上 下
87 / 100
続編

66 豊穣祭の翌日 後編 ※

しおりを挟む
「コーディー、どう、ンッ!?」

 ドレイクの言葉は途切れた。だって、僕がドレイクにキスをしたから。

 ……どうして。ドレイクとキスするの、きもちいい。

 僕は頭の隅で不思議に思いながらも、むちゅーっとドレイクに唇を押しつけてキスをする。そうするとドレイクは僕の肩を掴んで、密着する僕を引き剥がした。

「んぁっ」
「おま……どうした?」

 ドレイクは困惑した顔で僕を見る。なので勝手にキスした罪悪感に駆られた。

「あ、ごめん」
「ちがっ。そうじゃなくて、急にどうした?」

 ドレイクは心配そうな顔で僕に聞いた。でも、その間にも僕はドレイクにくっつきたい気持ちばかりが募る。
 でも、どうしてそんな気持ちになるのか僕自身もわからない。

「わ、わかんない。でもドレイクにくっつきたい」

 僕が正直に答えたらドレイクは言葉を失っていた。

「なっ」
「ドレイク、なんか僕、変っ。すごくさわりたい……だめ?」
「……ダメなわけあるか」

 ドレイクの答えを聞いて僕はさっきまで逃げようとしていたのに、ぎゅっとドレイクに抱き着く。すると体がぞくぞくして、なんだかすごく気持ちいい。

「ドレイク……ッ」
「お前、また媚薬入りの何かを食ったわけじゃないよな?」
「たべてない」
「だよな。それにしたって」

 ドレイクはそこまで言って、言葉を切った。でもドレイクも僕が媚薬入りのクッキーを食べた時と同じようになっていると感じたようだ。
 けど、僕は本当に何も食べてない。むしろ媚薬入りのクッキーを食べた時より酷い気がする。

 ……こんな風になるのはどうして? ドレイクともっとくっつきたい。この前の夜みたいに裸で。

 そんな事を考えている内に、無意識に僕はくっついているドレイクの首筋にすりすりっと顔を擦りつけていた。

「……コーディー」

 ドレイクに呼ばれて顔を上げれば、ドレイクは僕にキスをした。でも僕がドレイクにしたキスより、それはずっと深くて激しいやつ。

「んんっふ」

 食べられるんじゃないかって言うぐらいドレイクは僕の唇を食んで、それから少し口を開ければ、ぬるりとドレイクの舌が僕の中に入ってきた。
 ぬるぬると舌を絡め、上顎を撫でられたら「んっ」と声がでちゃう。その上、ドレイクは僕の下唇をカリッと甘く噛んだ。おかげで……。

 ……うっ、ちんちん勃っちゃった。

 ぴこっと寝巻のズボンを押し上げる。だから僕は手で押さえるけど、あっさりとドレイクに見つかってしまった。

「キスで気持ちよくなったのか?」

 色っぽい顔で言われて僕は頬を赤くする。でも、そんな僕の下半身をドレイクは触ろうとした。なので僕は慌てて引き留める。

「ドレイク、まって」
「どうして」
「ここ……じゃ、やだ」

 僕はドレイクに小さな声で言った。
 ここは魔塔の僕の部屋だ。でもいつ姉さん達が入ってくるかわからない。それにここでこれ以上の事をするのは、なんだか恥ずかしい。

「じゃあ、落ち着かせられるのか?」
「それは……ンッ」

 言い淀む僕の首筋をドレイクは撫で、僕はぴくんっと体を揺らす。

「こんな状況じゃ、無理だろ」

 そう言ってドレイクはまた触ろうとする。でも絶対ここでは嫌だった。ドレイクには触りたいし、これ以上の事もしたい。けどもしも姉さん達に知られたら恥ずかしくって、きっと夜も眠れなくなってしまう。

「ドレイクッ……やだ」

 僕が名前を呼んで拒否すれば、ドレイクは手を止めた。そして「はー」と小さくため息を吐き、それを聞いて僕は自分から誘っておいて申し訳なくなる。

「ご、ごめ」
「じゃあ、どこでならいい?」
「へ?」
「お前の家ならいいか?」

 ドレイクに聞かれて僕は「う、うん」と答える。するとドレイクは僕をシーツで頭からぐるぐるに包むと「ちょっと待ってろ」と言って、ベッドから下りるとドアへと向かった。

「ドレイク?」
「いいか、大人しく待ってろ。すぐに戻ってくる」

 ドレイクは僕に指差して言うと、パタンっとドアを鳴らして出て行ってしまった。

 ……え? どこに行ったの??

 僕は不思議に思うけれど、ドレイクが離れると体のムズムズがなんだか落ち着いてきた。

 ……変だな? さっきまですごくムズムズ、ぞくぞくしたのに。今は落ち着いてる。なんで??

