろ!」と捨て台詞を吐いていった。
……うーん、今のは何だったんだろう? 嵐に遭ったみたい。しかし一人の王子に三人も従者って多いな。
俺はそう思いつつも、手に持っている薬科湿布を思い出し、陛下の元へトコトコ歩いて向かった。
「すまんな、セス。事務仕事続きで腰をやられてな」
陛下は執務室の椅子に座って、書類の山の間から俺に言った。
「いえ、お持ちすることぐらいなんでもありませんよ。なんなら、お貼りしましょうか?」
「いや、いい。そんな事をお前にさせたらレオナルドに何をされるか」
俺が陛下の背中に薬科湿布を貼ったら、レオナルド殿下が何をするって言うんだ?
俺はわからなくて首を傾げたが、そんな俺に陛下はちらりと視線を向けた。
「ところで、セス。ここに来る途中、誰かに会わなかったか?」
「誰か?」
ん? 誰だろう?
「黒髪の巻き毛の子とか」
黒髪の巻き毛……ああ、あの青年か!
まさか陛下に聞かれると思っていなかったので、すぐには思い出せなかった。というか、ここにくるまでにすっかり忘れていた。
「あ、ああ! 会いましたよ? それが何か?」
どっかの王子っぽいけど、あの青年がどうしたって言うんだろう?
「何か言ってなかったか? レオナルドの事とか」
「レオナルド殿下の事ですか? うーん、それよりも俺に文句を言っていましたけど。俺がレオナルド殿下に相応しくないとか。まあ、文句というか事実ですけど」
俺が何気なく言うと、陛下は机の上で両手を組み、困ったように大きなため息を「はぁーっ」と吐いた。
「すまないな、セス。彼はノース王国の末王子なんだが、昔からレオナルドにご執心でな。今回、見聞を広めるということで今日からうちにきたんだが……あれはきっとお前達を別れさせるために来たんだ」
陛下に言われて、俺は彼の態度を思い出して納得する。
「彼はレオナルド殿下が好きなんですね。なるほど」
まあ、レオナルド殿下を好きになるってわかるなぁ。あんなにかっこよくて、優しいんだから。その上、床上手……うっ、これ以上考えると俺の息子が元気になっていまう。やめようやめよう。でも……むしろ今までああいう人がいない事の方が不思議だったんだよなー。だから、いて当然というか。
そう思いつつ、ノース王国と聞いて俺は北にある国を思い出す。
ノース王国はここよりずっと寒冷地で、獣人が住んでいると聞いている。
確か、ノース王国の王族も獣人だったはず……じゃあ彼もそうなのかな?
獣人は人の姿にも獣の姿にもなれると聞いている。魔力も高いと聞くけど。
「とにかく、セスに近寄らないようにするが、何かあればすぐに私かレオナルドに言いなさい」
俺が思い出していると、陛下は心配そうに俺に告げた。
何かあればって何があるんだろう? まさか恋愛小説とかに出てくる主人公の恋敵的な嫌がらせとかしてくるんだろうか? それよりノース王国の末王子か……なんだろ? 何か違和感が……?
うーん、と考えていると陛下は大丈夫か? というような目で俺を見てきたが、それ以上は何も言わなかった。でも別の事は聞いてきた。
「ところで、レオナルドとはどうだ?」
「殿下、とですか? いつも良くしてもらっていますよ?」
「その……色々と大丈夫か?」
陛下は窺うように俺に尋ねた。何が大丈夫だというんだろうか? それに色々って??
「大丈夫ですよ?」
俺が答えると陛下はほっとした顔を見せた。
「そうか。……まだ大丈夫か。いや、しかし、ゆくゆくは監禁」
陛下はぶつぶつと呟き、俺が「陛下?」と呼びかけるとハッと顔を上げた。
「いや、なんでもない。お前とレオナルドが仲がいいならいいんだ」
「?」
「レオナルドの事、よろしく頼むぞ。セス」
よろしく頼むと言われても、俺の方が面倒を見て貰っていますけど。
「は、い?」
俺は首を傾げながら、一応返事をしておいた。
****あとがき****
書き忘れていましたが、続編は全12話となってます。
最後までお付き合いいただければ、幸いです。
「セス、この薬科湿布を陛下に持っていってくれないか? 最近腰を痛めたらしくてな」
ウィギー薬長は俺にそう言って、腰に効く薬科湿布がたくさん入った紙袋を渡した。
「わかりました。陛下は執務室ですか?」
「ああ、今日一日中いると聞いている」
「では、渡して来ますね」
「よろしく頼むよ」
ウィギー薬長の言葉に、俺はこくりと頷き、陛下のいる執務室に向かった。
……陛下が腰を痛めるなんて何をしたんだろー?
