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54 ランチは喫茶店『パメラ』で 前編
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――――それからお昼過ぎ。
「え、すごく綺麗」
僕はピカピカになった部屋にベランダに整列するように干されている洗濯物を眺めて思わず呟いた。
……僕がするより全然綺麗なんだけど。
僕は部屋を見渡して思う。そしてドレイクを見れば、僕の横でドヤ顔してる。
「ドレイクって家事、上手なんだね」
「子供の頃にみっちりと仕込まれたからな」
「仕込まれた?」
「孤児院のシスターにな」
答えたドレイクに僕は「そうなんだ」と返事をし、騎士寮のドレイクの部屋も綺麗だったことを思い出す。
……ドレイクは意外に綺麗好きなのかも? 全然そう見えないけど。
「お前、なんかまた失礼な事を考えてるだろ」
「べ、別にっ!?」
心を読まれた気持ちになって僕は慌てて否定する。
「それより、もう二日酔いは取れたか?」
「あ、うん。おかげさまで。洗濯と掃除してくれて、ありがとう」
僕がお礼を言うとドレイクは照れ臭そうにした。
「礼を言われるほどの事じゃない」
「でも綺麗にしてくれたから」
僕が答えるとドレイクはじっと僕を見つめた。
「なに?」
「お前、俺が居候の身だってわかってるよな?」
「ん? 当たり前じゃない」
「わかってて、これか。……お人好しというか、素直というか」
何が言いたいのかわからず、僕は首を傾げる。
……お礼を言っただけなんだけどな?
「それより元気になったなら、街に買い物に行くぞ。ついでに昼は外で食べよう」
ドレイクに言われて、食材がもうほとんどないことを思い出す。
「うん。でも昼は外でってどこで?」
「久しぶりに『パメラ』に行くのはどうだ? 期間限定のアイスケーキを販売してるって話だが」
「アイスケーキ、食べたい!」
僕がすぐに返事をするとドレイクはプハッと子供のように笑い「正直かよ」と呟いた。その笑みはなんだかちびっこドレイクを思い出させて、可愛く見える。
……おかしいな? 僕より年上で、体格もいいドレイクが可愛く見えるなんて。
僕は思わず、目を擦る。
「どうした?」
「ううん、なんでもない」
「そうか? じゃあ、出かける準備をして、さっさと行くぞ」
ドレイクに言われ、僕は「うん」と答えた。
◇◇◇◇
ーーーーそれから、家を出たのが昼過ぎだったので僕達は『パメラ』へ行き、先にランチをすることにした。
「あら! 二人とも久しぶりね!」
喫茶店『パメラ』に着けば、マダムが笑顔で出迎えてくれた。
「お久しぶりです」
僕はぺこっと頭を下げて挨拶をする。
「元気そうね、コーディー君。今日もドレイクと一緒なのね、二人は仲良しね」
マダムは僕とドレイクを見て、ふふっと微笑んだ。前回も今回も一緒に来たからだろう。
……別に仲良しってわけじゃないけど。でも最近ドレイクとずっと一緒にいる気がするな? なかよし、なのかも?
なんて僕は一人思う。
「お久しぶりです、マダム。今日も賑わってるみたいですね」
ドレイクは店内の繁盛ぶりを見て言い、マダムは腰に手を当てた。
「ええ、今週から始めたアイスケーキの評判を聞きつけたお客さんでね。あ、でも今日はお手伝いを頼まないから安心して」
マダムはぱちんっとウインクして言った。
「頼まれたらいつでもお手伝いしますよ」
「そんな、騎士様に何度も頼めないわよ~」
ドレイクはいつもの胡散臭い笑みを浮かべ、マダムは笑って返したが他のお客さんがマダムを呼んだ。
「とりあえず青のテーブルが空いてるから、座って待ってて頂戴な。あとで注文を取りに行くわね」
マダムはそれだけを言い、ドレイクが「はい」と答えると呼ばれたお客さんの元へ足早に向かって行った。
……今日も忙しそうだなぁ。アイスケーキ、そんなに人気なのかな。僕も食べるの楽しみだな。
僕はマダムを見送って思う。だがそんな僕にドレイクは声をかけた。
「コーディー、席に座ろう」
ドレイクは先に歩き、僕は「うん」と答えてドレイクの後に続く。青の花瓶が置かれた席は窓側の二人席で、店の前の大通りが良く見える場所だった。
「今日は何を食べる?」
ドレイクは向かいの席に座った僕に尋ねた。なので、僕はテーブルに置かれていたメニュー表を見て「うーん」と悩む。
……この前ドレイクが食べてたステーキ定食もおいしそうだったんだよなぁ。次来た時には頼もうって思ってたけど、でもドレイクにオススメされたビーフシチューもすっごくおいしかったから、また食べたい気もするし。どうしようかなぁ。んーっ。
僕はしばし考え、それから決めた。