 僕は首を傾げる。でも部屋から出ていったドレイクは数分も経たない内に本当にすぐ戻ってきた。
 しかし、戻ってきたドレイクの後ろにはダブリン姉さんがいる。

「おはよう、コーディー」
「ダブリン姉さん」

 僕が目を合わせると「調子は良さそうね」とダブリン姉さんはニコッと笑った。しかし、僕が返事をする前にドレイクはシーツに包んだ僕をそのままひょいっと持ち上げた。
 そうされるとまたすぐに体がムズムズして、ドレイクに触れられたところから気持ちよくって変な声が出そうになる。だから慌てて僕は両手で口をぎゅっと押えた。

「コーディー?」

 僕の様子がおかしい事に気が付いたのか、ダブリン姉さんは少し心配そうな声で僕の名前を呼ぶ。でも、僕は体が気持ちよくって返事が出来そうにない。
 代わりにドレイクがダブリン姉さんに声をかけた。

「ダブリン様、さっき言ったようにお願いします」

 そうドレイクはダブリン姉さんに言い、僕は体がムズムズ、ぞくぞくしながら不思議に思った。

 ……さっき言った? ドレイクは何をダブリン姉さんに言ったの?

 でもそう思っている内にダブリン姉さんは「わかったわ」と答えると杖を取り出し、呪文を唱え始めた。それは転移魔法の呪文だった。

《フェリッセ・エクサリーム》

 ……強制転移魔法? まさかっ。

 そう思った時、ドレイクの足元に魔法陣が浮かんで周りがピカッと光った。その眩しさに目を瞑るけど、目を開いた時には僕の家に着いていた。

 ……まさか、ドレイクはダブリン姉さんに部屋を移動するように頼んだの?!

 僕はその事に内心ちょっと驚いてしまう。
 でも、そんな僕を抱えたままドレイクはスタスタっと歩くとベッドに下ろした。

「これでいいんだろ? 続きをするぞ」

 ドレイクは目をギラギラさせて言った。その瞳が以前は怖かったはずなのに、今はどうしてかドキッとして少し嬉しい。

「……ぅん」

 僕が返事をするとドレイクもベッドに上がり、包んでいたシーツを剥がした。そして僕をベッドに押し倒す。
 けれど朝の光が部屋を照らしていて、今更ながらに健全な朝からこんな事をしていいんだろうか? と僕の中に残っている理性が問いかける。
 それに明るくて、全て見えてしまって恥ずかしい。

「ドレイク」
「今度はなんだ」
「あかるい、から……カーテンしめたい」

 僕が頼むとドレイクはちらっと窓に目を向けた。でも僕に向き直すとにっこりと意地悪な顔で笑った。

「断る」
「な、なんで、ンンッ!」

 抗議する僕の首筋にドレイクは顔を埋めるとかじっと優しく首元を齧った。そこから甘い痺れが体に回って、また体がぞくぞくしてしまう。

 ……きもちいい。もっと噛んでほしい。

 快感に支配されて、体が勝手にふにゃっと緩んでしまう。そんな僕の首元を噛んだドレイクはぢゅっと強く吸った。

「んぁ、どれいく?」
「コーディー、今日は気を失うなよ?」

 ドレイクは顔を上げて僕に言った。僕がいっつも気持ちよさで気を失ってしまうからだろう。でも気を失うなと言われて意識を保つ自信はなかった。だって今までだって勝手に気を失っていたんだから。
 けれど、僕の言葉を聞く前にドレイクはさっさと僕の寝巻を脱がせにかかる。もう何度も裸は見られているけど、やっぱり明るいこんな朝に見られるのは恥ずかしい。それに下半身は勃ったままだし。

 ……うぅっ、はずかしい。それにこの前みたいに、ちんちんをたべられたらどうしよう。

 ドレイクの部屋でされた事を思い出して僕は恥ずかしくなる。でもそれ以上にあの時の気持ちよさを思い出して、ぴくっと性器が震えた。

「触って欲しいか?」

 ドレイクは上着を脱ぎながら、僕の体を見て試すように尋ねた。
 でも僕は聞かれた事よりも、朝日に照らされたいくつかの傷痕が残る屈強な体。厚い胸板に血管の浮き出た太い腕、割れた腹筋に目が向かってしまう。

 ……さわってほしい。でもそれ以上にぼくがさわりたいっ。

 僕は横たわっていた体を起こすとドレイクに手を伸ばしてぎゅっと抱き着く。
 ぞくぞくとムズムズが体を走って、胸の奥がギュギュっとした。

 ……肌、きもちいいっ。

 触れ合う素肌が気持ちよくて、ドレイクの熱い大きな体は僕が抱き着いてもビクともしない。でも、そんな僕の背中をドレイクはするっと撫でた。

「んんっ」

 撫でられたところが気持ちよくて僕は声が出てしまう。いや、抱き着いているからか、触れた体のどこもかしこも気持ちいい。でも、もっと色々触れられたらもっと気持ちよくなるのがわかる。特に下半身を触られたらどうなるか。

「ドレイク」

 僕は抱き着きながら、強請るような声で呼んだ。
 するとドレイクは僕を抱きかかえたまま後ろに寝転んだ。おかげで僕はドレイクの上に乗っかる状態になる。そして勃っている性器がドレイクの体に擦れ、ドレイクのも勃っているのがわかった。

 ……ドレイクのも、たってる。

 なので僕はドレイクの胸に手を当てて、少しだけ体を起こす。するとドレイクは僕にもう一度問いかけた。

「触って欲しいか?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています

ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた 魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。 そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。 だがその騎士にも秘密があった―――。 その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

処理中です...