俺はそんな事を能天気に考えながら廊下を歩いた。
しかし、しばらく歩いて執務室の手前近くまで来ると、廊下の向こうから俺より少し年上かな? ってくらいの青年が歩いてくることに気が付いた。
綺麗にカールされた黒の巻き髪に、切れ長の琥珀色の瞳。シュッとした顔には高すぎない鼻と薄い唇。身長は俺と同じぐらいの175㎝ぐらいだろうか。レオナルド殿下とはまた違ったイケメンがそこにいた。
レオナルド殿下が竜と戦う勇ましい王子なら、彼は人魚や妖精に恋されそうな王子様だ。
うわぁ美男子だな~、と思わず俺は呟いてしまいそうなる。それくらい美形だった。
でも、その青年はその顔にこの国のものではない貴族の服を着ていた。
他国から来たのかなぁ?
自国のものではない貴族の正装をしている青年に俺は少し物珍しさからまじまじと見てしまった。でも俺が見ていると、その青年は俺に気が付き、まっすぐに俺に向かってきた。
ひぇ!? 俺が見てた事に文句でもっ!?
そう思ったのだが、青年は俺の前までずかずかと歩いてくると俺の前で立ち止まった。
「お前、セス・ダンウィッカーを知っているか?」
顔に似合った低い声で聞かれたが、俺は思いもよらぬことを聞かれ「へ?」と間抜けな声を出した。
俺に何か御用で? ……でも俺、この人知らないんだけど。
俺は心の中で呟いたが、勿論青年には聞こえていない訳で。
「セス・ダンウィッカーを知っているか?」
もう一度尋ねられた。これは素直に答えるべきなのだろうか……でも、嘘を吐いて後でばれたら大変そう。
「お……俺……ですけど」
俺は正直に答えた。すると青年は驚いた顔を見せた。
「お前がセス・ダンウィッカー?」
「はい」
「本当に?」
「はい」
「嘘じゃないだろうな」
「はい、本当です」
「……嘘だろ」
おい! 本当だって言ってるだろッ!!
一向に信じない青年に俺はイラっとして、俺は腰に下げている身分証明を見せた。
「俺です! ほら、ここに名前が書いてあるでしょ!」
身分証明は警備と安全の為、王宮で働く以上持ち歩かなければならない。身分証明には小さな木札に名前と所属、国の紋章、そして同じものが複製できないよう高等魔法がかけられている。
確固たる証明に、さすがの青年も俺がセス・ダンウィッカーだと納得したようで「本当なのか」と驚いた顔を見せた。
だから、最初から俺だって言っているのに! 全く~。
俺はそう思ったけれど、はて? この青年は俺に何の用だろう? その前になんで俺の事を? と疑問に思った。
しかし、俺が尋ねる前に青年は俺を上から下までジロジロと品定めするように見ると、その後すぐに「ふーん、お前がねぇ?」と鼻で笑った。
え? 今、俺、鼻で笑われました? なぜに??
今までこんな対応をされた事がないので、俺はぱちくりと目を瞬かせた。でもそんな俺に青年は口を開いた。
「こんなちんちくりんがレオナルド様の結婚相手だとは。平民だって聞いてたけれど、こんなにパッとしない、平凡なひょろ男だなんて!」
青年は腰に手を当てて、俺に向かって堂々と言い放った。
「ひょ、ひょろ男……」
まさか、こんな風に面と向かって悪口を言われると思っていなかったので俺は驚いた。
「そうだ! なんだ、自分はレオナルド殿下に相応しいとでも思っていたのか?」
青年はフンッと鼻を鳴らして笑った。
酷いことを言われて、少し傷つく。
でも、その一方で俺は妙な安心感を感じていた。
そ、そうだよな?! 俺ってやっぱりレオナルド殿下の相手には変だよな?! あー、良かった! レオナルド殿下に毎日可愛い、素敵、かっこいいよ、なんて言われるし、みんな何も言わないから、本当にそうなのかな? って勘違いしそうになっていたけど、やっぱり俺って平凡だよなぁ~!