「やっぱり今日もビーフシチューにする。この前、とってもおいしかったからまた食べたい。ドレイクはどうするの?」
「俺もこの前と同じステーキ定食だ」
僕が尋ねればドレイクはそう答えた。
……この前、ドレイクも美味しそうに食べてたもんな。
前回の事を思い出して、僕は思う。そうしている内にドレイクは手を上げて、マダムを呼んだ。
「ご注文を伺いましょうかね」
「俺はいつものステーキ定食で。コーディーにはビーフシチューと噂のアイスケーキをひとつ、お願いします」
ドレイクは僕の分まで注文してくれた。しっかりアイスケーキの分も。
「ステーキ定食とビーフシチュー、アイスケーキをひとつだね。畏まりました、料理がくるまでゆっくりしてて頂戴な」
マダムは注文を取ると、そのまま忙しく旦那のジェイコブさんがいる厨房へと向かって行った。そして僕達が来た事を報せたのか、厨房を見ればジェイコブさんは僕達を見て手を振った。なので僕は控えめに手を振る。
でもそうしている内にドレイクが席を立とうとしたので僕は引き留めた。
「あ、お水を取りに行くんでしょ? 今日は僕が取りに行くよ」
『パメラ』ではお水は自分で取りに行くセルフ式だ。そして前回、ドレイクが取りに行ってくれたので今回は僕の番だ。
「そうか?」
「うん。前、取りに行ってくれたでしょ。今度は僕が行くよ」
僕はそう答えて席を立ち、水が置いてある所へ行って、コップを二個と水がたっぷり入っている水差しを持って戻ってくる。
するとドレイクは何気なく「ありがとう」と僕に言った。
「どういたしまして」
そう答えながらもドレイクにお礼を言われて、なんだかちょっと変な気分。
……ドレイクの”アリガトウ”は聞き慣れてないからかな? ちょっと胸がこそばゆい気持ちになるや。……でも前回、ここに来た時よりもずっと親しくなったよなぁ。そしてまさかドレイクに告白されるとは思ってもなかったけど。
なんて事を思いながら、コップに水を注ぐ。するとドレイクに声をかけられた。
「何を考えてる?」
「え、すごく綺麗」
僕はピカピカになった部屋にベランダに整列するように干されている洗濯物を眺めて思わず呟いた。
……僕がするより全然綺麗なんだけど。
僕は部屋を見渡して思う。そしてドレイクを見れば、僕の横でドヤ顔してる。
「ドレイクって家事、上手なんだね」
「子供の頃にみっちりと仕込まれたからな」
「仕込まれた?」
「孤児院のシスターにな」
答えたドレイクに僕は「そうなんだ」と返事をし、騎士寮のドレイクの部屋も綺麗だったことを思い出す。
……ドレイクは意外に綺麗好きなのかも? 全然そう見えないけど。
「お前、なんかまた失礼な事を考えてるだろ」
「べ、別にっ!?」
心を読まれた気持ちになって僕は慌てて否定する。
「それより、もう二日酔いは取れたか?」
「あ、うん。おかげさまで。洗濯と掃除してくれて、ありがとう」
僕がお礼を言うとドレイクは照れ臭そうにした。
「礼を言われるほどの事じゃない」
「でも綺麗にしてくれたから」
僕が答えるとドレイクはじっと僕を見つめた。
「なに?」
「お前、俺が居候の身だってわかってるよな?」
「ん? 当たり前じゃない」
「わかってて、これか。……お人好しというか、素直というか」
何が言いたいのかわからず、僕は首を傾げる。
……お礼を言っただけなんだけどな?
「それより元気になったなら、街に買い物に行くぞ。ついでに昼は外で食べよう」
ドレイクに言われて、食材がもうほとんどないことを思い出す。
「うん。でも昼は外でってどこで?」
「久しぶりに『パメラ』に行くのはどうだ? 期間限定のアイスケーキを販売してるって話だが」
「アイスケーキ、食べたい!」
僕がすぐに返事をするとドレイクはプハッと子供のように笑い「正直かよ」と呟いた。その笑みはなんだかちびっこドレイクを思い出させて、可愛く見える。
……おかしいな? 僕より年上で、体格もいいドレイクが可愛く見えるなんて。
僕は思わず、目を擦る。
「どうした?」
「ううん、なんでもない」
「そうか? じゃあ、出かける準備をして、さっさと行くぞ」
ドレイクに言われ、僕は「うん」と答えた。
◇◇◇◇
ーーーーそれから、家を出たのが昼過ぎだったので僕達は『パメラ』へ行き、先にランチをすることにした。
「あら! 二人とも久しぶりね!」
喫茶店『パメラ』に着けば、マダムが笑顔で出迎えてくれた。
「お久しぶりです」
僕はぺこっと頭を下げて挨拶をする。
「元気そうね、コーディー君。今日もドレイクと一緒なのね、二人は仲良しね」
マダムは僕とドレイクを見て、ふふっと微笑んだ。前回も今回も一緒に来たからだろう。
……別に仲良しってわけじゃないけど。でも最近ドレイクとずっと一緒にいる気がするな? なかよし、なのかも?