俺は自分の美意識が正しくて、安心した。
危ない危ない、ちょっと間違えたら、ただの痛い勘違い野郎になっているところだった。
「聞いているのか! この平凡!」
何も答えない俺に苛立ったのか、青年はむっとした顔で俺を睨みつけた。
あ、ブサイクじゃなくてよかった。
悪口を言われているのに、ほっとした俺は普通に「聞いてますよ」と答えた。そんな俺に青年は更に苛立ったように、顔を少し赤くした。
「お前みたいな平凡、レオナルド様には相応しくない! どうやって取り入ったのか知らないけれど、さっさと離婚しろ!」
青年は俺を指さしてハッキリと言った。ここまで言われると最早清々しい。俺は青年のあまりの潔さに感動すら覚えていた。
……しかし離婚しろと言われてもなぁ、この前結婚したばかりだし。俺一人で離婚できるわけじゃないし。
そんな事を思っていると、そこにパタパタっと青年の従者らしき三人組が駆け寄ってきた。そしてがしっと青年の腕を掴む。
「王子! こんなところに!」
「ご勝手に歩かれては困ります」
「行きますよ!」
「おい、放せ!」
青年は叫んだが、彼らは無視して連行するように連れて行った。けれど、青年は俺を見て「離婚しろ!」と捨て台詞を吐いていった。
……うーん、今のは何だったんだろう? 嵐に遭ったみたい。しかし一人の王子に三人も従者って多いな。
俺はそう思いつつも、手に持っている薬科湿布を思い出し、陛下の元へトコトコ歩いて向かった。
「すまんな、セス。事務仕事続きで腰をやられてな」
陛下は執務室の椅子に座って、書類の山の間から俺に言った。
「いえ、お持ちすることぐらいなんでもありませんよ。なんなら、お貼りしましょうか?」
「いや、いい。そんな事をお前にさせたらレオナルドに何をされるか」
俺が陛下の背中に薬科湿布を貼ったら、レオナルド殿下が何をするって言うんだ?
俺はわからなくて首を傾げたが、そんな俺に陛下はちらりと視線を向けた。
「ところで、セス。ここに来る途中、誰かに会わなかったか?」
「誰か?」
ん? 誰だろう?
「黒髪の巻き毛の子とか」
黒髪の巻き毛……ああ、あの青年か!
まさか陛下に聞かれると思っていなかったので、すぐには思い出せなかった。というか、ここにくるまでにすっかり忘れていた。
「あ、ああ! 会いましたよ? それが何か?」
どっかの王子っぽいけど、あの青年がどうしたって言うんだろう?
「何か言ってなかったか? レオナルドの事とか」
「レオナルド殿下の事ですか? うーん、それよりも俺に文句を言っていましたけど。俺がレオナルド殿下に相応しくないとか。まあ、文句というか事実ですけど」
俺が何気なく言うと、陛下は机の上で両手を組み、困ったように大きなため息を「はぁーっ」と吐いた。
「すまないな、セス。彼はノース王国の末王子なんだが、昔からレオナルドにご執心でな。今回、見聞を広めるということで今日からうちにきたんだが……あれはきっとお前達を別れさせるために来たんだ」
陛下に言われて、俺は彼の態度を思い出して納得する。
「彼はレオナルド殿下が好きなんですね。なるほど」
まあ、レオナルド殿下を好きになるってわかるなぁ。あんなにかっこよくて、優しいんだから。その上、床上手……うっ、これ以上考えると俺の息子が元気になっていまう。やめようやめよう。でも……むしろ今までああいう人がいない事の方が不思議だったんだよなー。だから、いて当然というか。
そう思いつつ、ノース王国と聞いて俺は北にある国を思い出す。
ノース王国はここよりずっと寒冷地で、獣人が住んでいると聞いている。
確か、ノース王国の王族も獣人だったはず……じゃあ彼もそうなのかな?
獣人は人の姿にも獣の姿にもなれると聞いている。魔力も高いと聞くけど。
「とにかく、セスに近寄らないようにするが、何かあればすぐに私かレオナルドに言いなさい」
俺が思い出していると、陛下は心配そうに俺に告げた。
何かあればって何があるんだろう? まさか恋愛小説とかに出てくる主人公の恋敵的な嫌がらせとかしてくるんだろうか? それよりノース王国の末王子か……なんだろ? 何か違和感が……?
うーん、と考えていると陛下は大丈夫か? というような目で俺を見てきたが、それ以上は何も言わなかった。でも別の事は聞いてきた。
「ところで、レオナルドとはどうだ?」
「殿下、とですか? いつも良くしてもらっていますよ?」
「その……色々と大丈夫か?」
陛下は窺うように俺に尋ねた。何が大丈夫だというんだろうか? それに色々って??
「大丈夫ですよ?」
俺が答えると陛下はほっとした顔を見せた。
「そうか。……まだ大丈夫か。いや、しかし、ゆくゆくは監禁」
陛下はぶつぶつと呟き、俺が「陛下?」と呼びかけるとハッと顔を上げた。
「いや、なんでもない。お前とレオナルドが仲がいいならいいんだ」
「?」
「レオナルドの事、よろしく頼むぞ。セス」
よろしく頼むと言われても、俺の方が面倒を見て貰っていますけど。
「は、い?」
俺は首を傾げながら、一応返事をしておいた。
****あとがき****
書き忘れていましたが、続編は全12話となってます。
最後までお付き合いいただければ、幸いです。
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