なんて僕は一人思う。
「お久しぶりです、マダム。今日も賑わってるみたいですね」
ドレイクは店内の繁盛ぶりを見て言い、マダムは腰に手を当てた。
「ええ、今週から始めたアイスケーキの評判を聞きつけたお客さんでね。あ、でも今日はお手伝いを頼まないから安心して」
マダムはぱちんっとウインクして言った。
「頼まれたらいつでもお手伝いしますよ」
「そんな、騎士様に何度も頼めないわよ~」
ドレイクはいつもの胡散臭い笑みを浮かべ、マダムは笑って返したが他のお客さんがマダムを呼んだ。
「とりあえず青のテーブルが空いてるから、座って待ってて頂戴な。あとで注文を取りに行くわね」
マダムはそれだけを言い、ドレイクが「はい」と答えると呼ばれたお客さんの元へ足早に向かって行った。
……今日も忙しそうだなぁ。アイスケーキ、そんなに人気なのかな。僕も食べるの楽しみだな。
僕はマダムを見送って思う。だがそんな僕にドレイクは声をかけた。
「コーディー、席に座ろう」
ドレイクは先に歩き、僕は「うん」と答えてドレイクの後に続く。青の花瓶が置かれた席は窓側の二人席で、店の前の大通りが良く見える場所だった。
「今日は何を食べる?」
ドレイクは向かいの席に座った僕に尋ねた。なので、僕はテーブルに置かれていたメニュー表を見て「うーん」と悩む。
……この前ドレイクが食べてたステーキ定食もおいしそうだったんだよなぁ。次来た時には頼もうって思ってたけど、でもドレイクにオススメされたビーフシチューもすっごくおいしかったから、また食べたい気もするし。どうしようかなぁ。んーっ。
僕はしばし考え、それから決めた。
「やっぱり今日もビーフシチューにする。この前、とってもおいしかったからまた食べたい。ドレイクはどうするの?」
「俺もこの前と同じステーキ定食だ」
僕が尋ねればドレイクはそう答えた。
……この前、ドレイクも美味しそうに食べてたもんな。
前回の事を思い出して、僕は思う。そうしている内にドレイクは手を上げて、マダムを呼んだ。
「ご注文を伺いましょうかね」
「俺はいつものステーキ定食で。コーディーにはビーフシチューと噂のアイスケーキをひとつ、お願いします」
ドレイクは僕の分まで注文してくれた。しっかりアイスケーキの分も。
「ステーキ定食とビーフシチュー、アイスケーキをひとつだね。畏まりました、料理がくるまでゆっくりしてて頂戴な」
マダムは注文を取ると、そのまま忙しく旦那のジェイコブさんがいる厨房へと向かって行った。そして僕達が来た事を報せたのか、厨房を見ればジェイコブさんは僕達を見て手を振った。なので僕は控えめに手を振る。
でもそうしている内にドレイクが席を立とうとしたので僕は引き留めた。
「あ、お水を取りに行くんでしょ? 今日は僕が取りに行くよ」
『パメラ』ではお水は自分で取りに行くセルフ式だ。そして前回、ドレイクが取りに行ってくれたので今回は僕の番だ。
「そうか?」
「うん。前、取りに行ってくれたでしょ。今度は僕が行くよ」
僕はそう答えて席を立ち、水が置いてある所へ行って、コップを二個と水がたっぷり入っている水差しを持って戻ってくる。
するとドレイクは何気なく「ありがとう」と僕に言った。
「どういたしまして」
そう答えながらもドレイクにお礼を言われて、なんだかちょっと変な気分。
……ドレイクの”アリガトウ”は聞き慣れてないからかな? ちょっと胸がこそばゆい気持ちになるや。……でも前回、ここに来た時よりもずっと親しくなったよなぁ。そしてまさかドレイクに告白されるとは思ってもなかったけど。
なんて事を思いながら、コップに水を注ぐ。するとドレイクに声をかけられた。
「何を考えてる?」
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